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Volume 03, No.6 Pages 45 - 48

6. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT

APS-ESRF-SPring-8 3極ワークショップ報告
APS/ESRF/SPring-8 Workshop Report

宮原 義一 MIYAHARA Yoshikazu、原 雅弘 HARA Masahiro

(財)高輝度光科学研究センター 放射光研究所 加速器部門 JASRI Accelerator Division

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 9月23日から24日までAPSで第5回3極ワークショップが開かれ、SPring-8 から10人、ESRFからも10人、APS からは20〜30人が参加した。この会議は1994年にESRFで開かれて以来、毎年ESRF、APS、SPring-8の施設が持ち回りで開かれ、加速器とビームラインを中心とするお互いの情報交換、議論を通して実際的な国際協力をおこなっている。次回はSPring-8の予定である。
 APSは、4年前別用で訪問した(原)時に比べて、広々としたキャンパスに立派な中央研究棟とゲストハウスが新たに建設され、見違えるようにきれいな研究所になっていた。会議の予定が間際になって決まったため、あまり時間がなくて講演の準備に追われたのと、会議は2日間びっしりとスケジュールが組まれ、会議の翌朝帰国したので、あわただしい出張であった。APSの蓄積リングは運転中で中に入れず、コントロール室だけ見た。会議の内容も分からないところが多かったので、確認したり、議論したり、また、実験室を見たりするために、1日後に帰国すればよかったと悔やまれる。会議の内容は、OHPのコピーが近くAPSから配布されることになっている。詳細はそのコピーを参照されたい。
 今回のワークショップのプログラムを以下にあげておく。

APS, ESRF, SPring-8 Meeting
September 23-24 1998, Bldg.401, Seminar Room A1100

Wednesday, Sept. 23 
 
A. Facility Reports -[D. Moncton, Chair]
 8:30 a.m.    SPring-8     
  H. Kamitsubo
 9:00 a.m.    ESRF       
  C. Kunz
 9:30 a.m.    APS        
  D. Moncton

B. Operational Topics: Storage Ring - [H. Kamitsubo, Chair]
 10:30 a.m.    APS Accelerator Performance 
  J. Galayda, APS-ASD
 11:00 a.m.    Transverse Aperture Related Lifetime Limitations   
  A. Ropert, ESRF
 11:15 a.m.    Filling Patterns:High Current Limitations 
  J.M. Filhol, ESRF                                   
 11:30 a.m.    SPring-8 Accelerator Performance 
  Y.Miyahara, SPring-8                                                   
 11:45 a.m.    Bunch Configuration and Emittance coupling in SPring-8     
  M. Hara, SPring-8

C. Operational Topics, IDs, Beamlines, and Optics - [Y. Petroff, Chair]
 1:00 p.m.    Front Ends: Present and Future    J.C. Biasci, ESRF
 1:20 p.m.    Next Generation Front Ends
  T. Kuzay, APS-XFD
 1:40 p.m.    Insertion Devices: Operation & Recent Developments                          
  P. Elleaume, ESRF
 2:00 p.m.    Insertion Devices at SPring-8
  H. Kitamura, SPring-8
 2:20 p.m.    Undulator Experience and Radiation Diagnostics                   
   M.Ramanathan, APS-XFD              

 3:00 p.m.    Beakup Sessions (15 min. presentations)
I. Machine Physics (Discussion Leader - A. Ropert), Seminar Rm. A1100
 Small Gap Chamber Operation
   L. Emery, APS-ASD
 Orbit Stability    
   G. Decker, APS-ASD
 A Longitudinal Instability in the SPring-8 Storage Ring                                       
   Y.Miyahara, SPring-8
 Emittance Measurements Using X-rays
   B.X. Yang, APS-ASD
 Group Discussion

II. Experimental Stations and Detectors (Discussion Leader-T.Ueki),
Conf. Rm.A5000
 Experimental Stations    
   T. Ueki, SPring-8
   O. Shimomura, SPring-8
 Development in Sample Environment at the ESRF                                        
   H.Graafsma, ESRF
 Future Needs of 2D Detectors for Protain Crystallography                                     
   P.F. Lindley, ESRF
 Detector Development at SPring-8
   M. Suzuki, SPring-8
 Group Discussion

Thursday, Sept. 24
D. Beamlines and Optics - [C. Kunz, Chair]
 9:00 a.m.    New Optical Developments from ESRF                        
  A. Freund, ESRF
 9:30 a.m.    SPring-8 Optics and Beam Transport
  T. Ishikawa, SPring-8
 10:00 a.m.    Optics-Predictions and Experience
  D. Mills, APS-XFD

 11:00 a.m.    Breakout Sessions (15 min. presentations)
III. Beam Loss and Radiation Fields (Discussion Leader - M. Hara), Seminar Rm. A1100
 Beam Loss Study    
  J.M. Filhol, ESRF
 Radiation Measurements and Future Radiation Strategy                                 
   P. Berkvens, ESRF
 Measurement of Radiation Fields
  P.K. Jobs, APS-XFD
 Group Discussion

IV. Beam Position Monitors (Discussion Leader - T. Kuzay), Rm. B2100
 Beam Position Monitors    
  H. Kitamura, SPring-8
 Smart BPMs    
  D. Shu, APS-XFD
 Reduction of XBPM Systematic Errors by Modification of Lattice    
  G. Decker, APS-ASD
 Group Discussion

V. Optics (Discussion Leader - A. Freund) Conf. Rm. A5000
 Compound Refractive Lenses
  P. Elleaume, ESRF
 Multilayer Optics    
  A. Macrander, APS-XFD
 Ultra High Resolution Optics
  E. Alps, APS-XFD
 Measurement of Second-Degree Coherence
  E. Gluskin, APS-XFD
 Group Discussion

E. Initiatives - [J. Galayda, Chair] Seminar Rm. A1100
 1:30 p.m.    Top-up Mode Operation    
  L. Emery, APS-ASD
 2:00 p.m.    Low Energy Undulator Test Line
  . Milton, APS-ASD
 2:30 p.m.    Horizontal Focusing    
  A. Ropert, ESRF
 3:30 p.m.    Slow Positron Beamline Project in SPring-8
  M. Hara, SPring-8
 4:00 p.m.    Backward Compton    
  Y. Miyahara, SPring-8 
 
 
 
写真1 APSの建物。左の丸い建物が APS Conference Center、中央が APS Central Lab/Office Building、右の端に丸く見えるのが APS 蓄積リング建物の一部。 
 
 
 
写真2 Argonne Guest House。非常にきれいでさっぱりしたホテルが建っており、Argonne研究所が建設し、Marriot Hotel が経営している。APS の利用者はこのホテルに泊まることになる。 
 
 
 
写真3 電子ビームモデル。APS Central Lab入り口には APSの説明パネルとともにこのモデルが展示してあり、電子銃や4極電磁石、偏向電磁石の働きを実感することができる。 
 
 今回の会議で特に印象に残ったことは、3つのマシンともビーム軌道の安定度が実験的または日常的に2〜5ミクロンまで達したこと、APSでトップアップ運転(入射を頻繁に繰り返すことにより蓄積電流を一定にする運転)の実験が成功しいよいよ現実的になってきたこと、ESRFで放射光の輝度を実効的に上げる新方式が実験的に示されたこと、APSが次世代の光源としてX線SASE(Self-Amplified Spontaneous Emission)の開発に強い意向を示したことである。以下、メモをもとに簡単に報告する。

 ESRFにはポルトガルとイスラエルがそれぞれ98年と99年に参加する。ちなみに出資比率はフランス27%ドイツ25%が断然高い。イタリアは 15 %。
 蓄積リングはビーム電流200mA、寿命50時間、エミッタンス4nmrad、x-yカップリング0.1%、輝度は5mのIDで1.1×1020である。一日2回の入射で、入射時間は8分である。利用者時間は96〜98年平均で運転5600時間のうち95%である。バンチ充填パターン別の運転時間は2/3fill(51%)、16バンチ(24%)、単バンチ(6%)、1/3fill と1〜4バンチの混合モード(7%)である。ただし、98年は2/3fillが72%に増える見込み。最大電流はクロッチとアブソーバーの熱負荷で制限されている。加速空洞に起因する縦方向バンチ間結合不安定性とチェンバーによるhead-tail不安定性がある。単バンチの最大電流は15mAで、寿命は15時間、エミッタンス4nmrad、x-yカップリング1〜2%、エネルギー幅0.2%、バンチ長は150 psec、クロマテシテイは水平4、垂直8に設定してある。単バンチ不純度は10−7 以下。再入射は15分かかる。フィードバックでhead−tail不安定性を抑制する研究は運転当初からやっているが、まだ成功していない。
 ESRFのリングは元、河川敷であったところに建設されたので上下方向の地盤変化を受けやすい。リング一周の連通管で磁石架台の高さを測定し、架台の両端につけた電動型ジャッキ224台で高さを補正したところ、補正磁石なしで、ビーム軌道を200ミクロンの変動に抑制できた。
 IDは最小ギャップ16mmである。近い将来、11mmに縮小される(真空チェンバーの口径は7〜8mm)。この場合、輝度は3.4×1020になる予定。(ちなみにSPring-8では2×1020を達成していると思われる。)ギャップの駆動は毎秒1回のstop-and-goのステップ方式で、このたびにビーム軌道が補正される。駆動速度は1ミクロン/秒であるが、近く28ミクロン/秒に早める。Halbach型IDの磁石列のうち所々磁極ギャップを大きくした準周期IDを設置した。また、通常とは逆に、水平磁場を永久磁石で、垂直磁場を電磁石で作るヘリカルID、および、磁場3TのAsymmetric IDを設置した。
 試料に当たる光量をあげるためレンズで集光することは広く行われている。X線でも同様であるが、光源である電子ビームの特性を変えることにより集光する新方式が示された。すなわちIDを設置する直線部のベータ関数を試料位置に向けて絞り込む。最適化によりベータ関数は50mにもなるが、実証実験の結果、ビーム運転に支障はなく、IDの輝度は2倍に増大した(この実験はリング一カ所だけでベータ関数の絞り込みが行われたが、近くリング全体に拡大することを検討している)。ただし、これはすでに数年前、APSで検討し、発表されているとの発言があった。
 ビームラインはすでに大部分完成し、残りはIDライン3、Bライン4で、今年中に建設を終える。98年の実験の申請は1380で、このうち740が認可された。17.2keVのマイクロトモグラフィーでは0.7ミクロンの分解能で、10ミクロンのダイヤモンド塵埃がよく観察できる。長さ10cm位のベリリウム棒に直径1mmの穴を一列に穿ったX線レンズでは単色光を10ミクロンに収束でき、強度は15倍になる。EXAFSのデータは3〜10秒で取れる。

 APSでの利用者時間は昨年3100時間であった。放射光の商業的利用を促進するための会議が近く開催される。Structural genomicsとして蛋白構造とその機能の関係の完全理解を目指した研究が推進される。
 通常運転では1日2回の入射で100mA-60mA-100mAを繰り返す。寿命は約20時間。加速器のエラーは次第に減少し、現在では1日に0.6回程度である。ビーム電流は最大162mAで、通常100mAで運転している。(将来、300mAまで上げたい意向。)APSのバンチ充填方式はやや変則的で、1セット6バンチの81セットで運転されている。1セット内のバンチ数を増やすと、後方のバンチが水平で不安定になる。単バンチの最大電流は15mAで、これは垂直なhead−tail不安定性で制限されている。ID用のチェンバー口径は現在8mmであるが、狭ギャップ用に5mmのものも設置された。ID部のベータ関数は垂直10mと3m、水平15mと10mで、1〜2%結合で入射効率が良い。ビーム軌道の全周補正はリアルタイム(1.6kHz ?)で日常的に行われていて、軌道の変動は水平6ミクロン、垂直2ミクロン以下である。4極磁石は85nm(2〜5Hz)の変動がある。使用中のRFBPMを更新する予定。ライナックとシンクロの間にある陽電子蓄積リングでは高周波空洞と増幅器を更新した。
 トップアップ運転の実験では、シャッターは閉じたまま(ただし、IDギャップはオープンか ?)約70秒毎に入射を繰り返して、100mA、0.1%の変動で3時間継続され、100%近い入射効率であった。APSはこの実験で相当な自信を得たようで、ユーザーを含めた試行運転が年末に予定されている(DOEとANLの認可が出ている)。トップアップ運転のため、現在の陽電子運転から電子運転に切り替える予定である。ビーム入射中に40msの間ビーム軌道が約0.6mm変動するが、この間のデータ取得は回路のゲートを閉じることで対応するようである。
 APSの次の目標は20GeVのL−band超伝導ライナックによるX線SASEで、6台のFEL用IDがパラに運転されるという青写真である。これで輝度は10の10乗倍を想定している。建設には10億ドル位かかるとみている。この手始めに入射用のライナック(460MeV)にフォトカソードガンとIDを設置して今年末から500nm、120nmのSASEの実験を行う。規格化エミッタンス5nmrad、ピーク電流150A、エネルギー幅0.1%。IDはすでに出来ていて、周期長33mm、長さ5mのものを2台シリーズに並べる。ギャップは固定。
 可視レーザ光による微粒子の揺動散乱の実験は20〜30年前に行われていたが、APSではゾーンプレートによるX線を用いて金のコロイド微粒子の揺動散乱の実験をしている。1〜10ミクロンのレーザ半導体の開発を目指している。蛋白の結晶構造解析に必要なデータは約80秒でとれる。ブラッグ直反射を利用した低ノイズ高分解能の実験を始めた。このビームラインの実験室は陽電子ビームの向きと反対側にある。



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[ - Vol.15 No.4(2010)]
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