ページトップへ戻る

Volume 05, No.2 Pages 113 - 115

5. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT

第13回日本放射光学会年会・放射光科学合同シンポジウムの報告(その2)
Report of the Joint Symposium on the 13th Annual Meeting of Japan Synchrotron Radiation Society and Synchrotron Radiation Science (Part-2)

菖蒲 敬久 SHOBU Takahisa

千葉大学大学院 自然科学研究科/東北大学大学院 理学研究科 Graduate School of Science and Technology, Chiba University/Graduate School of Science, Tohoku Unibersity

pdfDownload PDF (17 KB)


 西暦も1000年代から2000年代へと変わった今年、最初に参加した学会がこの第13回日本放射光学会年会・放射光科学合同シンポジウムです。日程は、1月7日から9日で、場所は岡崎コンファレンスセンターという分子科学研究所のすぐ側に位置する、東岡崎駅から登り坂を歩いて15分程のところにあるとてもきれいな建物でした。
 初日は、SPring-8利用者懇談会総会と企画講演がメインでした。旅費の支給を受けるためにはもちろんSPring-8利用者懇談会総会から参加しなければなりませんが、私のいる仙台からは朝6時の東北新幹線に乗らなければ間に合いません。なかなかつらいところです。いつも総会と言うと格式張っているために学生の私にはいささか窮屈に感じるところがあるのですが、今回は新ビームラインの紹介が非常に印象的で参加しがいがありました。具体的には、脳機能研究会のエクテサビ=アリさんの発表であり、内容としては、痴呆病患者の脳神経中(だったと思うのですが)に含まれるFe+2とFe+3の割合をXANES測定から調べたものであります。このFe+2とFe+3の割合と痴呆病の進行具合とに密接な関係があると言うことを報告されていました。発表者の話し方が非常にわかりやすく、門外漢の私にも放射光の医療へのつながりをまざまざと感じる事ができました。このような楽しい発表があるのであれば、次回の総会にも参加してみようかと思いました。
 その後の企画講演はいくつかのセッションに別れて行われ、私は軌道秩序を中心とした発表を聞いていました。村上先生(KEK-PF)のMn系物質で見つけた吸収端近傍における共鳴X線散乱による軌道秩序の観測と言う実験からのアプローチと、石原先生(東北大金研)の理論からのアプローチによる講演は大変わかりやすく、今後様々な物質で研究が進められて大きく発展するであろう事を予感させるものでした。また坂田先生(名大工)の共鳴X線散乱を使わないアプローチは、私たちに更なる研究の可能性を示してくれたと思います。ただ、せっかくの 企画講演だったのですが、時間があまりにも短く、どの話もイントロで終わりと言う物足りない感じがして残念でなりませんでした。もう1つ残念な事は、同じ時間の別の企画講演が聞けなかった事です。放射光学会のタイムスケジュールは、きれいに企画講演は企画講演、口頭発表は口頭発表と別れていてわかりやすいのですが、反面、往々にして講演が重なりがちになります。このため、異常分散を利用した構造解析の話を聞く事ができませんでした。企画講演は最近のホットな話題が多く、私以外にも分野が多少違っていても聞きたいという人も多いと思います。この辺りは、何とか配慮してタイムテーブルを組んでもらえるとありがたいところです。
 企画講演が終わったのは17時30分オーバーで、たいていの学会ですとこれで終了。あとはそれぞれ連れ立って街に出かけて親睦を深めたりするのが通例ですが、今回の放射光学会はこれからオーラルの発表と言う非常にハードスケジュールでした。私は友人や、同じ研究室のスタッフの発表があったので、X線散乱の会場へ足を運び話を聞いていました。その会場の前半の発表は、軌道秩序に関係したものであり企画講演の補足といった感じでとてもわかりやすく聞く事ができました。また、その会場はいつも見かける人達が多く、なんとなく気持ちの上で安心感がありました。研究について聞く事は楽しいのですが、何分まだ学生なのでどうしても仲間が少なく、気後れしてしまう場などもあります。そういう時には、特に、顔なじみの知り合いの存在が非常にうれしく感じられます。特に放射光学会はそうなのですが、学生の数が非常に少ないと思われます。その世界がどれだけ活気づいているかどうかのバロメータは学生の数であるように私は思っています。今回、企業展示で来られた方が話されていましたが、昔に比べると放射光学会年会も合同シンポジウムと言う形にして参加する人の数も増加しているものの、学生を含む若手研究者の数はあまり増えていないとのことです。それで、いわゆる入りずらい雰囲気があるのではないかという事を言われていました。(奥手にならずどんどん入ってくれば良いと言う考え方もあるのかもしれませんが…)
 脱線してしまいましたが、話をまた学会の本線に戻して…。2日目からは、朝から発表がありました。午前中は、VUV-SX、生物関連、加速器についての口頭発表がありましたが、私は午後に自分の口頭発表があったこともあり、ほとんど聞くことができませんでした。
 午後からは、ポスターセッションと、パラレルにXAFS関連の口頭発表がありました。ポスターセッションと同時の口頭発表と言うのは学会ではごく当たり前なのですが、一部の研究内容だけが口頭発表と言うのもなんとなく不思議な気がします。口頭発表の方の聴講者は、普段よりも少し少ないといった感じがしました。
 2日目のメインは、特別講演です。分子科学研究所の茅幸二先生と東京理科大学の中井泉先生のお2人の発表には、たくさんの人がつめかけました。私が、その会場(最も広い会場で200〜300名ほどが収容可能)に到着した時には、すべての席が埋まっていて、世話役の人が席の増設作業に追われていてあわただしい雰囲気でした。参加された方々は、お2人の発表を熱心に聞いていました。特に中井先生の話は、内容もさる事ながらその話し方にみんな大笑いをしたりと、楽しく聞く事ができました。この辺りが人を引き込むテクニックなのでしょう。うらやましい限りです。内容は、昔から行われている蛍光X線分析を様々な領域に応用する事についてで、考古学研究や有名なあの和歌山毒カレー事件の調査なども今回の話に登場しました。いたずらに新規な方法の開発に走る事無く、従来のテクニックを駆使して研究を行っていく姿勢には感銘を受けるところがありました。もちろん、研究方法に何から何まで一切新しいところが無いと言うわけではなく、SPring-8のような第3世代の放射光の出現、つまり高エネルギーでの蛍光X線分析が可能になって初めて実現化した研究であると思われます。
 この講演の後、放射光学会の総会があるので引き続きそのままお待ち下さい、と言うアナウンスがあったのですが、大半の方が笑いながら退出していき、総会に対して関心が無い様子が伺えました。総会を運営する人の苦労が忍ばれます。この後は更に懇親会へと予定は進んでいくのですが、私は、参加せずでしたので詳しい様子は分かりませんが、話を聞くと結構な人が集まって盛り上がっていたそうです。ただ、参加者には若手はほとんどいなかった事をもらしていました。
 最終日は、朝一番に企画講演が行われ、その後いくつかのセッションに別れて口頭発表が、午後にポスターと口頭発表がパラレルに行われました。私は、自分のポスター発表があったので、口頭発表を横目にポスター会場に一足先に赴き、自分のポスターを貼ることにしました。時間が余ったので、ポスター会場と隣接している企業展示の方を少し覗いていました。企業展示の数は、44件と例年と数は変わらないようですが、狭いところにぎっしり詰まった展示場は、熱気で溢れていました。ただ、午前中をもって展示は終了らしく、片付けを始めていた企業もありました。実は、この会場の奥深くにお茶やお菓子が用意してありましたが、これは企業展示の会場に少しでも人が寄っていくようにとの努力なのでしょう。2日目の午後の口頭発表が始まる少し前には、放送でもお茶の存在をアピールしていたことが思い出されますが、それも企業展示の方へ足を向けさせるための配慮だったのでしょう。企業展示の狭さもさる事ながら、ポスター会場の狭さにも驚きました。ポスターの大きさは、90cm×120cmと他の学会のポスターより小さく、隣とはくっついているので、発表者のいる時間帯などは、もう浅草浅草寺の賑わい(大阪ですと、難波の道頓堀へつながる商店街の賑わい)状態でした。しかもその会場の形が結構特殊で、私たちなどは、奥の90°折れたところで3m×5mほどの突き当たりに10名ほどがポスターを貼って発表を行うという感じでした。このスペースには、物性関係のポスターが集まったみたいですが、私の回りは、知り合いが多くほとんど内輪の盛り上がりになってしまいました。ただ、かえって一人一人とより深くディスカッションできたのでそれはそれで充実した時間が得られ、私の隣の方などは、ボスと久しぶりに会ったのか、自分達のポスターを見ながら今度の研究方針を決めていたぐらいでした。それにしても最近のポスターはきれいだと思いました。しかも1枚つづりのポスターが続々と現れ、昔のようにA4用紙を何枚も貼るという人が少しずつ減っている感じがしました。
 以上が今回の報告ですが、いろいろな分野がありながら、私自身の興味とも重なって片寄った内容になってしまいました。特に学生からのアプローチという事も考慮して、その時々で私自身が感じた事を書いてしまい、読まれた方によっては非常につまらない文章であったかもしれませんが、ご理解のほどよろしくお願いします。この内容を読んで放射光学会の状況を少しでもイメージして頂ければ非常にうれしく思います。



菖蒲 敬久 SHOBU  Takahisa
千葉大学大学院 自然科学研究科 物質科学専攻
東北大学大学院 理学研究科 特別研究学生
〒980-8522 宮城県仙台市青葉区片平2-1-1
TEL:022-217-5355 FAX:022-217-5404(事務)
e-mail:syobu@rism.tohoku.ac.jp
略歴:平成8年 千葉大学大学院 理学研究科 物理学専攻修士課程修了。現在、同大学院 自然科学研究科 博士後期課程物質科学専攻科及び、東北大学大学院 理学研究科特別研究学生として主にX線(放射光)を用いた構造物性、特に、電荷秩序などに伴った微視的構造変化の研究を行っている。日本物理学会、日本結晶学会、日本放射光学会会員。



Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794