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Volume 10, No.2 Pages 112 - 119

2. ビームライン/BEAMLINES

SPring-8ナノテクノロジー総合支援のためのPEEM導入と立ち上げ

小林 啓介 KOBAYASHI Keisuke、郭 方准 GUO Fang Zhun、脇田 高徳 WAKITA Takanori、木下 豊彦 KINOSHITA Toyohiko

(財)高輝度光科学研究センター 利用研究促進部門Ⅰ Materials Science Division, JASRI

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1.緒言
 2002年度よりSPring-8は、立命館大学の放射光センターとともに文科省のナノテクノロジー総合支援プロジェクトの放射光を使った支援を実施している。このプロジェクトは共同利用施設をナノテクノロジー支援に充てようというものである。SPring-8の従来からのユーザーは必ずしもナノテクノロジー分野の研究グループが多いわけではない。したがって、このプロジェクトはむしろ新規ユーザーをSPring-8に導入する機会と考えるべきであるというのが開始以来の考え方である。支援のためにいくつかの新しい設備を導入する事が出来た事は、このプロジェクトのもう一つのメリットである。
 光電子顕微鏡(PEEM; Photoemission Electron Microscope)の利用は日本の放射光研究分野の中でも世界的な研究動向に遅れがちであった。そこでSPring-8の特長を生かした新しい利用研究分野を拓く目的で、ナノテクノロジー支援のためにPEEM実験装置を導入する事を計画した。想定されるユーザーは放射光の新規ユーザーであるばかりでなく、PEEMそのものについても未経験であると考えられた。このようなユーザーにとって使いやすい装置を導入することにより、効率的な支援を行いたいという要求があった。一方、これまでPEEM研究分野での出遅れを取り戻し、ナノテクノロジー研究の最先端に躍り出る為には最高性能のPEEM装置が必要であった。高性能機種は各種収差を出来るだけ少なくする構成で、また様々な機能を備えているため、非常に複雑な電子光学系構成になっている。このため使いこなすには熟練が必要である。したがって、上記の2つの全く異なる要求を1つの装置で満足させることは不可能である事は明白であった。そこで、先ず2002年度に新規未経験ユーザーの為に出来るだけシンプルな構成でかつ、空間分解能などの基本性能が高い装置を導入し、ついで2003年度には磁気レンズと光電子アナライザーの組み合わせで空間分解能(水銀ランプ励起で)24 nmを実現し、かつ低エネルギー電子顕微鏡機能を兼ね備えたハイエンド装置を導入した。後者のハイエンド装置は、その特性からSPELEEM(Spectroscopic Photoemission and Low Energy Electron Microscope)と呼ばれている。現在これら2つの装置は順調に立ち上がって、ナノテク支援課題を受け入れ既にその成果は国際会議や論文として公表されはじめている。ここではその2つのPEEM装置の現状及び、将来の運用、展望などに関して紹介する。

2.PEEMSPECTOR
 ここでは、上述の2基のPEEM装置のうち、シンプルな装置の紹介をする。このシステム(図1)に搭載されているPEEM(PEEMSPECTOR、図1)は、Elmiteck社(ドイツ)が開発した世界最小サイズのPEEMであり、主に円偏光軟X線ビームラインBL25SUに設置して使用することを想定して導入した。磁場レンズを用いた高機能PEEM(例えばElmitek社のLEEM Ⅲ、次節参照)と異なり、PEEMSPECTORは静電レンズ系のみで構成される簡素な造りをしている。そのため操作が大変簡便であるという特徴がある。空間分解能はHgランプを光源とする場合には35 nm以下を達成している。(図3)。放射光を用いた場合には、電子レンズ系のエネルギー収差により多少劣化するものの、空間分解能100 nm前後での測定が可能である。



図1 PEEMSPECTOR装置全体図



図2 光電子顕微鏡(PEEMSPECTOR)と静電レンズ系のダイアグラム



図3 空間分解能の見積。試料はSi表面に約1×2 µmの穴の格子状配列をパターニングしたもので、光源は水銀ランプ。一番右の図で線プロファイルのフィッティングから求められた空間分解能は35 nm。

 このシステムを用い、BL25SUの軟X線のエネルギーを特定の元素の吸収端に合わせて測定することにより、微小領域の元素分布や化学状態分布を得ることができる。さらに我々は、磁気円二色性(MCD; Magnetic Circular Dichroism)シグナル強度の空間分布を高速かつ高精度で計測するため、BL25SUの偏光スイッチングと同期した画像取得システムを構築した。これにより、磁性体の磁区構造を試料非破壊で観測することができるようになった(XMCD-PEEM)。また、この装置では試料の方位角も360度変化させることができるため、試料表面に対する磁化ベクトルの向きの特定が可能となっている。例えば、図4と図5に示したように、次世代の高密度磁気記録媒体として脚光を浴びている垂直磁気記録媒体と従来の面内磁気記録媒体にそれぞれ人為的に作成したストライプ状磁区構造をXMCD-PEEMにより観測すると、試料の方位角に対するコントラストの変化が両者で異なっていることが分かる。すなわち、面内磁気記録媒体の場合だけ90度の方位角の変化によりコントラストが消えている。これは、コントラストの強度が光の入射方向のベクトルと磁化ベクトルの内積に比例するためである。このように、試料の方位角を変えてXMCD-PEEM測定を行うことにより磁化ベクトルの向きを容易に特定することができるのである。



図4 垂直磁気記録媒体に書き込まれた磁区。



図5 面内磁気記録媒体に書き込まれた磁区。下段のスペクトルは緑の四角の領域のMCDスペクトル

 図5の下段のスペクトルは上段の緑の四角で囲った領域のMCDスペクトルを示している。分光器と連同した画像取得システムの構築により、このようなスペクトルの自動取得が可能となっている。さらに、円偏光は直交する直線偏光がπ/2位相がずれて重なっている光であることを利用すると、図6に示したように磁気線二色性による反強磁性磁区構造の観察も可能である(図12も参照)。



図6 NiO単結晶の(100)面の反強磁性磁区構造 
 

 本来、このPEEMSPECTORはBL25SUでの使用が原則であるが、硬X線のビームライン(BL39XU)に設置して実験を行うことも試みている。硬X線を使うと、図7に示したように深さ50 nm下のシグナルを検出することが可能である。硬X線を用いると、EXAFSを適用できる物質範囲が広がり、微小領域、微小サンプルの構造解析への応用を期待している。
 以上のように、放射光PEEMは、偏光とエネルギー可変性を利用できることが最大の特徴であり、他の電子顕微鏡では難しいか或いは、不可能な研究への応用が期待されている。多元素からなる物質の微細な相分離構造やそのような分離した各領域の電子・磁気構造の研究など、多様な分野への応用はすでに始まっており、硬X線との組み合わせにより、表面下に埋め込まれた界面の電子状態や構造の研究などへの発展も期待されている。



図7 硬X線を用いたPEEM測定。(a)コバルトの正方形のドットの光電子顕微鏡像。(b)および(c)微小領域((a)の白い四角形1および2)のAuのL3吸収端近傍のXANES。

3.SPELEEM
 ここでは、1.でのべたPEEMのうちのハイエンド装置SPELEEMについて述べる。SPring-8では、Elmitek社のLEEM Ⅲを導入した。

3-1.装置の構成
 光電子顕微鏡では、光をサンプルに対して斜めに入射する。蓄積リングから発生される放射光は水平方向に広がる特徴があるので、SPELEEMを通常の設置方法の通り1、水平に配置した場合、視野よりもはるかに大きな照射面積を持つことになり、実効的な光量を損する。この問題を解決する為に、SPring-8に導入されたSPELEEMでは、図8に示すように縦型配置に設計した。装置を水平方向から74°傾けて設計しており、光の縦横の比率を考慮すると、光量を有効利用できる配置になっている。また、本装置には差動排気方式の中空回転導入器(DPRF)を装備して、試料を自由に面内回転(方位角回転)できるようにした。第2節でも述べたように、放射光の偏光を利用した磁気2色性とPEEMを組み合わせた手法が、磁気情報を得るのに有力である。偏光方向と、磁区内の磁気モーメントの向きの相対関係が重要であるため、DPRFの導入は必須であった。SPELEEMの縦配置とDPRFの装着はともに本SPELEEMにおいて世界で初めて実現されたことである。



図8 縦型に設計されたSPELEEMの側面図。

 図9に装置の正面写真を示す。主な構成はマニピュレータ、分析室、60度磁気型ビームセパレーター、電子ビーム照射コラム、イメージコラム、エネルギーアナライザー、投影レンズコラム及び準備室である。試料マニピュレータは超高真空中においてXYZ3方向の精密駆動の他に、±3°のチルト調整も可能である。分析室には一台の質量分析器(Q-mass)が装備されており、残留ガスの検査に使われる。さらに、二台の電子ビーム加熱蒸着源(EFM)がゲートバルブを隔てて接続されている。EFMは単独で排気できるので、分析室を大気開放しなくても蒸着源の交換が可能である。試料温度は150 Kから1900 Kの間で可変である。エネルギーアナライザーの出射スリットはエネルギー分散面に挿入でき、エネルギー幅0.3 eVの光電子を選択できる。これは色収差を減少するだけではなく、内殻電子や価電子帯の光電子のうちの特定エネルギーの電子の選択も可能にしている。装置にはさらに、3つのアパチャー(電子ビーム入射アパチャー、制限視野アパチャー及びコントラストアパチャー)が装着されていて、必要に応じて選択できる。準備室にはスパッタイオン銃が装着されており、試料表面の清浄化に利用できる。 
 
1ELETTRAやSLSでも同様のSPELEEMが水平配置で導入されている。DIAMONDでは、SPring-8と同様の縦型配置で導入される予定である。



図9 SPELEEMの正面写真。

3-2.各種測定モード
 SPELEEMの基本機能にはイメージモード、回折モードと分散モードの三種類がある。全てのモードにおいて、フィールドレンズまでのレンズは同じように励磁される。モード間の切り替えはフィールドレンズ以後のレンズの励磁条件と適当なアパーチャー設定によって行う。
 LEEMとして使う場合、電子照射系から発生する入射電子はビームセパレーターによって曲げられて試料の直前において20 KeVのエネルギーから急に減速される。試料表面で反射された後、再び20 KeVまで加速される。加速された反射電子ビームはビームセパレーターで曲げられてイメージコラムに入射し、最後にアナライザーを通過してスクリーンに投影される。試料表面で反射された電子ビームは対物レンズの後方集光面にLEED(low Energy Electron Diffraction)パターンを形成する。コントラストアパーチャーでフィールドレンズの中心にある回折パターンの(00)反射ビームを選択すれば明視野像が得られ、他の回折ビームを選択すれば暗視野像が得られる。イメージモードと回折モードの切り替えは、中間レンズの励磁電流調整によって集光面と像面の位置を変化させることによって行う。制限視野アパチャーを使うことで、局所領域のLEEDパターンが得られる。制限視野アパチャーは3つのサイズ200μm、100μmと20μmがある。対物レンズの拡大率22.3倍を考慮すると、アパチャーを使って試料上の最小896 nmの局所領域を選択できる。MEM(Mirror Electron Microscope)は入射電子ビームを用いる場合の1つの特殊モードである。この場合試料の電位を電子銃の電位より低くすることにより、入射電子は試料に侵入せずに表面で反射される。MEMは回折と干渉コントラストを持たない。試料表面のポテンシャル、表面電場と磁場分布のイメージを取得することも出来る。
 XPEEMとして利用する場合、電子の代わりに光を試料に照射する。LEEMモードにおける転送レンズ、投影レンズおよびアナライザーの設定をそのまま維持できる。XPEEMの優れた特徴は電子エネルギーの自由選択性である。内殻から放出される光電子を選択して結像すれば、元素の実空間分布イメージが得られる。光電子スペクトルを得るために、先ず光電子のエネルギーを0.1〜0.2 eVの間隔で変化し、連続的に数十枚のXPEEM画像を取得する。取得した画像から、一般的に500 nm四方領域の光電子強度をエネルギーの関数でプロットしてスペクトルを得る。このスペクトル取得方法は時間がかかるが、全エネルギーに対応するすべての情報が得られる。一方、例えばLEEMあるいはPEEMイメージから選ばれる局所領域のスペクトルを得るには、短時間で測定できる分散モードを用いて直接スペクトルを得る方法も利用できる。分散モードで得たスペクトルのエネルギー分解能は0.5 eVである。
 イメージモードにおいて視野は2μmから100μmまで変化可能である。空間分解能について、LEEMモードの場合25 nmであり、PEEMモードの場合40 nmである。
 以上のように、SPELEEMでは実験の必要性に応じてXPEEM、LEEM、LEEDの各モードを選択できる他、補助的にMEM或いは局所領域の光電子回折(PED)と価電子角度分布(VPEAD)を用いて局所領域の原子構造およびバンド構造を調べることができる可能性を秘めている。

3-3.SPELEEMによる実験例
 SPELEEMのSPring-8における最初の立ち上げ実験は、軟X線ビームラインBL27SUで行った。BL27SUでは縦或いは横の直線偏光を利用可能である。

3-3-1.Nano-XANES
 SPELEEMと放射光を用いる実験の一例としてCo/Si(111)のnano-XANESを紹介する。Si(111)の表面にCoを成長させた系には、多彩な相が存在し応用面においても興味のある研究対象である。基板温度を室温に保ってCoを蒸着し、約600 ℃でアニールすると、表面に成長したCoは凝縮して、ファセットを伴うコバルトシリサイドが成長し始める。ファセットの存在はLEEDスポットの入射電子エネルギー変化によって確認できる。実験結果を図10に示す。XPEEMイメージにある島状部分は成長したコバルトシリサイドである。島状部分と周辺の平らな部分を選んでX線吸収スペクトル(XANES)を取得することにした。XANESを取得するには、CoのL吸収端を挟んだ入射X線エネルギー範囲をスキャンし、同時に取得したPEEMイメージの局所領域の強度を記録する。常に放射光強度を高く保つ為に、X線エネルギースキャン(分光器角度変化)を細かくしながら、アンジュレーターのギャップ値も自動的に最適値に調整する。分析したい領域を任意サイズで選ぶことができるので、ナノサイズのXANESを取得することが可能である。XANESの実験結果により、CoのL3吸収端には3つの成分があることを分かった。低い光エネルギー側から順次見られる3つの成分は、其々、Co2p3/2の電子からコバルトシリサイド結合のCo3d非結合状態、Si(sp3)-Co(3d)とSi(sp3)-Co(4s)の反結合状態に励起されることに対応する。図を見てわかるように、島と平らな2次元膜では電子状態が異なっていることがわかる。



図10 コバルトシリサイドのNano-XANESのXPEEMイメージ。

3-3-2.Nano-XPS
 Nano-XPSの例として、Si(111)清浄表面におけるInの成長と化学状態を調べた。図11にはXPEEM像、エネルギー分散像及び局所領域の光電子スペクトルを示す。実験では、先ずSi(111)の上にInの2次元膜を作る。更に蒸着をすることによって、3次元のIn島が成長する(S-Kモード成長)。図11に示すXPEEMイメージは500 eVの放射光で励起した二次電子を使っての結像である。視野50μmのPEEMイメージには明るいInの3D島が確認できる。



図11 (a)Si(111)清浄表面に成長したInの3次元島のXPEEMイメージ、(b)3次元島から取得したエネルギー分散イメージ、(c)エネルギー分散イメージから得られた光電子スペクトル。

 20μmサイズの制限視野アパチャーをInの3D島上に合わせて、分散モードに切り替えれば図11bに示すようなエネルギー分散イメージが得られる。エネルギー分散イメージにおいて、一つ一つのエネルギーに対応するピクセルの強度を積分してスペクトルを得る。分散モードで得られたnano-XPSからInの3d5/2と3d3/2ピークをはっきり確認することができた。さらに詳しい実験では、3次元島のまわりの2次元膜のIn3dピークはより高い結合エネルギー側にシフトすることが分かっており、また、Inの化学状態は膜厚によって変化することも明らかにした。以上のように、本装置を用いれば、ナノ〜マイクロサイズ以下の領域、或いはサンプルの光電子分光測定が可能である。

3-3-3.磁区ドメイン観察
 SPELEEMに期待される応用分野で有力なのが、PEEMSPECTORの場合と同様磁区ドメイン観察である。XPEEMと放射光の偏光を組み合わせた実験では、強磁性体、及び、反強磁性体の磁区観察ができる。XMLD(X-ray Magnetic Linear Dichroism)では、光の偏光ベクトルが磁化方位と垂直か或いは平行かに応じ、吸収に差が生じ、その現象を利用して反強磁性体の元素選択的磁区ドメイン観察が可能である。
 実験結果を図12に示す。吸収スペクトルには、矢印AとBで示されるような特徴的な分裂を示すNiのL2吸収端を確認できた。イメージは視野50μmにおける2つのピークに対応する光エネルギーで取得した画像を互いに割り算することでコントラストを強調したものである。明暗の領域は其々異なる反強磁区ドメインに相当する。NiOの結晶構造はネール温度以下では元々の立方構造から少し<111>軸方位に変形し菱面構造になる。このような結晶構造的な変化によって双晶(Twin)が生じ、4つのドメイン所謂Tドメインが出来る。1つのTドメインには更に3つの磁化容易軸[211]があり、3つのS(spin)ドメインを形成する。BL27SUの実験では、これまでにない詳しい精度で、これらのドメインの観察を行うことが可能になった。



図12 SPELEEMとXMLDを利用して得た、反強磁性体NiO(100)のX線吸収スペクトルとNiのL2吸収端から得た反強磁性磁区ドメインイメージ。

4.終わりに
 以上のように、ナノテクノロジー支援プロジェクトで導入された2基のPEEM装置は順調に稼動をはじめ、いくつかの成果もあがってきた。2007年までは、同プロジェクトの予算を活用しながら、装置をより使い勝手の良いものにしていき、ユーザー利用の支援を行っていく予定である。
 PEEMSPECTORに関しては、使い勝手の良い装置を目指しており、ユーザーの皆様にはサンプルと何を見たいかのアイデアをお持ちいただくだけで、研究遂行が可能な運用を図っていきたい。主に、円偏光軟X線ビームラインBL25SUでの利用を中心に考えており、磁性材料の研究に役立てていただければ幸いである。硬X線領域での利用に関しては、埋もれた界面など試料の奥深い領域の情報が得られる可能性が示されるようになって来た。現状では、常時支援可能な体制には至っていないが、SPring-8の特長を生かした顕微鏡利用になっていく可能性がある手法であり、できるだけ前向きな対応をしていきたいと考えている。
 SPELEEMに関しては、ハイエンド装置であるため、JASRIでもさまざまなR&Dを行いながらユーザー利用を行っていきたい。どのような研究が可能であるかは、ケースバイケースであることが予想され、ぜひ担当者との打ち合わせをお願いしたい。R&Dのひとつとして、大阪電通大学の越川孝範教授グループとの共同作業で、空間分解能をあげる試みが始まっている。何とか、空間分解能10nm以下程度を実現したい。高分解能を実現するためには現状のBL27SUの末端に装置を置いた利用ではスポットサイズの関係上、光量が足りない。近々集光鏡を導入し、SPELEEMとあわせて現在理研が立ち上げているBL17SUに装置を持ち込み、性能テストを開始する予定である。又、最近世界の第3世代高輝度光源施設では、パルス的な外場を加えたあとの時間応答観察などの試みも始まっている。SPring-8では、その光源性能において他の蓄積リングよりも大きな可能性を秘めているので、このような時間分解顕微鏡観察の試みにも挑戦していく予定である。
 PEEMを用いた研究は、SPring-8内でも比較的新しい試みであり、ナノテク支援の精神にも合致したプロジェクトであると思われるので、ユーザーの皆様方の積極的なプロポーザルをお願いしたい。
 最後に、JASRI制御グループの松下智裕氏の協力に感謝の意を表したい。ここに報告した二色性を利用した高品位の磁気イメージングは同氏が開発した偏光切り替えに同期したPEEM画像取得のためのソフトウエアによって実現したものである。
 本プロジェクトにおける装置の立ち上げ作業は執筆者を含む、JASRI分光物性Ⅰ、Ⅱグループのメンバーのほか、大阪電通大越川グループ、東大工学部尾嶋グループ、PF小野グループ、HiSOR小嗣氏、物性研SORグループ、アリゾナ州立大E.Bauer教授など、多くの方々に協力していただいており、感謝を申し上げる。

小林 啓介 KOBAYASHI  Keisuke
(財)高輝度光科学研究センター 利用研究促進部門Ⅰ
(兼)ナノテクノロジー総合支援プロジェクト推進室
〒679-5198 兵庫県佐用郡三日月町光都1-1-1
TEL:0791-58-0971 FAX:0791-58-0830
e-mail:koba_kei@spring8.or.jp

郭 方准 GUO  Fang Zhun
(財)高輝度光科学研究センター 利用研究促進部門Ⅰ
(兼)ナノテクノロジー総合支援プロジェクト推進室
〒679-5198 兵庫県佐用郡三日月町光都1-1-1
TEL:0791-58-0919 FAX:0791-58-0830
e-mail:fz_guo@spring8.or.jp

脇田 高徳 WAKITA  Takanori
(財)高輝度光科学研究センター 利用研究促進部門Ⅰ
(兼)ナノテクノロジー総合支援プロジェクト推進室
〒679-5198 兵庫県佐用郡三日月町光都1-1-1
TEL:0791-58-0919 FAX:0791-58-0830
e-mail:wakita@spring8.or.jp

木下 豊彦  KINOSHITA  Toyohiko
(財)高輝度光科学研究センター 利用研究促進部門Ⅰ
客員主席研究員
〒679-5198 兵庫県佐用郡三日月町光都1-1-1
TEL:0791-58-0803(Pri53129) FAX:0791-58-0830
e-mail:toyohiko@spring8.or.jp



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