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Volume 02, No.5 Pages 46 - 48

5. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT

SRI ’97報告 −検出器−
Report on SRI ’97 -Detectors-

鈴木 昌世 SUZUKI Masayo[1]、豊川 秀訓 TOYOKAWA Hidenori[2]、佐藤 一道 SATO Kazumichi[3]

[1](財)高輝度光科学研究センター 実験部門 JASRI Experimental Research Division、[2](財)高輝度光科学研究センター 利用促進部門 JASRI Experimental Facilities Division、[3]日本原子力研究所・理化学研究所 大型放射光施設計画推進共同チーム 利用系グループ JAERI-RIKEN SPring-8 Project Team Experimental Group

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 「X線検出器」のセッションは、招待講演などの口頭発表が初日(8月4日)の午後に、またポスター発表が3日目(8月6日)の午後に設定された。口頭発表は7件、ポスター発表は35件であり、規模に関しては前回のSRI'94(口頭発表5件、ポスター発表 31件)と同程度であったと言える。しかし、口頭発表の形式はかなり様変わりをした。前回のSRI'94の口頭発表が総合的・概論的であったのに対し、今回のそれは個別的・特論的であった(表1参照)。SRI'97参加者に、今後注視すべきX線検出器を具体的に提示しようとするプログラム委員会の積極的な企画と思われた。

 

表1 SRI'94及びSRI'97における検出器関連の口答発表
SRI'94 SRI'97
Si-based detector
(H. Kraner/BNL)
Pixel Array Detector
(E. F. Eikenberry/Princeton University)
Gas detector
(G. Smith/BNL)
Micro Strip Gas Chamber
(T. Tanimori/Tokyo Institute Technology,
B. P. Tolochko/Budker Institute of Nuclear Physics)
CCDs
(S. Gruner/Princeton University)
Silicon Drift Chamber
(L. Struder/MPI Halbleiterlabor)
Physics of Image Plates
(A. Harrison/University of Edinburgh)
Avalanche Photodiode
(S. Kishimoto/Photon Factory)
Computer Environments
for SR Experiments

(S. Loken/LBL)
Superconducting Tunnel Junction Sensor
(M. Frank/Lawrence Livermore National Laboratory)

CdZnTe Array Detector
(P. A. Montano/Argonne National Laboratory)

 

 その口頭発表は、マイクロ秒領域に於ける時分割X線回折実験用のSilicon Pixel Array Detector(PAD)に関するPrinceton UniversityのE. F. Eikenberryの招待講演から始まった。150 µm四方のピクセルを[4 × 4]に配列したプロトタイプを製作し[1 × 4]の形式で時分割動作させた結果、最大電荷蓄積量20,000 e、非直線性0.2%以下、ピクセル間のクロストーク検出限界以下等の性能が確認された。現在大型化を目指し配列規模が[100 × 92]に達するPADを作製中であることが報告された。Tokyo Institute of TechnologyのT. Tanimoriは、SPring-8理研ビームラインのSAXSステーション用に開発中のMicro Strip Gas Chamber(MSGC)に関して、ペンダントを回転させた動画のデモンストレーション等の最新の状況の報告を行った。東工大グループのMSGCは200 µmピッチで有効面積100 mm × 100 mmという大面積の2次元画像システムでありながら、500 × 500チャネルのデータをわずか5つのVMEモジュール(Programmable Logic Module × 4, Memory Module × 1)で収集するという非常にコンパクトなシステムを実現しており、今後、理研ビームラインだけでなく多くのビームラインで実用化されることが期待される。Budker Institute of Nuclear PhysicsのB. P. Tolochkoらは、以前より開発を進めてきた一次元検出器(ODシリーズ)、二次元検出器(DEDシリーズ)、及びMSGCに関して報告した。SAXS実験により有利なように最新のODモデル(OD-3.2)では焦点距離が1.5 mまでに拡張されている。また、パラレックス効果を抑制したMicro Strip Gas Chamberを用いて時間幅1 msecの時分割測定が可能な検出器システムが紹介されたが、講演時間上の制約から意を尽くせなかったのではなかろうか。

 

 MPI HalbleiterlaborのL. Struderは、silicon drift chamber(SDC)及びpn-CCDの最前線を報告した。X線蛍光分析用に製作されたSDCは円筒状の構造を持ち、室温に於けるエネルギー分解能は220 eV@6 keV、-20℃に於いては140 eV@6 keVに達し、強度106 photons/sec/cm2のX線照射下に於いても安定したエネルギー測定が実行できることを報告した。他方、pn-CCD検出器は、X線入射位置に有感なX線スペクトロスコピーを高速、高S/N比で実現する検出器として開発・製作されてきた。同pn-CCD検出器は36 cm2の検出面積を有するにも関わらず、4 msecで全面積読み出しが可能であり、100 µm程度の位置分解能が得られ、0.3 keV〜10 keVのエネルギー領域に於けるX線検出効率は90%以上である。時間微分モードに於いては、150 K冷却下で4e- rmsというノイズ・レベルを示し、最大許容計数は105 photons/secに達する。時間積分モードに於いては、その最大許容計数はさらに108(photons/sec)にまで向上する。今後、有望なX線検出器としてpn-CCD検出器の動向には注目すべきであろう。Photon FactoryのKishimotoらは、ナノ秒以下の高速応答を示し、100〜1000倍の利得を有するavalanche photodiode(APD)に注目し、APDシステムを核共鳴散乱実験等が必要とする高速時間分解スペクトロスコピーの中核的検出器として紹介した。時間分解能100 psec、最大許容計数108 photons/secの性能が実証され、検出効率の向上及び時間応答のtailing改善に関しても議論がなされた。Lawrence Livermore National LaboratoryのM. Frankらは、100 mKに冷却されたsuperconducting tunnel junction sensorが、8 eV(FWHM)@277 eVという極めて優れたエネルギー分解能を示すことに注目し、高分解能エネルギー分析器として開発を進めてきた。現在、高計数率下での分解能劣化、有効体積の上限などの技術的な問題はあるものの、将来有望な検出器であると言える。Argonne National LaboratoryのP. A. Montanoらは、高エネルギー回折実験、コンプトン散乱実験に応用する目的で製作した一次元CdZnTe検出器(有効面積175 mm × 800 mm)の性能を報告した。エネルギー分解能は素子平均で5.8%@122 keV、また素子相互の一様性は極めて高く、素子平均エネルギー分解能の標準偏差は0.2%であった。

 

 ポスターセッションには、Detectorに関して35件の他、Imagingに関して23件の発表の寄稿があった。第3世代高輝度光源の検出器としては、高計数率、高分解能のX線検出器が必要となる。高計数率の位置検出器としては、これまでもMulti-Wire Propotional Counter(MWPC)が用いられており、今回もBrazilian Center for Research in Physics(CBPF)のA. F. Barbosaらがワイヤー1本当たり106 events/secのシステムについての発表があった。しかし、MWPCは空間電荷やワイヤーひずみ等の問題からワイヤー間隔(位置分解能)としては1 mm程度が限界であった。最近、リソグラフィー技術を用いてストリップを基盤上にエッチングすることにより、これまでのワイヤー型の約1/10の位置分解能(数10 µm)を実現したMicro Strip Gas Chamber(MSGC)が次世代のX線検出器として注目されている。今回のSRI'97でも、上述したTokyo Institute of TechnologyのT. Tanimoriの口頭発表の詳細を同グループA. Ochi、Y. Nishiが報告した他、Council for the Central Laboratory of the Research Councils(CLRC)のJ. E. BatemanらからはXAFS用MSGCについての報告がなされた。さらにユニークなMSGCとしてはESRFのDUBBLEグループがWAXS用にストリップをターゲットポイントから放射状に60度の広角に 1024本配置することにより、高角度分解能かつ高ガス厚40 mmを実現させ、ガス型位置検出器としては画期的な検出効率(70%以上)を実現させている。また、半導体検出器はエネルギー分解能に優れているという利点から依然として広く利用されており、最近のデータ収集系の高速かつ高集積化も伴って、BNLのNSLS120シリコン検出器等の多チャンネル半導体検出器システムが開発さている。その他、我々SPring-8関係からは、4 × 4型CCD検出器やSi(Li)検出器の応答関数のシミュレーション等の発表がなされた。

 

 データ収集システム(DAQ)に関しても報告する必要があろう。再びSPring-8の理研ビームラインのMSGCを例に取ると、採用されるDAQにはカスタムLSI(CPLD)が多用されている。これはおよそ500 × 500ピクセルのイメージング検出器から、入射X線の位置情報をXY読み出し方式で高速に取得するシステムであり、目下10 MHzで動作している。現段階でのボトルネックは、DAQボードとコンピューターとを仲介しているデュアルポートメモリにあることが分かっており、この部分を改善することでおよそ30 MHzまで改善することができよう。CLRCのG. Derbyshineらは、Daresburyで開発中のイメージング検出器用データ収集システムをポスター展示していた。これは収集された電荷を各ピクセル毎に用意されたキャパシターに蓄積し、それらのピクセルをスキャンするようにして読み出して20 MHzのADCでデジタル化するものである。ソフトウェアーの面では、ロシアのY. A. Gaponovらが、オブジェクト指向を用いてC++言語で記述した実験制御のアプリケーションソフトウェアーをポスター展示していた。ここでオブジェクト指向とは、ソフトウェアーの拡張や改良をより簡単にできるようにするための技術であり、この場合には、彼らが開発中の実験制御ソフトをユーザーが簡単に自分の実験のためにカスタマイズして利用できるので、新たに時間をかけて開発する必要がないというのが利点である。

 

 全体として、X線検出器システムが初段のプローブ部分から最終段のDAQに至るまで、LSIに依存する傾向を強めているとの印象をもった。放射光の最大の特徴の一つである高輝度性を有効に利用するために、SR用X線検出器システムは最先端の技術でもって高速化しなければならず、その意味に於いて LSI依存は必然と言えよう。また、新しい原理に則るX線検出器システムが登場しなかったとの印象も残った。基調講演では第四世代の放射光源が議論され、強度・輝度の向上が志向された。検出器セッションでも次世代の放射光源に対応する検出器の研究・開発が議論されて然るべきかと思われる。次回のSRIに期待したい。

 

SPring-8ツアーの後、SPring-8サイトで開かれたバーベキュー

 

 

 

鈴木 昌世 SUZUKI Masayo

昭和30年1月19日生

(財)高輝度光科学研究センター放射光研究所実験部門

〒678-12 兵庫県赤穂郡上郡町SPring-8

TEL:07915-8-1842

FAX:07915-8-0830

略歴:昭和58年立教大学理学部理学研究科博士課程後期課程修了、昭和58年日本学術振興会奨励研究員、昭和59年仁科記念財団海外派遣研究員、昭和61年CERN,Scientific Associate、昭和62年Columbia University, Research Associate、平成2年Columbia University, Associate Research Scientist、平成3年理化学研究所、基礎科学特別研究員、平成6年高輝度光科学研究センター放射光研究所、主幹研究員。

 

 

豊川 秀訓 TOYOKAWA Hidenori

昭和35年3月13日生

(財)高輝度光科学研究センター放射光研究所利用促進部門 研究員 

〒678-12 兵庫県赤穂郡上郡町SPring-8

TEL:07915-8-1842

FAX:07915-8-0830

E-mail:toyokawa@spring8.or.jp

略歴:平成2年東京工業大学理工学研究科物理学専攻博士課程中退、筑波大学物理学系準研究員、大阪大学核物理研究センター研究員を経て、平成8年8月より(財)高輝度光科学研究センター研究員。理学博士。日本物理学会会員。最近の研究:原子核深部空殻状態のクラスター崩壊の測定、マイクロストリップガス検出器の開発。趣味:剣道四段、スポーツ、ドライブ。

 

 

佐藤 一道 SATO Kazumichi

昭和47年10月2日生

理化学研究所大型放射光施設計画推進本部

〒678-12 兵庫県赤穂郡上郡町SPring-8リング棟

TEL:07915-8-1842

FAX:07915-8-0830

E-mail:kazusato@spring8.or.jp

略歴:平成9年九州大学大学院修士課程総合理工学研究科修了。

最近の研究:X線イメージング検出器の最適化のためのシミュレーション技術、データ収集システムの開発。

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
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