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Volume 04, No.2 Page 16

2. SPring-8の現状/PRESENT STATUS OF SPring-8

課題審査を終えて −XAFS分科会−
– XAFS Division –

宇田川 康夫 UDAGAWA Yasuo

東北大学 科学計測研究所 Research Institute for Scientific Measurements, Tohoku University

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 SPring-8の課題選定のシステムはどうしてもPFのやり方と較べてしまうが、半年毎に課題申請をする、レフリー制をとらないなどの特長と問題点は’98年の第6号(Vol.3,No.6)に太田主査が書いておられるのでここでは略し、XAFSの課題選定の特徴についてだけふれることにする。

 放射光実験のうちではXAFSはやや異質なものであろう。いまやXAFSはそれだけで閉じた実験ではなく、非晶質の構造決定のためのルーチンの一つとして使われるようにもなってきている。そうした研究ではXRD,IR,UV-VISその他の結果と総合して対象試料の実像に迫ろうとする。したがって「XAFSを測定すること自体の価値」だけではなく、その研究対象の「サイエンスとしての価値」で選択する他はないわけであるが、1頁に満たないスペースにつめこまれている研究の意義、目的、特色、期待される成果、SPring-8を必要とする理由等々を正しく理解して評価を下すのは不可能というものである。したがって選定はかなり主観的なものにならざるを得ない。とはいえ、複数の委員の評価は結構一致するものであった。時間がかかったのはむしろ継続課題をどう扱うか、あるいは技術的に可能かどうかの判断がつきかねる(特にBL01B1以外のビームラインを指定してある場合)などテクニカルな問題が多かった。


 まず、継続課題の取扱いであるが、やはり同一課題名で殆ど同じ内容での申請を何度も続けることには問題があろう。勿論半年間での10シフトに満たない実験で結論を出せというのは無理な相談であるのは明らかだが、何回まで認めるか線を引くことも根拠が見つけられない。とりあえず今回の選定では全く同じ内容で3回目という申請には付帯意見をつけることとした。

 気の毒だったのは前回申請して認められてはいるものの2回目の申請時にはまだ実験ができていないという例である。これは半年のことであるから一度測定をしてみてから再申請されたいということにした。当事者にとっては割り切れない思いかもしれないが、限りあるマシンタイムを有効に利用していただくためにはやむを得なかった。

 XAFSは極端に云えば分光器が一つあれば測定が可能なわけであるので通常の測定でもBL01B1以外のビームラインを指定したものがいくつかあった。また、他のビームラインの特徴を生かした実験でも吸収測定であればXAFSに分類されてくる。どちらの場合でも4名の委員ではビームラインの状況がわからず、その実験が可能か否か、適当か否か判断できない場合が多く、そのビームラインをよく知る人を探し出して意見を聞くという場面が度々生じた。現行のやり方ではビームライン毎ではなく、サイエンスで分類されるのでこうした事態が生じるのは必然である。

 そこで、是非当事者にお願いしたいことは、まずビームライン毎に分類し、各ビームライン担当者が技術的に可か否かの意見をつけて選定委員会にまわすというシステムにして頂きたいということである。サイエンスという縦の糸とビームラインという横の糸との両方から判断しなければならないのでどんなやり方をしても難しいのは当然であり、試行錯誤を重ねながら最善に近いシステムを構築していくために提案させて頂きたい。

 最後に、蛇足として、最近何度か利用したブルックヘブンのNSLSの方式を紹介したい。NSLSでは1年は4ヶ月ずつ3期に分かれ、各期毎に(その3ヶ月以前受付け締切り)課題申請を受付け、認められれば2年間有効、認められた課題はその後各期開始の3ヶ月前までにビームタイムを要求する(勿論要求したら必ず貰えるわけではない。筆者の最初の申請に対する判定は「全部で30日、ただし最初の1期は0日」であった)。この方式だと課題選定は1年に3回となるが、申請数は1/4に減るはず?である。ユーザーにとっても半年毎の課題申請という煩わしさから逃れると同時に約半年以内に実験ができるかどうかわかる格好のシステムに思えるが、如何なものでしょうか。



宇田川 康夫 UDAGAWA Yasuo
東北大学 科学計測研究所
〒980-8577 仙台市青葉区片平2-1-1
TEL:022-217-5384 FAX:022-217-5404
e-mail:udagawa@rism.tohoku.ac.jp


Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794