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Volume 18, No.2 Pages 137 - 138

5. SPring-8通信/SPring-8 COMMUNICATIONS

SPring-8利用研究課題審査委員会を終えて 分科会主査報告3 −XAFS・蛍光分析分科会−
Proposal Review Committee (PRC) Report by Subcommittee Chair - XAFS and Fluorescence Analysis –

村松 康司 MURAMATSU Yasuji

SPring-8利用研究課題審査委員会 XAFS・蛍光分析分科会主査/兵庫県立大学大学院 工学研究科 Graduate School of Engineering, University of Hyogo

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1.はじめに
 平成23〜24年度(2011B〜2013A期)のXAFS・蛍光分析分科会主査を拝命しました。平成23年度には東日本大震災による被災量子ビーム施設ユーザー支援課題審査が入り、若干採択率の低い審査結果になりましたが、限られた枠の中でできるだけ多くのユーザーにビームタイムを割り当てるように努め、なんとか無事に任務を終えることができました。普段、私は放射光ユーザーとして課題申請書を作成しているのですが(主にAdvanced Light Source (ALS)。最近、約20年ぶりにPhoton Factory。)、今回審査をするという貴重な体験をしたので、この逆の立場からみた課題申請について雑感を述べたいと思います。戦にはまず相手を知ることが必要なので、読者の皆様にはどのように審査がなされるのかを知っていただき、課題申請の際の一助にしていただければ幸いです。



2.XAFS・蛍光分析分科会
 XAFS・蛍光分析分科会では、宇留賀朋哉先生(JASRI)と吉田朋子先生(名古屋大学)の分科会委員に私を加えた計3名で課題審査を行いました。当分科会が担当する責任ビームラインは、XAFSと蛍光X線・微量分析および軟X線分光を担うBL01B1、BL27SU、BL37XU、BL39XUです。サイクルごとの全課題申請数は70〜80件であり、XAFSと蛍光X線・微量分析に二分すると両者の申請数の比は概ね7:2で圧倒的にXAFSが多いのが現状です。申請書の内容を読む限り、XAFSの研究対象は基礎的なものから工業材料への応用まで非常に多岐にわたり、XAFSが物質解析・材料開発の一般手法になっていることが認識できます。蛍光X線・微量分析は環境関連試料の微量金属マッピングが大半を占めます。
 この2年間に申請された研究課題の採択率は、サイクルやビームラインで多少の変動はありますが、平均すると約7〜8割でした。多くの研究課題はBL01B1に集中しますが、2013Aからはいくつかの研究課題がBL37XUで対応できる状況になったため、比較的ビームタイム配分が楽になりました。なお、軟X線ビームラインBL27SUの申請数は確実に増大傾向にあります。BL27SUでは先端的な軟X線分光計測系が整備されていることとあいまって、エネルギー材料を中心とする軽元素材料の軟X線分析のニーズが高まっているものと思われます。



3.課題審査
 課題審査の手順は極めてシンプルです。ビームラインごとに決められた当該サイクルのシフト枠を越えない範囲で、総合評価点の高い研究課題から順に採択し、シフト数を配分します。なお、複数のビームラインを希望する課題については、関連ビームラインの分科会と調整します。各研究課題に割り振るシフト数は、要求シフト数を元にしてビームライン担当者が技術的判断を加えた推奨したシフト数を使います。このため、配分シフトが要求シフト数を下回る場合もありますが、上回る場合も多々あります。審査において難しいのは、シフト枠のボーダーライン上にある研究課題の判断です。この場合、レフェリーのコメントと評価点分布をみて適切に採点されていることを確認した後、我々分科会委員が申請書の内容を詳細に検討し判断しました。
 課題審査は、JASRI安全管理室による安全審査とビームライン担当者による技術審査をパスすることが前提になり、そのうえで上記のようにレフェリーがつける評価点を軸にして審査を進めます。ひとつの研究課題に対して4名のレフェリーが採点し、4名による総合評価点の平均点で順番づけられます。したがって、課題申請はいかにレフェリーに高い得点をつけてもらうかで決まります。私も過去にSPring-8の研究課題レフェリーを行い採点に苦しんだ経験がありますが、レフェリーといえども個々の研究テーマに対して熟知していない場合が多々あります。このような状況でもレフェリーに高く評価してもらうには、やはり、研究の大きな意義・目的を明確にして、実験の下準備をしっかり行い、実験後の成果化をきちんと見据えた書き方が肝要と思います。なお、技術審査では、ビームライン担当者が驚くほど深く検討しています。申請書だけでは読みとれないところは、ビームライン担当者が申請者の関連論文まで読んで判断しています(すばらしい!)。したがって、新規な実験を申請する場合には必ず事前にビームライン担当者に相談することをお勧めします。
 私は1996年からALSの2本のビームラインを常用していますが、SPring-8と同様に年々ビームラインが混んできています。これは放射光がグローバルに多様な分野で積極利用されてきていることを反映し、放射光科学として喜ばしい状況ですが、一方で採択された研究課題が使用するビームタイムの貴重性はますます高まっていることを意味します。私の研究室では、学生に対して「酒の一滴、血の一滴」ではなく「ビームタイムの1秒、血の一滴」、あるいは「放射光研究者にジェットラグ無し」と言ってビームタイムをムダ無く大切に使うよう自戒を込めて指導していますが、貴重なビームタイムが最大限に有効利用されて今後もSPring-8から続々と大きな研究成果が創出されることを期待します。



村松 康司 MURAMATSU Yasuji
兵庫県立大学大学院 工学研究科
〒671-2201 兵庫県姫路市書写2167
TEL:079-267-4929
e-mail:murama@eng.u-hyogo.ac.jp



Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794