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Volume 05, No.1 Pages 17 - 18

2. SPring-8の現状/PRESENT STATUS OF SPring-8

第5回利用研究課題選定を終えて
After the 5th Proposal Review Commitee Meeting

村田 隆紀 MURATA Takatoshi

(財)高輝度光科学研究センター SPring-8利用研究課題選定委員会 主査/京都教育大学 教育学部 Department of Physics, Kyoto University of Education

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はじめに

 この利用者情報の2号前の紙面に第4回の課題選定についての記事を書き、10月のシンポジウムでそれについての報告をしたところですが、もう第5回の選定についての記事を書かなければならなくなりました。このような周期で課題募集を行うのは、今回からですので、これがいかに大変な作業を伴うものかについては、正直に言って想像もしませんでした。この原稿も、締め切りを大幅にすぎて提出となり、利用業務部の編集担当の方には大変なご迷惑をかけてしまいました。99B期からの期間が短いこともあり、課題選定そのものについては特に新しいことはそれほどありませんが、一通り報告をし、新しい形の課題についての検討を開始しましたので、それについても中間的な報告をいたします。


今期の課題募集と審査

 2000A期は2000年2月から6月までの5ヶ月間が利用期間で、課題募集は9月6日から10月16日まで行われました。応募された課題の総数は424件、6117シフトの配分要求がありました。これらの課題は各分科会委員により、10月25日から11月1日までの8日間で科学的技術的妥当性の審査が行われ、11月9日と10日の2日間、分科会を開いて最終的な課題選定案の作成が行われました。前回と同様に今回も9日には深夜に及ぶ選定作業が行われて、分科会委員の方々の苦労は並大抵のものではありませんでした。その結果326件(成果専有課題2件を含む)が選定され、施設側の安全審査を経て11月22日に利用課題選定委員会を開いて、諮問委員会に諮る原案を作成しました。諮問委員会は12月6日に開催されて、選定課題は原案通りに決定されました。なお、選定の結果は11月30日付で利用業務部から応募者に通知されました。本来ならば、諮問委員会で決定の後に通知がされることになるのですが、できるだけ早く決定通知をするために、今期からこのような便宜が図られることになりました。
 今期は全体で254シフトが利用可能ですが、JASRIによる20%の留保分を差し引くと204シフトになります。また新たに利用が可能になったビームラインを入れて、全体で326件、3116シフトが配分されました。ビームラインごとに見ると、BL39XU(生体分析ビームライン)の混み方が目立ちます。ここにはすべての分科領域から39件、661シフトもの申請があり、この中から21件、202シフトが配分されました。
 今回の申請では、前回までに見られたような過大なビームタイムの要求はほとんどなくなりましたが、大多数の課題に対して要求よりも少ないビームタイム配分とならざるを得ませんでした。これはできるだけ多くの研究者にビームタイムを配分することを配慮した結果です。施設側から課題選定委員会に常に要望されていることは、「半年で課題が終了するような課題の選定を」ということですが、その方針に忠実に従うと、少ない課題を選別し、それらに十分なビームタイムを配分するという方針をとることになります。選定結果から見る限り、現在のところ委員会がとっている方針は、このような施設からの要望に応えるものにはなっていません。しかし当然のこととして、少ないビームタイム配分の結果は、継続課題申請の増加をもたらします。そのことが申請課題の増大の一つの原因ともなっています。課題採択の基本に関わる難しい問題ですが、今後の重要な検討課題であります。
 申請書の書き方についてもかなり改善されてきたようですが、課題名が一般的すぎるもの、ビームタイムの根拠を記していないもの、試料名が記されていないものなどが目立ちます。このことについては、私自身が出した申請に対して委員会から痛烈なコメントが返ってきましたので、偉そうなことをいう資格はないのですが、恥を忍んで敢えて記しておきます。
 分野別では、生命科学の分科では36シフトを未配分として残し、追加募集の対象にすることになりました。これは、蛋白の新しい結晶試料ができたときにすぐに測定できるよう対応するためですが、今後このような形を続けるかどうかは、委員会でもまだ結論がでていません。また実験技術の分科は、カバーする分野が特定できないために、分科会委員のメンバーだけで対応が難しいという問題が提起されています。これに対しては、関連する他の分科と協力して課題選定を行うことなどが必要になります。
 その他の話題のなかには、2000A期の課題募集は99B期が始まった直後であったために、実験が終わる前に継続課題として申請されたものが大変多かったことがあります。分科会でこのような課題をどのように審査するのかについて、最初の打ち合わせで問題にしましたが、名案はなく、申請書を読んで妥当性を判断する以外にない、という結論になりました。


特定利用制度(仮称)について

 このことについては前回の報告で簡単に触れましたが、今期の委員会の一つの大きな検討課題です。これは半年限りの実験課題とは異なるいわゆるプロジェクト型の課題で、PFのS型課題に相当する新しい課題のカテゴリーを作ろうとするもので、一定の期間、長期にわたってビームタイムを確保して、計画的にSPring-8を利用することによって、高輝度放射光の特長を生かした成果を上げることを期待して作られる制度です。
 この制度の検討をするために、諮問委員会のもとに特別検討部会が設置されて、これまでに2回の検討会を開きました。部会のメンバーは、諮問委員から若干名、分科会主査、施設側専門委員を含め、約20名で構成されていて、私が部会の責任者になっています。これまでの会合では、制度の性格、課題公募の方法、選定基準と選定方法、ビームライン・ビームタイムの考え方、JASRIの関与のあり方など、様々な観点からの検討が行われ、前回の諮問委員会に中間報告を行いました。今の段階でほぼ固まっていることは、期間は3年程度、課題は公募して、応募のあった課題に対しては委員会によるヒアリングを行うこと、また適当な時期に中間評価も行うこと、この制度が共同利用の一環として制度化されることから、ビームタイムは共用ビームラインの共同利用ビームタイム枠を使用すること、などがあります。
 この制度に対するビームタイムの枠は、今のところ、10~20%程度を毎期に配分する案が出されています。今後さらに検討をすすめ、諮問委員会を経て2000B期から実施することを目標にして準備をしています。SPring-8の特長を生かしたすばらしい研究が生まれることを期待して、この制度の充実を図らなければなりませんが、一方では一般課題と競合して、ビームタイムの配分の工夫をしなければならないことも頭の痛い問題です。


終わりに

 以上第5回の課題選定と、特定利用制度について簡単な報告です。2000年には新しいビームラインも増える予定で、赤外と高フラックスの2つのビームラインの課題の追加募集が現在行われています。この委員会の仕事は増える一方で、今のままの方法で今後も同じように選定作業を進められるかどうかはわからない、というのが正直な感想です。しかしここまで慣性のついた制度を変えることも、時間と手続きを要することです。委員の方々をはじめ、施設者、ユーザーすべての方々の協力が、これまで以上に必要であると感じています。




村田 隆紀 MURATA Takatoshi
京都教育大学 物理学教室
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TEL:075-644-8256 FAX:075-645-1734
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Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794