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Volume 09, No.5 Pages 315 - 332

1. SPring-8の現状/PRESENT STATUS OF SPring-8

第14回(2004B)利用研究課題の採択について
The Proposals Accepted for Beamtimes in the 14th Public Use Term 2004B

放射光利用研究促進機構 (財)高輝度光科学研究センター 利用業務部 rganization for the Promotion of Synchrotron Radiation Research / User Administration Division, JASRI

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 財団法人高輝度光科学研究センターでは、利用研究課題選定委員会による利用研究課題選定の結果を受け、以下のように第14回共同利用期間における利用研究課題を採択した。


1.募集及び選定・採択日程

〔募集案内・募集締切〕

 4月28日  利用研究課題の公募について

 SPring-8ホームページに掲示

 利用者情報(Vol.9,No.3,2004.5)に掲載

(一般課題)

 6月7日  一般課題募集締切り(郵送の場合、当日消印有効)(6月9日10時必着)

(長期利用課題)

 5月24日  長期利用課題募集締切り

 5月26日~6月2日  長期利用分科会による書類審査

 6月10日  長期利用分科会による面接審査

〔一般課題及び長期利用課題について課題選定及び採択・通知〕

 7月14、15日  分科会による課題審査

 7月15日  第34回利用研究課題選定委員会による課題選定

 7月30日  機構として採択し、応募者に結果を通知


2.公募状況

 今回の公募では、一般利用研究課題の応募として655件、重点研究課題の応募として231件、これらを合わせた総応募件数として886件の課題応募があり、前々回に次ぐ応募数であった。採択件数についても、一般利用研究課題の採択として390件、重点研究課題の採択として172件、これらを合わせた総採択件数として562件となった。第1回から今回の公募までの、分野別及び所属機関別の応募件数及び採択件数を表1に示す。また、今期で3回目となる重点研究課題の内、重点領域指定型については表2に示す通り3領域で課題を公募した。表2では、一般利用研究課題についても内訳を示している。表1のデータの内、応募・採択の推移および研究分野別・所属機関別分類の推移をそれぞれグラフ化して、図1および図2に示す。図1において、採択件数は第12回(2003B)の621件をピークにして、第13回(2004A)の595件及び第14回(2004B)の562件と30件前後づつ漸減してきている。第12回(2003B)から第13回(2004A)は配分シフト枠が5%程度増えているにもかかわらず採択件数が26件減少しているのは、採択課題の平均シフトが増加していることと課題選定の枠外である重点パワーユーザー課題のシフト数が増えた事が主な理由と思われる。第13回(2004A)から第14回(2004B)は重点タンパク500課題の応募時課題数が減少(但し、これは使用する予定のビームラインがこれまでの3本から2本となったことによるもので重点タンパク500課題用全シフト枠に変更はなく、重点タンパク500課題の実施の内容は従来通りである)したことと課題選定の枠外である重点戦略課題が新規に開始されたことが主な理由と思われる。

 ここ数年、1年の前半の共同利用期間(A期)では応募が少なく、反対に後半(B期)では大幅に増加する傾向が続いていた。今回も同様の傾向となっている。連続する2回の公募状況を足し合わせ1年単位でまとめたのが次のリストである。応募課題数及び採択課題数は、これまで年とともに増加してきたが本年は昨年とほぼ同じとなった。今後新しい共用ビームラインが増えて一般課題のシフト枠が増えることがなければ、応募課題数及び採択課題数が増え続けることは無くむしろ一定になる傾向であろうと思われる。


表1 利用研究課題公募内訳


                   応募課題数 採択課題数

第13回+第14回(平成16年2月~17年2月)  1,658      1,157

第11回+第12回(平成15年2月~16年2月)  1,671      1,184

第9回+第10回(平成14年2月~15年2月)   1,394       992

第7回+第8回(平成13年2月~14年2月)   1,121       866

第5回+第6回(平成12年2月~13年1月)   1,006       706



表2 第14回公募の一般利用研究課題と重点研究課題の内訳






図1 各公募時における応募課題数と採択課題数





図2 採択課題の研究分野別・所属機関別分類



3.利用期間

 年間の前期と後期の共同利用の利用時間に長短のアンバランスが通常以上に大きくなることを緩和するため、これまでと同様に、今期も第6サイクルから翌年の第1サイクルまで(平成16年9月から平成17年2月まで)とし、この間の放射光利用時間は234シフト(1シフトは8時間)となっている。このうち共同利用に供されるビームタイムは共用ビームライン1本あたり186シフトとなる。


4.利用対象ビームライン及びシフト数

 今回の募集で対象としたビームラインは前回同様総計34本で、その内訳は、共用ビームライン25本(R&Dビームライン3本を含む)とその他のビームライン9本(原研ビームライン4本、理研ビームライン4本、及び物質・材料研究機構ビームライン1本)であった。

 今回の採択でも前回同様、産業利用に留保シフトと重点トライアルユース課題を設けたこと、及び重点ナノテクノロジー総合支援と重点タンパク500に対応する応募課題を含めたことなどから、一般共同利用及び重点研究領域として採択された全課題の配分シフト数の合計は表3に示すように4,196シフトとなった。ただし、重点タンパク500関係の課題はシフト枠が186シフトと確定しているが、個別の課題への割振調整は今後行われるので前記の配分シフト数の合計には含めていない。



表3 ビームラインごとの採択状況




5.採択結果

 今回の採択結果は、一般利用研究課題と重点研究課題を合わせた総件数では応募886件に対し採択562件であり、採択された課題(重点タンパク500課題(シフト枠は186シフト)を除く)のシフト数では要求5,237シフトに対し配分4,196シフト(平均のシフト充足率80%)であった。また、採択された課題の平均シフト数は9.1であり前回の9.5よりやや少ない。

 今回の共同利用の対象としたビームライン毎の応募・採択課題数、課題採択率、採択された課題の要求シフト数・配分シフト数、シフト充足率、平均シフト数を表3に示す。採択課題数の多かったビームラインは、BL02B2(粉末結晶構造解析)の35件(1課題あたり4.5シフト)、及びBL01B1(XAFS)の29件(1課題あた6.4シフト)であった。これらのビームラインでは、当然ながら1課題あたりの配分シフト数は平均シフト数9.1より少ない。今回は、前回より応募課題数が多く重点タンパク500課題を含まない平均採択率が59%と前回(72%)より低く前々回(60%)並みとなっているが、その中で応募課題数の多いビームラインにおいて採択率が低いのはBL25SU(軟X線固体分光)の40%とBL27SU(軟X線光化学)の42%であった。平均のシフト充足率は、前述のように今回の審査では前回よりやや悪くなっているが、その中で応募課題数が多くシフト充足率の低かったビームラインは、BL10XU(高圧構造物性)の56%、BL45XU(理研・構造生物学Ⅰ)の58%、及びBL02B2(粉末結晶構造解析)の60%であった。

 重点研究課題の内「重点ナノテクノロジー支援」は、今回、応募課題数99件に対して採択課題数が55件で採択率56%となり、一般利用研究課題の成果非専有課題における平均採択率54%と同程度となった。また「重点タンパク500」は、今回採択された課題を重点タンパク500シフト枠(186シフト)内で個別に調整して実施1ヶ月前までにシフト配分を確定する方式で実施する。「重点トライアルユース」は、応募課題数30件に対して採択課題数が15件で採択率50%となった。

 今回の応募課題数と採択課題数を、研究分野と実験責任者の所属機関別にまとめたものを表4に示す。なお、重点タンパク500課題は全応募課題を実施シフト枠(今回は186シフト)の範囲内で調整して実施する方式を採用しているので、採択率等を示すときは基本的に除外して示す。研究分野別の採択課題数は件数の多い順に、散乱・回折182件、生命科学101件(重点タンパク500課題を除いた件数)、分光70件、XAFS 46件、産業利用44件、実験技術17件であった。また、採択課題における実験責任者の所属機関別では、重点タンパク500も含めた全体で見れば国立大学が全体の半数以上を占めておりこれまでと大きくは変わっていない。

 長期利用(通常課題の実施有効期限が6ヶ月(一部分科会では1年課題もある)であるのに対し、3年間にわたって計画的にSPring-8を利用することによって顕著な成果を期待できる利用)では、表2に示すように今回の公募で3件の応募があり、今回は採択なしとなった。なお、審査は外部の専門家を含む長期利用分科会での書類審査、及び面接審査の2段階で行われ、面接審査は1件のみ行った。

 成果専有利用としては、表2に示すように民間から9件、国立研究機関等から3件、国立大学法人から1件、合計で13件の応募があった。これらの課題について公共性・倫理性の審査と技術的実施可能性及び実験の安全性の審査が行われ全件採択された。



表4 2004B応募課題数と採択課題数:研究分野と所属機関分類


(生命科学の括弧内は、重点タンパク500の応募課題(102件)を含む課題数)




6.民間企業の利用と産業利用

 表4に示すように今回の公募で、民間からは各研究分野に合わせて78件の応募があり、58件が採択された。前回が応募57件で採択52件であったので、今回は応募数、採択数共に増加した。産業利用分野の課題は、今回もBL19B2(産業利用)に加えて、BL01B1(XAFS)、BL13XU(表面界面構造解析)、BL46XU(R&D(2))、BL47XU(R&D(1))等合計9本のビームラインで産業利用分野課題が採択された。これにより、産業利用分野の課題は、各研究機関から合わせて68件の応募に対して44件の採択で、採択率が65%となっている。最後に、今回の民間からもしくは産業利用分野いずれかへの応募総数は105件で、採択総数は67件(採択率64%)であった。前回の民間または産業利用の応募は81件で採択が67件(採択率83%)であったので、今回は応募件数が増加し選定件数が前回並みで選定率が前回より低下したが、重点タンパク500課題を含まない平均採択率(59%)よりは良い採択率となっている。


7.課題選定審査における留意点

(1)利用研究課題選定委員会では、従来より、1課題に十分な実験時間を確保するために、選定された課題の要求シフトに対する配分シフトの比率(シフト充足率)を確保することにつとめた。今回、重点タンパク500課題を含まない平均のシフト充足率は80%であり、前回の87%よりやや悪くなっている。また、前回同様、平和目的の確保、挑戦的な課題の確保を念頭においた審査を行った。

(2)2002B期からBL02B1(単結晶構造解析)における1年課題の募集をしている。これは、シフト数の要求の少ない課題でも2期に分けて実験を行うことに重要な意味があるためで、今回は散乱・回折分科と分光分科で合わせて4本のビームラインで応募を受け付けた。応募21件のうち17件(222シフト)が選定された。今後も4本のビームラインでB期のみ1年課題を受け付ける方式で継続する。

(3)生命科学分野の留保ビームタイムは、2本のビームラインを合わせて21シフト確保した。産業利用分野の留保ビームタイムは、BL19B2(産業利用)で87シフト確保した。


8.採択課題

 表5に今回選定された利用研究課題の一覧を示す。表5-1は一般利用研究課題の分であり、表5-2から表5-4は重点研究課題の分である。


 詳しくは、PDFファイルをご参照下さい。



Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794