Volume 05, No.3 Pages 184 - 185
2. SPring-8の現状/PRESENT STATUS OF SPring-8
共用施設の利用研究課題選定に関する基本的考え方の制定について
Concept on the Proposal Review for the Public Beamtimes at SPring-8
SPring-8の共同利用における利用研究課題の選定に関しては、平成7年12月に行われた諮問委員会第1号答申「共用施設の利用研究課題選定に関する基本的考え方について」[1]に基づいて実施されてきた。答申以降、これまでの共同利用の実施を通じて、新しい制度の導入などが検討されてきた。
今回、特定利用制度の新設や利用研究課題選定における諮問委員会及び利用研究課題選定委員会と財団法人高輝度光科学研究センターとの役割の明確化が諮問委員会で了承されたことを受けて、財団として新たに基本的考え方を制定した。この基本的考え方は、答申1号に上記の事項が追加されたものである。以下にその内容を紹介する。
共用施設の利用研究課題選定に関する基本的考え方
(平成12年4月1日決定)
放 射 光 利 用 研 究 促 進 機 構
財団法人高輝度光科学研究センター
放射光利用研究促進機構(以下、「機構」という。)は、諮問委員会第1号答申及び追加意見等に基づき、「共用施設の利用研究課題選定に関する基本的考え方」を次の通り決定する。
「特定放射光施設の共用の促進に関する法律(平成6年法律第78号)」及び同法第4条第1項の規定に基づく「特定放射光施設の共用の促進に関する基本的な方針」に基づき、機構は、利用研究課題の募集及び選定を、国内外のあらゆる利用者、全ての研究分野に対して、透明な手続きにより公平な機会が提供されるように配慮して実施する。また、応募のあった提案については総合的かつ専門的に検討評価して選定を行う。
1.公平な提案機会の確保
(1)利用研究課題の提案は公募する。そのため、公募案内の記事を関連する学会誌、科学技術雑誌等へ定期的に掲載し、広く国内外に周知させる。
(2)共用施設の仕様、性能、運転スケジュール等の技術情報、更に、利用研究課題の募集及び採択並びに利用状況等に関する情報は、機構の発行する技術情報誌等により周知させる。
(3)必要に応じて、利用希望者に対し最新の運転の状況、利用状況及び技術的な情報の提供並びに技術的な相談への対応をインターネット等の適切な手段を用いて行う。
2.利用研究課題選定の基準
広範な分野からの提案課題を次の基準に沿って総合的かつ専門的に検討評価して課題の選定を実施する。
(1)科学技術的妥当性(イ)研究課題の先端性及び当該研究課題を含む科学技術分野の発展性
(ロ)期待される研究成果の基礎的研究分野及び基盤的技術開発分野への貢献度
(ハ)期待される研究成果の産業基盤技術としての重要性及び発展性
(ニ)研究課題の社会的意義及び社会経済への寄与度
(2)研究手段としてのSPring-8の必要性(3)実験内容の技術的な実施可能性
(4)実験内容の安全性
3.課題申請手続きの簡素化及び迅速化
(1)利用研究課題の申請は随時受け付けるが、その選定は当面年2回行う。なお、採択の時期等については別途定める。課題の有効期限は採択後6ヶ月とし、それ以上の実験期間が必要な場合は継続提案として簡素化した様式で取り扱う。
(2)課題申請後の利用実験開始を早期に実現するため、申請、採択及び利用実験までに要する手続きの簡素化及び迅速化の方策を講ずる。
4.利用研究課題の選定等
(1)利用研究課題は、諮問委員会の決定に基づき利用研究課題選定委員会によって選定される。
(2)利用研究課題選定委員会の下には、利用研究分野に応じて複数の分科会を設置することができる。
(3)分科会は、利用研究課題選定委員会の構成員又は学識経験者の中から理事長が委嘱又は指名する専門委員から構成し、その主査は諮問委員会委員長の指名による。
(4)分科会は、利用研究課題選定委員会の指示により、課題の審査並びにビームタイムの配分等を行い、その結果を同委員会に報告する。
(5)分科会は利用研究課題の選定に当たり、必要に応じて利用研究課題選定委員会の主査を通じて、国外を含む外部専門家の意見を聴取することが出来ることとする。分科会の設置等については別途定める。
(6)利用研究課題選定委員会は、分科会の審査結果等を審議し、その結果を機構及び諮問委員会に報告する。
(7)機構は、課題選定結果の報告を受けて、利用研究課題の採択を決定する。
5.緊急課題への対応
(1)利用研究課題のうち、緊急かつ極めて重要と思われる利用提案を緊急課題として随時受け付ける。
(2)緊急課題は、分科会において随時迅速に審査され、その結果は利用研究課題選定委員会主査の了承を得て機構に報告される。機構は、その採択を決定する。
(3)緊急課題の審査結果については、分科会から利用研究課題選定委員会を通じ諮問委員会に報告する。
6.機構によるビームタイムの確保
機構による加速器及びビームラインの性能向上及び施設利用研究促進に資する研究(機構が他機関と実施する共同研究を含む。)、施設利用研究促進に資する研修、並びに緊急課題に対応するため一定割合のビームタイムを機構が留保するものとする。なお、機構が留保することが出来るビームタイムは別途定める。
7.その他の留意事項
利用料に関する考え方等については今後別途定めることとする。
8.特定利用課題の取扱い
(1)ビームタイムを長期的に確保することにより、計画的に共用施設を利用する利用研究課題を特定利用課題とする。
(2)特定利用課題については、3.(1)に関わらず、課題の有効期限を最長3年とする。
(3)特定利用課題の申請は公募によるものとする。分科会における申請課題の審査は、書類によるものと面接によるものとの2段階で行うものとする。
(4)申請課題の審査は、2.に示された基準に加えて、
1)長期の研究目標及び研究計画が明確に定められていること
2)SPring-8を長期的かつ計画的に利用することによって、
①科学技術分野において傑出した成果が期待できること、
②新しい研究領域及び研究手法の開拓が期待できること、
③産業基盤技術の著しい向上が期待できること、
を考慮して行われる。
(5)特定利用課題の公募に当たっては、課題選定委員会が予め施設の整備状況などを勘案して推奨する研究分野を決定することができる。(6)実施された課題は、期間途中において中間評価を行い、課題の継続又は中止を決定するとともに、必要に応じて改善の助言を行う。また、事後評価を行う。
参考文献
[1]SPring-8利用者情報、Vol.1,No.1(1996)22~23.