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Volume 10, No.3 Pages 191 -193

2. ビームライン/BEAMLINES

BL02B2に設置された大型デバイ-シェラーカメラついて
The Large Debye-Scherrer Camera installed at SPring-8 BL02B2

坂田 誠 SAKATA Makoto[1]、西堀 英治 NISHIBORI Eiji[1]、青柳 忍 AOYAGI Shinobu[1]、黒岩 芳弘 KUROIWA Yoshihiro[2]、久保田 佳基 KUBOTA Yoshiki[3]、高田 昌樹 TAKATA Masaki[4]、加藤 健一 KATO Kenichi[4]

[1]名古屋大学大学院 工学研究科 Graduate School of Engineering, Nagoya University、[2]岡山大学大学院 自然科学研究科/CREST (JST) Graduate School of Natural Science and Technology, Okayama University / CREST (JST)、[3]大阪府立大学大学院 理学系研究科 Graduate School of Science, Osaka Prefecture University、[4](財)高輝度光科学研究センター 利用研究促進部門/CREST (JST) Research & Utilization Division, JASRI / CREST (JST)

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 SPring-8利用者情報誌2000年5月号に、「BL02B2における精密構造物性研究」と題した記事を執筆した[1][1]SPring-8利用者情報 Vol.5 No.3 (2000) 194-198.。これは、題名から予想される内容とは異なり、BL02B2に我々が中心になり立ち上げた大型デバイ-シェラーカメラの装置の紹介が主な内容で、標準試料の測定結果を載せただけの記事でした。装置を立ち上げて、「さあ、これから精密構造物性研究をするぞ!」と言う意気込みで書いた記事である。私(MS)が立ち上げグループの年長者だったので、そのような記事を書いたと記憶している。最近、後述するが思わぬ評価を得たので、これを機会にもう一度記事を書かせてもらうことにした。
 現在、BL02B2の大型デバイ-シェラーカメラは、順調に稼動し、公表された論文から判断して、大きな成果を挙げていると思っている[2][2]SPring-8 Overview 2004 for Beamline Review Committees 47-56.。これは、構造物性を必ずしも専門としない、多くの優秀なユーザーに使ってもらえたことによるものと思っている。その様に、多くのユーザーを引き付けることが出来たのは、SPring-8の光の特性と装置のデザインが、非常に良くマッチした結果であると思う。SPring-8の光の特性を全て生かしているわけではないが、やはり、この装置はSPring-8に設置されて、初めて威力を発揮する。当初から、マッチングの良い装置であると自負していたので、この点が実証され大変満足に思っている。間接的に聞いた話であるが、佐々木泰三先生の言葉によると「粉末法と言うマイナーリーグの選手をイチローに育てるのに成功した」、と言うところであろうか。イチローとは思っていないが、レギュラーは獲得したのだろう。いずれにしろ、SPring-8と言うフィールドがあって、初めて、可能であったことは間違いない。
 現在では、多くのユーザーが、3〜6シフトの比較的短いビームタイムで、精度の高いデータを収集して行くが、立ち上げ当初は、色々なトラブルに見舞われた。最も大きなトラブルは、高調波がカット出来なかったことである。モノクロメーターはシリコン(111)を使っているので、2倍周期の波長のX線は無いのだが、何と3倍周期のX線がモノクロを通って来ることが分かった。3倍周期のX線が混入していては、この装置で何の研究も出来ない。立ち上げグループとしては、一大事である。全ての時間を使って、原因を調べたところ、立ち上げグループの結論は、第1段の光学素子に使っているシリコンミラーの白金コーティング膜が薄すぎて、3倍周期のX線がカットされていない、と言うものであった。しかし、一度納入されたミラーの再コーティングとなると、大きなミラーを工場に送り返して行うことになり、すぐに出来るわけでは無い。さらに詳細に調べるため、光学系グループの協力によりミラーのコーティングを調べてもらった所、やはり白金のコーティング膜が薄いことが分かった。それから、工場に運んで再コーティングしてもらい、再度、標準試料を測定したところ、3倍周期の高波長X線がカットされた、きれいなデータを測定することが出来た[3][3]SPring-8 Annual Report 1999 45-47.。装置が納入されてから、半年が経っていた。それ以外にも、初期トラブルは、特に、低温関係では、一杯あったが、立ち上げグループの頑張りにより解決することが出来た。
 一応、実験することの出来る体制が整ったので、2000年8月21日〜25日にドイツ、ベルリンで開催されたSRI2000で、BL02B2の大型デバイ-シェラーカメラの特性をまとめて発表することにした。装置の論文は、研究成果の論文に比べて、大変面白いと言うわけには行かないので、やはり、年長者の私(MS)が中心になって以下の論文にまとめた。
“The large Debye-Scherrer camera installed at SPring-8 BL02B2 for charge density studies. ”
by E. Nishibori, M. Takata, K. Kato, M. Sakata, Y. Kubota, S. Aoyagi, Y. Kuroiwa, M. Yamakata, N. Ikeda
 山片さんと池田さんは、当時、ビームライン担当者と言うことで、筆者に加わっていただいた。この論文は、レフリーを受けプロシーディングスとしてNuclear Instruments and Methods in Physics Research A誌に発表された[4][4]E. Nishibori, M. Takata, K. Kato, M. Sakata, Y. Kubota, S. Aoyagi, Y. Kuroiwa, M. Yamakata and N. Ikeda: Nucl. Instr. Meth. Phys. Res. A467-468 (2001) 1045-1048.。SRI2000は、SPring-8の立ち上がった時期とちょうど重なっており、多くの方がSPring-8からも参加していたことを記憶している。国際会議のプロシーディングスは、研究者の間では投稿論文よりも、多少軽んじられているように思う。それでも、装置の論文をプロシーディングスに書いたので、立ち上げグループとしては、一応の、責任を果たしたと言うのが、正直な感想でした。そして、記憶のかなたに消えて行った。
 最近になって、一通の葉書が届いた。見た目は、葉書と言うよりも写真である。その写真の表裏が、図1である。その写真から分かるように、大きく“Congratulations, M. Sakata”と書いてあった。また怪しげな商売の葉書かと思ったら我々の書いた論文のタイトルが書いてあった。そこで、よく読んでみると
“Since 2000, you have had 47 citations to your article,…. This means that the number of citations your article received places it in the top 1% within its field according to Essential Science IndicatorsSM. Your work is highly influential, and is making a significant impact among your colleagues in your field of study.”と言うことで、“Web of Science”を運営しているThomson社が知らせてきたものであった。我々の論文が“非常に影響力があり、同じ分野の研究者にかなりのインパクトを与えている”と言うフレーズには、研究者としてグッと来るものがあった。正直な感想は、全く予想していなかったので、純粋に嬉しかった。



図1 THOMSON社から送られてきた葉書。(a)裏、(b)表

 Essential Science IndicatorsSMと言う、指標を自分たちで作って、いわば勝手に全ての論文のCitationを調べて、一方的に“Congratulations”を送ってきただけの話しなので、特に、取り上げる必要が無いのかもしれない。しかし、客観的なデータに基づいてなされた一つの評価であることは間違いない。科学・技術の世界も、評価・競争の時代に入っているのだろう。その様な時代にあっては、これも一つの成果かと思い、もしかしたら、利用情報誌の記事に良い題材かと思い執筆した次第です。尚、現在のCitation数は、54です。



参考文献
[1]SPring-8利用者情報  Vol.5 No.3 (2000) 194-198.
[2]SPring-8 Overview 2004 for Beamline Review Committees 47-56.
[3]SPring-8 Annual Report 1999 45-47.
[4]E. Nishibori, M. Takata, K. Kato, M. Sakata, Y. Kubota, S. Aoyagi, Y. Kuroiwa, M. Yamakata and N. Ikeda: Nucl. Instr. Meth. Phys. Res. A467-468 (2001) 1045-1048.



坂田 誠 SAKATA  Makoto
名古屋大学大学院 工学研究科 マテリアル理工学専攻
〒464-8603 名古屋市千種区不老町
TEL : 052-789-4453 FAX : 052-789-3724
e-mail : sakata@cc.nagoya-u.ac.jp

西堀 英治 NISHIBORI  Eiji
名古屋大学大学院 工学研究科 マテリアル理工学専攻
〒464-8603 名古屋市千種区不老町
TEL : 052-789-3702 FAX : 052-789-3724
e-mail : eiji@mcr.nuap.nagoya-u.ac.jp

青柳 忍 AOYAGI  Shinobu
名古屋大学大学院 工学研究科 マテリアル理工学専攻
〒464-8603 名古屋市千種区不老町
TEL : 052-789-4455 FAX : 052-789-3724
e-mail : aoyagi@mcr.nuap.nagoya-u.ac.jp

黒岩 芳弘 KUROIWA  Yoshihiro
岡山大学大学院 自然科学研究科 先端基礎科学専攻、CREST(JST)
〒700-8530 岡山市津島中3-1-1
TEL : 086-251-7816 FAX : 086-251-7830
e-mail : kuroiwa@science.okayama-u.ac.jp

久保田 佳基 KUBOTA  Yoshiki
大阪府立大学大学院 理学系研究科 物理科学専攻
〒599-8531 大阪府堺市学園町1-1
TEL : 072-222-4811 内線4343 FAX : 072-238-5539
e-mail : kubotay@center.osaka-wu.ac.jp

加藤 健一 KATO  Kenichi
(財)高輝度光科学研究センター 利用研究促進部門、CREST(JST)
〒679-5198 兵庫県佐用郡三日月町光都1-1-1
TEL : 0791-58-0802 内線3476 FAX : 0791-58-0830
e-mail : katok@spring8.or.jp

高田 昌樹 TAKATA Masaki
(財)高輝度光科学研究センター 利用研究促進部門、CREST(JST)
〒679-5198 兵庫県佐用郡三日月町光都1-1-1
TEL : 0791-58-0946 FAX : 0791-58-0946
e-mail : takatama@spring8.or.jp



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[ - Vol.15 No.4(2010)]
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