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Volume 09, No.1 Pages 2 - 19

1. SPring-8の現状/PRESENT STATUS OF SPring-8

第13回(2004A)利用研究課題の採択について
The Proposals Accepted for Beamtimes in the 13th Public Use Term 2004A

放射光利用研究促進機構(財)高輝度光科学研究センター 利用業務部 Organization for the Promotion of Synchrotron Radiation Research . User Administration Division, JASRI

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 財団法人高輝度光科学研究センターでは、利用研究課題選定委員会による利用研究課題選定の結果を受け、以下のように第13回共同利用期間における利用研究課題を採択した。


1.募集及び選定日程

(募集案内・募集締切)

 10月2日 利用研究課題の公募について

 SPring-8ホームページに掲示利用者情報(Vol.8,No.5,2003.9)に掲載

〈一般課題〉

 11月2日 一般課題募集締切り

(郵送の場合、当日消印有効)(11月4日10時必着)

〈長期利用課題〉

 10月16日 長期利用課題募集締切り

 10月20~27日 長期利用分科会による書類審査

 11月12日 長期利用分科会による面接審査

(一般課題及び長期利用課題について課題選定及び通知)

 12月11、12日 分科会による課題審査

 12月12日 第32回利用研究課題選定委員会による課題選定

 1月5日 機構として採択し、応募者に結果を通知


2.採択結果

 今回の公募では、一般利用研究課題の応募として529件、重点研究課題の応募として243件、総応募件数として772件の課題応募があり、前回に次ぐ応募数であった。採択件数についても、一般利用研究課題の採択として387件、重点研究課題の採択として208件、総採択件数として595件と前回に次ぐものとなった。第1回から今回の公募までの、分野別及び所属機関別の応募数及び採択数を表1に示す。また、今期で2回目となる重点研究課題の内、重点領域指定型については表2に示す通り3領域で課題を公募した。表2では、一般利用研究課題についても内訳を示している。表1のデータの内、応募・採択の推移および研究分野別・所属機関別分類の推移をそれぞれグラフ化して、図1および図2に示す。



表1 利用研究課題公募内訳

表2 第13回公募の一般利用研究課題と重点研究課題の内訳






図1 各公募時における応募課題数と採択課題数




図2 採択課題の研究分野別・所属機関別分類 



 ここ数年、1年の前半の共同利用期間(A期)では応募が少なく、反対に後半(B期)では大幅に増加する傾向が続いていた。今回も同様の傾向となっている。連続する2回の公募状況を足し合わせ1年単位でまとめたのが次のリストである。応募課題数及び採択課題数は、年とともに増加している。


                    応募課題数  採択課題数

第12回+第13回(平成15年9月~16年7月)   1,710    1,216

第10回+第11回(平成14年9月~15年7月)   1,484    1,035

第8回+第9回(平成13年9月~14年7月)    1,262     977

第6回+第7回(平成12年10月~13年6月)    1,084     789

第4回+第5回(平成11年9月~12年6月)     855     572


 今回の共同利用の対象としたビームライン毎の応募・採択課題数、課題採択率、採択された課題の要求シフト数・配分シフト数、シフト充足率、平均シフト数を表3に示す。採択課題数の多かったビームラインは、BL02B2(粉末結晶構造解析)の34件(1課題あたり5.0シフト)、BL40B2(構造生物学Ⅱ)の33件(1課題あたり5.1シフト)、BL01B1(XAFS)の28件(1課題あたり7.5シフト)、及びBL41XU(構造生物学Ⅰ)の26件(1課題あたり4.0シフト)であった。これらのビームラインでは、当然ながら1課題あたりの配分シフト数は平均シフト数9.5より少ない。今回は、前回より応募課題数が少なく平均採択率が72%と前回(60%)より高くなっているが、その中で応募課題数の多いビームラインにおいて採択率が低いのはBL08W(高エネルギー非弾性散乱)の53%とBL25SU(軟X線固体分光)の59%であった。利用研究課題選定委員会では、従来より、採択された課題の平均シフト数は9.5であり前回の9.2と同程度となっている。

 重点研究課題の内「重点ナノテクノロジー支援」は、今回、応募課題数72件に対して採択課題数が50件で採択率69%となり、一般利用研究課題の成果非専有課題における平均採択率68%と同程度となった。また「重点タンパク500」は、今回採択された課題を重点タンパク500シフト枠(234シフト)内で個別に調整して実施1ヶ月前までにシフト配分を確定する方式で実施する。「重点トライアルユース」は、応募課題数33件に対して採択課題数が20件で採択率61%となった。

 今回の応募課題数と採択課題数を、研究分野と実験責任者の所属機関別にまとめたものを表4に示す。なお、重点タンパク500課題は全応募課題を実施シフト枠(今回は234シフト)の範囲内で調整して実施する方式を採用しているので、今回から採択率等を示すときは基本的に除外して示す。研究分野別の採択課題数は件数の多い順に、生命科学247件(重点タンパク500の採択数138件を除いた採択課題数は109件)、散乱・回折169件、分光57件、XAFS52件、産業利用46件、実験技術24件であり、前回と同じ順番であった。また、採択課題における実験責任者の所属機関別では、重点タンパク500も含めた全体で見れば国立大学が全体の半数以上を占めておりこれまでと大きくは変わっていないが、特殊法人が大きく減少した。

 長期利用(通常課題の実施有効期限が6ヶ月(一部分科会では)であるのに対し、3年間にわたって計画的にSPring-8を利用することによって顕著な成果を期待できる利用)では、表2に示すように今回の公募で3件の応募があり、そのうち1件が採択された。審査は外部の専門家を含む長期利用分科会での書類審査、及び面接審査の2段階で行われた。採択された課題の概要は7.項に示す。

 成果専有利用としては、表2に示すように民間から4件、国立研究機関等から2件、合計で6件の応募があった。これらの課題について公共性・倫理性の審査と技術的実施可能性及び実験の安全性の審査が行われ全件採択された。



表3 ビームラインごとの採択状況




表4 2004A応募課題数と採択課題数:研究分野と所属機関分類

(生命科学と合計欄の括弧内は、重点タンパク500の応募課題(138件)を含む課題数)




3.利用期間

 年間の前期と後期の共同利用の利用時間に長短のアンバランスが通常以上に大きくなることを緩和するため、これまでと同様に、今期も第2サイクルから第5サイクルまで(平成16年2月から平成16年7月まで)とし、この間の放射光利用時間は264シフト(1シフトは8時間)となっている。このうち共同利用に供されるビームタイムは共用ビームライン1本あたり210シフトとなる。


4.利用対象ビームライン及びシフト数

 今回の募集で対象としたビームラインは総計34本で、その内訳は、共用ビームライン25本(R&Dビームライン3本を含む)とその他のビームライン9本(原研ビームライン4本、理研ビームライン4本、及び物質・材料研究機構ビームライン1本)であった。

 今回の採択でも前回同様、産業利用に留保シフトと重点トライアルユース課題を設けたこと、及び重点ナノテクノロジー総合支援と重点タンパク500に対応する応募課題を含めたことなどから、一般共同利用及び重点研究領域として採択された全課題の配分シフト数の合計は表3に示すように4,353シフトとなった。ただし、タンパク500関係の課題はシフト枠が234シフトと確定しているが、個別の課題への割振調整は今後行われるので前記の配分シフト数の合計には含めていない。


5.民間企業の利用と産業利用

 表4に示すように今回の公募で、民間からは各研究分野に合わせて57件の応募があり、52件が採択された。前回が応募74件で採択53件であったので、今回は採択率が上昇して応募数が減少した。産業利用分野の課題は、前回からBL19B2(産業利用)に加えて、BL01B1(XAFS)、BL02B2(粉末結晶構造解析)、BL46XU(R&D(2))、BL47XU(R&D(1))等のビームラインでも一部の産業利用分野課題が採択された。これにより、産業利用分野の課題は、各研究機関から合わせて57件の応募に対して46件の採択で、採択率が81%と全体平均より高くなっている。最後に、今回の民間からもしくは産業利用分野いずれかへの応募総数は81件で、採択総数は67件(採択率83%)であった。前回の民間または産業利用の応募は100件で採択が65件(採択率65%)であったので、今回は応募件数が減少し採択件数が前回並みで採択率が大きく上昇している。


6.課題選定審査における留意点

(1)課題選定では、1課題に十分な実験時間を確保するために、選定された課題の要求シフトに対する配分シフトの比率(シフト充足率)を確保することにつとめた。また、前回同様、平和目的の確保、挑戦的な課題の確保を念頭においた審査を行った。

(2)2002B期からBL02B1(単結晶構造解析)における1年課題の募集をしている。これは、シフト数の要求の少ない課題でも2期に分けて実験を行うことに重要な意味があるためで、回折・散乱分科1で2年間試行することとしている。今回は、2年目後半で前回採択の1年課題7件の後半期が実施されるので、2004A期のみの課題が公募され応募9件のうち8件(84シフト)が選定された。

 また、XAFSにおける分科留保ビームタイムを用いての試しが必要な課題は、今回該当なしであった。

(3)生命科学分野の留保ビームタイムは3本のビームラインを合わせて59シフト確保した。産業利用分野の留保ビームタイムはBL19B2(産業利用)で111シフト確保した。

(4)BL43IR(赤外物性)は、今回応募数が少なく5課題で66シフトしか埋まらなかったので、残りシフト分について追加募集をすることとした。


7.長期利用課題の採択

 2000B共同利用から開始したSPring-8特定利用については、2003B期から長期利用課題と名称変更したが、今回は1件の課題が採択された。今回採択された課題は、平成16年2月から6期の期限で実施するものである。今回採択された研究課題の概要を以下に示す。


課題番号:2004A0009-LM-np

課題名:飛翔体搭載用硬X線結像光学系システムの性能評価実験

実験責任者:小賀坂康志(名古屋大学)

利用ビームライン:BL20B2

3年間の要求シフト数:144シフト

2004Aの要求シフト数:24シフト(配分24シフト)

研究概要:

 本研究は硬X線天体観測システムの性能評価実験を行うもので、飛翔体観測装置の開発及び観測データ解析に必要な応答関数の作成が目的である。

 宇宙空間プラズマからのX線放射や銀河中心核ブラックホールの観測、また非熱的X線放射起源の解明といった研究のため、10 keV以上の硬X線領域で使用できるX線望遠鏡の開発が求められている。申請者らはPt/C多層膜スーパーミラーを反射鏡面に用いた多重薄板型の硬X線望遠鏡を開発した。現在、気球塔載観測実験を推進しており、併せて2010年打ち上げ予定のNeXT衛星計画に向けて開発を進めている。

 硬X線望遠鏡の性能は結像性能と有効面積で評価され、これらは多層膜の反射率、反射鏡の形状精度及び組み上げ精度などの微視的な要素で決定される。理想的な性能評価は、曖昧な仮定を置くことなく、localな特性から望遠鏡性能を再現、評価し応答関数を構築することである。反射鏡積層枚数が100を越える多重薄板光学系でこのような評価が完全に行われた例は少なく、10 keV以上の硬X線領域では前例がない。実験には高輝度、単色、低発散角の大口径ビームと、10 m規模の大きな実験ハッチが要求される。BL20B2における実験では、上述のような「完全な」評価が初めて可能になると共に、衛星計画の実現に向けて不可欠な研究となる。既に2003A期に予備的な実験を行い、成果を上げている。例えば、口径40 cmの望遠鏡開口を約3000に分割してlocalな集光特性をくまなく評価し、望遠鏡組み上げ方法に起因する構造の微少な歪みを発見した。また30及び40 keVにおける結像性能を評価するなど、硬X線領域における定量的評価が可能となった意義は計り知れない。


課題選定委員会での審査結果:

 本課題は、X線天文学において必要とされる結像光学系の性能評価をSPring-8を用いて行うものであり、全体のプロジェクトの中での光学系性能評価の重要性、またそこでのSPring-8の必要性を考慮すると、非常に意義のあるテーマと判断される。他方、SPring-8での新しい分野開拓の面からも高く評価できる。

本課題の背後にある宇宙関連の大きなプロジェクトを考慮すると、短期的には一般課題(長期)での実施でも良いが、長期的には宇宙関連の研究機関とSPring-8の間で、正式な研究協力協定を締結して実施することが望ましく、申請者を含めた関係者でこの方向に向けての検討を開始されたい。



Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794