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Volume 01, No.5 Pages 8 - 10

2. SPring-8の現状/PRESENT STATUS OF SPring-8

食堂及び中央管理棟について
Cafeteria and Main Building : Overview

北見 俊幸 KITAMI Takayuki

日本原子力研究所・理化学研究所 大型放射光施設計画推進共同チーム 建設グループ JAERI-RIKEN SPring-8 Project Team Facility Construction Group

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 SPring-8敷地のうち正門守衛所から中央管理棟に至るメイン道路に隣接するエリアは管理・厚生ゾーンとして、食堂、中央管理棟の他、研究交流施設、図書情報センター、放射光研修施設等の建設を計画しています。

 このうち食堂、中央管理棟の建設について紹介します。

 

 

●SPring-8食堂

 食堂は延べ床面積約1,200 m2壁式鉄筋コンクリート・鉄骨造2階建の建物で、大食堂(170席)、特別食堂(20席)、喫茶室(40席)、ホール、テラス及び庭園等で構成しています。研究交流施設と中央管理棟の中間に位置しており、利用者は徒歩が主体となるように計画し、50台の駐車場と24台の駐輸場を併設しています。

 視覚的遮蔽と景観の連続を図るためマウンドを設けて敷地を区画すると共に、中央管理棟とオープンスペースを挟んで隣接しているため研究施設に似せてシルバーの円弧屋根を採用しています。

 大食堂は天井高6 mで座席のゆとりは一般的なホテル並です。昼食はカフェテリア方式を採用していますのでセルフサービスとなりますが、夕食の時間帯ではフルオーダーサービスもできることを前提として設計しています。また、前面のガラスのカーテンウォールは南向きなので庭園としては逆光となりますが、屋外での食事等もできるようなコーナーも設けていますので陽当たりの良い庭園をテラスとして一体的な利用を図ることが可能です。なお、この庭園は白樺を主体に植栽しておりますが、白樺は寒さの厳しい場所では文字通り白樺ですが温暖な土地では樹皮の色が黄色くなるそうです。現在、建設グループでは茶樺と称していますが、南仏のバルボンヌ・ソヒィア・アンティポリスをイメージコンセプトとした播磨科学公園都市が寒暑厳しい土地なのか温暖な土地かを植生的見地から観察したいと思います。

 特別食堂へのアクセスは食堂の北側からとなり、大食堂と喫茶室に至るメインホールからのアクセスとは原則分離しています。特別食堂に至る通路にはくぐり戸を設け、室内の仕上げ及びこれに面する庭園を和風にしています。また、部屋を2室(10席 × 2)に分けて利用することも出来るように可動間仕切り壁を設けています。

 喫茶室にはカウンターを設けるほか、ソファー席では位置により開放的な席も閉鎖的な席も有りますので研究者タイプ毎の使い分けも可能です。この喫茶室は、大食堂をパーティー等で利用するときのクロークとしても活用して頂きたいと思います。

 このほか厨房では電磁調理器及びドライシステムの採用、密室となる洗浄器室への白然光の導入、更衣室にシャワー設備を併設等とサービス側の環境改善も図ることにより、2次的に利用者へのサービスが向上することを期待しています。

 食堂の建築工事及び厨房機器の設備工事は平成8年11月に、外構工事は平成8年12月に竣工の予定です。食堂の運営が早期に開始され、また充実したサービスを提供することができるよう関係者のご奮闘を願いたいと思います。

 

 

●SPring-8中央管理棟

 中央管理棟は研究居室、放射光共同利用支援及び事務管理等の機能を有し、SPring-8運営の中核的な施設となります。また、正門通りから中央管理棟正面に至るように配置していますのでシンボル的な構造物でもあります。

 延べ床面積約6,400 m2鉄筋コンクリート・プレストレストコンクリート造の5階建の建物で、敷地は蓄積リング棟の宅盤よりも一段低いレベルにあります。このため敷地レベルの1階、蓄積リング棟レベルの2階、同中央制御室レベルの3階からのアクセスを考慮して設計しています。また、外構は中央管理棟を焦点とした放物線で整理し、前宙にオープンスペース、両ウイングに駐車場を確保し、さらに正面にはモニュメント的な噴水を設置しています。

 収容人員は事務・技術・支援部門約150名、加速器及び利用研究部門約150名の計300名程度を想定しています。

 1階にはメインホール、講堂、事務室、会議室等を配置しています。メインホールの吹き抜けは8本の柱が8回対称のトップライトを支える構造にするとともに、ホールの表情を創るため受付カウンター背面にタペストリーを設置する計画です。講堂を利用したときのコーヒーブレイクの空間としても利用していただきたいと思います。またクロークを併設した講堂には大型のヴィデオウォールを設置していますので、プレゼンテーション、テレビ会議等に活用できます。

 2階には利用支援及び技術支援の大部屋を配置しています。これは2階のレベルが蓄積リング棟実験ホールと同じレベルになるため、放射光利用研究者の利便を考えたもので、蓄積リング棟側にも裏玄関を設けています。

 3階及び4階は研究居室で、中央制御室に渡り廊下で接続する3階を加速器研究部門、4階を利用系の研究部門を主体に割り振られることでしょう。研究居室は約22 m2の2人使用の居室を基本に約70室を整備し、研究系事務室、セミナー室及びプリンター室を付設しています。

 5階は展望室、リフレッシュコーナー、シャワールーム及び建築設備機械室を配置しています。この展望室及び屋上はSPring-8敷地内で最も展望の良い場所と考えられるので、施設案内等の場合のポイントになると思います。なおリフレッシュコーナーは小規模ですが2室有りますので、リフレッシャーのサービス等運営面での配慮をお願いします。

 外観は蓄積リング棟との調和と先端的なイメージに配慮して、外装をアルミスパンドレル、透明ガラスのカーテンウォール及びコンクリートの打ち放しで構成しました。また、この象徴的な建物が北向きになるため、晴天時に暗い印象を与えないように建家前面頂部にスリット状のトップライトを設けています。

 建築設備としては、落雷による電子機器の停電被害防止のために無停電電源系を、任意に空調の運転・停止・温度調節ができるようにウォールスルー個別空調方式を採用しています。

 

余談1: メインホールのトップライトは、Cr-Ni-Sia11oy結晶構造の8回対称ラウエパターンを採用しています。また、8本の柱は建築基準法による防火区画・竪穴区画のために防火シャッターを支持するために必要なもので、建築プランと調整して決定したものです。
余談2: タペストリーの原画は、冊子「原研」の表紙を20年以上描いている小原建治郎氏(原研職員)にお願いして、このために新たに油絵で描いて頂いています。
余談3: 中央管理棟前面のアルミスパンドレルの構成は意匠的に決定したものですが、結果的に周易の八卦の「震」の図形となり、これには「陰気が充塞した所に一陽発生してようやく活動しようとするかたち」の意昧があるようです。この播磨科学公園都市におけるSPring-8の位置付け、基礎研究の画期的な展開を期待する意昧からも相応しいのではないかと自負しています。

 中央管理棟が早期に使用できるよう関係者一同努力している次第です。その時点で、現在各建家に分敵している人員配置が中央管理棟に集約的に再配置されることになります。

 

 

 

北見 俊幸 KITAMI Takayuki

(Vol.1, No.2, P19)

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794