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Volume 05, No.1 Pages 2 - 3

所長室から
From the Director’s Office

上坪 宏道 KAMITSUBO Hiromichi

(財)高輝度光科学研究センター 副理事長、放射光研究所長 JASRI Vice President, Director of JASRI Research Sector

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ビームライン(BL)の建設

 SPring-8におけるビームラインの建設は、数度に亘る補正予算もあって順調に進んできた。平成11年12月現在で稼働中のBLは、コミッショニング中のものを含めて共用BLが19本(R&D BL 2本を含む)、専用施設が5本、原研、理研BLが6本である。また建設中のBLは、共用BLが3本(R&D BL 1本を含む)、専用施設が3本、理研BLが1本で、そのほかにマシンスタディ用が1本稼働しており、1本が計画中である。
 本年度第2次補正予算には、共用BL 2本の建設費が計上されている。1本は表面界面構造解析BLで、これは前期ビームライン検討委員会が答申した20本目の共用BLであり、標準的なアンジュレータBLとして計画されている。設置場所としては台湾ビームラインと原研(2)材料科学Iビームラインの間にあるBL13XUが想定されている。他の1本は産業利用BLで、実験ホール外にも実験ハッチを設置することのできる中尺・偏向磁石ビームラインである。設置場所は、中尺であることを考慮してBL20B2を考えている。
 ところで今回の補正予算は15ヶ月予算として執行されるので、2本のBLは平成12年年度末までに発注を終わり、平成13年3月末までに完成しなければならない。このほかに、建設中の長尺アンジュレータBL(BL19IS:理研BL-VI)を来年度中に完了する予算も計上されている。この結果、SPring-8で現在迄に建設が確定しているビームラインは合計41本で、全て平成12年度で完成することになった。なお、補正予算でBL建設を要求したので、平成12年度通常予算には新規BL の建設は要求していない。
 第2次補正予算にはX線分光分析BLも要求していたが、残念ながら認められなかった。しかし、X線分光分析に使われている生体分析BL(BL39XU)は、分析以外にも磁気散乱・分光などの実験が行われていて大変込み合っており、一部の分離・移設を含めた対策を早急に講じる必要があろう。


SPring-8の産業利用

 SPring-8の特色は、大学、公的研究機関だけでなく、産業界からのユーザーにも等しく開かれていることである。ところが供用開始以後の2年間をとってみると、産業界の利用が活発に行われたとは言い難い。例えば、過去2年間に行われた4回の共同利用への公募で、産業界からの課題申請数は84課題(課題申請総数1326の6.3%)、採択された課題は46(採択課題総数867の5.3%)である。4回の共同利用における産業界からの採択率は55%であり、全体の平均採択率65%に比べて低い傾向が認められるが、第5回共同利用(2000A)に行う実験課題では、産業界からの応募課題が26(総数424)で採択課題が24(同326)と増加しており、採択率も92%(同77%)に達している。
 第4回から成果専有課題の制度が発足した。これは、ビーム使用料を負担するかわりに通常の課題審査を行わず、安全及び技術的可能性の審査で認められた課題が実験できるもので、課題内容を非公開にする制度である。既に第4回共同利用で5件が実験を行い、第5回では2件の課題が採択されている。この制度では課題採択に当たって、試料の入手や結果の利用などに関して不正・不当な行為など、SPring-8の公共性に反することが無いかどうかも確かめることにしている。なお、成果専有課題については更に5割増しのビーム使用料で実験時期を指定することもできる。
 最近、産業界13社が参加して結成した「産業界専用ビームライン建設利用共同体」の2本の専用施設が完成し、利用研究を開始した。主に半導体や堅い材料の研究を指向していて、1本は偏向磁石BL、他は真空封止型挿入光源BLである。一方、兵庫県ビームラインは県内企業を中心に産業界の利用が行われていて、幾つかの興味ある成果が得られている。
 産業界からは、SPring-8をどのように使ったら当面する課題を解決できるのか分からないという声を聞くことが多い。そこで、放射光利用の経験のない研究者や産業界の質問・疑問に応えてアドバイスする「コーディネーター」制度を導入することを計画している。できればコーディネーター以外に若い研究者(技術者)も加えたチームを作り技術的なサポートもできるようにしたい。なお、この制度は平成12年度の予算に要求している。
 本年度の補正予算で認められた「産業利用」BLは偏向磁石BLなので、主に堅い材料を対象にして、X線構造解析、XAFS、蛍光X線分析などの標準的な計測ができるビームラインとして建設する予定にしている。実験ハッチは実験ホール内に2カ所、蓄積リング棟の外につくる建物に1箇所設置する。また、実験装置を持ち込んで放射光による計測ができるオープンステーションを複数設置する。なお、このBLでの実験の結果、さらに高度な計測が必要になった場合には、共用BLやR&D BLなどを利用して行ってもらうことになろう。
 産業利用ビームラインは共用BLとして建設されるが、その運用に工夫を凝らす必要があろう。そこで、できるだけ早急に検討グループを設置して、広く産業界の意見も聞きながら新しい運用の仕組みを検討することにしている。その結果は、課題選定委員会での検討のうえ諮問委員会に諮ることを予定している。


SPring-8国際アドバイザリー会議

 SPring-8で初めての放射光を観測してから3年、供用開始から2年半を経過して、ビームラインも全体のほぼ3分の2の建設が完了した。この間、共用BLも設置予定の3分の2が建設されその共同利用も軌道に乗ってきていて、SPring-8計画は全体として建設フェーズから利用フェーズに移って来たということができる。そこでこの機会に優れた研究者を迎えて、国際アドバイザリー会議(SAC)を開催することになった。メンバー(表)は、ヨーロッパ、アメリカ、アジアから各2名、ロシアから1名、我が国から4名で、ノーベル賞受賞者が2名含まれている。会議は本年3月15日から17日までの3日間開かれ、SPring-8に関して、第3世代放射光源としての性能、ビームラインの種類と研究分野のバランス、利用方式/体制、国際協力、産業利用の在り方や今後の計画についての評価、提言を受けることを予定している。このような会議は、所期の目的である有益な提言を受けて今後の施設運営に資するだけでなく、SPring-8で行われている研究をよく理解してもらう良い機会である。後者の意義を十分に生かす会議になるように努めたいと思っている。




海 外(確 定)
Prof. M. Blume
Prof. J. Deisenhofer
Prof. Y. T. Lee
Prof. G. Materlik
Prof. I. Munro
Prof. Y. A. Osip'yan
Prof. D. Xian
Brookhaven National Laboratory, N.Y. USA
Howard Hughes medical Institute, Univ. of Texas, Dallas, USA
Academia Sinica, Taipei, Taiwan
HASYLAB/DESY, Hamburg, Germany
Manchester Univ. , Institute of Science and Technology, UK
Institute of Solid State Physics, Moscow, Rusia
SR Laboratory, Institute of High Energy Physics, Beijin, PRC
国 内(交渉中も含む)
秋本 俊一
西塚 泰美
太田 俊明
新庄 輝也
東京大学名誉教授
神戸大学学長
東京大学大学院理学系研究科教授
京都大学化学研究所教授



Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794