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Volume 05, No.6 Pages 374 - 375

所長室から
From the Director’s Office

上坪 宏道 KAMITSUBO Hiromichi

(財)高輝度光科学研究センター 副理事長、放射光研究所長 JASRI Vice President, Director of JASRI Research Sector

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 去る10月19、20日に第4回SPring-8シンポジウムが開催された。SPring-8シンポジウムでは所長が現状報告を行うことになっているが、その際、まだ決定していない事項でもユーザーに大きく関係する問題については、検討状況を報告するように心がけている。本稿ではその中の幾つかについて、少し詳しく説明することにした。

 

1.今後の運転計画
 SPring-8利用状況を見ると、共同利用申請課題の要求シフト数の総計は、実際に提供できるシフト数を大幅に超えている。従って、利用研究課題選定委員会は毎期の課題選定に当たって、課題採択率を落として採択課題のシフト充足率を上げるか、シフト充足率を落として課題採択率を上げるかの選択に迫られている。例えば2000Aでは、要求シフト数の総和は実験に供されたシフト総数の1.9倍になっており、平均課題採択率が78%、採択課題のシフト充足率は68%である。
 この状況を緩和する一つの方策は、ユーザー時間を増やすことである。JASRIでは加速器の運転時間増と運転時間に占めるユーザー時間の割合を増やす方策を検討してきた。具体的には、長期運転停止期間後の立ち上げ調整期間を短縮するとともに4週間サイクルを新設して、年間の加速器運転時間を約5400時間にし、ユーザーにビームを提供する時間を4300〜4400時間に増やす案である。これによってユーザーが利用できる時間は年間800時間近く増加する。
 この案を実行するに当たっては、ビームライン担当者に過度の負担が来ないようにする対策が必要である。既にこの欄でも取り上げたが、これまでも多くのビームライン担当者が休日出勤や深夜に及ぶ作業を余儀なくされてきた。その要因は比較的短いシフト数の実験課題が多くなって、休日に交代する実験チームが増えていること、また、ビームライン/実験ステーションに習熟していない実験者が少なからずいて、担当者の支援を要求するケースが減らないためである。ビームライン担当者を大幅に増強することが主な解決策であろうが、我が国の現状ではビームラインに交代制を導入するほどの職員数(人件費)が認められる可能性はないといってよい。施設者側としては、今回の措置が実現すれば多くのユーザに新たな実験の機会が増えることを理解していただき、ビームライン担当者の時間外勤務を減らすよう、ユーザーの協力をお願いしたい。
 SPring-8のような先端的な研究施設では、装置を熟知した研究者がSPring-8の特性を最大限に生かして行う実験から、優れた成果が生み出されている。SPring-8でユーザーが指向しているのはこのような研究であることは疑いなく、それを可能にするよう努めるのがJASRIに課せられた重要な使命であると私は考えている。


2.放射光研究所の組織替え
 JASRIでは、SPring-8が本格的な利用フェーズに入る来年度から、放射光研究所の組織を効率的な利用支援を行えるように変えることを検討している。詳細はまだ検討中で最終案を得ていないが、その骨子をここに紹介する。
前節で述べたように、人員枠の大幅な拡充が期待できない状況下で、増え続けるユーザーに対応して共同利用の実をあげるためには、できるだけ少人数でビームラインを管理運営し、同時にビームラインの操作性向上と高度化を推進できる態勢をつくることが必要である。また、優れたビームラインサイエンティストを確保・育成することも必要で、そのためには先端的な研究開発を行える環境を整えることが重要である。さらに、SPring-8産業利用を推進するために新設されたコーディネータ制度を効率的に運用することも必要で、新しい研究所の組織はこのような諸条件を満たすものでなければならない。
 ところで現在、放射光研究所には加速器、ビームライン、実験、利用促進、施設管理の5部門があり、これまでは共用ビームライン全部を利用促進部門が担当してきた。新しい組織案では、このうちビームライン部門、実験部門、利用促進部門を再編成して、共通基盤技術を担当する部門と共用ビームラインを担当する2つの利用系部門(例えば物質科学と生命・環境科学の2部門)に再編成する。各部門(施設管理を除く)は4〜5グループで構成され、グループには幾つかのチームをおいて、それぞれの責任を明確にする。ビームラインに関していえば、各グループが3〜10本のビームラインに責任を持つようにし、チームは平均して2〜3本のビームラインを担当する。チームには複数の研究者/技術者と技術職員/ポスドクが所属し、平均するとビームラインあたり研究者/技術職員を合わせて2名以上になるようにしたいと考えている。上記の数字は全て平均した値であり、実際にはビームラインの性格や研究分野によって差異が生じてくる。
 利用系部門に属するグループの業務は、担当するビームラインの維持・管理・運用に加えて、施設者に留保されたビームタイムを利用した関連実験手法・技術の研究開発である。なお、グループ間の連携をよくし共同して研究開発を進めるとともに、外部研究グループとの共同研究も活発に行われるようにしたいと思っている。さらに、加速器を含めた高度化の対応には、高度放射光技術開発グループを設置して推進する。そのほか、ユーザーがSPring-8を使いこなせるようにするためのオンビーム研修会や講習会を増やして、多くの利用者が参加できるように努める。
今回の人事公募に当たっては、ビームラインを担当する研究者だけでなく利用系部門のグループリーダー(サブリーダー)の公募を行うことにしている。


3.ビームライン整備状況
 現在までに完成して実験に供されているビームラインは29本、調整中のものは6本、建設中のビームラインが6本である。このうち共用ビームラインはR&Dビームライン3本を含めて24本である。
 新しいビームラインの整備計画は、本年度の補正予算で要求している原研(ID、量子構造物性研究BL)、理研(BM、ハイスループットBL)のビームライン、共同利用の分光分析ビームライン(ID)1本と、来年度予算で要求している理研の軟X線ビームライン(ID)1本である。これらはまだ予算要求の段階にあり建設が認められるかどうかは不明であるが、補正予算の場合、予算が認められれば平成13年度末までに完成させなければならない。
 一方、専用施設として創薬産業ビームラインの計画趣意書が日本製薬工業協会から提案され、専用施設検討委員会で審査されている。これは標準的な蛋白質立体構造解析用の偏向磁石ビームラインで、平成14年3月に完成する計画である。



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[ - Vol.15 No.4(2010)]
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