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Volume 01, No.2 Pages 18 - 19

2. SPring-8の現状/PRESENT STATUS OF SPring-8

研究交流施設の建設について

北見 俊幸

日本原子力研究所・理化学研究所 大型放射光施設計画推進共同チーム 企画・管理グループ

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 研究交流施設は管理棟と滞在施設4棟から構成されており、管理棟が研究交流施設管理棟、滞在施設が研究交流棟A棟、B棟、C棟、D棟です。研究交流棟A棟は平成7年度の1次補正予算(単年度予算)で認可されたもので理研所掌、その他の建家と外構工事は2次補正予算(3年債務負担予算)で認可された原研所掌の工事です。このため研究交流棟A棟は平成8年度当初に、その他の建家と外構工事は平成9年度に供用開始となります。研究交流棟A棟等の建家の名称ではいかにも無愛想なので将来は研究所に相応しい気の利いた4つの呼称を付けていただくことを念願しつつ、ここでは工事名称で説明させていただきます。

 研究交流施設はビームラインの建設・利用等に関わる外部研究者の短期間滞在(1箇月程度)の利便を目的とした施設で、食堂に隣接する標高295 m約1 haの宅盤に建設しています。

 研究交流棟は光庭に面した中廊下式になっており、個室面積が約25 m2のワンルームマンションタイプで備品・什器類等も整備します。但し、待機室としての性格を有する研究支援施設ですから、個室に生活の臭いを残して次の利用者に不快な思いをさせないため原則喫食は禁じられることとなります。また、ドアロックはカード式で、電灯及び空調などの電源はカード挿入によってON・OFFを管理しランニングコストの低減を図っています。A棟は5階建60室、B棟は7階建82室、C棟は5階建60室、D棟は3階建36室であり、合計240室(内6室は車椅子対応)の「超」高層「超」過密都市が出現することになります。ボールトの屋根と4棟の階数の違いによって、背景になる多賀登山のスカイラインと研究交流棟のシルエットとが山波になるよう計画しています。

 研究交流施設管理棟は利用者の便宜を図るため、管理人が常駐しメール及びクリーニング等のサービスを行うほか、交流を目的とした談話室を4室設けています。このうちの1室には厨房を併設しており調理・喫食・懇談が可能です。また、うち2室は日本庭園に面した和室になっており、お茶も出来るようになっています。筆者には2室打ち抜きの宴会場が脳裡に浮かびますが、良き管理者に期待したいと思います。日本庭園は中庭に設けられておりますが、植栽等により区画しバーベキュー等が可能なスペースも確保しています。建家は平屋建寄棟造りになっており他の建家とは印象が異なりますが、屋根の材質感で全体が一体的になるように配慮しました。

 施設敷地の入口に研究交流施設管理棟を配置し、奥に研究交流棟を雁行状に配置し隣棟間隔を出来るかぎり取るように計画しています。この 「超」過密都市の全室に日差しが入るようにしていますが、建家を南北方向に配置していますので利用者は「朝方タイプ」と「夜方タイプ」のどちらかしか選択できません。駐車場は施設敷地内に120台分を整備しますので、個室2室につき1台分となります。また、駐輪場は40台分ですので個室8室につき1台分となります。つまり240室のうち80室は車・自転車を必要としない「健脚タイプ」ということになります。因みに、施設から蓄積リング棟までは直線距離で250 m程度ですが最悪の場合には自分のビームラインまで1 kmとなりますので、人間の歩行速度を4 km/h程度として「健脚実行型・健忘症」の方は30分の余裕を見て実験室と施設の往来をする必要があります。

 施設敷地は周囲が自然緑地に囲まれているため芝を中心にしたオープンな植栽計画としています。中央には木立で囲まれたオープンスペースを設けており、キャッチボール広場と称する芝生だけの庭になっています。十分な敷地とはいえませんので周囲の自然緑地の手入れと散策路の整備などにより、リフレッシュ効果を図れる施設にすると共に自然に親しめるような環境造りが必要ではないかと感じています。

 施設の建設もさることながら、研究交流施設の運用・サービス面などの充実により研究交流施設が支援施設として機能することと思います。大型放射光施設敷地の中で「一番高い宅盤」で多くの方々が交流される施設になることを期待しています。

 

 

鳥瞰パース/研究交流施設管理棟及び研究交流B棟、C棟、D棟

 

 

研究交流施設A棟

 

 

 

北見 俊幸 KITAMI takayuki

昭和33年2月23日生

日本原子力研究所・理化学研究所

大型放射光施設計画推進共同チーム建設グループ

〒678-12 兵庫県赤穂郡上郡町金出地1503-1

TEL.(07915)8-0821

FAX.(07915)8-0890

昭和56年早稲田大学理工学部建築学科卒業、昭和56年日本原子力研究所入所、現在に至る。

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794