Volume 06, No.1 Pages 59 - 61
5. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT
X線・中性子線を利用した高温高圧下での結晶科学に関する国際ワークショップ
International Workshop on Crystallography at High Pressure and High Temperature Using X-rays and Neutrons
日本原子力研究所 関西研究所 放射光科学研究センター Synchrotron Radiation Research Center, JAERI Kansai Research Establishment
2000年9月30日から10月3日までの4日間、表記のワークショップが、SPring-8普及棟会議室において開催された。本ワークショップは、国際結晶学会高圧力委員会(Commission on High Pressure of the International Union of Crystallography)主催で行われてきたもので、1996年のESRF、1998年のAPSに引き続き、今回で3度目の開催である。今回は、下村理実行委員長のもと、日本原子力研究所放射光科学研究センター、高輝度光科学研究センター、ならびに国際結晶学会高圧力委員会が主催し、日本結晶学会、日本高圧力学会、日本放射光学会、中性子研究連絡会、ならびにSPring-8利用者懇談会が協賛する形で会議が運営された。
参加者は合計73名で、そのうち海外からの参加者は38名(カナダ1、フランス2、ドイツ6、イタリア2、ロシア2、スウエーデン4、スイス4、イギリス4、アメリカ7、インド3、韓国1、ベネズエラ1)であり、口頭発表が25件(シングルセッションですべて招待講演扱い)、ポスターでの発表が43件あった。
会議では、Random System、Novel Structure of Simple System、Geophysics、Crystal Chemistry、Material Scienceの各セッションが行われ、高圧下での結晶科学についての種々の討議が行われた。本来ならば、会議での発表内容の詳細について報告すべきであるが、これについては、同様の原稿を放射光学会誌に書いているので(14巻1号、20001年2月28日発行予定)、興味ある方はそちらを読んでいただくこととし、ここでは、会議の運営にあたって、問題になったこと、好評だったことなどを以下に記述する。今後SPring-8サイトで国際会議を開催される方の参考になれば幸いである。
会議の開催日程のアナウンスや参加者との連絡などに、ホームページや電子メールをできるだけ活用するというのは、もはや常識であるが、今回は、80人程度の中規模人数の会議とあって、最初から、印刷したサーキュラー類は一切発行せず、すべての連絡をこれらに頼った。会議のために、専属のスタッフを置いたわけではなく、皆で分担して、日ごろの業務の間をぬって、準備を行うことにしたが、結局会議前の最後の1ヶ月は、外国からの参加者とのメールのやりとりに忙殺されることになった。原研事務室の島村明子さんの超人的な整理能力がなければ、会議の開催までこぎつけられなかっただろう。また、ビザ取得関連の書類準備には、JASRIの松平千恵美さんに相当無理をお願いすることとなった。
会議参加者の大多数は、空港(または国内各大学)からJR新幹線経由、相生からバスというルートで来られるが、会議開催日を土曜日にしていたため、運行ダイヤの関係でごく一部のバスしかSPring-8まで来ず、ほとんどの参加者が科学公園都市停留所で下ろされてしまうという問題が生じた。結局マイクロバスを1日チャーターし、バスの到着時刻に合わせて、SPring-8—公園都市間をピストン輸送するということにしたが、無駄な出費になったことは否めない。また、相生駅でのバスの乗り換えが分かりにくいとの苦情が多かった。あらかじめ、相生駅の地図などを配布しておいても、結局は、駅構内での表示が大きくものを言う。駅改札出口付近に、数日間だけ会議開催のポスターをはって、バス乗り場はこちらとの掲示をしたいと、JRにお願いしたが、当初は、大きな難色を示された。会議に限らず、SPring-8を訪問する外国人は大勢いるのだから、バス乗り場へのもう少し親切な英語表示を恒常的に駅構内に設けるよう、SPring-8はJR側と交渉すべきと思う。
会場となった普及棟会議室は、この規模の人数のワークショップを開催するには、非常に便利であった。OHP、パソコンでのプレゼンテーション、マイクなどの設備は完璧である。ポスターセッション会場が隣接でき、ロビーがコーヒーブレイク用に利用できるのもよい。また、隣の会議室を運営者側のオフィスとして使用できるのもありがたかった。ネットにつながったパソコンを4台(内マック1台)参加者用に開放したが、利用率は大変高かった。
宿泊に関しては、ほとんどの参加者がSPring-8の交流施設を利用し、概ね好評であった。JASRI総務部には、多くのご迷惑をかけたが、滞在期間の変更など(これが実に多い)にも臨機応変に対応していただけ、非常にありがたかった。ただ、これも以前から指摘されていることであるが、シングルルームしかないと言うと、何故?という質問が多くでる。会議には、外国からご夫婦で参加される方もおり、そうしたカップルは別々の部屋で就寝することを嫌われることが多い(私ならむしろ喜ぶが)。今回は、そのような方には、先端支援センターにお泊りいただくことにしたが、会場へのアクセスに、不便をきたす。SPring-8は、実験のためだけでなく、このような会議などでの利用も今後ますます増えていくものと思われるので、せめてツインルームの宿泊施設をいくつか用意することが必要になるのではないだろうか。
会議の主催者側として、食事をどうするかは、もっとも頭を悩ませるところである。御存知の通り、SPring-8周辺、徒歩で行ける範囲に食事ができるところは極めて少なく、必然的に、会議期間中の食事は、SPring-8構内の食堂でということになる。SPring-8の食堂は、この手の共用施設のそれとしては、極めてレベルの高いものであると思うが、やはり4日間のすべての食事がここで、ということになると少し躊躇する。会議の本質はそこにはない、との意見も当然あるであろうが、やはり参加した会議の印象のかなりの部分が食事のよしあしで左右されることも否定できず、主催者側としては、なんとかバラエティにとんだものを準備したかった。結局、朝食は、通常のビュッフェスタイル、昼食、夕食は、食堂の特別セットメニューとし、ゲットトゥゲザーとバンケットをパーティー立食形式で、ということになった。特にバンケットについては、食堂以外で開催できないかと、最後まで探しまわったが、80人程度が収容可能で、送迎の問題がクリアでき、かつSPring-8から片道30分程度の範囲内という条件を満たす場所を見つけることができず、結局断念せざるを得なかった。しかし、SPring-8食堂(全食)の協力で、限られた予算の中で、かなり豪華なメニューを用意していただくことができ、感謝している。また、毎朝姫路の店まで買いつけに行ってもらったパンを準備したが、連日午前中のコーヒーブレイク中に、すべて捌けていた。なお、最終日の夕刻の会議終了後、その夜もSPring-8に宿泊する外国人参加者のために、日本食レストラン(夢前亭)へのツアーを開催し、好評であったことを付け加えておく。
会議のアトラクションとして、SPring-8表千家茶道部の皆さんに協力いただき、お茶会を交流施設ロビーにて開催し、外国人研究者に好評を博した。初日の参加登録をすませたすぐ後、会議の始まる前という、まだお互い打ち解けない時間帯での開催であったにもかかわらず、外人さんは興味津々で、道具や作法、はたまた日本文化について、部員の方は質問攻めにあっていた。このお茶会は大成功であったが、部員の方々にかかる負担が非常に大きいことも事実であり、今回は休日に出てきてもらって、ほとんどボランティアでやって頂いたが、今後も同様のことを依頼するのであれば、必要な経費、先生へのお礼、部員の方々の処遇などについて、きちんとしたルールを決めておくべきであろう。
参加登録の受け付けで、デジタルカメラで写真をとり、顔写真つきの参加者リストを会議開催中に作って、昼間撮影した集合写真とともに、バンケットの会場で皆に配るということをやったが、これも好評であった。ただこの気まぐれなアイデアのために、カメラ担当の金子洋氏は、会議の裏で名簿の編集とコピー作業のために、膨大な労働を強いられることになった。会議参加者人数がこれ以上になると、おそらく不可能であったろう。
BL04B1高圧実験装置SPEED-1500の前にて
交流施設の和室を毎晩開放したが、ここで、連日各種アルコールをともなっての議論(宴会?)が繰り広げられた。靴をぬいで畳にあがって座り込むというスタイルが、外人さんにとって新鮮だったのか、毎晩大変遅くまで続いた。他に遊びに行く所もないという状況も味方して、研究者同士の親睦がここで大いにはかられたようである。特に最終夜に繰り広げられた国際腕相撲トーナメントは、参加者一同興奮のるつぼと化す盛り上がりであった。夜の宴会部長だったJASRI山田高広氏の才能は、はかり知れない。
いろいろ不手際はあったと思うが、参加者の多くからThis is the best workshop I have ever attended ! という誉め言葉を頂き(社交辞令とわかっていても)、準備、運営に携わった苦労が報われた気がした。最後に、本会議は、SPring-8高圧研究者のチームワークと、原研、JASRI事務の方々の多くの協力のおかげで、無事に終えることができたことを記し、ここに深く感謝いたします。
交流施設和室で繰り広げられた国際腕相撲大会(男女優勝者同士によるエキシビジョンマッチ)
内海 渉 UTSUMI Wataru
日本原子力研究所 関西研究所 放射光科学研究センター
〒679-5148 兵庫県佐用郡三日月町光都1-1-1
TEL:0791-58-2632 FAX:0791-58-2740
e-mail:utsumi@spring8.or.jp