Volume 03, No.3 Pages 11 - 12
2. SPring-8の現状/PRESENT STATUS OF SPring-8
大型放射光施設SPring-8を利用する共同研究促進事業について
SPring-8 Joint Research Promotion Scheme
Download PDF (21.56 KB)
1.概要
科学技術振興事業団(JST)は、平成9年度から、SPring-8の運営を担う財団法人高輝度光科学研究センター(JASRI)と他の試験研究機関(大学を含む)とが実施する共同研究を促進するため、JASRIとの契約に基づき、当該共同研究に「特定研究員」を参加させ、また同研究員に対する研究費を支援することとなった(特定研究員の選定はJASRIが行い、その研究実施施設はSPring-8である)。
これを受け、JASRIは、公募により提案された共同研究課題を、外部専門家を含む研究課題選定委員会において選定した結果、3分野の共同研究(5カ年計画)を平成9年度から実施することとなった。
2.共同研究実施期間
平成10年2月1日~平成14年12月31日
3.研究課題選定委員会
財団の小田稔放射光研究所長を委員長とし、計10名の専門家で構成された。
4.研究計画の概要
(1)マテリアルサイエンス分野
①研究課題名
極端条件下における物性変化及び構造変化の機構解析とその利用技術の研究
②相手機関名
姫路工業大学 理学部
③研究目的
強磁場・極低温下における強相関電子系の物性発現の基礎過程等を解析するとともに、それらの成果を利用する材料等の開発及び評価技術について研究する。
④研究内容
強磁場・極低温下における強相関電子系の物性発現、超高圧による圧力誘起構造相転移及び放射光照射による内殻電子励起に基づく固体内の原子移動の基礎過程、物性変化、構造変化等を解析するとともに、それらの成果を利用する材料等の開発及び評価技術について研究する。
⑤研究項目
・遷移金属等における強相関電子系の電子状態の解析
・超高圧下での構造相転移、磁性、原子価状態等変化の機構解析
・内殻電子励起に基づく物質構造変化の機構解析
・材料等の開発及び評価技術の研究
⑥研究担当者
JASRI 実験部門 物質科学研究グループ
主席研究員 下村 理
姫路工業大学 理学部
教授 坂井 信彦
(2)ライフサイエンス分野
①研究課題名
生体の高次機能に関連したタンパク質の構造生物学研究
②相手機関名
株式会社 生物分子工学研究所
③研究目的
細胞内外の情報伝達に関与するタンパク質の構造及び機能を解析するとともに、それらの成果に基づく生体機能調整薬の開発について検討する。
④研究内容
生体の高次機能に関連したタンパク質のうち、細胞内外の情報伝達に関与するタンパク質、睡眠及び覚醒の調節に関与するタンパク質、光受容や運動に関与するタンパク質の構造及び機能を解析するとともに、放射光のパルス特性を利用した動的構造生物学の研究を行い、それらの成果に基づく生体機能調節薬の開発について検討する。
⑤研究項目
・シグナル伝達に関与する細胞膜レセプターの構造生物学研究
・プロスタグランジンD2合成酵素の構造生物学研究
・放射光のパルス特性を利用した動的構造生物学研究
・睡眠・覚醒調節薬、造血関連薬、脳疾患関連薬等の開発に関する研究
⑥研究担当者
JASRI 実験部門
主席研究員 八木 直人
㈱生物分子工学研究所 構造解析研究部門
部門長 森川 耿右
(3)放射光利用技術分野
①研究課題名
高輝度X線を用いた新しいイメージング技術の開発
②相手機関名
神戸大学 医学部
③研究目的
屈折コントラスト法による新しいイメージング技術の開発を行い、当該技術を利用する生体細胞等のイメージングと医学診断分野への可能性について研究する。
④研究内容
屈折コントラスト法によるイメージング技術及びフレネルゾーンプレートの開発とそれを利用した高分解能硬X線顕微鏡技術を開発し、ライフサイエンス分野における生体細胞等のイメージングと医学診断分野への利用可能性、及びマテリアルサイエンス分野における半導体材料等のイメージングへの応用について研究する。
⑤研究項目
・造影剤の開発等屈折コントラスト法によるイメージング技術の高度化
・屈折コントラスト法による生体組織の実時間観察技術の開発
・積層型及び位相型ブラッグフレネルゾーンプレートの開発
・微小領域蛍光X線分析技術及び透過型硬X線顕微鏡技術の開発
・新しいイメージング技術の評価研究
⑥研究担当者
JASRI 実験部門
副主席研究員 鈴木 芳生
神戸大学 医学部
講師 山崎 克人