Volume 01, No.5 Pages 32 - 27

7. 談話室/OPEN HOUSE

SPring-8利用者懇談会の活動
Activities of SPring-8 Users Society

菊田 惺志 KIKUTA Seishi

SPring-8利用者懇談会 会長 SPring-8 Users Society President

pdfDownload PDF (65 KB)

 

はじめに

 もう半年を経ずにSPring-8から最初の光が出ます。もうそこまで来たのかという感じと随分待ったなという気持ちが交錯します。

 利用者懇談会の利用課題別サブグループ(SG)ではかなり以前から研究テーマについて煮詰めてきていますが、研究の実施がいよいよ射程距離に入ってきましたので、実験ステーション立ち上げ当初の1〜2年の間にどのような研究をめざすかについて議論をするためにSPring-8シンポジウムをこの10月28日と29日にJASRIと共催で先端科学技術支援センターにおいて開催しました。そこで10本の共用ビームラインの実験ステーションの建設に携わっている各SGの方々に当初実施を計画している研究テーマを提示していただきました。同じ時期に立ち上がる原研と理研グループのビームラインとR&Dビームラインに関しても同様のお願いをしました。魅力的なテーマや野心的なテーマが多数提示され、SPring-8が全体として最初にどのようなサイエンスに挑戦しようとしているのか、その輪郭を浮かび上がらせることができました。当初からレベルの高い成果が得られる期待が一層膨らみました。

 もうすぐ利用フェーズに入ろうとしているこの機会に、利用者側のSPring-8に対するこれまでの活動状況を振り返ってみたいと思います。さらに今後の活動の方向についても触れます。

 

 

1.前身の次世代大型X線光源研究会の活動の経緯

 1970年頃に超強力なX線源を実現したいという議論が高まり、その中で放射光の利用が最有力のものとして取り上げられました。その動きが発展し、1978年からPFの建設が始められ、1982年に供用になりました。これによりわが国でもX線領域の放射光利用研究ができるようになり、多くの研究分野に大きなインパクトを与え、放射光科学と呼ばれる研究領域が確立していきました。放射光利用研究者の数は増加の一途を辿り、結果として放射光利用のビームタイムが不足がちになりはじめました。一方、放射光利用研究の進展によりもっと高輝度の光源を望む声が大きくなってきました。1985年頃には、X線領域の放射光利用者と光源加速器研究者・技術者がPF、PF懇談会、6 GeV-SR計画世話人会、科研費総合研究班などの機関、組織において大型の放射光施設の将来計画についての議論を重ねていました。当時すでにESRFの建設が始まろうとしており、APSの建設計画も具体化が進んでいる状況にありました。

 1987年に科学技術庁の航空・電子等技術審議会や、科学技術庁・文部省の関係者と学識経験者からなる大型放射光整備連絡協議会における協議により科技庁の大型放射光施設計画が前進する見通しになりました。その動向に大型放射光施設の将来計画を議論してきた研究者・技術者集団は強い関心をもち、その施設が従来培われてきた放射光科学技術のポテンシャルを十分に生かした最高性能をもつ施設となり、産・官・学すべてに開かれた共同利用施設となることを期待しました。一方、高エネルギー物理学研究所のトリスタン主リング(MR,30 GeV)の放射光利用への転換計画についても超高輝度光源としての魅力のためにその実現に強い期待を持ちました。このような期待を込めて次世代大型X線光源研究会(研究会と略称)が全国の放射光関係者の賛同を得て1988年5月に発足しました[1]〜[3][1]菊田惺志、藤井保彦:放射光 2、No.1、78(1989)
[2]菊田惺志、藤井保彦:放射光 2、No.4、83(1989).
[3]上坪宏道、菊田惺志:日本物理学会誌 44、787(1989).

 研究会ははじめに、計画をall Japanで推進すること、共同利用体制を実現すること、事業主体を一元化することなどを記した要望書を科技庁に提出し、基本的な了解を得ました。そこで施設の望ましい共同利用体制や運営形態を利用者側の立場から提案していくために、運営ワーキンググループ(WG)がつくられました。一方、放射光利用研究の展望と研究計画の立案をするために利用研究WGをつくり、そのもとに研究課題別のサブグループ(SG)が組織されました。1988年10月に原研・理研大型放射光施設研究開発共同チーム(共同チームと略称)が結成されましたので、共同チームと議論する機会が多く持たれました。1989年6月に原研・理研の諮問委員会として大型放射光施設計画検討委員会が発足し、この委員会のもとに小委員会と作業部会が設けられましたので、これらの場に研究会のWGでの検討結果を提案し、この計画に反映されるように努めました。

 1989年12月末の次年度政府予算折衝において建設費が認められ、科技庁の計画がいよいよ軌道に乗ることになりました。これに先立ち、研究会では早期建設開始に関する要望書を科技庁長官宛に提出し、計画の遅滞無い推進を要望しました。研究会の活動は建設のタイムスケジュールが明確に示された SPring-8計画に主として関わる形で進められました。なおMRについては、その後高エネルギー物理のBファクトリー計画がMRを使用することになりましたので、超高輝度光源への期待は当面消えてしまいました。けれども昨年Bファクトリーへの転換作業に入る前の3カ月間だけMRの放射光利用の機会があり、高輝度光源での実験を試みることができ、今後に役立つ成果が得られています。

 SPring-8計画は科技庁傘下の原研と理研が事業主体となって建設が行われていますが、この施設を利用すると思われる研究者の多くは、文部省、通産省、厚生省などの機関や民間企業に属しています。そこで実効のあがる共同利用体制を実現するには、省庁の枠を越えた仕組みが望まれます。このため研究会ではSPring-8のような大規模な共同利用施設の利用体制の検討について日本学術会議に働きかけを行いました。放射光利用研究に関係する物理学研連、結晶学研連をはじめとるする10の研究連絡委員会に望ましい共同利用体制を実現するための方策の検討を要請しました。これに対して日本学術会議では第4部会において審議し、1990年5月に見解が表明され、関係各方面へ伝達されました。

 SPring-8の完成後にその管理運営を担う財団法人高輝度光科学研究センター(JASRI)が1990年12月に発足しました。1992年12月にJASRIの整備に必要な長期ビジョンを確立するために長期計画検討委員会が設けられ検討が進められましたが、利用者側からも議論に加わりました。

 利用研究WG関係の活動についてみますと、研究課題別SGは当初10チームでスタートしましたが、最終的には28チームに増えました。研究課題別SG のほかに、それらに共通する技術的問題の解決をめざす要素技術的SGもつくられ、X線検出器やX線光学系の開発研究が行われました。またSPring-8の基本仕様を決定するためにワークショップが随時催されました。その際、利用者側の要望を伝えて、仕様の決定に役立てました。検討課題には蓄積リング、ビームライン、挿入光源、長尺ビームライン、蓄積リング棟などが含まれていました。

 共同チーム利用系のR&Dは1989年度から開始されましたが、研究会の研究課題別SGは1990年度からそれに参加し、必要とされる要素技術と緊急性の高い個別研究課題について開発研究に携わりました。年度末に研究成果がまとめられ、報告会が催されました。最終的にすべての研究成果が1冊にまとめられています[4][4]昭和63年度〜平成4年度SPring-8利用系R&D成果報告書、原研・理研共同チーム、平成5年4月.。さらに研究課題別SGでは個別の研究会などで各研究課題について将来展望を行い、研究計画を立案するとともにビームラインと実験ステーションの概念設計を行いました[5][5]サブグループ研究計画書、1990年度・1991年度、次世代大型X線光源研究会課題別サブグループ.。それらをまとめてSPring-8利用研究計画書(英文・和文)が作成されました[6][6]SPring-8 Project-Scientific Program、1990・1991、JAERI-RIKEN SPring-8 Project Team.。これによりSPring-8利用研究の全体像がはじめて明確になり、SPring-8計画の推進に役立ったと思います。

 SPring-8の光源はESRFとAPSに比べて最も優れたものになると期待されていますが、供用開始が2〜4年遅れるのが惜しいことでした。そこで利用各分野の関係者による検討会を催しましたところ、先端的かつ挑戦的な研究課題を他に遅れることなく実施するためには、SPring-8の早期完成がなにより重要であるとの結論に達し、科技庁にその旨の要望書を 1991年12月に提出しました。関係者のご尽力により 1993年度の補正予算による前倒し等によって1年ぐらい早く利用できることになり、利用者にとってありがたい措置でした。

 研究会の広報誌「サーキュラー」が18号まで発行されましたが、研究会の活動はすべてそれに掲載されています[7][7]次世代大型X線光源研究会サーキュラー、No.1(1988年5月)〜No.18(1993年7月).。また「次世代大型X線光源研究会の歩み」としてまとめた資料もあります[8][8]次世代大型X線光源研究会の歩み、次世代大型X線光源研究会幹事会、1993年10月.

 

 

2.SPring-8利用者懇談会としての活動

 SPring-8計画が準備フェーズから建設フェーズに移行してきましたので、利用者側もビームラインや実験ステーションの設計・製作などの作業に協力できる体制にもってゆくことが必要になりました。そこで5年間活動した研究会が発展的に解散し、組織的に研究会よりも整備された形をもつSPring-8利用者懇談会が1993年4月に発足しました[9],[10][9]菊田惺志:日本結晶学会誌 35、357(1993).
[10]菊田惺志:放射光 6、486(1993).
。この利用者懇談会はSPring-8の利用による放射光科学技術への貢献をめざして、建設への協力ならびに利用の円滑化と会員相互の交流の促進を図ることを目的としています。SPring-8には利用方式により共用ビームラインや専用ビームラインが設置されて利用者の対応はそれぞれ異なりますが、利用者懇談会の会員は SPring-8の放射光利用に関心をもつ産・官・学の研究者・技術者などがすべて個人の資格で参加することとされています。利用者懇談会の基本方針は総会が決め、それに基づいて運営委員会が運営方針を定め、会長及び幹事が実行する体制がとられます。運営委員は会員により選出され、会長は運営委員の中から選ばれます。幹事は庶務、会計、行事、編集、利用と運営の仕事を分担しています。

 ビームラインの実験ステーションの建設をめざす研究課題別SGは、研究会でのSGが実質的に引き継がれましたが、利用者懇談会の発足後にSGの分離や新たな結成により数が増えて、表1に示すように35チームになっています。このSGの結成は、会員の自主的な提案に基づいています。各SGは放射光利用研究の目標を掲げ、それを実現するためのビームラインと実験ステーションの構想を練ってきましたが、それらはSPring-8 Project Scientific Program[11][11]SPring-8 Project-Scientific Program、1995・1996、JAERI-RIKEN SPring-8 Project Team.やSPring-8 Annual Report[12][12]SPring-8 Annual Report、1995、JASRI.の中にまとめられています。

 

表1 研究課題別サブグループ

サブグループ 世  話  人
A-1 磁気散乱・吸収 圓山  裕 岡山大
A-2 コンプトン散乱 坂井 信彦 姫工大
A-3 核共鳴散乱 依田 芳卓 東大
A-4 散漫散乱 大嶋 建一 筑波大 物工
A-5 非弾性散乱 田中 良和 理研
A-6 極小角X線散乱 宮地 英紀 京大
A-7 表面界面構造 高橋 敏男 東大 物性研
A-8 構造相転移 野田 幸男 千葉大
A-9 化学反応 田中 清明 名工大
A-10 粉末回折 虎谷 秀穂 名工大 セラミックス
A-12 高温 辻  和彦 慶応大 理工
A-13 トポグラフ 近浦 吉則 九工大
A-14 極限構造物性 浜谷  望 お茶の水大
A-15 高圧地球科学 浦川  啓 岡山大
B-3 分析 合志 陽一 東大
B-4 光励起新素過程 升島  努 広島大
B-5 アクチノイド 大野 英雄 原研 大型放射光
B-6 原子分子 木村 正広 阪大
B-7 核励起 鍛冶 東海 東北大
B-8 電子励起新物質創製 吉田  博 阪大 産研
B-1 XAFS 大柳 宏之 電総研
B-2 広エネルギー領域XAFS 前田 裕宣 岡山大
C-1 生体高分子(結晶) 山根  隆 名大
C-2 X線構造生物学 三木 邦夫 京大
C-3 タンパク質結晶学 森本 幸生 姫工大
C-4 生体高分子(非結晶) 猪子 洋二 阪大 基礎工
C-5 軟X線顕微鏡 木原  裕 関西医大 教養
C-6 マイクロビーム・イメージング 上條 長生 大阪工技研
C-7 X線ホログラフィ 篠原 邦夫 東大
C-8 医学利用 宇山 親雄 循環器センター
D-1 軟X線光化学 小谷野猪之助 姫工大
D-2 軟X線CVD 奥山 雅則 阪大 基礎工
D-3 軟X線固体分光 市川 公一 大阪府立大
D-4 固体電子物性 菅  滋正 阪大 基礎工
D-5 赤外物性 難波 孝夫 神戸大

 

 会員の数は最近1千名の大台に乗り、1,011名になっています。供用が始まると、さらに大幅に増加すると思われます。会員の構成比は国・公・私立大学が66%、国・公立研究所が16%、企業が18%です。

 広報誌「光彩」を年4回発行しています。光彩は文字通りきらきら輝く光で、brillianceという意味が含まれています。このつぎに発行されるNo.12には、先日のSPring-8シンポジウムにおける各グループの講演要旨が掲載されます。

 

 

3.共用ビームラインの建設と利用体制

 当初設置が予定されている10本の共用ビームラインに対して研究課題別SGから実験ステーション建設への提案が行われ、ビームライン検討委員会における1993年度答申でビームライン4本の研究課題が決まり、1994年度に残りの6本が決定されました。その後、できるだけ多くの研究課題がはじめから実施される方が全体のアクティビティを上げるのに望ましいという利用者懇談会の意向が考慮されて、10本の共用ビームラインへさらに11の研究課題が相乗りする形になりました。これらを表2に示します。

 

表2 共用ビームラインのリスト

ビームラインの名称 光源のタイプ 参加するサブグループ
BL41XU 生体高分子結晶構造解析 U(真空封止型) 生体高分子(結晶)
X線構造生物学
BL09XU 核共鳴散乱 U(真空封止型)
 5~75 keV
核共鳴散乱
表面界面構造
BL10XU 高圧構造物性 U(真空封止型)
 5~75 keV
極限構造物性
XAFS
BL39XU 生体分析 U(真空封止型) 磁気散乱・吸収
医学利用
分析
BL08W 高エネルギー非弾性散乱 W
 60~300 keV、楕円偏光
コンプトン散乱
BL25SU 軟X線固体分光 U(高速切替型)
 0.5~3 keV、円偏光
固体電子物性
BL27SU 軟X線光化学 U(高速切替型)
 0.5~3 keV、直線偏光
軟X線光化学
(原子物理)
軟X線CVD
BL02B1 結晶構造解析 BM 構造相転移
粉末回折
化学反応
散漫散乱
BL04B1 高温構造物性 BM 高圧地球科学
高温
BL01B1 XAFS BM 広エネルギー領域XAFS

U:アンジュレータ、W:ウィグラー、B:偏向電磁石

 

 実際には各研究課題のビームラインとの整合性の問題などのために若干の調整・変更はあるようです。この10本の共用ビームラインの実験ステーションの建設は、原研・理研共同チームに利用者懇談会が協力して行うことになっています[13],[14][13]菊田惺志:日本結晶学会誌 38、294(1996).
[14]菊田惺志:放射光 9、379(1996).
そこで建設が認められた各研究課題別SGの中から各々建設グループがつくられました。建設グループは有志からなり、責任者、副責任者とメンバーが決まっています。現地での作業は早いところではこの冬から始まります。11本目から20本目までの共用ビームラインの実験ステーション建設については、すでに提案がなされ、ビームライン検討委員会で選定作業が進んでいるところです。

 利用者にとって関心の高いのはひとつは共同利用に関わる経費の問題です。共用ビームラインのビーム使用料は、行政レベルでのご尽力により研究成果を公開する場合には研究者の所属を問わずに徴収しないことになるようです。共同利用施設に相応しく、どなたにも利用しやすくなり喜ばしいことです。一方、出張旅費・滞在費についても望ましい形ができるのを期待しています。

 

 

4.利用フェーズでのSPring-8利用者懇談会の活動

 SPring-8はもうすぐ建設フェーズから利用フェーズへと移行し、SPring-8の管理運営がこれまでの建設に携わってきた共同チームからJASRIに引き継がれます。利用フェーズになっても勿論、利用者懇談会の基本的なスタンスは変わりませんが、活動の中味は変わってきます。応対する施設者側もJASRIに変わります。利用フェーズでの利用者懇談会の活動の枠組みについてすでに議論が始められていますので、それをここでご紹介します。今後、利用者懇談会の幹事会、運営委員会で検討するとともに、JASRIとの間で詰める必要があります。できれば来年1月11日の総会で基本方針が決まるとよいと思います。

 まず重要なことは研究課題別SGを共用ビームラインの実験ステーションを建設したあとにも存続させることです。利用研究は軌道に乗り、進展していくはずですが、当然さらに高いレベルの研究をめざすことになるでしょう。そのためにはビームラインと実験ステーションをハードとソフトの両面でたえず高度化していく必要があります。建設に携わった SGは実験装置に関する豊富なノーハウをもっていますので、そこでの放射光利用研究の経験を踏まえて、高度化の作業を適確にこなすことができると思われます。SPring-8が将来的に高いアクティビティを維持するためには、このような個別の高度化の作業を進めるとともに、SPring-8全体として発展する方向を見据える将来計画をもつことが肝要でしょう。その将来計画の立案に利用者の立場から寄与するべきだと思います。ビームラインと実験ステーションの高度化と将来計画の立案に関する作業のまとめはJASRIから刊行されているSPring-8 Annual Reportに放射光利用研究の成果とともに掲載されればよいでしょう。

 これまでの建設フェーズでは利用者懇談会は、原研・理研からJASRIへ委託された材料科学及びライフサイエンス研究分野等におけるSPring-8の利用計画調査に協力するとともに、JASRIからのSPring-8での利用研究に関する調査の委託を受けてきました。これからの利用フェーズでは上述のような作業をJASRIから委託を受ける形で実施できればよいと思います。

 さらにSPring-8シンポジウム(仮称)と講習会をJASRIと共催します。先日催されたSPring-8シンポジウムはいわば第0回の位置づけで、ここでのSPring-8シンポジウムは放射光利用が始まってからのものについてです。放射光利用研究の成果は日本放射光学会・放射光科学合同シンポジウムで発表する形が定着しています。これは全国の放射光施設とその利用者団体および日本放射光学会が共催し、各放射光施設の利用者が一堂に会して研究成果を発表するものです。学会や各施設が個別に行うよりも情報交換が効率的に密度濃くでき、概ね好評のようです。SPring-8も放射光利用研究の成果発表はそこで行い、SPring-8シンポジウムではSPring-8での放射光利用研究の発展や共同利用の円滑化に必要な事柄を討議することになると思います。講習会では、放射光科学の啓蒙と放射光利用研究の手ほどきを行い、放射光利用研究者の拡大と放射光利用の円滑化を図ります。

 広報活動については、SPring-8計画の準備フェーズでは「サーキュラー」が、建設フェーズでは「光彩」が自由な意見交換や情報伝達の場として役立ってきました。一方、JASRIは1991年7月から「SR科学技術情報」を発刊し、各分野における研究の動向、トピックスや文献速報を掲載していましたが、建設が進み、利用に向けた情報を提供することが必要になってきたので、1996年3月から新たに本誌を発行しています。ところで「光彩」と「SPring-8利用者情報」は当然のことながら取り扱う話題は似ていますから、記事が重複することが多く、執筆者への負担も増えています。利用者懇談会と施設者側は基本的に不即不離の関係にあるのがよく、会誌は独自のものをもっているのが筋ですが、利用フェーズでは「光彩」を「SPring-8利用者情報」にマージさせてもらってはどうかという案が検討されています。問題はJASRIの広報誌に利用者懇談会の会員の様々な意見や要望を載せることですが、JASRIにはそれを許容する雅量があると推察しています。実施にあたっては「SPring-8利用者情報」に「利用者懇談会だより」のような欄を設けていただき、そこで利用者懇談会の活動状況を報告し、また「光彩」に載っている「会員の声」も掲載してはどうかと思います。編集委員会には利用者懇談会からも編集委員を出し、利用者懇談会側の記事をまとめればよいでしょう。

 一般的に共同利用の実験施設では、施設の運営に利用者の意向を適確に反映させるために、利用者組織から施設の主要な委員会に委員の候補者を推薦するのが慣例になっています。利用者懇談会でも従来そのような依頼を受けていますが、利用フェーズでこのような形が定着してほしいと思います。

 

 

おわりに

 利用者懇談会ではSPring-8の放射光利用に関心をもつ方々に、産・官・学を問わず広く入会をお誘いしています(年会費2,000円)。連絡先はつぎのとおりです。

 

   SPring-8利用者懇談会事務局(佐久間明美)

   〒678-12 兵庫県赤穂郡上郡町金出地1503-1

   (財)高輝度光科学研究センター内

   TEL. 07915-8-0970 FAX. 07915-8-0975

   E-mail. sakuma@spring8.or.jp

 

 いよいよ来年の10月から供用が開始され、先行している第3世代大型リングのESRFとAPSの仲間入りをすることになりますので、競争と協調の関係のもとでこの絶好のチャンスを最大限に生かして新しいサイエンスを切り開きましょう!

 

 

 

文献

[1]菊田惺志、藤井保彦:放射光 2、No.1、78(1989).

[2]菊田惺志、藤井保彦:放射光 2、No.4、83(1989).

[3]上坪宏道、菊田惺志:日本物理学会誌 44、787(1989).

[4]昭和63年度〜平成4年度SPring-8利用系R&D成果報告書、原研・理研共同チーム、平成5年4月.

[5]サブグループ研究計画書、1990年度・1991年度、次世代大型X線光源研究会課題別サブグループ.

[6]SPring-8 Project-Scientific Program、1990・1991、JAERI-RIKEN SPring-8 Project Team.

[7]次世代大型X線光源研究会サーキュラー、No.1(1988年5月)〜No.18(1993年7月).

[8]次世代大型X線光源研究会の歩み、次世代大型X線光源研究会幹事会、1993年10月.

[9]菊田惺志:日本結晶学会誌 35、357(1993).

[10]菊田惺志:放射光 6、486(1993).

[11]SPring-8 Project-Scientific Program、1995・1996、JAERI-RIKEN SPring-8 Project Team.

[12]SPring-8 Annual Report、1995、JASRI.

[13]菊田惺志:日本結晶学会誌 38、294(1996).

[14]菊田惺志:放射光 9、379(1996).

 

 

 

菊田 惺志 KIKUTA Seishi

昭和13年3月23日生

東京大学 工学部 物理工学科

〒113 東京都文京区本郷7-3-1

TEL:03-3812-2111(内線6825)

FAX:03-5689-8257

略歴:昭和37年東京大学理学部物理学科卒業、37年同大学助手、46年講師、48年助教授、62年教授、この間主にX線光学、表面物理学、中性子光学などの研究に従事、理学博士。日本放射光学会、日本物理学会、応用物理学会、日本結晶学会会員。最近の研究:放射光による核共鳴散乱の研究、放射光によるX線のコヒーレンスの研究。今後の抱負:放射光科学の一層の発展を図る。趣味:花も実もある木の育成。観葉植物の栽培。

 

 

SPring-8/SACLA INFORMATION

ISSN 1341-9668 EISSN 2187-4794