Volume 08, No.1 Page 20
1. SPring-8の現状/PRESENT STATUS OF SPring-8
「特定利用 中間評価」について
Intermediate Evaluation of Long-term Proposals
特定利用制度は3年以内の長期にわたってSPring-8で計画的に利用する制度として平成12年度後期から開始しているものです。これまで2000B利用期間(平成12年9月から平成13年1月)に3課題、2001A利用期間(平成13年2月から平成13年6月)に1課題、2001B利用期間(平成13年9月から平成14年2月)に1課題、2002A利用期間(平成14年2月から平成14年7月)に1課題、2002B利用期間(平成14年9月から平成15年2月)に1課題、2003A利用期間(平成15年2月から平成15年7月)に1課題採択され、平成15年2月からは合わせて8課題が実施されます。このうち、平成12年後期に採択された最初の3課題の中間評価を平成13年度後期に行いました(平成14年利用者情報7月号に掲載済)。今回は2回目として、1年半を過ぎた特定利用課題である、平成13年前期に採択された課題について、中間評価を平成14年度後期に行いましたので概要を紹介します。
特定利用の中間評価は利用研究課題選定委員会特定利用分科会において、書類による評価と面接による評価の両方で行いましたが、面接評価の際に評価用書類の内容をふまえて、(1)研究の進捗状況(2)採択時の審査員の意見の反映度(3)成果の発表状況(4)成果の位置づけ、意義(5)3年目の計画の妥当性、の5つの観点から評価を行いました。以下に対象課題の評価結果と研究概要および得られた成果を示します。
〔課 題 名〕:高圧下における実験的精密構造物性研究手法の開発
〔実験責任者〕:高田昌樹(名古屋大学)
〔ビームライン〕:BL10XU
〔評価結果〕:実施する。
〔研究概要〕:
本研究では、高輝度放射光とHeガス加圧のメリットを十分に活かし、ダイヤモンドアンビルセルを使用したときに生じる全ての困難を克服することにより、高圧下における粉末結晶の精密構造物性研究手法を実験的に確立することである。それにより、物性と関連して構造を明らかにする精密な構造物性の研究分野において、電子密度レベルで構造を明らかにする精密な構造解析技術を確立するものである。
〔成果〕:
高圧下における粉末結晶の精密構造解析の手法確立に対しては、試料調整法、静水圧加圧法、IPデータ補正など地道な技術整備が着実になされ、第1段階の目標である10GPa以下における精密構造解析法の標準化は当初の計画どおりに進展している。さらに、いくつかの物質では高圧での電子密度分布の決定や相転移に伴う電子分布の変化などが観測された。
〔成果リスト〕:
(論文発表)
(1)“Compressibility of the MgB2 superconductor” K.Prassides, Y.Iwasa, T.Ito, Dam H.Chi, K.Uehara, E.Nishibori, M.Takata, M.Sakata, Y.Ohishi, O.Shimomura, T.Muranaka, and J.Akimitsu Phys.Rev.B64,012509(2001)
(2)“High-pressure structural analysis of (Nd,Sm) 1/2Sr1/2MnO3:Origin for pressure-induced charge ordering” A.Kuriki, Y.Moritomo, A.Machida,E.Nishibori, M.Takata, M.Sakata, Y.Ohishi, O.Shimomura,and A.Nakamura Phys.Rev.B65, 113105(2002)
(学会口頭発表)
(1)“(Nd、Sm)1/2 Sr1/2MnO3の圧力効果”栗城彰、町田晃彦、守友浩、中村新男、西堀英治、高田昌樹、坂田誠、大石泰生、下村理、日本物理学会2001年秋季大会
(2)“超伝導体MgB2の圧力効果”伊藤崇芳、ダム・ヒョウ・チー、斉藤江盛、植原克之、竹延大志、岩佐義宏、K.Prassides、西堀英治、高田昌樹、坂田誠、大石泰生、下村理、村中隆弘、秋光純、有馬孝尚、日本物理学会56回年次大会
(3)“LiV2O4の圧力誘起電荷整列”武田圭生、清水克哉、石川洋人、田中雅士、風呂本滋行、日高宏之、鷹尾大五郎、小林達生、三好清貴、藤原賢二、竹内潤、西堀英治、高田昌樹、坂田誠、大石泰生、綿貫徹、下村理、日本物理学会57回年次大会