Volume 11, No.5 Pages 291 - 307
1. SPring-8の現状/PRESENT STATUS OF SPring-8
第18回(2006B)利用研究課題の採択について
The Proposals Accepted for Beamtime in the 18th Public Use Term 2006B
財団法人高輝度光科学研究センター(JASRI)では、利用研究課題選定委員会による利用研究課題選定の結果を受け、以下のように第18回共同利用期間(2006B)における利用研究課題を採択した。
1.募集及び選定・採択日程
〔募集案内・募集締切〕
(長期利用課題)
平成18年4月19日 長期利用課題の公募について
SPring-8ホームページに掲示
5月18日 長期利用課題募集締切り
(一般課題および重点領域課題)
平成18年4月17日 SPring-8戦略活用プログラム課題の公募について、文部科学省ホームページおよびSPring-8ホームページに掲示
4月18日 成果公開・優先利用型課題の公募についてSPring-8ホームページに掲示
4月26日 一般課題(萌芽的研究支援課題を含む)、重点ナノテクノロジー支援課題、および重点メディカルバイオ・トライアルユース課題の公募についてSPring-8ホームページに掲示
利用者情報(Vol.11, No.3, 2006.5)に掲載
前々期よりWebサイトを利用した電子申請システムとなっている
5月16日 成果公開・優先利用型課題募集締切り
5月25日 一般課題、重点ナノテクノロジー支援課題、および重点メディカルバイオ・トライアルユース課題募集締切り(午前10時利用業務部必着)
〔一般課題、重点領域課題、および長期利用課題の課題選定および採択・通知〕
平成18年5月22日~29日 長期利用分科会による長期利用課題の書類審査
6月22日 第4回SPring-8戦略活用プログラム課題選定委員会
6月26日 メディカルバイオ・トライアルユース課題選定委員会による重点領域課題審査
6月28日 ナノテク支援課題選定委員会による重点領域課題審査および長期利用分科会での長期利用課題の面接審査
6月29日~30日 分科会による一般課題審査
6月30日 第40回利用研究課題選定委員会による課題選定および機構として採択
7月21日 応募者に採択結果を通知
2.公募状況
今回の公募では、一般利用研究課題の応募として570件、重点研究課題の応募として297件、これらを合わせた総応募件数として867件の課題応募があり、前2回よりは少ない応募数であった。採択件数については、一般利用研究課題の採択として329件、重点研究課題の採択として213件、これらを合わせた総採択件数として542件となり第11回(2003A期)からこれまでの間で最小の採択件数となった。第1回から今回の公募までの応募課題数及び採択課題数を表1に示す。表1の応募・採択のデータをグラフ化して図1に示す。図1において、採択件数は利用できるビームラインの数と各利用期の利用可能シフト数に関係するが、これまで採択件数は第12回(2003B期)の621件をピークにして、第13回(2004A期)の595件、第14回(2004B期)の562件、および第15回(2005A期)の547件と減少件数として33件から15件の範囲で毎年漸減してきていたが第16回(2005B期)にSPring-8戦略活用プログラムが新たに導入されたことにより過去最高の624件と盛り返し、前回(第17回:2006A期)さらに709件と過去最高を更新した。今回(第18回:2006B期)は542件と第12回(2003B期)以来最小の採択件数となった。これは、前回(第17回:2006A期)の利用シフト枠が通常より多い目に設定され、今回(第18回:2006B期)の利用シフト枠が通常より少ない目に設定されたことが大きな理由と考えられる。
表1 利用研究課題公募履歴
図1 各公募時における応募課題数と採択課題数
表2 第18回公募(2006B)の一般利用研究課題と重点研究課題の内訳
また、今期で7回目となる重点研究課題の内、重点領域指定型については表2に示す通り4領域で課題を公募した。但し、重点タンパク500課題については今回採択された課題を重点タンパク500シフト枠(126シフト)内で個別に調整して実施1ヶ月前までにシフト配分を確定する従来通りの方式で実施する予定である。また、平成17年度後半に重点メディカルバイオ領域を新たに重点領域指定型として指定し、前回(2006A期)は4月以降に留保したビームタイム枠で公募した。今回(2006B期)は、通常の重点課題公募のスケジュールで募集を行った。表2では、一般利用研究課題についても内訳を示している。今回(2006B期)から成果公開・優先利用型課題の募集が開始された。
ここ数年、1年の前半の共同利用期間(A期)では応募が少なく、反対に後半(B期)では増加する傾向が続いている。連続する2回の公募状況を足し合わせ1年単位でまとめてみると、応募課題数は平成17年に最大となり平成18年は頭打ちとなった。最近5年間分を以下のリストに示すが、第17回+第18回は応募課題数は頭打ちとなったが、採択課題数は増加している。これは、SPring-8戦略活用プログラムが第16回(2005B期)から新たに導入されたことによるものと考えられ、産業利用関係の課題の平均シフト数が学術利用関係の課題の平均シフト数より少ないことで採択課題数が増加していると思われる。今後新しい共用ビームラインが増えて一般課題のシフト枠が増えることがなければ、応募課題数、採択課題数ともに頭打ち状態もしくは重点研究課題が増えればむしろ減少する可能性もあると思われる。
応募課題数 採択課題数
第17回+第18回(平成18年3月~18年12月) 1,793 1,251
第15回+第16回(平成17年4月~17年12月) 1,851 1,171
第13回+第14回(平成16年2月~16年12月) 1,658 1,157
第11回+第12回(平成15年2月~16年2月) 1,671 1,184
第9回+第10回(平成14年2月~15年2月) 1,394 992
3.利用期間と利用対象ビームライン
これまで、年間の前期と後期の共同利用の利用時間に長短のアンバランスが大きくなることを緩和することに努めてきたが、平成18年度は年間の運転予算の関係で2006A期は通常より長く2006B期は通常より短くなり両利用期における利用時間のアンバランスが大きくなった。今回(2006B期)は平成18年9月の第5サイクルから第6サイクルまで(平成18年9月から平成18年12月まで)とし、この間の放射光利用時間は201シフト(1シフトは8時間)となっている(前回(2006A期)は279シフト)。このうち共同利用に供されるビームタイムは共用ビームライン1本あたり162シフトとなる(前回(2006A期)は225シフト)。
今回の募集で対象としたビームラインは一般課題とこれまでの重点課題に対しては総計36本で、その内訳は、共用ビームライン25本(R&Dビームライン1本を含む)とその他のビームライン11本(理研ビームライン6本、日本原子力開発機構ビームライン4本、及び物質・材料研究機構ビームライン1本)であった。
4.採択結果
今回の採択結果は、一般利用研究課題と重点研究課題を合わせた総件数では応募867件に対し採択542件であり、採択された全課題(重点タンパク500課題(シフト枠は126シフト)を除く)の配分シフト数は表3に示すように合計で3,613シフトであった。また、採択された課題の平均シフト数は6.7であり前回の8.1より少なかった。今回の共同利用の対象としたビームライン毎の応募・採択課題数、課題採択率、採択された課題の配分シフト数、平均シフト数を表3にまとめて示す。また、SPring-8戦略活用プログラムの2006B期分を別枠にして示す。
表3 2006B期におけるビームラインごとの採択状況
重点研究課題の内「重点ナノテクノロジー支援」は、今回、応募課題数105件に対して採択課題数が52件で採択率50%となり、一般利用研究課題の成果非専有課題における平均採択率53%より厳しくなっている。また、「重点タンパク500」は、今回採択された課題を重点タンパク500シフト枠(126シフト)内で個別に調整して実施1ヶ月前までにシフト配分を確定する方式で実施する。
今回の一般利用研究課題、重点ナノテクノロジー支援課題、および重点メディカルバイオ・トライアルユース課題の応募課題数と採択課題数を、研究分野と実験責任者の所属機関別にまとめたものを表4-1に示す。なお、重点タンパク500課題は全応募課題を実施シフト枠(今回は126シフト)の範囲内で調整して実施する方式を採用しているので、採択率等を示すときは基本的に除外して示す。SPring-8戦略活用プログラムにおける応募課題数と採択課題数を、分科会分野と実験責任者の所属機関別にまとめたものを表4-2に示す。SPring-8戦略活用プログラムは産業利用を中心に考えているので、前々回最初の応募・採択では産業利用と学術利用との間では採択率に際だった違いが出ていたが、前回および今回は採択率では大きな違いは出ていない。但し、応募数では産業利用分科会が圧倒的に多かった。
表4-1 2006B期応募課題数と採択課題数:研究分野と機関分類
(一般利用研究課題、重点ナノテクノロジー支援課題、重点メディカルバイオTU課題)
表4-2 SPring-8戦略活用プログラムの2006B期応募課題数と採択課題数
(分科会別に機関別分類)
長期利用(通常課題の実施有効期限が6ヶ月(一部分科会では1年課題もある)であるのに対し、3年間にわたって計画的にSPring-8を利用することによって顕著な成果を期待できる利用)では、表2に示すように今回の公募で4件の応募があり2件が採択された。なお、審査は長期利用分科会での書類審査、及び面接審査の2段階で行われた。
成果専有利用としては、表2に示すように産業界から22件、国公立研究機関等から4件、及び大学等教育機関から1件の合計で27件の応募があった。前々回はSPring-8戦略活用プログラムが新たに導入されて一般利用研究課題枠が窮屈になったために、成果専有利用課題が22件と大幅に増加したが、前回は従来のレベルに戻る方向で18件と減少し、今回は27件と再び大幅に増加した。なお、これらの課題については公共性・倫理性の審査と技術的実施可能性及び実験の安全性の審査が行われ全件採択された。
萌芽的研究支援は、将来の放射光研究を担う人材の育成を図ることを目的として、萌芽的・独創的な研究テーマ・アイデアを有する大学院学生を支援するものである。平成17年度の2005A期から放射光を利用する萌芽的研究支援による利用研究課題を一般利用研究課題の成果非専有課題に含めて募集・採択している。大学院学生が実験責任者として応募できる初めての試みであるが、課題の選定はあくまで他の一般利用研究課題と同じ扱いで選定されている。今回(2006B期)は応募32件に対して採択は13件で採択率が41%となり前回の採択率(64%)より低くなった。なお、今回(2006B期)の成果非専有課題の採択率は53%であり萌芽的研究支援課題の方が厳しい採択率となっている。
5.産業界の利用
表4-1に示すように今回の公募で、産業界からは各研究分野に合わせて64件の応募があり、46件が採択された(採択率72%)。前回が応募51件で採択37件(採択率73%)であったので、今回は応募数、採択数共に増加して、採択率は前回と同程度となった。今回も、前々回同様SPring-8戦略活用プログラムで産業利用が大幅に取り入れられているので表4-2のデータを加えてトータルの産業界利用として見てみると、応募152件、採択108件となり採択率は71%と前回と同程度となっている(前回は、応募175件、採択が121件となり採択率は75%)。また、利用されるビームラインは表3から明らかなように合計19本と前回より少なくなっている。
6.課題選定審査における留意点
(1)これまでと同じく、平和目的の確保、一般利用研究課題の占める割合が全放射光利用時間の50%以上となること、選定した課題について高いシフト充足率を確保すること、および挑戦的な課題の確保を念頭においた審査を行った。
(2)生命科学分野の留保ビームタイムは、2本のビームラインを合わせて15シフト確保した。
(3)成果の審査へのフィードバックについては、2005A期からの試行に引き続き今回も同様の方法で試行した。今回も産業利用分科は見送りとしたが、他分科の実施結果はdV値がマイナスの課題は審査課題数の1.1%(前回は0.4%)で、dV値がプラスの課題は審査課題数の3.3%(前回は3.6%)であった。
(4)「実験技術、方法等分科」は今回も休止したが、他の分科でレフェリー審査を行い特に問題は生じなかった。
7.採択課題
表5-1~表5-5に今回採択された利用研究課題の一覧を示す。表5-1は一般利用研究課題の分であり、表5-2から表5-5は重点研究課題の分である。
表5-1 2006B期に採択された利用研究課題一覧(一般利用研究課題)
詳しくは、PDFファイルをご参照下さい。