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Volume 08, No.3 Pages 195 - 198

5. 告知板/ANNOUNCEMENTS

SPring-8は兵庫情報ハイウェイ500MbpsでSINETに高速接続を開始
SPring-8 Internet Connection Through the Hyogo Information Highway 500Mbps to the SINET

武部 英樹 TAKEBE Hideki、間山 皇 MAYAMA Ko、酒井 久伸 SAKAI Hisanobu、瀬崎 勝二 SEZAKI Katsuji

(財)高輝度光科学研究センター JASRI

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SINETへ高速接続

 SPring-8は兵庫情報ハイウェイ(上郡-伊丹間)500Mbpsを借用しSINETに接続を開始しました。

 これまでSPring-8はIMNET(旧科学技術庁系の団体が管理していた省際研究情報ネットワーク)にATM-4Mbpsの専用線で接続していました。このIMNETは2002年からSINET(国立情報学研究所管理の学術情報ネット)と統合されるため各種の準備を行ってきましたが、SPring-8も2003年2月にSINETの基幹アクセスポイントがある大阪大学サーバーメディアセンターにATM-4Mbpsの専用線接続に切り換えました。

 そして2003年3月3日に粒子線医療センターを経由して兵庫情報ハイウェイの上郡局までダークファイバー1Gbpsで、また上郡局-伊丹局間の500Mbpsを県から無料で借用し、伊丹局-池田の産業総合技術研究所(産総研)-大阪大学Bio-Gridを経由して、SINETに接続しました。(4月1日現在は一般のインターネット接続はSPring-8のファイヤーウォールの速度が100Mbps対応であるために制限されていますが、この5月には500Mbpsになる予定です。)これまでは外部接続が4Mbpsだったためビームラインの実験結果の大量データはハードディスクなどで持ち帰っていましたが、今後は、各大学や実験チームのサイトまでネットワーク経由で高速転送が可能になり、実験に対するフィードバックが効率的に出来ることになるでしょう。また、外部のスーパーコンピュータ等を利用するユーザーにとってもより広い利用方法が見いだされることと思われますので、多くの皆様の上手な利用を期待します。

 図1に兵庫県庁とJASRIが共同で記者発表を行った時(2003.3.20)の資料を、また図2にその詳細説明を示します。兵庫情報ハイウェイとは、兵庫県庁が県内各機関、市町、公立学校、公民館等を結ぶ「兵庫広域ネット」を構築するため、総延長約1,400kmに及ぶ基幹回線(1.2Gbps、または、1.8Gbps)で高速大容量の情報通信基盤を整備し、地域の情報格差の是正や産業の振興に資するため、その一部を利用承認した民間企業等に無料開放したネットワークです。

 但し、各アクセスポイントまでの足回り回線は各利用者の負担になります。詳しくはhttp://web.pref.hyogo.jp/jouhou/itsangyo/highway/index.htm をご覧ください。




図1 兵庫情報ハイウェイ構成図




図2 阪大・SINETへの接続経路



SINETについて

 国立情報学研究所の管理の下に図3の様に日本全国の国立・公立大学のほとんどが1Gbps、100Mbps以上で接続されています。その他にもSPring-8に来ている実験ユーザーの所属する研究所もこのSINETに接続されているところが多くあります。

SINETのノード一覧は

http://www.sinet.ad.jp/sinet/sinet_nodelist.html

にてご覧ください。




図3 SINET構成接続図(http://www.sinet.ad.jp/ より抜粋)



OA-LAN現状と外部接続の経緯

 SPring-8には多くの建物が広く分散しているため、1995建設時当初から各棟の間に多数の光ファイバーを敷設して、電話交換機等とともにネットワーク機器用に利用しています。ここ西播磨地区は雷が多く、接続機器が破壊されるのを防止する事の意味は大きいものでした。

 しかしその後この光ファイバーは高速ネットワークを敷設する技術として不可欠なものになっています。1995年当時は電話交換機以外の利用として具体的にはほとんど想像がつかなかった10ミクロンの光ファイバーも現在では500mを超える距離のGigabit Ethernetの媒体として主流であります。また天井裏など狭い経路の光ファイバールートにはエアブロウンファイバーシステムを導入して、ファイバー線の張り直し工事がやりやすいシステムも導入されています。

 外部インターネット接続としては先に述べたIMNETに512kbps, 1.5Mbpsで接続されてきたものを1999年からは4Mbpsに増速しました。そしてタンパク質結晶構造解析グループが実験を始めた時、2001年12月にはSPring-8内主要建物間の幹線を(それまで100M,10Mbpsであったものを)Gigabitにしてに高速化しました。LEPS33のビームラインと大阪大学核物理研究センター(2001.9)と、またタンパク質結晶構造解析のグループはデータ処理を共同で行うために横浜理研(2002.2)とJGN(日本ギガビットネットワーク、放送・通信機構の管理)で接続しました。このJGNには兵庫県とともに誘致申請し、県立粒子線医療センターにアクセスポイント(AP)を設置して頂きました。(但しこれはPia-to-Piaの研究専用ネットワークであり、インターネットへの接続は出来ないため、他の全国の大学を接続する手段には使えませんでした。)

 また理研のネットワークは2002年12月から「全理研ネット」で和光本部と各支部が100Mbpsで接続されています。主に理研の研究者がいる構造生物研究棟、物理科学研究棟、ハイスループット棟、長尺ビームラインなどは播磨理研の研究ネットワークとして和光本部と直接100Mbpsで接続されています。これはその他のSPring-8のLANとは分けられていますが、しかしながらビームラインの実験データを高速でやりとりさせたいために基幹ルータにより最短接続されています(図4)。

 このように播磨理研を含めたSPring-8全体を1つの基幹ルータで一括管理(VLAN構成)させている理由から、JASRIの情報ネットワークチームがその基幹部分を管理しています。




図4 SPring-8ネットワークと外部接続の間にはファイアーウォール(F/W)で隔離



 表1にこれまでのインターネットおよび外部接続速度の経緯を示しますが、予算の都合上、通信費は1998年から上昇させずに、通信業者の回線費値下げに依存して、徐々にスピードアップがされていましたが、今回の兵庫情報ハイウェイの開通により格段の高速化が得られました。

 外部接続に関しては日本の科学技術政策とインターネット通信社会の発展の歴史を反映させて進んで来ておりますが、今後は更にJGNやSuper-SINETの政策に対して働きかけて行くことがより重要であると考えられますので、皆様の多大なご協力をお願いします。



表1 外部接続の経緯


1.インターネット接続

  1993.11. TISN(東京大学理学部国際理学ネットワーク)64kbps

  1995. 1. TISN 512kbps

  1998. 4. IMNET 1.5Mbps

  2001. 4. IMNET 4Mbps

  2002.12. 理研建屋系を全理研ネットに切替、接続100Mbps

  2003. 2. Internet接続をIMNETから阪大経由SINETへ切替4Mbps

  2003. 3. 兵庫情報ハイウェイ(500M)で阪大からSINETへ


2.JGN(JAPAN Gigabit Network)接続の経緯

  大阪大学核物理研究センター接続開始(2001.9)

  横浜理研接続開始(2002.2)

  大阪大学核Bio-Gridに接続開始(2002.9)


終わりに

 今後2003年度の予定としてさらに外部向けのルータ高速化を行った後、ファイヤーウォールの増速(2003.5月)、SINET接続点の増速(2003.8月頃)を計画立案しております。

 最後にこの接続のために多大なご協力を頂いた国立情報学研究所・ネットワークシステム課、及び、兵庫県庁・科学技術局・情報政策課の方々、日本原子力研究所・計算科学推進センターの方々のほか、以下の方々に深く感謝の意を表します。

 日本原子力研究所放射光科学研究センター    井原均様ほか

 大阪大学サイバーメディアセンター       下條真司教授、秋山豊和先生ほか

 兵庫県立粒子線医療センター医療部放射線科長  村上昌雄先生ほか



武部 英樹 TAKEBE Hideki

(財)高輝度光科学研究センター 放射光研究所

ビームライン・技術部門

〒679-5198 兵庫県佐用郡三日月町光都1-1-1

TEL:0791-58-0856 FAX:0791-58-0850

e-mail:takebe@spring8.or.jp


間山 皇 MAYAMA Ko

(財)高輝度光科学研究センター 放射光研究所

ビームライン・技術部門

〒679-5198 兵庫県佐用郡三日月町光都1-1-1

TEL:0791-58-0837 FAX:0791-58-0830

e-mail:maya@spring8.or.jp


酒井 久伸 SAKAI Hisanobu

(財)高輝度光科学研究センター 放射光研究所

ビームライン・技術部門

〒679-5198 兵庫県佐用郡三日月町光都1-1-1

TEL:0791-58-2509 FAX:0791-58-0830

e-mail:saki@spring8.or.jp


瀬崎 勝二 SEZAKI Katsuji

(財)高輝度光科学研究センター 放射光研究所 施設管理部門

〒679-5198 兵庫県佐用郡三日月町光都1-1-1

TEL:0791-58-0813 FAX:0791-58-0880

e-mail:sezaki@spring8.or.jp



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[ - Vol.15 No.4(2010)]
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