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Volume 02, No.5 Pages 32 - 36

5. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT

SRI ’97報告 −全般−
Report on SRI ’97 -General-

原見 太幹 HARAMI Taikan

日本原子力研究所・理化学研究所 大型放射光施設計画推進共同チーム 利用系グループ JAERI-RIKEN SPring-8 Project Team Experimental Group

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 第6回International Conference on Synchrotron Radiation Instrumentation(SRI'97)が日本放射光学会とSPring-8(原研、理研、JASRI)の主催、協賛9(含科技庁)、兵庫県、姫路市の後援で姫路市民会館において真夏の8月4日から8日までの5日間開かれた。この会議は3年毎に開かれ前回のSRI'94はNSLS主催でニューヨーク大のストーニーブルック校で開かれた。今回の参加者は613名(日本人374名、外国人22カ国227名、同伴者12名)であった。

 初日(8月4日)、上坪SPring-8リーダーと貝原兵庫県知事の開会あいさつに引き続き、Winick氏(米国、スタンフォード放射光施設)とMunro氏[英国、マンチェスター大学(移転された)]の開会講演があった。

 Winick氏は、放射光施設発展の歴史と現状、将来について話した。現在運転中の放射光施設は世界中で43施設、建設中が11施設、計画中が20施設ある。運転されている施設も高輝度化、高電流化、挿入光源増設で性能向上が図られている。加速器建設が計算機によるシミュレーション、設計技術、精密製作技術、設置精度、ビーム診断・制御技術が発達したことにより短い期間で建設できるようになった。コヒーレントなX線を得る第4世代光源を目指し、DESY(ドイツ)、SSRL(米国)等で線型加速器を使ったSASE(自己増幅自発放射)計画が進められている。

 Munro氏は、放射光の分光、検出、解析技術の進歩をヨーロッパの事情を中心に話した。生物科学、医学への応用、コヒーレントX線を用いたミクロ科学、イメージング技術開発が推進されている。10-8のエネルギー分解能、109 Hzの時間分割検出、2次元検出器の開発が行われている。医学利用としては、イメージング、ラジオロジー、アンジオグラフィー、ニューロロジー、トモグラフィーの技術開発が進められている。Munro氏は、光源の性能をみるとこれからそれを利用する科学の発展に大きな可能性があるという印象を持っているようである。

 施設報告では、APS放射光施設(米国)を Moncton氏(米国、APS放射光施設)が、PLS放射光施設(韓国)をNamkung氏(韓国、PLS放射光施設)が、SPring-8を上坪氏がそれぞれ現状報告した。

 APSは建設が終わり1996年6月から利用フェーズに入っている。陽電子で100 mA、寿命は10〜40時間、エミッタンスは10 nm・rad以下の性能に達している。Top off運転(連続入射運転)はいつ始めるか議論中である。来年から年5000時間ビームを利用者に提供する。現在14のCAT(Collaborative Access Team)建設が進み、17台の挿入光源を設置した。生体構造解析、核共鳴散乱、X線ミクロ回折実験、X線蛍光揺らぎ分光、ミクロ結晶のX線イメージングを進めている。また医学、環境、考古学に関連した新しいビームラインを計画している。コヒーレントイメージング、時分割測定、非弾性散乱、高エネルギーX線技術等の装置技術開発を進めている。線型加速器と30 m長挿入光源を使いSASE(Self Amplified Spontaneous Emission)を進め第4世代光源開発を行う計画である。

 PLSはPOSCO製鉄会社の支援で1991年に建設を開始し1995年に利用運転を開始した。150 mの線型加速器から蓄積リングに2 GeVで全エネルギー入射している。線型加速器のモジュレータと蓄積リングの入射部やRFシステムにトラブルが発生しているが順調に運転されている。将来は400 mA、2.5 GeVで運転する。真空紫外領域のEXAFS、散乱実験、Lithography等の6本のビームラインを持つ。今後3本/年でビームラインを建設し2008年までに40本にする計画である。偏向電磁石以外に10本の直線部があり、周期長7 cmのアンジュレータ、7.7 T超伝導ウィグラー、周期長6 cmの円偏光アンジュレータを設置する。利用者は408人組織化されていて、ビームライン利用課題公募を毎年行っている。

 SPring-8は、昨年から今年にかけて線型加速器(1996年8月、1 GeV達成)、シンクロトロン(1996年12月、8 GeV達成)、蓄積リング(1997年3月、RFバケット受け取り)、ビームライン(3月26日、偏向電磁石放射光観測、4月23日、アンジュレータ放射光観測、7月までに7本のビームラインの実験ハッチに放射光導入)のそれぞれのコミッショニング(試験調整運転)を行ってきた。蓄積リングの最大電流は当分20 mAである。寿命は30時間あるがアンジュレータのギャップを8 mmにすると影響がでている。電子位置モニターで潮の満ち引きに相当する周期の地殻変動と考えられる変位が観測されている。今年10月の供用開始に向けて調整が進められている。

 また常設ポスターにおいて世界中の主な放射光施設10施設[DAFNE(イタリア)、LNLS(ブラジル)、立命館放射光施設(草津)、UVSOR(岡崎)、NSRL(中国)、SRS(英国)、MAXII(スウェーデン)、 SIAM(タイ)、KSRS(ロシア)、HSRC(広島)]が紹介された。ブラジルのLNLSはSPring-8と同じ今年の6〜7月にコミッショニングがあった。

 研究発表は口頭発表とポスターで458件あり口頭発表109件には42件の招待講演が含まれている。会議プログラムは加速器、挿入光源、ビームライン、光学系、検出器、光位置モニター、分光、散乱/回折、次世代光源、医学利用、コヒーレント光学系、マイクロビーム、イメージング、産業利用の分野毎のセッションで進められた。

 初日、検出器の口頭発表があり、時分割用、2次元用、高分解能、高エネルギー用検出器の開発の発表があった。Eikenberry氏(米国、プリンストン大)はµsec時分割検出器として従来のCCDと比べて低ノイズのシリコンPAD(Pixel Array Detector)の開発を発表した。谷森氏(東工大)は2次元MSGC(Microstrip Gas Chamber)の開発を発表し、数十nsecの時間分解能、100 µm以下の位置分解能がある画像が得られている。Tolochko氏(ロシア、ブドカー原子核研究所)は、ブドカー研究所で行われている検出器開発を紹介した。2次元マルチワイヤー比例計数管を小角散乱、結晶構造解析、ラウエ回折用に開発し、1 msecの時間分解能をもつ2次元MSGCの開発も進めている。彼氏は現在PFで日露の共同研究を進めている。Strueder氏(ドイツ、マックスプランク研)は高分解能、高計数率のX線検出器としてシリコンドリフト検出器を開発していることを発表した。106光子/sec/cm2の計数率、6 keVで140〜220 eVの分解能を持つ。岸本氏(高エネ研)は、0.1 nsec時間分解能のAPD(Avalanche Photodiode)の開発を発表した。この検出器はエネルギー分解能はNal検出器より良く核共鳴散乱の検出器として利用されている。Frank氏(米国、ローレンスリバモア研)は、数100 mKの極低温で動作させる低エネルギーX線用高分解能検出器を開発していることを発表した。277 eVのX線に対し8 eVの分解能を得ている。コンプトン散乱に用いる高エネルギーX線用検出器CdZnTeをMontano氏(米国、アルゴンヌ研)が発表した。従来のCdTeよりも結晶性が良いようである。

 2日目(8月5日)は、光学系と挿入光源のセッションが開かれた。光学系の発表では、Erko氏(ドイツ、BESSY放射光施設)はSi1-xGexの結晶でGe濃度を変えることによって異なる格子定数をもつ結晶を作ることができ、入射角度の異なるX線に対しBragg角の違いを補う非周期構造結晶モノクロメータの開発、またW/Siスーパーミラーで5〜22 keVのX線にたいし35%以上の反射率の非周期多層膜の開発を発表した。石川氏(SPring-8)は、SPring-8の光学系のコミッショニングについて報告した。SPring-8標準モノクロメータはアンジュレータビームラインに回転傾斜型(傾斜角度80°)、偏光電磁石ビームラインに可変傾斜型を採用している。結晶冷却は水で行い、液体窒素での冷却も可能である。アンジュレータビームラインの結晶はピンポスト型の冷却構造である。蓄積リングの電流が最大20 mAでアンジュレータのギャップ8 mmで冷却性能が確保でき、100 mAを想定しても冷却可能との見通しを得た。可変傾斜型では110 keVまで分光でき、第2結晶でサジタル集光できる。ダイヤモンドモノクロメータを用いるビームライン、ミラーを用いるビームラインを紹介した。Abernathy(仏国、ESRF放射光施設)は、ESRFのトロイカビームラインの光学系を紹介した。このビームラインはアンジュレータを光源とした3実験ステーションを持つ多目的ビームラインである。分光結晶として透過型のダイヤモンドやベリリュウムを使用し、またコヒーレント実験をするため分光器を持たない実験ステーションがある。液体表面の散乱、蛋白質結晶構造解析、磁気散乱、高分解能実験、強度揺らぎ分光、エアロゾルスペックル、パラジウムコロイドの凝結実験等を行っている。菊田氏(東大)はシリコン2結晶を向かい合って配置させブラッグ角90°の反射と透過の回折現象を検討し、高分解能モノクロメータとしての利用と液体に浸し干渉計としての利用を提案した。X線の干渉現象によってサブmeVの分解能のビームが得られる可能性を示した。

 挿入光源の発表では、北村氏(SPring-8)が SPring-8に建設中の各種の挿入光源を紹介した。真空封止型アンジュレータの標準タイプ(水平偏光、周期長3.2 cm)を既に3台、真空封止型垂直偏光多色アンジュレータ1台を設置し、今年の夏と冬にツインヘリカルアンジュレータ(円偏光)、8の字型アンジュレータ(水平偏光)の軟X線用2台と高エネルギーX線用楕円偏光ウィグラー1台、真空封止垂直偏光アンジュレータ1台を設置する予定にしている。コミッショニングにおいて得られたスペクトルは理論スペクトルと一致している。Gluskin氏(米国 APS放射光施設)は、APSの挿入光源の現状を紹介した。APSの標準的周期長は3.3 cmであること、真空チェンバーのギャップを小さくすることによって 1次光と3次光のエネルギー可変範囲が連続的につながるように設計していること、放射角度が安定していて高次光が計算通りにでていること、電磁石挿入光源を製作し10〜100 Hzで偏光面を変更できるようにしていることの発表があった。Stefan氏は、日本で製作した永久磁石をNSLSが製作した真空チェンバーに入れて真空封止型アンジュレータ(周期長1.1 cm 31周期)を共同で製作しNSLSに設置した。3.3 mmのギャップで4.6 keVのX線がでるように設計されている。ギャップは1〜10 mmで可変、1017オーダーの輝度を得た。ただしギャップを4 mm以下にすると寿命は短くなりブレムスストラールング放射が増加する結果となった。

 午後の高エネルギー回折/散乱セッションでは、高エネルギーX線を利用する発表があった。Schneider氏(ドイツ、HASYLAB)はSiの欠陥、ペロブスカイト構造、高温超伝導体、ニッケルのスーパー合金の相転移、クロムのスピン密度波の研究に60 keV以上のX線と全自動4軸回折計を用い、運動量高分解能の回折・散乱から構造因子を精度良く決定した。桜井氏(SPring-8)は、SPring-8のコンプトン散乱ビームライン(100〜150 keVと300 keVのX線を使用)を紹介すると共にフェルミ表面の不連続性を解明すべく高分解能コンプトン散乱を進めていること、円偏光X線を用いることによって磁気コンプトン散乱のデータの統計精度の向上を期待できること、高温超伝導体や4f磁性体の重元素を含む物質の研究を計画していることを発表した。Tschentscher氏(仏国、ESRF)は、ESRFの高エネルギービームライン(80〜数百keVのX線を利用)の計画を紹介した。このビームラインには3実験ステーションがあり、高エネルギー回折実験(EuAs3)、磁気散乱(MnF2)、磁気コンプトン散乱、干渉実験等を行っている。

 午後の次世代光源(第4世代光源)のセッションでは、Kim氏(米国、LBL)がコヒーレントX線、短時間分解、高エネルギーX線の先端開発を述べた。空間的にコヒーレント、時間的に擬コヒーレント、10 keVのX線を発生させるSASEプロジェクトが進められていること、高パワーレーザーと電子ビームのトムソン散乱でフェムト秒X線パルスを発生させること(蓄積リングでのフェムトスライス技術を利用)、またレーザーと重イオンによる後方散乱で1 MeVまでのX線を発生させることの技術を発表した。21世紀に期待する技術である。Materlik氏(ドイツ、HASYLAB)は、TESLA-FEL(Free Electron Laser)計画を紹介した。線型加速器と20〜30 mの長いアンジュレータを用いるSASE FELを進め、400〜700 Å、60 Å、1 Åの波長を目標に3段階の計画を立てている。第3世代よりもピーク輝度が10オーダー高くなることが期待されている。山田氏(立命館大)は、超小型高強度遠赤外光源のユニークな開発の必要性を導入部分で述べ、UVSORでの開発状況の発表を行った。電子軌道に沿って同心円ミラーを設置し遠赤外線を貯蔵することにしている。また、ブレムスストラールング放射を起こさせると高エネルギーX線を得ることができ、X線発生装置の千倍程度の強度を期待できるとしている。

 3日目(8月6日)は、時分割技術とコヒーレント光学系のセッションが開かれた。時分割技術では、Tadjeddine氏(仏国、Lure)は、放射光施設のFEL[線型加速器FEL(CLIO)と蓄積リングFEL(Super ACO)]の利用研究を発表し、赤外線と可視光レーザーを組合せ白金表面の一酸化炭素等表面・界面で起こる化学反応・振動特性の研究、2色ビームでポンプ・プローブ実験(GaAs)、キセノンの2光子イオン化、軟X線放射光とFEL紫外線を用いたシリコン半導体表面のナノ秒欠陥ダイナミックスの研究を行っていることを発表した。Suits氏(米国、ALS放射光施設)はALSの化学反応ビームラインを紹介し、SF6の分解イオン生成物の速度分布、希ガスイオンの角度・運動エネルギー分布の測定を発表した。佐々木氏(日立)は、蛍光X線干渉法を使って基盤表面に配位した分子の構造変化を時分割測定することを発表し、Rh基盤上のZn原子の蛍光X線測定を紹介した。

 コヒーレントX線実験では、宮原氏(東京都立大)は1次のコヒーレンス、2次のコヒーレンスの意味するところを整理すると共に、放射光光源の特性であるエミッタンスをまた2光子相関実験からFELコヒーレンス度合いを知るのに有用であることを示した。Novikov氏(ドイツ、HASYLAB)は、X線ホログラフィを用い原子からの蛍光X線と隣の原子からの散乱X線の干渉を測定することによって結晶中の原子分布を解析する方法を紹介した。鈴木昌世氏(SPring-8)は、ベリリウムやカプトン膜の極小角X線散乱を行い、コヒーレント実験を行う上でビームラインに設置された窓等の物質を透過することでどの程度実験結果に影響を与えるかを示した。

 第4日目(8月7日)は、ビームライン技術やイメージングの発表があった。Lienert氏(ESRF)は、ESRFで行っている高エネルギー(30〜120 keV)X線の集光光学系の開発を紹介した。Laue-Braggモノクロメータで±30 keVの範囲でエネルギー可変、定位置出射・集光が可能であること、湾曲Laue結晶で1 µm集光、エネルギー分解能10-4を達成していること、Kirkpatrick-Baez配置の多層膜で微小試料の3次元高エネルギー回折実験から5 × 5 × 50 µm3の空間分解能を期待していることを発表した。Carr氏(米国、NSLS)は、NSLSの高輝度赤外ビームラインを紹介した。レーザーによるポンプと1〜3バンチの赤外放射光によるプローブを組あわせて時分割分光ができる。火星隕石の化学分析、鉱物中の液体含有量分析を研究テーマとしている。今年の夏にコミッショニングを行うことになっている。福島氏(無機材研)は、SPring-8に建設予定のビームライン WEBRAMを紹介した。0.5から60 keVの広範囲のエネルギーをカバーし、レボルバー型の真空封止アンジュレータを検討している。ヘリカルアンジュレータと水平偏光アンジュレータを切り換えて使用する。1〜2 keVのモノクロメータにYB66結晶を検討している。結晶構造、外殻価電子状態、内殻価電子状態を研究テーマとしている。

 イメージングのセッションでは、百生氏はX線干渉計を用いた位相差トモグラフによるイメージング技術を開発し、生体組織の3次元観測、30 µm分解能を目指していることを発表した。大きなX線干渉計としての2結晶干渉計を開発している。青木氏(筑波大)は、Wolter型の斜入射ミラーを用いX線蛍光顕微鏡のイメージング技術を発表した。銅や鉄のグリッド形状を用いイメージを記録した。空間分解能は10 µm以下である。合成ダイヤモンド中の金属不純物からの蛍光イメージも観測できた。

 夕方のセッションで放射光観測50周年を記念して、米国のBlewett氏が「Synchrotron Radiation-Early History」、Madden氏が「SURF-The beginning」を、ドイツのHolmes氏が「How X-ray diffraction with synchrotron radiation got started」を、佐々木泰三氏が「A prospect and retrospect -japanese case-」を題目として特別講演を行った。放射光の今日に至る開発の歴史を当時活躍された(今も活躍している?)御本人から生の声で聞くことができた。

 最終日(8月8日)は、マイクロビーム、ビーム位置モニターのセッションが開かれた。マイクロビームでは、上条氏(関西医大)はゾーンプレートを使い0.1〜0.5 µmの硬X線マイクロビームを作りミクロな化学解析やXAFS、マイクロ回折、走査型X線マイコロスコピーとして使用していることを発表した。Thiel氏(米国、コーネル大)はテーパー型キャピラリー光学系をCHESS放射光施設に建設、高分子結晶構造解析に適用していることを紹介した。シングルキャピラリー、マルチキャピラリー等種々の形状を検討し、硬X線でnmの空間分解能を目指している。Verman氏(米国、Osmic社)は、硬X線のマイクロ収束用光学系としてWB4C多層膜ミラー使用の“side by side” Kirkpatrick-Baez型配置を発表した。収束と単色化と兼ね、12.5 keVのX線で1 µm以下に収束させる可能性があることを発表した。小池氏(電子技術研)は、硬X線集光光学系としてTi/Al又はAg/Al多層膜ゾーンプレートを製作、ゲルマニウム結晶と組み合わせてBragg-Fresnelレンズを製作した。30 keVX線で20 µmの収束を得た。Fonzo氏(イタリア、TRIESTE放射光施設)は、薄膜導波管でX線のサブミクロンビームを得たことを発表した。クロムのnm薄膜でX線導波管を作成し、導波管とビーム間で共鳴相互作用を起こさせ入射ビームを取り込み、方向を揃え十数keVのX線で0.1 µmのビームを得た。

 午後のセクションで放射光ビーム位置モニターの発表があった。青柳氏(SPring-8)は、SPring-8のアンジュレータビームラインに設置したCVDダイヤモンドモニターを発表した。Area型では4電極をダイヤモンド薄膜に取り付け光伝導電流を測定。ブレード型では4ブレードを配置し光電子を測定。アンジュレータのギャップ変更でビーム位置が動いているように見えている。Peatman氏(ドイツ、BESSY)は、BESSYビームラインのビーム位置モニター、ピンホールアレイ、2ブレード、ブラッグフレネルレンズ系、の3システムについて発表した。Shu氏(米国、APS)は、APSビームラインのCVDダイヤモンド位置モニターを発表した。光伝導でX線ビームの空間的(水平、垂直方向)プロファイルを測定する16 × 16アレイ型を製作していることを発表した。

 午後Henzel氏(ドイツ、キール大学)が閉会講演を行い、今回の放射光装置技術会議を締めくくった。前回の会議からの3年間でESRF、APS、SPring-8の第三世代放射光施設の建設が終わり、この間の挿入光源の技術開発に賞賛の声を送った。また、医学利用として発展してきたアンジオグラフィーの画像の鮮明度の向上に感銘されたようだった。また、SPring-8の実行事務局に労をねぎらい、姫路の地で日本の文化に触れる機会を与えられたことに感謝すると共に、今後もアジア、アメリカ、ヨーロッパの協力の必要性を述べられた。

 次回(2000年)の開催地はこの期間中のIAC委員会では決まらず、グルノーブルまたはベルリンかについて9月の委員会で決定することとなった。

 

SRI'97開会の辞(SPring-8上坪氏)

 

 

 

原見 太幹 HARAMI Taikan

(Vol.2, No.2, P35) 

 

 

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[ - Vol.15 No.4(2010)]
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