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Volume 07, No.5 Pages 292 - 293

1. SPring-8の現状/PRESENT STATUS OF SPring-8

2002B利用研究課題選定委員会を終えて
Report of the Proposal Review Committee for the 2002B Term

松井 純爾 MATSUI Junji

(財)高輝度光科学研究センター SPring-8利用研究課題選定委員会 主査、姫路工業大学 理学部 Faculty of Science, Himeji Institute of Technology

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はじめに

 SPring-8放射光利用課題申請は、年間応募数の増加が確実に右肩上がりの状態にあるだけでなく、これまでB期よりA期の方が少ない傾向に反して、前回(2002A期)の応募数は逆に多くなったことから、今期はさらに大きな増加があろうと予想していました。その予想通り、前回の643件を100件以上も上回る751件と、過去最大の応募数に達しました。当利用研究課題選定委員会では、この増加に対応すべく、選定の作業について今までにもさまざまな検討を行ってきましたが、今回の審査を終えて、選定過程のある部分では今後根本的な改革を迫られています。


今期の一般課題募集と審査

 2002B期は、2002年9月の第7サイクルから2003年2月の2003年度第1サイクルまでの6ヶ月を利用期間とし、課題募集は4月26日から6月3日まで行われました。別途利用業務部からの報告にあるように、応募課題は過去最大の総数751件(要求シフト数は5321シフト)に達しています。各小分科審査委員による事前評価に続き、6月25日、26日の2日間で最終審査を行いました。その結果を受けて、7月12日の利用研究課題選定委員会で472件(選定率63%、件数としては前回より減少)の課題を採択し、合計4,124シフトを配分することを決定したことを機構側に通知いたしました。結果として、1件あたりの平均シフト充足率は78%となり、前回の80%とほぼ同じ数値を得ることができました。選定(採択)率は前回(81%)よりかなり減少いたしましたが、採択された課題に対してのビームタイムは前回程度を充てることができたようです。このうち成果専有課題が7件ありました。
 分野ごとに見ると「回折・散乱」課題が相変わらず最も多く、「生命科学」がこれに次いでいることには大きな変化はありませんでした。要求シフト数の観点から、応募研究機関では国立大学が約半分を占めていますが、そこへの割り当てられたシフト数は必ずしも多くはなっていません。採択、配分についてのビームライン別、機関別の詳しいデータは利用業務部からの別途報告をご覧下さい。
 今回の審査に際して留意した点は、先に記したように、採択課題に対するシフト数の充足です。平均シフト数を見ても前回とほぼ同じ8.7シフト/課題となっています。なお、今回から、「ナノテクノロジー総合支援プロジェクト」と「タンパク3000プロジェクト」の2分野において、申請者の申し出により、これに適合する課題を一般応募課題と重ねて選定し、採択された課題に旅費等の支援を行う、という新たな支援制度が加わりました。ビームタイム配分において、これらの課題に対する年間配分を特別に考慮するので、後述の特定利用課題の採用に加えて、一般課題に対するシフト数配分条件はより厳しくなる予想です。


特定利用課題の募集と審査

 特定利用研究制度は、ビームタイムを集中的、計画的に利用することによって顕著な成果が期待される課題に対して、最大3年の利用期間を与えることを目的に2000B期からスタートした制度であることは周知の通りです。これには過去、2000B(瀬戸、田村、早川課題)で3件、2001A(高田課題)、2001B(菅課題)、2002A(小泉課題)で各1件ずつの採択がありました。今回は4件の応募課題に対して、5月下旬の一次書類審査、6月3日の二次面接審査を経て、最終的に「光照射放射光X線粉末解析による光誘起現象の研究」(守友課題)が採択されました。初年度の3件の課題に対して、所期の計画が達成されているかどうかの中間評価が行われ、研究の推進についての審査がなされ、継続することに決しました。


その他
(1)支援プロジェクト課題の展開


 上述のように、「ナノテクノロジー総合支援プロジェクト」と「タンパク3000プロジェクト」課題を一般募集して、採択されたものに対して重点的に旅費等の援助を行う仕組みができたことは、厳しい予算体制の中で救いになったと思います。このようなビームシフト重点配分の考え方は監督官庁側の強い要請によるところでもあり、施設主導による原資の重点配分の傾向はこれからも不可避のこととなりそうです。利用者側も、そのことを十分に理解した上で、科研費や助成金などの外部資金を自ら確保するなど、施設予算に依存しない努力工夫が必要になるでしょう。


(2)産業利用分野、生命科学分野でのビームタイム留保

 産業利用については、産業利用ビームライン(BL19B2)ができたことに呼応して、「産業利用分科会」を発足させたことは前回報告しました。ここではビームタイムの全部をはじめに配分するのではなく、一部を分科会で留保し、必要に応じて利用者に配分する仕組みも作りました。この留保ビームタイムの考え方は、生命科学分野でもタンパク結晶解析などで行われており、今回もBL41XUやBL38B1対象に留保されています。


(3)審査プロセスの効率改善

 課題審査は現在、生命科学(L)、散乱・回折(D)、XAFS(X)、分光(S)、実験技術・方法(M)、産業利用(Ⅰ)の各大分科のもとに、L、D、Sではそれぞれ複数の小分科会に分かれて行われております。しかし応募課題数の増加に伴い、一部の分科では、決められた時間の中で、厳正な審査を行うための委員への物理的、精神的負担がもはや限界にまで大きくなっています。利用者への採択通知の時期を考慮すると、審査期間を延ばすことは不可能で、結局、審査に携わる委員の数や外部審査委員制度導入などメンバー構成を再検討し、審査の質を落とさずに運営過程や方法を改善する方策の立案が迫られています。上部組織であるJASRI諮問委員会では、予算状況などの現実を踏まえて、当課題選定委員会のあり方や、前記重点課題の設定方法などを鋭意審議中です。利用者の皆さんからも積極的なご意見をお寄せ下さるようお願いする次第です。



松井 純爾 MATSUI Junji
姫路工業大学 大学院 理学研究科 物質科学専攻 教授
〒678-1297 兵庫県赤穂郡上郡町光都3-2-1
TEL:0791-58-0233 FAX:0791-58-0236
e-mail:matsui@sci.himeji-tech.ac.jp



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[ - Vol.15 No.4(2010)]
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