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Volume 04, No.5 Pages 54 - 56

7. 談話室・ユーザー便り/OPEN HOUSE・A LETTER FROM SPring-8 USERS

「赤穂の釣り」
Fishing in AKo

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 この原稿執筆を何となく引き受けてしまい、忙しさにまぎれて時が過ぎ、締切が迫ってきて「しまった」と思った。何故か週日は忙しくてなかなか釣りに行けないし、単身赴任のせいもあって、週末はたいてい京都の家内の所に行っている。ごくまれに監督その他用事の無い入試の日のような暇の出来た週日か、家内の方が赤穂に来る週末にしか釣りが出来ない。したがって、赤穂に移り住んでから4年以上経つが、それほど釣りはしていないというのが実情である。しかし、この度家内が仕事を辞め、赤穂に移り住んでくることになった。そうなると週末に釣りに行けるようになるので、この記事が情報誌に載る頃には、赤穂の釣りにもっと詳しくなっているに違いない。

 そもそも私の趣味は、「釣った魚を食べること」である。だから自分で食べる程度の魚が釣れるとたいがいやめてしまう。最初のうちは自分で料理して食べていたが、だんだん面倒くさくなってきた。自分で料理したとき困るのは後始末である。赤穂市のゴミの収集は週に2回しかないから、ゴミを捨てられる前の日に釣ったらよいが、そうでないとゴミが臭くなって困る。幸い単身赴任で冷凍庫に隙間があるので、凍らせて保管するが、時々ゴミとして出すのを忘れてしまうことがある。こんな時は、パリでは毎日ゴミ収集していてうらやましいと思う。

 御崎の下に福浦という地元の人しか行かない海水浴場があって、周りに岩礁がちょっとあり、投げ釣りも浮釣りもできるので時々釣りに行く。幸いそこにある民宿「今井荘」の人は親切で、適当な定食を頼むついでに「この魚も???にして」と厚かましく頼んでも、快く引き受けてくれる。この???の所は、「刺身」「煮付け」「唐揚げ」等いろいろ入るが、釣れた魚の種類・大きさ・数等で変わる。この前は、15cmほどの小さな「ソゲ」しか釣れず、勇気を奮って「これ刺身にして」と頼んだら、おばさん(ゴメンなさい。何とも表現のしようがないもんで。)が「これを刺身にするの?」と目を丸くして驚いていたが、尾頭付きで活き作り風の立派な刺身を作ってくれた。ただし、おじいちゃんがいて、時々その話し相手になるのが条件。このあたりでは、投げ釣りで「キス」・「ガッチョ」・「ハゼ」・「キュウセン」等が釣れ、岩礁周りでは、「黒メバル」・「ソゲ」・「アブラメ」等が釣れる。ここから御崎の周辺一帯を探り歩けば、結構色んな釣りが楽しめる。ちなみに、今井荘ではボートも貸してくれる。この方が、釣りの効率は良いかも知れないが、私は未だやったことがない。いつもなんとなくその辺で釣っているだけである。


 福浦海水浴場


 私の一番好きな釣りは、「キス」の投げ釣りである。「キス」は砂地にいるから、海浜公園の前の唐船の海水浴場一帯でも釣れる。ただ、春から夏にかけての干潮時は潮干狩り、夏は海水浴客を避けて釣らねばならないので、多少釣りづらい面もある。2年ほど前の夏に「スズキ」の新子がわいたことがある。こういう時は、「キス」が掛かる前にすぐにこの新子が餌に飛びついてくるので、キス釣りには適さないが、この時は「ハネ」というか結構大きめの「セイゴ」もいた。海水浴客を避けて投げ釣りをしたら、すぐに40cmくらいのが2匹釣れたので持って帰って塩焼きにして食べた。

 あと時々行く釣り場としては、赤穂港の周辺がある。こちらは、いろんな釣りができる。まず、港は深くて足場がよいから、「鰯」が回ってくるときは、家族連れでサビキ釣りをする人が多いし、波止の上あるいは横の岸壁では投げ釣りもできる。「セイゴ」・「チヌ」・「キス」・「ハゼ」・「ガッチョ」と色んな魚が釣れる。ただ、所々捨て石があるので、余り近くまで引いてくると仕掛けを引っかけてとられてしまうから注意した方がよい。夜に電気浮を使って港内で仕掛けを流すと「ハネ」が釣れるらしい。

 他に坂越の方にも、釣り場は沢山あるようであるが、今のところそれほどあちこち行く暇がないから、殆ど行ったことがない。1度阪大の釣り仲間が晩秋に来て行ってみたけれど、すでに「鰯」は去った後で、細い「アナゴ」と「ハゼ」位しか釣れず、余り良い思いをしたことがない。「アナゴ」と言えば、去年もう冬になろうとしている頃、かなり遅くまで「キス」が釣れていたので、今井荘の近くで夕方釣っていたら、かなり年輩の夫婦がやってきた。話を聞いたら、「夜になると良く『アナゴ』が釣れるから、時々湯郷から1時間かけて釣りに来て、持ち帰って隣近所に配る。」と言っていた。「そういえばそうかも知れない。『アナゴ』が釣れても不思議ではない」と妙な感心をしてしまったが、その後試していない。これも今後の課題としておこう。

 総じて言えば、赤穂周辺はどこでも釣りができる。投げ釣りか磯・波止釣りの簡単な用意さえしておけばよい。皆さんもブラリと釣りをしに来てみてはいかがですか。ただ、何処にでも「クサフグ」という食べるわけにもいかない厄介な外道はいる。さほど沢山いるわけでもないようであるが、時としてハリスを切られるから、予備は多めに用意した方が良いかもしれない。

 私の趣味から「釣った」をとってもやはり趣味かも知れない。こっちの方が良いと思っている人も多いと思う。赤穂は海辺の町だけに、どの料理屋に入っても魚は旨い。「百聞は一見にしかず」。一度魚を食べに来てみてはどうでしょう。釣った魚を料理してくれるのは、今井荘に限ったことではない。播州赤穂駅の近くにある「山海」という炉端焼き屋も、「釣れたら焼くなり刺身にするなりしてあげるよ」と言ってくれる。こちらの方が一度家に帰って車を置いてから行けるから、釣れた魚を肴に飲むには都合がよい。もちろん釣りはしなくても、時々飲みには行っている。

 以上、自分のやったことのある釣りを中心に思いつくまま書いてきた。最初にお断りしたようにそれほどは釣りをしていないので、知らないこと、今後の課題が沢山残っている。もしここに書いていないことをご存知の方は、是非ご一報下さい。

 最後に、この原稿に現れた魚の名前について分からないことが多いと思われるので、ちょっと解説を。実は、私は関東の生まれ育ちなので、20数年前に阪大に移ってきたときに、魚と餌の呼び方が違うので最初とまどったことがある。さらに赤穂に移り住み、今井荘でおじいちゃんと話をしていて、またまた色々違うので現在も勉強中であるが、簡単に述べることにする。ついでに釣ったことのない魚だが、この辺りでしか食べない珍しくて美味しい魚も紹介しておく。釣れないわけではないと思うので。何処に行っても同じ名前が使われる魚については解説はいらないと思う。


 唐船海水浴場


 赤 穂 港


 「ソゲ」本当は「ソゲメバル」。関東で言う「アイナメ」(大阪近辺では「アブラメ」)、「カサゴ」(「ガシラ」)、本来の「メバル」の類は、赤穂近辺では全て「メバル」がついている。地元で「アイナメ」と呼ばれるのもいる。おそらく、この魚を見たら、「アブラメ」(「アイナメ」)と皆思うに違いない。この前ちょっと釣りに行ったら、「アイナメ」と「ソゲ」と両方が釣れたので煮付けにしてもらい、おばあちゃんの見た目の違いについての解説を聞きながら、「そういえば、『アイナメはキスの和訳か?』と言った人がいたっけ」等と思い出しニヤニヤしながら食べ比べてみた。やっぱり歯触りから味まで全く違っていた。ところで、「アブラメ」と呼ぶのは、どうも大阪近辺だけのようである。それ以外の地域では、「アイナメ」の方が通りが良い。


 「セイゴ」、「ハネ」スズキの子供。関東では、「セイゴ」→「フッコ」→「スズキ」と出世する。関西では、「セイゴ」→「ハネ」→「スズキ」と出世する。


 「チヌ」関東では「チン」(「チンチン」)→「カイズ」→「黒鯛」と出世するのに、関西では出世しない。ずっと「チヌ」のまま。


 「ガッチョ」関東では「メゴチ」、関西では普通「テンコチ」と呼ばれる。「ガッチョ」は関西の釣り人の呼び方。夏が旬。どこでも釣れるが、鰓の周りにオスとメスがお手手つなぐための棘があって、うっかりすると血を見るから要注意。東京では、天麩羅の材料として珍重され確かにうまいが、何故か関西では棘のせいか足でふんずけられ、うち捨てられるかわいそうな魚。ちゃんと持って帰って天麩羅にして食べましょう。

 「キュウセン」「ベラ」の1種で、いわゆる「赤ベラ」・「青ベラ」と呼ばれるやつ。「赤ベラ」がメスで、「青ベラ」がオス。若いうちは全部「赤ベラ」だが、集団のうち一部が必要に応じてオスに性転換するという便利な仕組みを持っているらしい。こちらは色が綺麗すぎて、関東では敬遠されるが、関西では食べる。身が柔らかいので「南蛮漬け」が最もポピュラーな料理法。


 「シクチ」まだ釣ったことはないが、こちらに来て知った魚である。「ボラ」の1種。「ボラ」と殆ど見分けがつかない。私も最初は分からなかったが、日生(赤穂の隣町だが岡山県)の市場に行って暫く見ていて分かるようになった。「シクチ」の方が愛嬌のある顔をしている。「ボラ」は身がピンク色で、大きくならないと臭くて食べられない。ところが、「シクチ」は全く白身の魚ですこぶる旨い。こちらは千種川の河口付近で泳いでいるのをよく見かける。一度ルアーで狙ってみようと思っているが、まだ実現していない。1匹釣れたら、大きくて家内と二人で食べきれないだろうから、誰か食べる応援に来てもらおうと思っている。その時はヨロシク。


 「ダイチョウ」普通「ヒイラギ」とか「ニイラギ」と呼ばれ、投げ釣りの時の餌取りとして有名。これも、身が水っぽいせいかうち捨てられる。ところが、赤穂の人はこの魚を濃い目の味で煮て食べるのである。「山海」の親父さんに言わせると、赤穂近辺で取れたものしか美味しくないんだそうな。酒の肴としては秀逸。


(馬越 健次  姫路工業大学 理学部)

e-mail:makoshi@sci-himeji-tech.ac.jp



Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
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