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Volume 07, No.3 Pages 169 - 172

1. SPring-8の現状/PRESENT STATUS OF SPring-8

トライアルユース実施報告書
Report on the Trial-Use Program

古宮 聰 KOMIYA Satoshi

(財)高輝度光科学研究センター 放射光研究所 利用研究促進部門I JASRI Materials Science Division

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1.概要

 (財)高輝度光科学研究センター(JASRI)では、産業界が抱えている開発分野における問題の解決に向けて大型放射光施設SPring-8の放射光を利用することを積極的に支援するトライアルユースを、兵庫県と連携して実施しました。

 トライアルユースは、平成13年度補正予算(205,600,000円)により実施したもので、全国の産業界等が抱える研究開発分野、応用開発分野等に係わる問題のうち、SPring-8の放射光利用により技術的なブレークスルーが期待できる課題を対象に、産学官でSPring-8課題実験を実施することにより、地域産業活性化のためのイノベーション、新産業の創出を促進し、雇用の拡大・創出を支援するものです。

 この目的に添って、広く提案を募集し、JASRI内に設置されたトライアルユース委員会によって課題を選定し、研究の進め方から試料作製、必要な実験器具・測定装置の整備などの経費を含めJASRIの専門技術者が支援するとともに、実際のSPring-8を使った利用実験では、必要に応じて直接技術的な支援も行いました。


2.経緯

1)トライアルユース課題の公募

 (1)ホームページで11月21日トライアルユース課題を公募し、12月15日に締め切りました。

 (2)35件のトライアルユース課題の応募がありました。内容は、提案課題を産業利用ビームライン(BL19B2)の利用研究課題(追加)、R&Dビームライン利用研究課題、JASRI留保ビームタイム課題と専用ビームラインの利用課題からなる。それらの応募課題は、トライアルユース委員会と各カテゴリーの所轄委員会で審議し、選定されました。


2)トライアルユース委員会での課題選定

 JASRIにトライアルユース委員会を設け、応募されたトライアルユース課題の審査を行いました。審査基準は以下の通りです。この審査によって、35件の応募のうち33件をトライアルユース課題に指定しました。

指定基準

・産業界新規ユーザが提案している課題

・地域活性化が期待される課題

・産業界の課題解決に資する課題

・産業界または産官学による提案


 トライアルユース委員会


委員長:菊田惺志

委 員:松井純爾(姫工大)、岡本篤彦(中部大学)壽榮松宏仁(JASRI)、植木龍夫(JASRI)古宮聰(JASRI)、河西俊一(JASRI)

事務局:古池治孝(JASRI)


3)技術支援

 JASRIが全所的体制を整え、姫路工業大学(松井純爾教授)と連携してトライアルユース指定課題33件の実施を強力に支援しました。技術スタッフは、産業応用・利用支援グループ等と姫路工業大学X線光学講座からなり、課題ごとに担当者をおき、技術相談から実験企画、必要な資材の調達・実験準備、実験指導・支援を、必要に応じてきめ細かに対応しました。


 トライアルユース実行組織


責 任 者:菊田惺志

  副  :古宮聰、松井純爾

サブリーダー:池田直、篭島靖、廣沢一郎

  副  :梅咲則正、中前勝彦

スタッフ:池本夕佳、伊藤真義、岡島敏浩、梶原賢太郎、北野彰子、小寺賢、佐藤真直、津坂佳幸、本間徹生、水牧仁一朗

事 務 局:古池治孝


4)放射光利用実験

 2002年1月~3月の期間に、トライアルユース課題として指定を受けた33件のSPring-8放射光利用実験が実施されました。


5)報告

 3月25日速報会を大阪で開催し、実験が実施された23件の課題について、各実施者から速報がなされました。トライアルユース参加者から26名、一般から18名の参加がありました。3月末の全利用実験終了後、5月17日東京で成果報告会を開催するとともに、報告書を作成する予定である。


3.実施結果および特徴

 トライアルユースに参加した全ての提案および機関と人員を表3と表4に示します。これらの実績を整理しつつ、特徴などを以下にまとめる。

1)提案及び採択結果

・提案総数:35件

  内)新規企業参加提案数:20件

・採択総数:33件(実施困難な内容のため2件が不採択)

2)参加機関および人員(33件の採択提案に対して)

・全参加規模:157名/58機関

  内)90名/36社、67名/22機関

  内)新規参加企業:15社(化学・繊維関連企業:8社、他)

  内)地域企業:4社(赤穂化成、アース製薬、大関化学、ダイソー)

  外)支援スタッフ:27名(JASRIと姫工大)

・申請:75名/32社、41名/18機関

・利用実験参加:86名/31社、62名/18機関

3)実施ビームライン

・共用ビームライン:BL01B1,BL02B1,BL02B2,BL09XU,BL19B2,BL46XU

・専用ビームライン:BL16XU,BL16B2,BL24XU

4)特徴

 ここでは、課題内容からみた特徴についてまとめる。但し、必ずしも明瞭に分類できない課題もあり、数値は目安程度で理解して頂きたい。

 (1)課題内容

 ・各社の個別課題:30~40%

 ・業界の共通課題:60~70%

   被膜の内部応力解析(重機、重電)

   単繊維の構造解析(繊維)

   ULSI用高誘電体(エレクトロニクス)

   二次電池・燃料電池用材料(電力、ガス、エレクトロニクス)

 (2)対象製品

 ・現在:20~30% 工業用触媒電極、セメント

 ・将来:70~80% 次世代ULSI、電池、磁気記録媒体

 ・分野:エレクトロニクス21%、高分子・繊維

   18%、被膜(金属)15%、電池12%、構造材12%、その他21%

 (3)実験内容

 ・試験的利用(まず経験):10%

 ・現状技術の自社課題への適用:40~50%

   屈折コントラストによる映像・動画観察(発泡Al、タイヤ、虫)

   工業用触媒電極、セメント、単繊維の構造解析(繊維)

 ・新技術への挑戦:40~50%

   プロセス条件やデバイス動作下でのリアルタイム計測

   次世代ULSI用新材料物性評価技術の探索

 (4)産官学の取組

 ・学官・スタッフ(JASRI・姫工大)主導

   被膜の内部応力、電池、単繊維構造

 ・産学官共同

   次世代ULSI用新材料物性評価技術の探索


 全体として概観すると、トライアルユースの利用は、各社の実質的な研究開発業務の遂行に活かそうとした取組であったと推測されます。個々の課題に対する具体的な実験内容の報告は、いずれ報告書としてまとめると同時に、従来のexperiment reportにも提出される予定であります。そちらを参照されたい。


4.最後に

 本企画は、産業界の利用促進に向けて、とにかく経験することが重要との認識で立案されました。補正予算の制約から、短い募集期間であったにも係らず、予想を上回る応募がありました。施策の趣旨に鑑み、可能な限り実験を実施して頂いたが、逆に、課題あたりのシフト数は抑えざるを得ませんでした。それにもかかわらず、多くの課題で予想以上の成果を挙げることが出来たようであります。同時に、今後の産業利用の進め方への指針も多く得られました。これは、ユーザの努力と同時に、JASRIと姫路工業大学の直接担当スタッフはもとより、他の共用ビームライン担当者や専用ビームラインスタッフ、JASRI事務部門など、様々な方々の支援の賜物であります。ここに感謝いたします。


資料

・トライアルユース委員会および実行組織

・トライアルユース実施課題リスト

・参加機関と参加人員


古宮 聰 KOMIYA Satoshi

(財)高輝度光科学研究センター放射光研究所

利用研究促進部門Ⅰ

〒679-5198 兵庫県佐用郡三日月町光都1-1-1

TEL:0791-58-0935 FAX:0791-58-2752

e-mail:komiya@spring8.or.jp



表3 参加機関と参加人数




表4 トライアルユース実施課題リスト




Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794