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Volume 08, No.6 Pages 416 - 418

4. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT

第3回サンビーム研究発表会
The 3rd SUNBEAM Workshop

上原 康 UEHARA Yasushi

三菱電機㈱ 先端技術総合研究所 Advanced Technology R&D Center, Mitsubishi Electric Co.

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1.はじめに
 産業用専用ビームライン建設利用共同体(以下、共同体)は、エレクトロニクス、自動車、鉄鋼、電力など14の企業・法人から構成される団体で、SPring-8に専用ビームラインを2本保有している(BL16XU、BL16B2、通称・サンビーム)[1]。1999B期よりビームラインのユーザ利用を開始し、構成各社が自社の製品開発に密着した実験を実施しているが、それらの成果を共同体外の方にも広く知っていただくために、JASRI殿のご支援の下、研究発表会を一昨年、昨年と開催してきた [2]。本年は、9月5日(金)に第3回の研究発表会をSPring-8普及棟の大講堂で開催し、約120名の出席者を得て盛会裏に終えることができた。
 本年は、昨年と同様、各社20分の持ち時間で14件の研究内容を報告した。発表会を重ねる毎に、各社からの発表もより具体的に製品開発に結びついたものになってきたと感じる。なお、発表会の内容を国外にも紹介できるように、発表梗概および発表スライドを英文表記に統一した。更に、昨年に実施した海外交流 [3] が縁で、Lucent Technologies(以下L社)・半導体物理研究部門責任者のDr.Isaacsを招聘し、特別講演をお願いした。氏からは、APSのマイクロビームを利用した解析技術や新たに発足するナノテクセンターの紹介など、非常に興味深い話題の提供があり、参加者からは非常に好評であった。
 共同体は、①放射光の産業利用促進、②材料評価基盤技術の形成、③放射光技術分野での人材育成、の3点をその事業目的に置いて活動してきた。本年6月には専用ビームライン設置に関わる中間評価を受け、「事業目的にほぼ適った活動をしている」という評価を受けたが、一方で「得られた成果を社会に見える形で公表するように努力すること」という指摘も頂いた。構成各社は、論文、特許や新聞発表などの形で成果の公表に努めているが、共同体としてまとまった成果発表はこの研究発表会が唯一であり、今後とも更によい形で開催していきたい。
 本稿では、まず02Bから03Aまでのサンビームおよび共同体の活動内容を総括し、次いで研究発表会の各社発表内容についてまとめる。 
 
表1 第3回サンビーム研究発表会の各社発表概要 
 
 
 
2.共同体/サンビーム・この1年の活動
 サンビームでは、実験課題は各社が申請し、それらの課題を効率的に行うようにビームタイムを計画し、ほぼ各社均等に配分している。02Bから03Aの1年の実績では、各社が平均23日利用した。この1年は、ビームライン機器の故障も少なく、ほぼ計画通りに各社利用を行うことができた。
 共同体では、1999年7月のサンビーム完成以降も、各種X線検出器の増強や実験設備の改良を進めてきた。ビームラインの維持管理や機能向上は構成会社から選出された委員が共同で行っているが、機能向上の試用実験で得られた知見を公開するため、放射光学会のポスターセッションで結果を発表した [4]。SPring-8を用いた実用的な材料評価技術の開発は共同体ミッションの1つであり、そこから得られた成果は今後も積極的に公表していく予定である。

3.研究会での各社発表内容
 発表順に題目、社名(略称)、発表者名および用いた材料評価技術を表1にまとめた。発表内容を製品分野別に分類すると、半導体関連が7件、電池材料と磁気デバイス関連がそれぞれ2件、素材一般が3件である。この件数はユーザ利用開始からこれまでの実験課題の分野比率をほぼ反映しており、サンビームの性格を表している。利用技術別では、XAFSが最も多く、X線回折がそれに続く。2本のビームラインの利用状況は、BL16B2の90%以上がXAFS、BL16XUの約50%がX線回折であり、発表の利用技術もこの割合にほぼ対応している。
 シリコン半導体に関しては、ゲート絶縁膜解析が4件と多い。手法として、X線反射率や蛍光X線に加え、CTR散乱の適用で界面の一原子層レベルの解析が行えることが示された。この技術は、昨年度にX線回折装置を改造し、軸の自由度が拡大したことにより可能になったものである。ゲート絶縁膜は超薄膜で材料系も複雑になってきており、放射光利用解析の有効性が更に高くなると予想される。化合物半導体に関しては、青色レーザ用InGaNや高耐圧パワーIC用SiCなど、次の日本産業を支えると期待されている材料の解析例が紹介された。磁気デバイスに関しては、材料の結晶性と特性との相関解明に関した報告があった。サンビームでは、磁性材料のより詳細な解析を行うために円偏光制御装置の導入を進めており、この分野での今後の飛躍を狙っている。
 電池の触媒や電極についての2件の発表は、いずれも作製条件と機能およびそのときの材料構造に関する解析例であった。この分野では反応過程を追う動的観察がトレンドとなっているが、最適材料探求のための機能発現性の解明も重要なテーマである。光ファイバ、Ti基合金、更にはナノメタルについても、機能発現性と特定元素周りの局所構造との関係についての研究例が報告された。過去に業界では「鼻ぐすり」と称されメカニズム不明のままで機能に有効とされてきた添加元素が、強力な放射光を利用することで徐々にその機能が明らかになってきている。これらの積み重ねから、新たな材料の創造が期待される。

4.特別講演
 L社のBell研究所は、APSにおいてMichigan大学、Howard大学と共同で専用ビームラインを運用している。Dr.Isaacsは、L社の半導体物理研究部門責任者としてビームラインを利用したナノ物質研究に従事してきており、昨年の我々のAPS訪問時に情報交換を行った縁で今回の講演を快諾いただいた。
 講演では、APSのマイクロビームを利用した解析例として、強誘電体(PZT)薄膜と強磁性体(Cr)薄膜の解析例について紹介があった。共に、次世代メモリ材料として期待されているものである。同ビームラインではフレネルゾーンプレートを用いて約0.2µmのマイクロビームを形成しており、PZT薄膜の分極ドメインが繰返し電界印加で崩れていく様子や、Cr薄膜の単磁区動作などが明瞭に観察された例が紹介された。また、氏はこの8月から、Argonne国立研究所に新設のCenter for Nanoscale Materials所長に就任したということで、同センターの概略も紹介された。計画によると、APSのリング棟に直結する形でクリーンルームを擁する建物が建設され、高度な物質制御と計測が同時に行える、非常に有望な施設である。今後ともこれら施設との交流を深めることで、“friendly rival”の関係を築いていくことが重要であろう。

5.まとめ
 「SPring-8で得られた結果がキーとなって新製品が生まれた」というホームランは非常に難しいが、「役に立ったよ」と社内で認められるヒットを積み上げ、且つそれらを分かり易く社外にも公表する、といった活動を継続発展させていく必要がある。今後とも、サンビームの活動にご指導、ご支援を賜るよう、よろしくお願いいたします。
 最後に、これまでと同様、会場準備や当日の運営など、JASRI利用業務部の方に多大な御協力をいただいた。また本年の研究会実施に当たっては、SPring-8利用推進協議会殿の後援もいただいた。ここに深くお礼申し上げます。

参考文献
[1]古宮 聡:SPring-8利用者情報Vol.2,No.4(1997)18;平井康晴ほか:ibid.Vol.4,No.4(1999)16;泉 弘一ほか:ibid.Vol.4,No.4(1999)20;久保佳美:ibid.Vol.6,No.2(2001)103.
[2]平井康晴:SPring-8年報(2000年)99,101;広瀬美治:SPring-8利用者情報Vol.7,No.6(2002)377.
[3]SPring-8利用推進協議会研究開発部会ほか編:放射光海外施設調査報告書(2002年度).
[4]尾崎伸司ほか:第16回日本放射光学会年会・放射光科学合同シンポジウム予稿集 (2003) 10P10;野中敬正ほか:ibid. 10P11;上村重明ほか:ibid. 10P37.

上原 康 UEHARA  Yasushi
三菱電機㈱先端技術総合研究所 環境・分析評価技術部
〒661-8661 尼崎市塚口本町8-1-1
TEL:06-6497-7538 FAX:06-6497-7602
e-mail:Uehara.Yasushi@wrc.melco.co.jp



Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
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