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Volume 03, No.4 Pages 28 - 30

4. 原研・理研・R&Dビームライン/JAERI・RIKEN・R&D BEAMLINE

R&D ビームラインBL47XUの現状
Present Status of R&D Beamline BL47XU

香村 芳樹 KOHMURA Yoshiki[1]、鈴木 芳生 SUZUKI Yoshio[2]、石川 哲也 ISHIKAWA Tetsuya[3]

[1]理化学研究所 播磨研究所 RIKEN Harima Institute、[2](財)高輝度光科学研究センター 実験部門 JASRI Experimental Research Division、[3]理化学研究所 播磨研究所 RIKEN Harima Institute

Abstract
An X-ray undulator beamline, BL47XU, is allocated to the first 'R&D beamline' to serve both scientific and technical R&D's. The tentative mission at the initial phase are those R&D's for (i) novel optics, (ii) various imaging techniques and applications, (iii) methodology for electron beam emittance measurement using emitted synchrotron radiation. From April, 1998, part of the beamline is open to the outside users. Here we report some of the experimental results obtained at this beamline.
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1.概要
 R&Dビームラインは、SPring-8内の、ビームライン、及び実験ステーション機器開発、高度化に必要となるR&Dを行うためのものであり、多様な要求に対処できる構成となっている。周期長32mm、周期数140の真空封止アンジュレータ、5〜38keVの広帯域の標準型分光器、各種精密回折計が用意された二つの実験ステーションからなり(Fig.1)、フロントエンド、輸送チャンネル素子、ハッチなども共同チームの規格化、標準化されたコンポーネントが使用されている。共同チームによる建設の第一陣として、コンポーネント設置が内部スタッフによってなされた。昨年5月にファーストビームが無事観測されたが、それ以降に行われてきた実験のテーマは、以下の3種類に大別される。
 A.SPring-8で使用される光学素子の評価を行う。
 B.硬X線領域でのイメージング技術の開発を行う。
 C.電子ビームのエミッタンス測定のための技術開発を行う。 
 
 
 
Fig.1 Layout of the two experimental stations. 
 
 今年の4月から一部供用も開始され、上記の実験テーマに則した実験課題が実施されている。 
 
2.光学素子の評価
 BL39XUで使用されるダイヤモンド移相子や、BL10XUで使用されるブラッグフレネルゾーンプレートなどを、ビームラインに組み込む前に特性の評価をした。ダイヤモンド移相子の評価は14keVでなされたが、移相子によって直線偏光から円偏光への変換が行え、円偏光が取り出せることが確認された[鈴木基寛(理研)]。ブラッグフレネルゾーンプレートについては、一次元集光用の素子を用い、42keVのX線の集光実験を行い、ほぼ予定されたサイズの集光像が得られることが判った[大石泰生(JASRI)]。その他にも、積層型フレネルゾーンプレートの評価[鈴木芳生(JASRI)、上條長生(関西医科大学)]、液体などを用いた屈折レンズの評価[香村芳樹(理研)]なども行われている。
 極小角散乱の測定により、SPring-8のフロントエンドで使用されているベリリウム窓、グラファイトフィルターによる散乱の評価も行われた。これらの素子を光軸上に入れた場合と外した場合とで、小角散乱の強度分布を比べた結果、0.2〜0.3秒角(1マイクロラジアン)程度裾が広がる効果が見られ、この精度での実験が必要な場合には問題になる可能性があることが分かった[鈴木芳生(JASRI)]。
 検出器グループにより、電離箱(応用光研社)や蛍光板にレンズ光学系を付けた冷却CCD(浜松フォトニクス社)など、共同利用に供されるX線検出器の特性の評価がなされた。電離箱に関しては、大強度X線の照射時に、「電子、イオンの再結合」が無視できず、X線強度と電離電流が比例しなくなる。この現象を数種類のガスについて調べた[佐藤一道(理研)ら]。冷却CCDについては、ゲインの線形性、位置分解能のテスト、メカニカルシャッターによる時間分解能のテストなどがなされた[八木直人(JASRI)ら]。

3.硬X線領域でのイメージング技術の開発
 BL47XUでは現在、分光器第一結晶の熱負荷を取る方法として、シリコンの完全結晶の背面に水冷された銅ブロックを押当て、インジウムガリウムで熱接触を取るという、いわゆる、間接冷却法を採用している。ピンポストやフィンなどの水路加工された結晶を使用すると、冷却性能は格段に上がるが、結晶面の歪みが無視できず、BL47XUで行うイメージング関連の実験に支障があると考えるためである。蓄積電流が20mAの運転時に、アンジュレータのギャップを10mm程度まで絞ると、分光器出力のドリフトが見られるようになり、熱負荷の影響が見られているものと思われる。今後、蓄積電流が100mAに上げられる事を見込むと、現状の冷却性能では明らかに不十分である。完全結晶の背面の銅ブロックを液体窒素で冷却する方法が検討されており、今年の6月頃から試験が開始される予定である[望月哲朗(JASRI)]。
 また、イメージング技術の一例として、八木直人(JASRI)、山崎克人(神戸大医)が中心となり、屈折コントラストイメージング実験がなされた。これは、実験ハッチに置かれたサンプルの透過像を5m程度に離れた距離に置かれたX線用ビジコン、蛍光板付冷却CCDなどで観察する実験で、28keV、55keVなどといった硬X線で、蟻や魚などといった試料を用いた実験がなされた(Fig.2)。 
 
 
 
Fig.2 Phase contrast image of a killifish using 28 keV X-rays. On the left, the two eyeballs are visible, while the air bladder may be seen on the right. Due to the asymmetric sourceshape (1 order of magnitude larger in the horizontal than in the vertical),  vertical structures are more clearly seen than the horizontal structures. This is also the reason we see many horizontal lines in the image. 
 
4.電子ビームのエミッタンス測定のための技術開発
 十分長いアンジュレータ光源のX線でのエミッタンスは、硬X線領域では電子ビームのエミッタンスと近似的に等しくなる。分光器をアンジュレータの奇数次のピークに厳密にセットし、結晶光学系を用いた方法でX線ビームのエミッタンスの測定が行われた。水平垂直方向に(++)配置にシリコン完全結晶を配置し、角度分散を1マイクロラジアン以下程度に抑える。これにより、光源から準平行成分のみが通る状態にして、ビジコンによる撮像やスリットスキャンなどにより、光源の水平垂直方向のサイズを求めた。また、これらの結晶のθ回転を行い、光源からのX線放射の水平垂直方向の角度分布を計測した[Fig.3ab、今年度放射光学会]。X線スペクトルから推定される値や、加速器グループの水平方向のサイズの測定結果と矛盾しない結果が得られた。 
 
 
 
Fig.3 (a).  Setup for measuring the horizontal & vertical source size (top view).
 
  
Fig.3 (b).  Setup for measuring the vertical source divergence (side view). 
 
 このビームラインは、共同チームによる建設の第一陣に位置付けられたため、建設にあたっての試行錯誤も多く、共同チームのフロントエンドグループ、輸送チャンネル・光学系グループ、制御グループが一丸となって建設にあたった。このビームラインの組み立て、調整の経験が他のビームラインに活かされて、迅速な立ち上げに寄与できたことも、R&D ビームラインの責務の一端であると考えている。
 
 


香村 芳樹 KOHMURA  Yoshiki
昭和41年6月24日生
理化学研究所播磨研究所
〒679-5143
兵庫県佐用郡三日月町三原323-3
TEL:07915-8-2806(PHS 3823)
FAX:07915-8-2810
e-mail:kohmura@sp8sun.spring8.or.jp
略歴:平成6年東京大学理学系研究科博士課程修了、同年、理化学研究所入所。理学博士。日本物理学会。日本放射光学会。最近の研究:屈折レンズ。趣味:サッカー、陶芸。

鈴木 芳生 SUZUKI  Yoshio
(Vol.3,No.1,P36)

石川 哲也 ISHIKAWA  Tetsuya
(Vol.3,No.2,P12)



Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794