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Volume 02, No.5 Pages 5 - 6

2. SPring-8の現状/PRESENT STATUS OF SPring-8

実験ホール内輸送チャンネルの建設状況(その5)
Present Status of the Transport Channel Construction (No.5)

石川 哲也 SHIKAWA Tetsuya

日本原子力研究所・理化学研究所 大型放射光施設計画推進共同チーム 利用系グループ JAERI-RIKEN SPring-8 Project Team Experimental Group

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1.はじめに

 既に7月25日に行われたコミッショニング(試験調整運転)報告会でお知らせしたように、6月16日から18日にかけて、蓄積リングと先行の2本のビームラインに関する放射線使用時検査が行われ、7月3日に合格通知が届き、BL47XU、BL02B1は利用モードに移行することになった。

 翌7月4日に、ビームラインに関する第二次変更申請に対する許可がおり、新たにBL01B1、BL04B1、BL09XU、BL41XU、BL45XUの5本のビームラインで試験調整運転にむけての作業が開始可能となった。7月4日の各種作業の後、JASRI安全管理室による自主使用前検査を開始し、7月5日に検査を修了、7月6日の加速器停止を挟んで、7月7日に新たに試験調整運転を開始する3つの挿入光源の調整作業が始まった。並行して、偏向電磁石ビームライン(BL01B1、BL04B1)の光学ハッチの周囲にX線フィルムを貼りシャッターを開けて漏洩試験が行われた。

 また、既にビームラインとしての試験調整運転を終了していたBL02B1では、回折計を用いたファーストデータが取得された。7月8日には、アンジュレータビームライン(BL09XU、BL41XU、BL45XU)で、アンジュレータ光を光学ハッチに導いた状態での漏洩検査を行い、漏洩箇所の補修と再検査を翌7月9日に行って試験調整運転開始の条件を整えた。同日、複数のアンジュレータでギャップを変化させて他のビームラインの光軸変化を起こさせない補正電磁石の調整を行い本格的なビームライン試験調整運転を開始することとなった。

 BL01B1及びBL45XUでは、光学系の調整が開始され、BL01B1では開始直後に二結晶分光器の反射が確認され、実験ハッチまで単色放射光が導入された。続いて7月10日には、BL09XU、BL41XUでも光学系の調整が開始され、光学調整が不要な白色偏向電磁石ビームラインであるBL04B1では、高圧実験が開始され、ファーストデータが取得された。BL41XUでは、同日二結晶分光器を通過した単色放射光が確認された。7月11日には、BL09XUでも実験ハッチまでの単色放射光導入が確認され、BL45XUでは、トリクロメータによる3波長の取り出しが確認された。翌7月12日に夏期シャットダウン前運転終了を控えた短期間ではあったが、第二陣ビームラインの試験調整運転は数多くの「夏休みの宿題」を残しながらも、標準化されたビームライン設計が大筋として妥当であるという確証を我々に与えたことは大きな成果と言える。

 第二陣ビームラインの試験調整運転の詳細は、本誌次号で報告することとし、ここでは以上の概要に留め、9月に予定されている第三陣ビームラインの建設状況について報告したい。

 

 

2.第三陣ビームラインの建設状況

 共用ビームラインBL08W、BL39XU、BL10XU、BL25SUでは、夏休み中に挿入光源の組込を完了し、10月の供用開始時までに試験調整運転を終了する予定で作業が進められてきたが、BL25SUの挿入光源は諸般の事情により冬のシャットダウン時に蓄積リングに組み込まれることになった。したがってBL25SUでの試験調整運転は冬のシャットダウン明けに開始される。

 残りのビームラインに関しては、フロントエンド・挿入光源・輸送チャンネルの設置工事が夏休み以降に行われ、9月には総合運転試験及び光学系調整を行い、供用開始時には実験ステーション機器調整作業に入れることを期待している。BL10XU、BL39XUは標準アンジュレータビームラインであり、既に調整手順が確立しているので、実験ステーションに放射光を導入するのにさほどの手間はかからないと予想している。BL08Wは、ウィグラービームラインであり標準構成とは異なるが、光学系が非常に単純であるため実験ステーションへの放射光導入は容易であろう。

 第二陣の試験調整運転までで、測量に基づいて設置したビームダクトのほぼ中心に放射光が来ていることから、現状の設置方法はある程度信頼性が高いことが確認された。今後も、従来の方法による設置を継続していく方針である。

 

 

3.供用開始に向けて

 夏期シャットダウン前の試験調整運転では、ミラー系の調整が後回しとなっているので、10月供用開始前に各種ミラー調整機構での調整手順を確立し、併せて偏向電磁石ビームラインでは傾斜架台・昇降架台の動作試験・精度試験を行って輸送系・光学系の設計性能を引き出すべく努力している。また、試験調整運転で明らかになった輸送チャンネルコンポーネントや光学素子の不具合を改善し、供用開始時点でより良い放射光ビームが供給できるよう、準備を進めている。

 輸送チャンネル制御系に関しては、セキュリティの確保のため従来の放射光施設とは異なる設計思想で構成されており、そのためにソフトウェアが若干複雑になっているが、ソフト・ハードの両面で利用者からの要望を取り込んで当面の最終バージョンを構成したいと考えている。この場合に、現状で施設としてかなりの統一性を持った制御系となっており、それを崩してまで個々のビームラインに対して最適化するのは困難であるが、全体としての高性能化を図っていきたいと考えている。

 

 

4.おわりに

 第I期ビームライン建設も、既に半ばを越え、標準構成のものは調整手順もほぼ確立している。今後は標準外構成のビームライン立上げが増えていくので、今までの経験が直接的には活かせないが、SPring-8ビームライン建設グループ若手のポテンシャルが上がっているので個人的には楽観している。一方で実験ステーション機器のフル性能を引き出すことが重要な課題となってくるが、これは利用研究と並行して行われよう。当面の間は建設と利用のフェーズが混在することが予想されるが、今まで建設の影に隠れていた「利用研究に対するインフラストラクチャーの整備」を進めていく必要がある。

 

 

石川 哲也 ISHIKAWA Tetsuya

(Vol.2, No.2, P20)

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794