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Volume 01, No.2 Pages 34 - 36

3. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT

第5回アドバイザー会議

宮原 義一

日本原子力研究所・理化学研究所 大型放射光施設計画推進共同チーム 研究開発グループ

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 SPring-8国際アドバイザー会議は国際的に主要な放射光施設の著名な研究者12名で構成される委員会で、SPring-8建設の技術的問題等について助言と勧告を行う。毎年一回開催され、今年で5回目である。今年は、4月22日から24日までサイト近くの先端科学技術支援センターで行われ、加速器とビームライン建設の進捗状況とJASRIを中心とする運営体制について報告討論された。更に25日には京都の日本スタンフォードセンターで巨大科学プロジェクトの進め方について討論された。今回は他の2つのワークショップに続いて行われたので研究者、事務方とも大童であったが、関係者の努力により内容の充実した会議にすることができた。

 会議のプログラムは後で示すように、第1日目に上坪リーダにより施設建設の現状について総合報告が行われ、JASRIの組織と原研、理研の協力体制の現状と将来について説明が行われた。JASRIの組織については毎回委員会で曖昧さを指摘されてきたが、ようやくJASRIの体制が整ってきたことにより危惧の念が払拭されたようである。次に第4回アドバイザー会議の勧告に対する対応が報告され、その後、施設の視察が行われた。前回は建物だけであったが、今回はライナック、シンクロトロン、蓄積リングとも加速器設備がほぼ完成に近い状態で建物内に設置されていたので、委員に極めてよい印象を与えたようである。午後にはそれぞれの加速器建設の進捗状況が詳しく報告された。建設はほぼ予定のスケジュール通り、各機器の性能も仕様通りである。マシンのコミッショニングはライナックが今年8月、シンクロトロンが10月、蓄積リングが来年2月に始まる。また、マシンのコミッショニングのやり方について検討結果が報告された。姫工大を中心にしてサイト内に建設されることになった1.5 GeVのVUV リングであるニュースバルについても計画内容が報告された。今回はマシングループによるトピックス的な話題は割愛された。

 2日目はビームライン建設の進捗状況について報告された。まず利用系グループの活動として、利用計画、建設状況、スケジュール等について総合的に報告された。次にビームラインの共通項目として挿入光源、フロントエンド、光学系、検出器について報告された。そして、3つの偏向磁石ビームライン、6つの挿入光源ビームライン、およびJAERIとRIKENのビームラインの建設状況について報告された。報告の内容は多岐にわたるが、特に多様な挿入光源、X線ビーム位置モニタ、分光器用単結晶の作製と冷却、2次元検出器等に強い関心が持たれた。ビームライン要素の共通性と制御の統一性に注意が払われていることを委員は歓迎している。また、魅力的な選択がされているビームライン計画に大きな期待が寄せられている。

 3日目はAPS-ESRF-SPring-8の3極会議と30 m長直線部の利用に関するワークショップの検討結果について報告された。また、SPring-8がアジア諸国から研究者を受け入れ、ビームラインを解放することに賛意が寄せられた。当初プログラムには無かったが、30 m長直線部による自由電子レーザーの詳細な検討結果(中村)とビームラインの放射線シールドに関する安全設計(笹本)の報告も行われた。午後までに委員会は会議報告書の素案を作成した。

 4日目の討論は京都のスタンフォード日本センターで行われた。同センターは日米間の研究交流と日本に関する研究者の養成のために設立されたもので、委員の一人であるウイニック教授の紹介でこの場所が選定された。討論のテーマは日本の思考様式と日本の巨大プロジェクト方針である。これは委員の発意で行われることになったが、もともとはSPring-8建設を行ったJAERIとRIKENの共同チームと途中で組織されたJASRIの3者一体の運営と体制が欧米の委員にやや不可解な印象を与えたことに起因する。しかし、共同チームによる巨大プロジェクトの建設というのは日本でも初めての試みであるから、日本的特色ではないが、今までのアドバイザー会議で時々現われたグループ間の考え方の違いや組織上の曖昧さが、3者一体の運営体制と更には日本の思考様式に関係していると思われたようである。討論ではSPring-8を初めとして各委員はそれぞれの国の巨大プロジェクトの決定と進め方を紹介したが、研究者集団と政府組織での討論を経て決定される過程には大きな違いは見られなかった。時間が足りなくて、本来のテーマである日本の思考様式と組織上の問題にまで議論が進まなかったのは残念であった。

 同委員会は今回をもって解散する。委員会の功罪は人によって見方が違うであろう。中には無理な注文を付けるので、あるいは、やっても無駄だから無いほうがよいという人もいた。しかし、一般に日本人だけの委員会は堅苦しく、ややもすれば黙認機関であるのに対して、外国人を主体とした同委員会が率直に有益な助言と勧告を行ったことは高く評価される。また、同委員会の委員を通じてSPring-8の存在と力量を世界に認知させる作用もあったであろう。更に、年に一度、所をあげて、とまでは行かなくても所外の有力な研究者にまとめの報告を行うことは物事を整理する上で大変有効であった。特に、若手研究者が同会議での報告を積極的に行ったことは大変喜ばしいことである。

 

 

 

The Fifth Meeting of the International Advisory Committee of the SPring-8 Project

 

April 22-25, 1996

At the Center for Advanced Science and Technology, Harima

AGENDA

 

Chairman: M.Ando

 

April 22, Monday
9:20-9:30 Opening address
 H.Kamitsubo
9:30-10:00 Present status and future of SPring-8
 H.Kamitsubo
10:00-10:20 Organization of JASRI
 H.Kamitsubo
10:20-10:40 Measures to the recommendations of the fourth meeting
 Y.Miyahara
10:40-10:55 (Coffee break)
10:55-12:40 Site tour
12:40-14:00 (Lunch)
Present status of accelerators
14:00-14:20 Linac
 H.Yokomizo
14:20-14:40 Synchrotron
 H.Yonehara
14:40-15:10 Storage ring
 N.Kumagai
15:10-15:40 (Coffee break)
15:40-16:00 Procedure of commissioning
 H.Tanaka
16:00-16:20 New Subaru Project
 A.Ando
16:20-17:00 Open discussion on accelerators
17:00-17:30 Executive session
18:00-20:00 (Reception)
 
April 23, Tuesday
9:00-9:20 Activities of experimental facility group
 T.Ueki
9:20-9:40 Insertion devices
 H.Kitamura
9:40-10:00 Front ends
 Y.Sakurai
10:00-10:20 Optics
 T.Ishikawa
10:20-10:40 Detectors
 M.Suzuki
10:40-11:10 (Coffee break)
  Bending magnet beamlines
11:10-11:25 Crystal structure analysis
 H.Konisi
11:25-11:40 XAFS
 T.Uruga
11:40-11:55 High temperature research
 W.Utsumi
11:55-12:30 Executive session
12:30-14:00 (Lunch)
ID Beamlines
14:00-14:15 Bio-crystallography
 N.Kamiya
14:15-14:30 High energy inelastic scattering
 H.Yamaoka
14:30-14:45 Nuclear resonant scattering
 T.Harami
14:45-15:00 Physico-chemical analysis
 S.Goto
15:00-15:15 Extremely dense state
 K.Suzuya
15:15-15:30 Soft-Xray spectroscopy
 Y.Saito
15:30-16:00 (Coffee break)
16:00-16:15 JAERI beamline
 M.Yokoya
16:15-16:30 RIKEN beamline
 M.Yamamoto
16:30-16:45 R&D beamline
 Y.Kohmura
16:45-17:15 Open discussion on beamlines
17:15-17:45 Executive session
 
April 24, Wednesday
9:00-9:10 Radiation safety in beamlines
 N.Sasamoto
9:10-10:00 International collaboration
 H.Ohno
10:00-12:00 Report draft
12:00-13:00 (Lunch)
13:00-14:30 Report draft
14:30-18:00 (move for Kyoto)
 
April 25, Thursday (at The Stanford Japan Center in Kyoto)
Discussion on the Japanese way of thinking and Japanese big science policy
9:00-9:10 Opening address
 K.Imai
9:10-9:30 How the SPring-8 project was realized
 H.Kamitsubo
9:30-10:00 Japan's big science policy
 M.Oda
10:00-10:20 Japanese fuzziness...from the view of religion
 K.Huke
10:20-10:40 (Coffee break)
10:40-12:00 Oversea's policyⅠ H.Winick
  Ⅱ G.Mulhaupt
  Ⅲ Y.Cho
  Ⅳ G.Greaves
  Ⅴ G.Materlik
  Ⅵ J.Hastings
  Ⅶ S.X.Fang
  Ⅷ G.Kulipanov
12:00-12:30 Discussion
12:30-13:30 (Lunch)
13:30-14:30 Discussion
14:30-18:00 (Tour)

 

 

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[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794