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Volume 17, No.2 Pages 128 - 135

4. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT

第13回APS-ESRF-SPring-8三極ミーティング報告
The 13th APS-ESRF-SPring-8 Three-Way Meeting

鈴木 昌世 SUZUKI Masayo

(公財)高輝度光科学研究センター 研究調整部 Research Coordination Division, JASRI

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1.はじめに
 米国、欧州、そして日本における第三世代大型放射光施設として、APS、ESRF、SPring-8が協力協定を締結し(1993年)、初回の三極ミーティングがESRFで開催されたのは1994年1月であった。以後、三施設持ち回りで開催して回を重ねること13回、“振り出し”のESRFに戻ること5回目である。この間、加速器、光源、光学、制御・情報は主要なテーマであり続けている。また、各施設とも本格稼働期に突入する頃から、利用研究も主要なテーマとなった。産業利用、国際協力も俎上に上る(今回もOptics Workshopは三極ミーティングのサテライト・ワークショップとして開催された([http://user.spring8.or.jp/sp8info/?p=23053]を参照)。

 最近では、各施設の将来計画・高度化計画が重要なテーマとなっている。特に、SACLAを擁するSPring-8の最新情報は、他施設が常に刮目して待つところである。前回SPring-8で開催した際に招待したPETRA-IIIは、今回も合流した。第13回三極ミーティングは、以下に詳細を報告するように、三極四施設が、以前にも増して、先端性・発展性・戦略性を披瀝するミーティングとなった。



図1 アブストラクト集(表紙)
ESRF building photo: Credit: P. Ginter/ESRF


2.Plenary Session -DG Reports and facility upgrades and future plans
 初日の全体会議は、当日ドイツから移動してくるPETRA-III各位に配慮して、午後に設定された。全体会議の前半は施設報告(Director Report)に、その後半は将来計画(Facility Upgrades and Future Plans)に当てられた。冒頭、ミーティングを開催する施設の長としてFrancesco Sette ESRF所長がOpening Addressを、そして座長を務める前ESRF所長のBill Stirling教授がWelcome Addressを行った後、APS、ESRF、PETRA-III、SPring-8の順序に施設報告が行われた(PETRA-III関係者の到着が遅れた為、プログラムを変更してESRFが先に発表となった)。

 APS施設報告はBrian Stephenson所長が行った。昨秋に就任したばかりの同所長は「自らも勉強中」と前置きを述べた後、APSの標語“Real Materials under Real Conditions in Real Time”を再掲しつつ、APSの近況を説明した。最近、加速器稼働率が99.6%に向上していること、共用ビームライン群においてもCollaborative Access Team(CAT)ビームライン群においても新たなビームライン建設が進行しており、共用ビームライン数(33本)・CATビームライン数(31本)とがほぼ拮抗するに至ったこと、全利用(5080件)の内26%が遠隔実験利用(1351件)であること等が紹介された。
 ESRF施設報告はSette所長が行った。同所長は、まず、三極ミーティングにも永らく貢献し昨年不慮の事故で他界したPascal Elleaume氏への哀悼の意を表した。ESRF加速器の稼働率は98.9%、また全利用実験に対する時分割実験(time resolved experiment)の割合は91%に達するという。直近の利用期においては2035課題中、778課題が採択されたこと、また2011年の発表論文総数は1691件、内high-impactな論文は199件を数えたとの報告がなされた。

 PETRA-III施設報告は、Helmut Dosch所長に代わり、Edgar Weckert部門長(Director)が行った。Helmholtz協会におけるDESYの位置づけから、DESYにおけるPETRA-III、DORIS-III、FLASH、欧州XFELに至るまで丁寧な説明がなされた。PETRA-IIIは順調に稼働しており2013年春から新たにビームライン10本が稼働する予定であること、長年活躍してきたDORIS-IIIも2012年10月をもってシャットダウンすること、VUV領域のXFELとして活躍を続けているFLASHでは新たなシーディング手法で稼働するFLASH-IIプロジェクトが進行していること、欧州XFELに関しては、目下、実験ホール建設が進行中で、2015年に実験開始を目指していること等が報告された。

 SPring-8施設報告は石川哲也理研播磨研究所長が行った。概要事項として、トップアップ運転の蓄積電流変動率が0.03%であること、2010年実績として5096時間稼働しダウンタイムは0.5%以下であったこと、延べ14,496人のユーザーが利用実験を実施したこと、申請された1941課題の内から1429課題を採択したこと等が紹介された。続いて先回の三極ミーティング以降、革新型蓄電池先端科学ビームライン等、SPring-8において新たに建設を開始したビームライン、SPring-8・SACLAを統合する形で刷新を図った中央制御室、SACLAおよびXFEL-SPring-8相互利用実験施設、グリーン・ナノテク研究支援のための放射光分析基盤の整備の説明もなされた。さらには東日本大震災の影響、アジア・オセアニア諸国との連携、2011年のサイエンス誌10大成果中2件(はやぶさの持ち帰った微粒子に関する研究、植物の光合成に関する研究)にSPring-8が大きく貢献したこと、今後はSACLAと「京」コンピュータの連携が求められること等が紹介された。SPring-8の将来計画も紹介され、SPring-8サイトを高エネルギー光子科学のCOEとするというグランドデザインの下、鋭意立案中のSPring-8-II計画が紹介された。

 コーヒーブレイクの後、後半のセッションとなり、PETRA-III、ESRF、APS、SACLAに関して将来計画・構想が示された。

 PETRA-IIIの将来計画はWeckert部門長から紹介された。利用者にナノビームを提供すべく高輝度光源として再生したPETRA-IIIであるが、まず本年(2012年)は蓄積電流100 mAにてトップ・アップモード稼働し、ユーザータイム5000時間を計画しているとのことであった。また、順調な利用状況を踏まえ、2013年3月には東西実験ホールの拡張工事を始め、2013年11月には現PETRA-IIIを一時期シャットダウンして完成を図る計画との報告であった。

 ESRFの将来計画はHarald Reichert部門長(Director of Research)から紹介された。極限環境下にある物質、或いは生命系・ソフトマター系において特定の機能を発現する物質に関して、イメージング、ポンプ・プローブ実験等を通じて、その構造、動的挙動をナノレベルで解明する為に、2009年〜2015年の期間、Upgrade Plan Phase Iを実行中との報告がなされた。その目的達成の為にはX線ビームの輝度、および安定性を向上させる必要があり、ビームポジションモニター、電子軌道フィードバックシステム等のR&Dが紹介された。しかし、現在進行形の科学の進捗を阻害することなく、また工事による自然破壊を回避しつつ、新たなビームライン群を既存の施設に統合することには多くの困難が伴うと評した。

 APSの将来計画(APS-II)は、再度、Stephenson所長から紹介された。APSは「階層構造を有する自然界の解明」を掲げ、科学諮問委員会(Science Advisory Committee)よりの「研究対象をビームライン毎に特定し、成果創出領域に序列を定めるべき」との提言を受けて、挿入光源、フロント・エンド、ビームライン等の基幹部分について概念設計を進めており、Preliminary Design(2012年)、Final Design(2013年)、APS-II建設開始(2014年)、建設完了(2019年)とのスケジュールが、希望的と断りつつも、課題(電子ビームの安定化と大電流化、超電導挿入光源等)と取り組みとを含めて示された。

 SACLAに関する紹介は田中均部門長からなされた。ナノスケールの結晶、フェムト秒領域での相転移等の解明を目指して、より高いピーク輝度、より狭いパルス幅、より高次のコヒーレンスの重要性が強調された後、SACLAを支える日本発の基幹技術(Low emittance injector, C-band system, short-period in-vacuum undulator)が紹介された。SACLAのコミッショニングは極めて順調に進んだが、それは高い電子ビーム再現性、制御系の高い信頼性、実電子ビームを用いた電磁石列・挿入光源のアライメントに関する高い精度等が重要な要件であったこと等が指摘された。その成果としてSACLAにおいて達成されたX線自由電子レーザーの主要性能(laser pulse energy=sub mJ, fluctuation=10%〜20%rms, lasing energy=0.63〜2.8 Å, fully-coherent等)が紹介された。



3.Parallel Session A -Accelerator R&D
 このセッションでは、加速器に関する技術開発や性能改善の状況が、各施設から合計7件報告された。

 SPring-8 からは、垂直キッカーを使った短パルス放射光生成試験の状況(満田)と放射光の高輝度化を目指した電磁石ラティス変更(早乙女)の報告があった。前者は、蓄積ビームにパルス的なキックを与え、シンクロトロン振動(バンチ内部での電子のエネルギー振動)と垂直クロマティシティ(ベータトロン振動数のエネルギー依存性)の効果でビームが傾くことを利用し、発生する放射光をスリットで切り出そうというものである。キック後50ターン程度で傾きは最大となり、加速器診断ラインを使ったビーム試験の結果からは、暫定的ではあるが FWHM数ps程度のX線切り出しが出来るものと期待されている。また後者は、Dゾーン長直線部(BL43LXU)にシリーズで設置するギャップの狭い真空封止型アンジュレーターのための電磁石ラティスの改造と、電子ビームのエミッタンス低減化試験についての報告である。ビームの安定性を損なわずに、いかに輝度向上のための加速器の改造を行うか、という点を中心に報告がなされた。

 APSからは、短パルス放射光生成のためのクラブ空洞と超伝導アンジュレーターの開発状況が報告された。いずれもアップグレード計画を見据えての光源開発である。クラブ空洞は、通過するバンチの前後で異なる向きの横方向キックを与えるものである。これを2カ所に設置してバンチをその区間で傾け、FWHM 2 ps程度の短パルス光を得る計画である。RF位相などに課せられた厳しい条件をクリアして2014年にはビーム試験を実施したいとのことであった。垂直キッカーを使ったスキームと比較して利用ユーザーが限られる難点はあるが、高フラックスと高繰り返しという点で優位性がある。垂直キッカーを使ったスキームにおいてもこの点の改善を検討していく必要がある。NbTi線材を用いた超伝導アンジュレーターは、高い磁場を利用して放射光強度を1桁程度以上増強させるために開発しているが、要求精度の高い磁場の実現と熱負荷が課題である。

 ESRFからは、RF加速空洞のアップグレードに関して、既存のクライストロンをSolid State RF Amplifier(SSA)に交換する計画と、高次モードを減衰させるHOM Damped Cavityの開発について報告があった。前者はSOLEILと同タイプのLD-MOSFETをベースとした独自開発のアンプを使っており、現在、ブースター用に設置が進められている。さらに導波管への直接接続を可能とする次世代型のコンパクトなSSAの開発も平行して進めている。また後者は現在開発中であるが、3種類の試作機製作を3社が進めており、2012年夏以降、順次ビームを用いた試験が実施される。これによってビーム不安定性のしきい値を上げることができ、蓄積ビームを300 mAまで増強するとのことである。

 PETRA III からは2件の報告があった。1件は放射線による機器の損傷についてであり、アンジュレーターに付随する各種エンコーダーやビデオカメラ、PLCが壊れたそうである。アンジュレーター磁石列の表面が蓄積リング外側部分でサビ状に変質しており、放射線モニターなどを使って調べたところ、上流の偏向電磁石からの放射光が原因であることがわかった。電子ビームの精密ステアリングにより改善されたが、2年間での積算放射線量は150 kGyに達しているところもあり、被爆していない箇所との差が10倍になっていた。また2件目は、EXAFS の実験をする際の時間的なオーバーヘッドが多すぎて無駄である、とのユーザーの声に応えて、モノクロメータのブラッグ角と挿入光源ギャップを、連続的に変化させるという取り組みについてである。例えば20 eV/sのスキャン速度で±1 eV程度の安定度が得られていた。



4.Parallel Session B -Data management and online data analysis

発表のあったのは
 1.Data Management: PaN-data(and CRISP)initiative(ESRF)
 2.New data-intensive experiments and scientific opportunities for X-ray micro-tomography(APS)
 3.High data rate initiative in the Helmholtz association(HDRI)(PETRA-III)
 4.Next generation data exploration: Intelligence in data analysis, visualization and mining(APS)
 5.Data analysis workbench(DAWB)(ESRF)
 6.Experiment workflow pipelines at APS: message queuing and HDF5(APS)
 7.ICAT metadata catalogue from CRISP project(ESRF)
の7件であった。おおまかに分類すると、このうち1、7はヨーロッパで進行中の実験データー共有化に関するもの。2、3、6は研究所内でのデーター管理、4、5はデーター解析システムについてである。

 1、7の実験データーの共有化という話題は、今までの「実験データーは研究者の所有物である」という研究者と実験データーとの関係を根底からくつがえす計画なので詳しく紹介したい。これは一言でいうと、「研究者は実験で得られた成果のみならず、取得した生データーも公開しなければならない」という思想を実現するプロジェクトである。「それって自分が(血と汗と涙で)取ったデーターを使って赤の他人が論文を書けるということ?」と会議後の夕食で話題になったが、まさにそのとおりである。

 計画の名前はPaN-data(Photon and Neutron data initiative)。名前からわかるとおりヨーロッパの放射光と中性子の施設が参加している。まず2007年に4施設から始まり、現在は英、仏、独、伊、スイス、西の11施設で2014年内の実現にむけて進行中である。

 公的予算による研究ならば、そこで得られたものは生データー、結果を含め全て公的な財産であり、オープンにしなければならないという思想は1997年の国連National Research Councilや2007年のOECDの「公的予算による研究データーへのアクセスについての基本的な原則」の勧告に基づくものであり、それによれば公的予算で研究した研究者は一定の期間(PaN-dataでは3年と想定されている)は独占的にデーターを使用できるがその後はデーターを公にしなければならない。

 一見成程と思えそうなアイデアであるが、この前には様々なハードルが立ち塞がっていることは容易に思いつく。現代の実験データーはほぼ100%デジタル化されているとはいえ、データーファイルを公開ファイルサーバーにポンと置けばよいというものではない。データー公開の心理的バリアは克服するにせよ不統一なファイル形式、ばらばらなメディア、いいかげんなデーター管理、検索の困難さ、膨大なデーターサイズなど共有にむけて解決しなければならない問題は山積している。PaN-dataではそれら解決すべき問題を分類し解決する努力を続けている。

 まず多施設でのデーターについてのポリシーを統一する。多施設でのユーザー登録を統一する。データー形式と注釈データーを統一する。透明かつセキュアなデーターへのアクセスを確立する。持続可能で統一されたデーターカタログを作成、維持する。長期にわたりデーターを保存する。データー整理と取得のツールを提供する。オープンソースのデーター解析ソフトウェアを提供する。これらがPaN-dataのゴールとして設定された。

 データーに付随するメタデーター(実験の条件など)は生データーに埋め込まれる他、研究のライフサイクル(プロポーザル、承認、スケジュール、実験、データー整理、データー解析、出版)にわたり統一されたリポジトリに保存される。このリポジトリはICAT(http://www.icatproject.org/前述7の発表)で保存、管理される。また解析コードも共有される。共通データーフォーマットはHDF5/NeXusである。NeXusはX線と中性子の実験データーの保存形式でHDF5は階層的データーの保存形式である。例えていうとHDF5はエクセルファイル。NeXusはエクセル上の帳票フォーマットといったところか。 PaN-dataは2014年の稼動に向けて進行中である。

 感想として、PaN-dataにはかなりの労力が注がれているのはわかったが、果してその努力に見合った結果をもたらすのだろうか、3年以上前に他人の取ったデーターを再解析する研究者が現われるだろうかという疑問が湧いてくる。別分野ではあるが、高エネルギー物理実験ではデーターの公開が始まっていて、再解析をする研究者はいるようであるので、全く無駄にはならないとは思われるが放射光の分野ではどうであろう。読者の皆さんも御自分の研究分野で実験データー共有が有用かどうかを考えてみてはいかがだろう。



5.Parallel Session C -Automation and control for nanobeams
“Automation and control for nanobeams”では、ナノビームを利用するための技術開発について議論された。

 PETRA IIIのFalkenbergは、ビームライン P06においてマイクロビームとナノビームの2つのエンドステーションを用意し、それらを使い分けて蛍光X線、タイコグラフィー等を利用した2次元・3次元イメージングを行っていることを報告した。ナノメーターオーダーで光学機器や試料位置の調整するための技術開発については、APSのPreissnerとESRFのVillarらの発表があった。いずれもヘキサポッドタイプのステージであり、そのデザインおよび精密制御についての報告がなされた。PETRA IIIのMeentsは、ビームラインP11に導入されたナノビーム光学系を紹介するとともに、in-vacuumエアベアリングゴニオの開発状況についても報告した。一方、SPring-8の大橋は、BL37XUとBL39XUの分光器において、新たに開発した液体窒素配管や結晶ステージの温度制御方法の導入により、ナノビームの安定性を劇的に改善させたことを報告した。

 セッション後半では自動化についての講演があり、いち早く自動化が進んだタンパク質結晶解析(MX)ビームラインについて、SPring-8の長谷川とESRFのMueller-Dieckmannが講演した。長谷川はMXビームラインの自動化と、それを利用した遠隔実験について発表し、また、現在の取り組んでいる課題として光ピンセットを用いた微小結晶のハンドリングについても触れた。Mueller-Dieckmannは、現在計画が進んでいる“Sample evaluation hub”(MASSIF)について報告した。これは、大量のタンパク質結晶のスクリーニングを行うビームラインを作り、良質な試料を選んでその特性に応じて最適なビームラインに振り分けてデーター測定を行うというシステムである。最後にAPSのVogtからナノプローブを用いた蛍光X線顕微鏡法で、fly-scanによる高速データー収集や試料交換の自動化を進めているとの報告があった。



6.Parallel Session D -Collaboration and partnerships at the local level
 三極ミーティングのセッションDは、“Collaboration and partnerships at the local level”というセッションタイトルで7件の発表があった。それぞれ施設が置かれている環境、状況により課題は異なり、取り組みもさまざまであるが、その中で、共通の課題も再認識された。

 APSからは、2件の発表があった。George Srajer博士は、産業利用の比率が5%程度と低いAPSで、今後、産業界からの利活用を増加させるために、技術的インパクトの周知、産業界への勧誘、他の大型施設との連携などにより企業からのアクセスを容易にする試みを紹介した。また、企業の即応性のニーズに応えるよう2週間程度の間隔での課題選定などの取り組みも示した。それらの成功例として、燃料噴射のイメージングに関する産業利用成果を紹介した。Jon Aimer博士は、産業界のニーズの一つであるその場観察に触れ、容器内など通常ではその場観察ができない系に対して、透過性の高い放射光からの高エネルギーX線による実験の有用性を示した。

 ESRFからは、組織的な取り組み2件が紹介された。Bill Stirling博士は、グルノーブル地区の国立研究所、国際研究所、大学のパートナーシップ:Grenoble Innovation for Advanced New Technologies(GIANT)を紹介し、これらの組織が、グルノーブル地区をCOEとするプラットフォーム形成を進めている構想を紹介した。日本で一時期盛んに行われた研究学園都市構想に近い思想であるが、ここではすでに存在する研究機関と企業を有機的につなげる取り組みに加え、研究都市としての整備を進めるというものであった。Sean McSweeney博士は、グルノーブルに集中する研究基盤を活用し、研究開発課題(構造生物、ソフトマター、古生物学)に特化したパートナーシップをBill Stirling博士が紹介したプラットフォームとリンクさせていく取り組みを紹介した。

 PETRA-IIIからは、地理的・組織的特徴を生かした産業界とのパートナーシップと国際パートナーシップが紹介された。Hermann Franz博士は、ドイツ国内の研究組織間でのパートナーシップを構築し、ヴァーチャルな研究所、研究室による国内共同研究の取り組みを紹介した。Wolfgang Drube博士は、スウェーデン、ロシア、インド、ブラジルとの国際的な協力関係について触れた。

 SPring-8からは、藤原が、プロジェクト型産学連携プロジェクトの成功例から、ソフトマテリアル領域でのコンソーシアム形成による新しいビームライン運営の成功例について紹介した。

 それぞれの施設、地域の特長、状況に合わせた取り組みが紹介されたが、パートナーシップやコンソーシアムによる共同研究の成功には、参画のための敷居の低さと共同研究によるお互いの利益をどう確保するかという点が、基本的であるが最も重要な課題であることが再認識させられた。そのための枠組み作りが各所で様々な形で行われているが、常に、その基本原則を見失わずに共同研究の枠組みを広げていくことが重要であるというのがセッションD参加者で共有された認識であろう。



7.Plenary Session -Wrap up
 最終セッションは、Sette所長(ESRF)が座長を務め、Optics Workshop、そして各パラレルセッションの座長に報告を求めて、総括的な議論が行われた。三極四施設(APS、ESRF、SPring-8、PETRA-III)が今後とも継続的に協力関係を維持することが重要との認識で一致し、セッション進行がSette所長(ESRF)から次回主催者を務めるStephenson APS所長に引き継がれ、Stephenson所長は「次回三極ワークショップは、2013年8月、シカゴで」と宣言して全スケジュールを終えた。



写真1 第13回APS−ESRF−SPring-8三極ミーティング参加者集合写真
Workshop group photo: Credit: C. Argoud/ESRF


謝辞
 文末にて恐縮ではあるが、今回、三極ミーティングのホストを務めたEuropean Synchrotron Radiation Facilityの関係各位、特にGary Admans氏へ謝意を表したい。プログラムについては高田昌樹氏(理化学研究所 播磨研究所 放射光科学総合研究センター 副センター長)にSPring-8側コーディネーターとして御尽力頂いた。本稿執筆に際しては、早乙女光一氏(JASRI/加速器部門)、満田史織氏(JASRI/加速器部門)、山下明広氏(JASRI/制御・情報部門)、長谷川和也氏(JASRI/利用研究促進部門)、藤原明比古氏(JASRI/利用研究促進部門)にパラレルセッションに関する報告をお寄せ頂いた。篤く御礼申し上げる。



Wednesday 1 February 2012 – Three-way Meeting
Parallel session A – Accelerator R&D –

08:30 Registration opens (ESRF Entrance Hall) –
09:00 Welcome by Chairperson
   Pantaleo Raimondi, Director Accelerator and Source Division (ESRF)
09:05 Short X-ray pulse generation with a vertical kicker
   Chikaori Mitsuda (JASRI/SPring-8)
09:30 Crab cavities (production of short pulses) / SPX deflecting cavity
   Ali Nassiri (APS)
09:55 Radiation damage of tunnel components
   Michael Bieler (Petra-III)
10:20 Coffee break
10:40 Solid State RF amplifiers and HOM free cavities
   Jörn Jacob (ESRF)
11:05 Superconducting undulators
   Louis Emery (APS)
11:30 Local lattice modification and lower emittance optics for higher brilliance
   Kouichi Soutome (JASRI/SPring-8)
11:55 Synchronisation of gap vs. mono (Petra-III)
   Andreas Schoeps (Petra-III)
12:20 Break for lunch

Wednesday 1 February 2012 – Three-way Meeting
Parallel session B – Data management and online data analysis –

09:00 Welcome by Chairperson
   John MacLean, Associate Division Director, Engineering and Support Division (APS)
09:05 Data management: PaN-Data (and CRISP) initiative
   Rudolf Dimper (ESRF)
09:30 New data-intensive experiments and scientific opportunities for X-ray micro-tomography
   Francesco DeCarlo (APS)
09:55 High data rate initiative in the Helmholtz association (HDRI)
   Rainer Gehrke (Petra-III)
10:20 Coffee break on the Mezzanine
10:40 Next generation data exploration: Intelligence in data analysis, visualization and mining
   Stefan Vogt (APS)
11:05 Data analysis workbench (DAWB)
   Olof Svensson (ESRF)
11:30 Experiment workflow pipelines at APS: message queuing and HDF5
   John MacLean replacing Claude Saunders (APS)
11:55 icat metadata catalogue (from CRISP project)
   Dominique Porte and Andy Götz (ESRF)
12:20 Break for lunch

Wednesday1 February 2012 – Three-way Meeting
Plenary session – DG Reports, facility upgrades and future plans –

14:00 Opening address
   Francesco Sette, Director General (ESRF)
14:05 Welcome by Chairperson
   Bill Stirling (CEA/ESRF)
14:10 DG Report
   Brian Stephenson, Associate Laboratory Director for Photon Sciences (APS)
14:40 DG Report
   Edgar Weckert replacing Helmut Dosch, Director, Photon Science (Petra-III)
15:10 DG Report
   Francesco Sette, Director General (ESRF)
15:40 DG Report: status and future plans
   Tetsuya Ishikawa, Director of RIKEN Harima Institute (SPring-8)
16:15 Coffee break on the Mezzanine
16:35 Welcome by Chairperson
   Geoff Pile, Associate division Director (APS)
16:40 Facility upgrades and future plans
   Edgar Weckert, Director, photon science (Petra-III)
17:10 Facility upgrades and future plans
   Harald Reichert, Director of research (ESRF)
17:40 APS beamline upgrade and APS accelerator upgrade
   Brian Stephenson and Louis Emery (APS)
18:15 End
19:10 Bus collection outside Guest House
20:00 Gala Dinner Musée de Grenoble and Restaurant ‘Le 5’

Thursday 2 February 2012 – Three-way Meeting
Parallel session C – Automation and control for nanobeams –

08:30 Welcome by Chairperson
   Edgar Weckert, Director in charge of photon science (Petra-III)
08:35 Nanobeam control
   Gerald Falkenberg (Petra-III)
09:00 Nanopositioning & control developments at APS
   Curt Preissner (APS)
09:25 Stable nanobeam handling by upgrading beamline optics and experimental stations
   Haruhiko Ohashi (JASRI/SPring-8)
09:50 Sample stage positioning for the nano-imaging branch of NINA
   Francois Villar (ESRF)
10:15 Coffee break on the Mezzanine
10:40 Nanopositioning at beamline P11 at PETRA III
   Alke Meents (Petra-III)
11:05 Beamline automation at SPring-8 MX beamlines: robotics and remote control
   Kazuya Hasegawa (JASRI/SPring-8)
11:30 Ultimate automation for the MX beamlines
   Christoph Mueller-Dieckmann (ESRF)
11:55 Improving handling and impact of microprobes
   Stefan Vogt (APS)
12:20 Break for lunch

Thursday 2 February 2012 – Three-way Meeting
Parallel session D – Collaboration & partnerships at the local level –

08:55 Welcome by Chairperson
   Masayo Suzuki, Research Coordination Division Director (SPring-8)
09:00 PETRA III collaborations with industry and academia.
   Hermann Franz (Petra-III)
09:25 APS experiences with industrial partners, and collaborations world wide across facilities
   George Srajer (APS)
10:15 Photo followed by Coffee break on the Mezzanine
10:40 Strategic promotion of Academia-Industry project
   Akihiko Fujiwara (JASRI/SPring-8)
11:05 In-situ, complex environments (nuclear, high temp, radiation)
   Jon Almer (APS)
11:30 Developing partnerships for science and industry (PSB, Soft Condensed Matter; Palaeontology)
   Sean McSweeney (ESRF)
11:55 International collaboration at PETRA III
   Wolfgang Drube (Petra-III)
12:20 Break for lunch

Thursday 2 February 2012 – Three-way Meeting
14:00 Visit of site – Meeting point on the Mezzanine
16:00 Coffee break on the Mezzanine

Plenary session – Wrap up - Auditorium
16:30 Opening remarks by chairperson
   Francesco Sette (ESRF)
16:35 Optics Workshop report
   Jurgen Härtwig (ESRF)
16:50 Parallel Sessions report
   Pantaleo Raimondi (ESRF)
17:00 Parallel Sessions report
   John MacLean (APS)
17:10 Parallel Sessions report
   Edgar Weckert (Petra-III)
17:20 Parallel Sessions report
   Masayo Suzuki (SPring-8)
17:30 Discussion: Are there collaboration opportunities?
   Jean Susini (ESRF)
17:45 Closing remarks
   Francesco Sette and DG of next Three-way Meeting host
18:00 End



鈴木 昌世 SUZUKI Masayo
(公財)高輝度光科学研究センター 研究調整部
〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1
TEL:0791-58-0925
email:msyszk@spring8.or.jp



Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794