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Volume 08, No.4 Page 216

1. SPring-8の現状/PRESENT STATUS OF SPring-8

「特定利用 中間評価」について
Intermediate Evaluation of Long-term Proposals

(財)高輝度光科学研究センター 利用業務部 User Administration Division, JASRI

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 特定利用制度は3年以内の長期にわたってSPring-8を計画的に利用する制度として平成12年度後期から開始しているものです。これまで2000B利用期間(平成12年9月から平成13年1月)に3課題、2001A利用期間(平成13年2月から平成13年6月)に1課題、2001B利用期間(平成13年9月から平成14年2月)に1課題、2002A利用期間(平成14年2月から平成14年7月)に1課題、2002B利用期間(平成14年9月から平成15年2月)に1課題、2003A利用期間(平成15年2月から平成15年7月)に1課題採択され、平成15年2月からは合わせて8課題が実施されています。このうち、平成12年後期に採択された最初の3課題及び平成13年前期に採択された1課題の中間評価を、平成13年度後期及び平成14年度後期に行いました(平成14年利用者情報7月号及び平成15年利用者情報1月号に掲載済)。今回は3回目として、1年半を過ぎた特定利用課題である、平成13年後期に採択された課題について、中間評価を平成14年度後期に行いましたので概要を紹介します。
 特定利用の中間評価は利用研究課題選定委員会特定利用分科会において、書類による評価と面接による評価の両方で行いましたが、面接評価の際に評価用書類の内容をふまえて、(1)研究の進捗状況(2)採択時の審査員の意見の反映度(3)成果の発表状況(4)成果の位置づけ、意義(5)3年目の計画の妥当性、の5つの観点から評価を行いました。以下に対象課題の評価結果と研究概要および得られた成果を示します。


[課題名]:高分解能軟X線励起による高温超伝導物質および関連物質のバルク敏感角度分解光電子分光:
        光電子分光による高温超伝導体バルク電子状態研究のブレークスルーを目指して
[実験責任者]:菅 滋正(大阪大学)
[ビームライン]:BL10XU
[評価結果]:実施する。

[研究概要]
 本研究の特色は、広い視点で言えば強相関系物質について世界で初めてバルク敏感な角度電子分解光電子分光を高いエネルギー分解能で体系的に行うことである。この手法によれば深刻な表面の問題からも行列要素の問題からもほぼ解放されてバルク電子状態を議論できる。本研究の意義ならびに目的は、強相関系の中でも最も注目され、多くの光電子研究が行われてきたホールドープの高温超伝導体に加えて電子ドープの高温超伝導体および関連物質について、光電子分光としては最も信頼できるバルク電子状態の測定を行うことでたくさんの未解決の問題を解決することである。  本研究により高温超伝導体のフェルミオロジーや偽ギャップ、ストライプ秩序相の影響など電子相関に関連して未解決の諸問題に対して、バルク電子状態の立場からあいまいさの残らない解決を与えられることが期待される。

[成果]
 高エネルギー領域でのエネルギー高分解能XPSで、表面の影響を排除した真のバルク電子状態を把握する目的を達しつつあり、当初目的の成果は得られている。また、これらは他の放射光施設での研究の追随を許さない実験データであり、複数の高温超伝導体の機能解明への指針を得つつある。

[成果リスト]
(論文発表)
(1)S.Suga,Surf.Rev.Lett.9,1221-1228 (2002).Recent Development in Soft X-ray Spectroscopy of Correlated Materials: High resolution absorption and bulk sensitive photoemission.
Invited talk at 13th Int.Conf.Vacuum Ultraviolet Radiation Phys. Trieste.
(2)Bulk-sensitive HPES and XAS studies of pyrochlore oxide Cd2Re2O7 submitted to Phys.Rev. A.Irizawa, A. Higashiya,S.Kasai,T.Sasabayashi,A.Shigemoto,A.Sekiyama,S. Imada,S.Suga,H.Sakai,H.Ohno,M.Kato and K.Yoshimura


(学会口頭発表)
(1)A.Sekiyama and S.Suga,Invited talk in Int.Conf. Electron Spectrosc.Struct.,Uppsala (2003),to be published in J.Electr.Spectrosc.Rel.Phenom.
(2)S.Suga,Invited talk in Realistic Theories of Correlated Electron Materials,Kavli Institute for Theoretical Physics,Santa-Barabar,Nov.(2002).



Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794