Volume 09, No.1 Pages 52 - 54
4. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT
第7回SPring-8シンポジウム
The Impression of 7th SPring-8 Symposium 2003
11月12日(水)より11月14日(金)までSPring-8の普及棟で開催された第7回SPring-8シンポジウムについて、組織、企画・計画、準備と実施について運営事務を行った立場から、反省を含めて以下のように報告いたします。
5月に行われた利用者懇談会の行事委員会において、第7回SPring-8シンポジウムを11月中旬に予定されている中間点検のための運転停止期間中に行うことが決定された。更に、これまではSPring-8シンポジウムとは別の日程で行われていた“SPring-8利用技術に関するワークショップ”もSPring-8シンポジウムと同時に開催することになった。SPring-8利用技術に関して統一したテーマの下で活発な議論を行うのがその狙いである。そのため、昨年までは2日間の日程で行われていたSPring-8シンポジウムが、3日間の日程で行われることになり難波実行委員長(神戸大学)のもと実行委員会が組織された。今回は、伊藤先生(群馬大学)、木原先生(関西医大)、黒岩先生(岡山大学)、渡辺先生(大阪女子大学)に実行委員を務めて頂くとともに、副委員長の廣沢(利用研究促進部門I)をはじめ稲垣(理研)、稲見(原研)、高雄(加速器部門)、大橋、古川(ビームライン部門)、大隈、梶原、筒井、谷田(利用研究促進部門Ⅰ)、小寺、酒井、高井(利用研究促進部門Ⅱ)らのSPring-8職員が委員として加わった。更に、JASRIの植木部門長、當眞、小林が事務局を務めた。
委員長と副委員長の打ち合わせの結果、3日間のうち最初の2日を従来のSPring-8シンポジウム、最終日を「利用技術に関するワークショップ」に対応するものと位置付けてプログラムを検討することとなった。“例年、数多くのユーザーの方にご参加頂いているSPring-8シンポジウムであるから、今後のSPring-8の発展に向けてユーザーの皆さんからできるだけ多くの苦言、提言などをもらえる場にしたい”と考え、プログラムの原案を作成するにあたり、参加者の皆さんが今後のSPring-8のありかたを考えていただくきっかけとなるような話題をできるだけ多く扱うように心がけた。例えばJASRIの大野常務理事による「大型放射光施設SPring-8に関する中間評価報告」は、SPring-8をとりまく現状と将来について知って頂くこと、寿榮松部門長による「SPring-8 共用ビームラインの個別評価について」 は、評価の対象となったビームラインの運営や整備に対する施設側の方針を知っていただくこと、植木部門長による「平成15年度からの利用研究課題選定」は重点課題の新設など今年から大きくかわった課題選定制度について改めて知っていただくことを目的としたものである。また、タンパク3000のように、プロジェクトの実施のために一般共用課題とは別の課題審査を経て行う利用研究が昨年より実施されていることから、ナノテク総合支援プロジェクトやトライアルユースも含めて、一般のユーザーの皆さんに実施内容や成果を報告する必要があると考えてプログラム原案に加えた。
SPring-8シンポジウムのプログラムを一層充実させるために、施設職員からもアイデアを募ったところ、利用業務部より「本年度終了する特定利用課題(長期利用課題)の評価をSPring-8シンポジウムの場で十分な時間をとって行いたい」との申し出があった。特定利用研究はSPring-8シンポジウムで報告することが定められている上、評価のための成果報告を多くのユーザーが集まるSPring-8シンポジウムにおいて公開で行うことは評価委員以外からの意見も得られることから、大変意義深いことであると考えてプログラム原案に追加した。これ以外にもいくつかの提案を頂いたが、プログラム中に時間を割り当てることができず、残念ながらプログラム原案に加えることができなかった。
7月3日に行われた第1回の委員会において、開催期間(11月12日〜14日)、ポスターデザイン、及びプログラムの大筋が決定された。その後ただちに講演依頼の折衝を開始するなど、シンポジウム開催に向けての本格的な準備作業にとりかかった。特に、ナノテクノロジー総合支援プロジェクト及びトライアルユースの成果発表に関しては、それぞれ河村委員と小寺委員が、講演依頼等の折衝を行った。
8月4日に開催された第2回委員会では、1日目、2日目の講演者と講演時間を確定した。一方、3日目に行う「SPring-8利用技術に関するワークショップ」については、植木部門長より提案された“ビームハンドリング”をキーワードとした講演で構成することになった。黒岩委員が中心となって利用者懇談会のサブグループの世話人を中心にワークショップでの講演テーマを9月24日締め切りで募ったところ、4件の応募があった。“ビームハンドリング”というキーワードの下で異なる分野からの講演を組むことを意図していたため、キーワードとの関連が明確でない提案とシンポジウムの1、2日目に予定している講演と重複する提案を除いた2件を取り上げることとした。
以上のように、ユーザーサイドからの利用技術に関するワークショップへの講演の提案が少なかったことから、JASRIの植木部門長や八木G.L.より寄せられた助言を参考に、高雄委員、谷田委員、筒井委員とで講演者、講演内容を検討し、今年よりphase 0での運用が開始されたTop-Up運転や、昨年秋より行われているLow emittance運転、及びセベラルバンチを利用した実験を取り上げることとした。講演依頼等の折衝は9月下旬より開始したため全日程のプログラムの確定は10月24日になってしまった。
9月より、プログラム編成と並行して予稿集作成作業が開始された。予稿原稿の回収は、稲垣委員、稲見委員、高雄委員、古川委員、小寺委員、河村委員、大隈委員、梶原委員、酒井委員が分担して行い、10月上旬にはすべての予稿原稿を回収することができた。この後、今井委員の助言をもらいながら事務局の當眞氏、小林氏の協力で3回の校正を経た予稿集が完成した。
開催前日の会場整備と期間中の運営は加藤委員が中心となって行った。普及棟大講堂のプロジェクターがより高輝度なものに交換されたことから、今回は講演者が自らのPCを用いた電子プレゼンテーションを中心とした形式をとった。加藤委員の工夫と努力により講演者の交代も短時間で完了し、すべての講演を大過なく行うことができた。
夜に複数のサブグループが会合を予定していたためか、SPring-8の運営方針に関連した講演が多くユーザーの皆さんの関心が高かったためか、理由は定かではないがシンポジウム初日の11月12日は180人収容の会場がほぼ満席になった。利用者懇談会会長の坂田先生の挨拶につづいて行われた施設側からの報告には、JASRIの大野常務理事による利用に対する課金も検討されているなど、SPring-8の運営の根幹にかかわる事項の報告があった。しかし、あまりにもショッキングな内容であったためか、参加者からの発言は多くはなかった。一方、寿榮松部門長によるビームラインの中間評価に関する報告に関しては、参加者より、今期の課題選定基準として申請者の論文成果発表の多寡が重要な採択ポイントとして考慮された分科がある一方でそうでもない分科があるなど審査基準が分科ごとにまちまちであるのは今後検討すべき点である、等審査のあり方に対する率直な意見が出され、活発な議論となった。しかし、この場では議論がまとまらず、2日目の課題採択委員会委員長の報告の時にもう一度討論されることとなり、利用者サイドからの要望が述べられた。12日の後半は、評価を兼ねた特定利用(長期利用)課題報告を3件行った。評価委員ばかりでなく、より多くのユーザーの方に報告を聞いていただき、幅広く議論して頂くことを意図していたが、残念ながら一般の参加者は必ずしも多くはなかった。
2日目は現在SPring-8で行われている3つのプロジェクトの概要と成果例の報告が中心に行われた。特に、タンパク3000プロジェクトは開始時刻が午前9:00と早かったため参加者の出足を心配していたが、講演開始時より60名以上の参加者があり、このプロジェクトへの関心が高いことがわかった。次いで行われたナノテクノロジー総合支援プロジェクトの報告は幅広い分野の成果報告であったためか、講演ごとの参加者の出入りが多かったが、概ね盛況であった。一方、午後に行われたトライアルユース(産業利用)報告への参加者は残念ながら午前の半分程度であった。なお、同日に設定していたポスターセッションは昼食休憩と兼用になってしまい、十分な時間を確保することができなかった。さらに、参加者よりポスター配置がわかりにくいとの意見もあった。次回は開催形式やポスター配置により一層の工夫が必要と考えられる。
最終日に行われた“ビームハンドリング”がキーワードの“SPring-8利用技術に関するワークショップ”では、午前にTop-Up運転に関する話題を中心に扱い、午後はX線ビーム形成や時分割測定等の利用技術を中心に扱った。今年度より段階的に導入されているTop-Up運転への関心は高く、常時70名程度が参加していた。加速器側から「新しいサイエンスを行うために適した蓄積リングの運転を利用研究の側から提案して欲しい」といった趣旨の意見も出され、利用研究と加速器科学とが相互に議論する場が今後とも必要であると感じた。これは今後ともシンポジウムの重要な開催主旨の一つとなると考えられる。幅広い分野での先進的な取り組みを集めた午後の部も概ね盛況であったが、最終日は午前、午後ともユーザーの方よりもSPring-8職員の姿の方が目立っていた。来年度も利用技術に関するワークショップをSPring-8シンポジウムと同時開催するのであれば、できるだけ早い時期からワークショップへの取り組みを開始するとともに、プログラムや日程の工夫により参加を促進する必要があると思われる。
以上のような3日間の日程で行われたSPring-8シンポジウムは、11月14日16時に無事終了した。SPring-8シンポジウムの準備運営にご協力頂いた実行委員の皆さん、佐久間さんをはじめJASRI利用業務部の皆さん、講演や座長をお引き受け頂いた先生方、会場準備や当日の会場運営に協力して下さった若手職員の皆さんに深く感謝いたします。
廣沢 一郎 HIROSAWA Ichiro
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