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Volume 05, No.5 Pages 315 - 324

2. SPring-8の現状/PRESENT STATUS OF SPring-8

第6回(2000B期)利用研究課題の審査課題について
The 6th Proposals Accepted for Beam Time at the Public Beamlines of SPring-8

(財)高輝度光科学研究センター 利用業務部 JASRI Users Office

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1.課題採択日程

(募集案内)

5月15日   課題公募についてプレス発表及びSPring-8ホームページに掲示

(一般課題)

6月17日   一般課題募集締切

(郵送の場合、当日消印有効)

7月10、11日 分科会による課題審査

(特定利用課題)

6月9日    特定利用課題募集締切

6月12~15日 特定利用書類審査

6月19日   特定利用分科会による面接審査

(課題選定及び通知)

7月25日   利用研究課題選定委員会による課題選定

8月4日   機構として採択し、応募者に結果を通知


2.採択結果

 今回の公募では582件の課題応募があり、前回の424件に比べ大幅に増加した。この中には成果専有利用の応募6件、また、今回から募集を開始した特定利用への応募9件が含まれている。分野別、所属機関別、ビームライン別の応募数及び採択数を表に示す。

 今回の採択結果は、件数では応募582に対し採択380(採択率65%)、シフト数では応募6,155に対し採択2,821(採択率46%)であった。また、採択された課題の平均シフト数は7.4であった(前回の採択時では、それぞれ77%、51%、9.6)。採択された課題について、要求シフト数と配分シフト数の比、すなわちシフト充足率は、平均で71%となった。前回の共同利用におけるシフト充足率は68%であったことから、今回わずかではあるが増加している。シフト充足率の増加に対して、採択率は課題数から見た場合も(前回の77%から65%に)、配分シフト数から見た場合も(前回の51%から46%に)ともに減少した。この原因として、今回応募件数が大幅に増加したことと今回の共同利用においては利用期間が短いことから配分できる総シフト数が約2,800シフト(前回約3,100)と前回より少なかったことが考えられる。

 採択課題数の多かったビームラインは、BL40B2(構造生物学2)の45件(1課題あたり3.5シフト)、BL41XU(構造生物学1)の38件(同3.0シフト)、及びBL01B1(XAFS)の33件(同4.7シフト)であった。特に、BL40B2では前回の13件から大きく増加した。当然ながら、これらのビームラインでは1課題あたりの配分シフト数は少ない。これとは逆に、採択課題数が少なかった共用ビームラインはBL08W(高エネルギー非弾性散乱)における10課題(1課題あたり15.6シフト)であった。また、ビームラインごとの採択率が低かったのはBL39XU(生体分析)の37%であり、以下BL09XU(核共鳴散乱)50%、BL47XU(R&D1)50%、BL02B1(結晶構造解析)52%と続く。

 研究分野別の採択課題数は、散乱・回折、生命科学、分光、XAFS、実験技術方法の順であった。この順位は前回と同様である。また、採択課題の実験責任者の所属機関別では、国立大学が全体の半分以上を占めていることはこれまでの共同利用を通じて変わっていない。前回に比べて件数が増えているのは、私立大学、国立研究機関、公益法人、民間企業、そして海外である。

 今回の公募から、特定利用課題の募集が開始された。特定利用は、通常課題の実施有効期限が6ヶ月であるのに対し、3年以内の長期にわたって計画的にSPring-8を利用することによって顕著な成果を期待できるものとされている。今回の公募では9件の応募があり、そのうちから3件が採択された。審査は外部の専門家を含む特定利用分科会での書類審査、及び2グループに分けての面接審査の2段階で行われた。採択された課題については概要を後述する。

 成果専有利用として6件の応募があった。この6件に関してJASRI責任者による公共性・倫理性の審査と技術的実施可能性及び実験の安全性の審査が行われた。さらに要求シフト数が対象ビームラインのビームタイムの10%に収まっていたことから、6件とも採択された。


3.利用期間

 2000B共同利用の利用期間については、当初今年は夏期停止期間中における大型工事のため装置調整にかかる時間を長く確保する必要があることから、共同利用期間を10月初めから12月までとしていた。しかしながら、これでは共用ビームライン1本あたりのビームタイムが125シフトにしかならず、前回の204シフトはもとより、前々回の139シフトに比べても著しく短いものとなり、共同利用への影響が懸念された。そこで、昨年と同様年初めのサイクルである2001年第1サイクルを装置調整時間とする計画であったものをユーザータイムとして利用することとし、その分を今回臨時の措置として、第6回共同利用期間に加えることとした。この措置によって、今期のビームタイムを156シフトとすることができた。このことによって、次期第7回共同利用(2001A)は平成13年2月から開始され、共用ビームライン1本あたりのビームタイムは230シフトとなる予定である。

 従来からこのような共同利用の前期と後期の利用時間の長短について指摘されてきた。利用時間の増加とともに、この利用時間のアンバランスの解消が今後とも検討される予定である。


4.利用対象ビームライン及びシフト数

 今回の募集で対象としたビームラインは、共用ビームライン19本(R&Dビームライン2本を含む)とその他のビームライン5本(原研ビームライン3本及び理研ビームライン2本)である。このうち共用ビームラインについては、前期2000A共同利用期間の途中で追加募集し、平成12年4月から供用を開始したBL40XU(高フラックス)及びBL43IR(赤外物性)の2本については、今回本格的な利用研究に提供された。しかしながら、そのうちのBL40XUに関しては引き続いて調整などを行う必要があることから、ビームタイムの一部を施設者側で確保した。

 今回、第6回共同利用期間のビームタイムは合計で65日195シフトあり、共用ビームライン1本あたりではビームラインの調整や緊急課題用などにJASRIが留保する20%を除く156シフトがユーザータイムとなる。ユーザーが利用可能なビームタイムは、これにR&Dビームラインの30%のビームタイム及び原研・理研から提供されるビームタイムを加えて合計約2,960シフトとなった。

 今回の公募及び採択では、生命科学分科における蛋白質結晶の出来具合に応じて分科会がシフト数を配分するために留保した分や立ち上げが継続しているため一部のビームラインのビームタイムを装置整備に回すなどした結果、共同利用期間に利用されるビームタイムは約2,820シフトとなった。


5.生命科学分野におけるビームタイムの留保

 生命科学分野におけるSPring-8の利用では、特に実験試料の特殊性から、短い時間でもいいから試料の出来具合をチェック出来るような利用をしたい、試料が出来たときに緊急に利用したいと言った要望が強い。このような要望に応えるため、前回の課題採択では生命科学分科会でBL41XU(構造生物学1)のビームタイムを留保し、緊急課題に準じた取扱いで利用を行った。今回も、生命科学分科会ではBL41XUのビームタイムを43シフト留保した。この留保シフトの取扱いについては、前回同様緊急課題に準ずる扱いにすることとするとともに、各サイクルに均等に割り振りし、申請を受け付けることとした。申請の際には実験の必要性がわかるようにしていただき、それを分科会において審査されることとなった。詳しくは利用業務部にお問い合わせいただきたい。


6.特定利用課題の採択

 2000B共同利用からSPring-8特定利用を開始した。

今回採択された3件の課題は、平成12年10月から3年以内に実施していただくものである。今回採択された3件の研究課題の概要を以下に示す。

(1)超臨界金属流体の静的・動的構造の解明

 実験責任者:田村剛三郎(広島大学総合科学部)

 利用するビームライン:BL04B1、BL04B2、BL35XU

 概要:

 超臨界流体は液体でもなく気体でもない特異な中間状態にある。そこでは、密度という平均量で状態を律しきれず、むしろ密度のゆらぎのような平均量からのずれが問題になり、それが様々な物性を支配する。本研究では、1500℃、1500気圧を超える高い臨界点をもつ金属流体について、提案者が独自に開発してきた実験手法をベースとし、それに強力X線源としてSPring-8の放射光を利用することにより、水銀やセレン、アルカリ金属等の超臨界金属流体の静的・動的構造を解明することを目的とする。X線回折測定により短・中距離構造について、またX線小角散乱測定により密度ゆらぎ等の長距離構造について、さらにX線非弾性散乱測定から超臨界領域での動的構造、すなわち原子分子の離合集散についての様相を明らかにする。


(2)核共鳴非弾性散乱による元素およびサイトを特定した局所振動状態密度の研究およびその測定法の開発

 実験責任者:瀬戸 誠(京都大学 原子炉実験所)

 利用するビームライン:BL09XU

 概要:

 物質の電気的、熱力学的性質は、不純物原子の存在により大きな影響を受けることが知られている。本研究は、放射光核共鳴非弾性散乱法による特定の元素の共鳴励起過程をもちいた非弾性散乱測定により、特定の原子の振動状態を直接観測しようとするものである。そのため、まず非弾性散乱実験をより多くの核種で効率的に行うことを可能とするためのモノクロメータとAPD検出器系の開発を行い、電子状態の違いから各原子の同定を行うことによるサイト毎の振動状態密度測定法を開発する。それらを用いて金属・半導体、金属酸化物等の物質中における局所的な振動状態密度の測定を行い、局所的な振動状態と物性の相関について明らかにする。


(3)硬X線マイクロビームを用いる顕微分光法の開発

 実施責任者:早川 慎二郎(広島大学 工学部応用化学)

 利用するビームライン:BL39XU

 概要:

 本研究では非球面全反射ミラーを用いたX線集光光学系を用いて20keVまでの範囲でエネルギー可変の強力X線マイクロビーム(1μm径以下、フラックス1010個/s以上)を実現し、蛍光X線法による微量元素の定量的イメージング、マイクロXAFS法の開発、微小部での高分解能蛍光X線分光、偏光顕微鏡の開発を行う。これにより材料や生体組織中の局在する微量元素について高感度の測定を可能にする。


      SPring-8利用研究課題


 第1回利用期間:H9.10~H10.3 (応募締切:H9.1.10) 応募198件、採択134件

 第2回利用期間:H10.4~H10.10 (応募締切:H10.1.6) 応募305件、採択229件

 第3回利用期間:H10.11~H11.6 (応募締切:H10.7.12) 応募392件、採択258件

 第4回利用期間:H11.9~H11.12 (応募締切:H11.6.19) 応募431件、採択246件

 第5回利用期間:H12.2~H12.6 (応募締切:H11.10.16) 応募424件、採択326件

 第6回利用期間:H12.10~H13.1 (応募締切:H12.6.17) 応募582件、採択380件






 2000B利用研究課題一覧(第6回共同利用期間:H12.10~H13.1)








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[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794