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Volume 02, No.1 Pages 6 - 8

2. SPring-8の現状/PRESENT STATUS OF SPring-8

フロントエンドの建設現状
Present Construction Status of Front Ends

櫻井 吉晴 SAKURAI Yoshiharu、北村 英男 KITAMURA Hideo

日本原子力研究所・理化学研究所 大型放射光施設計画推進共同チーム 利用系グループ JAERI-RIKEN SPring-8 Project Team Experimental Group

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1.はじめに

 1996年12月の時点で、共用、専用と理研・原研ビームライン全てを含めて17本のフロントエンドの建設が進行している。建設開始時期が異なるため、各フロントエンドの建設はそれぞれに応じて異なった状況にあるが、1997年秋には全て完成させる予定でいる。SPring-8フロントエンドの設計に関する内容は文献[1]〜[5]を参考にしていただき、この記事では、先行フロントエンドで行ったR&Dの結果報告、主要コンポーネントの状況及び各ビームラインでのフロントエンドの状況と今後の予定について述べることにする。

 

 

2.先行フロントエンド報告

 1995年10月よりフロントエンド設置の手順、調整方法を確立する目的で、蓄積リング、実験ホールにアンジュレータ用フロントエンドを実際同様に設置する作業を開始した。SR科学技術情報誌[1][1]櫻井吉晴、北村英男:SR科学技術情報 Vol.4 No.10、p14(1994).の図に示したフロントエンド全体配置図を見るとわかるように、各コンポーネントは共通架台(2本のレールとそれらのサポート)上に乗っている。この設計思想は、コンポーネントの再配置や交換を容易することにある。これは、共通架台のレール基準面とコンポーネント台の基準面を合わせる(コンポーネントを乗せる)ことで、コンポーネントの軸中心と放射光軸とが合うようになっている。

 図1に示したのは、開発した専用冶具を用いてレール基準面位置を調整した後、高精度テレスコープで覗き、レール基準面の変位量を測定し、その値を各位置でプロットしたものである。また、同図にはコンポーネントを乗せた後でのフランジ中心(コンポーネント中心)の変位量も示してある。縦、横とも、目標とした0.3 mm以下に入っていることがわかる。この設置手順、調整方法等は、多くの試行錯誤の末、確立された。

 

図1 共通架台レ-ル基準面とコンポーネント中心の設置精度の評価結果

 

 

3.挿入光源用主要コンポ-ネント

(1)マスク、アブソ-バ

 標準型アンジュレータ用8セットとマルチポールウィグラー(MPW)用1セットを製作中である。その内、標準型アンジュレータ用4セットはAdvancedPhoton Source(APS)との共同開発として製作している。1997年2月中には、APS共同開発の1セットを含む計5セットを設置する予定である。

 軟X線用(BL25SU)の設計はほぼ終了している。また、新型挿入光源、Figure-8が設置されるビームライン(BL27SU)用のマスク、アブソーバについては、挿入光源、フロントエンド、輸送チャネルの全体構成を考慮しながら、設計を進めている。また、高熱負荷コンポーネントに関して、より効率的な冷却方法の開発が重要であるとの認識から、現在、冷却効率のより良い冷却水流路形状のR&Dを進めている。

 

(2)XYスリット、前置スリット

 標準型アンジュレータ用8セットとMPW用XYスリット1台を発注し、1996年末には、標準型アンジュレータ用4セットが納入され、フロントエンドに設置される予定である。軟X線用(BL25SU)とFigure-8用(BL27SU)の状況はマスク、アブソーバと同様である。

 XYスリットの詳細はSR科学技術情報誌[3][3]大浦正樹、北村英男:SR科学技術情報 Vol.4 No.12、p18(1994).の記事に述べられている。前置スリットでは、無酸素銅と等方性グラファイトの接合材を用いている。この材料を超高真空内で使用するので、実機と同様のテストピースで真空特性評価試験を行い、熱的脱離によりガス放出の観点からはフロントエンド機器として十分使用に耐え得ることを確認している。接合部強度の向上は、より大きなパワー密度の光源に対応するために必要であり、今後もR&Dを続けていく項目である。

 

(3)光位置モニター

 光位置モニターの開発は第3世代放射光施設において重要課題の一つであり、SPring-8でも継続して開発を行うべき項目である。SPring-8では、CVDダイヤモンドを用いたエリアとブレード型光伝導タイプを試作しており、SPring-8の稼働と同時に評価する予定でいる。各フロントエンドには、2個所に光位置モニターを設置できるスペースを用意しているが、現在建設中の標準アンジュレータ用フロントエンドに関しては、CVDダイヤモンド・ブレード型光電子タイプ1機を上流側に設置することにしている。また、試験調整運転にはワイヤー型プロファイラーの性能評価も予定している。

 偏向電磁石用は、既存の放射光施設で実績のある三角形二分割電極型の改良型を導入することにしている。

 

(4)インターロック光モニター

 これは放射光軸が200 μrad以上変位した場合、機器保護のために電子ビームをダンプする信号をだすモニターである。その検出部は穴の空いたグラファイトシートでできており、正常時、放射光はその穴を通過する。軸変位時には放射光がグラファイトシートをヒットし、光電子放出による電流を信号としてみるものである。これは、挿入光源用フロントエンドに設置される。

 

 

4.フロントエンドの建設状況

 冒頭で述べたように、現在、総数17ビームラインのフロントエンドが建設中である。その中で、標準アンジュレータビームライン、BL47XU(R&D1)と標準偏向電磁石ビームライン、BL02B1(結晶構造解析)を1997年1月完成を目指して、優先的に進めている。続いて、標準アンジュレータビームラインのBL41XU(生体高分子結晶構造解析)、BL45XU(理研構造生物学1)、BL09XU(核共鳴散乱)と標準偏向電磁石ビームラインのBL01B1(XAFS)、BL04B1(高温構造物性)の5本のフロントエンド建設が進んでおり、フロントエンドシステム全体を1997年の2月には完成させたいと考えている。標準アンジュレータビームラインのBL39XU(生体分析)、マルチポールウィグラービームラインのBL08W(高エネルギ-非弾性散乱)、軟X線ビームラインのBL25SU(軟X線固体分光)の高熱負荷コンポーネント(マスク、アブソーバ、XYスリット、前置スリットなど)の設置を含めた全体システムの完成は供用開始前の長期シャットダウン時に行う予定である。また、原研ビームラインの2本のフロントエンドもほぼ平行して進んでいる。

 

 

5.おわりに

 現在、フロントエンドを含めてビームライン全体の建設ラッシュである。この文章を書いている間にも文章の内容が古くなっていくのを感じるほどで、印刷物として読者のお手元に届く頃には、この内容が“建設現状”として相応しいかどうか心配になりますが、1996年12月15日現在の建設現状ということとご理解ください。

 また、本原稿の作成にあたり、フロントエンドグループの方々からご助力頂いたことに感謝いたします。

 

 

写真1 収納部内のフロントエンド(BL47XU)

 

 

写真2 光学ハッチ内のフロントエンド(BL47XU)

 

 

写真3 収納部内のフロントエンド(BL02B1)

 

 

写真4 光学ハッチ内のフロントエンド(BL02B1)

 

 

 

参考文献

[1]櫻井吉晴、北村英男:SR科学技術情報 Vol.4 No.10、p14(1994).

[2]櫻井吉晴 他:SR科学技術情報 Vol.4 No.11、p14(1994).

[3]大浦正樹、北村英男:SR科学技術情報 Vol.4 No.12、p18(1994).

[4]塩飽秀啓 他:SR科学技術情報 Vol.5 No.2/3、p19(1995).

[5]Y. Sakurai et al., Rev.Sci.Instrum. 66, 1771(1995).

 

 

 

櫻井 吉晴 SAKURAI Yoshiharu

昭和34年5月3日生

日本原子力研究所・理化学研究所大型放射光施設計画推進共同チーム

〒678-12 兵庫県赤穂郡上郡町

TEL.(07915)8-0838

FAX.(07915)8-0830

略歴:昭和58年東京学芸大学卒業、63年東京大学大学院工学系研究科修了、工学博士。後、東京大学生産技術研究所助手、平成3年理化学研究所研究員、現在に至る。日本物理学会、日本放射光学会会員。最近の研究:高分解能コンプトン散乱による金属、合金のフェルミ面及び電子相関効果の研究。今後の抱負:SPring-8を挿入光源、フロントエンド、光学系、ユーザー実験の各立場から理解した上で固体電子の相関効果の研究をコンプトン散乱手法を軸に進めていきたい。趣味:運動不足とストレス解消のため水泳とテニス。

 

 

北村 英男 KITAMURA Hideo

昭和22年6月23日生

日本原子力研究所・理化学研究所大型放射光施設計画推進共同チーム

〒678-12 兵庫県赤穂郡上郡町

TEL.(07915)8-0832

FAX.(07915)8-0830

略歴:昭和45年京都大学理学部卒業、昭和51年8月同大学院修了、同年9月東大物性研助手、昭和55年5月高エネルギー物理学研究所放射光施設助手、平成2年4月教授。平成5年理化学研究所主任研究員(兼務)。理学博士、日本物理学会、日本放射光学会会員。最近の研究:挿入光源、自由電子レーザー。今後の抱負:第4世代放射光源の開拓。ピアノ音楽鑑賞、スパイもの、法廷ものビデオ鑑賞が趣味。

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794