ページトップへ戻る

Volume 01, No.2 Pages 12 - 17

2. SPring-8の現状/PRESENT STATUS OF SPring-8

医学利用実験施設の建設・整備について

日本原子力研究所・理化学研究所 大型放射光施設計画推進共同チーム 企画グループ

pdfDownload PDF (419 KB)

 

概 要

 SPring-8計画は、平成9年度後半からの供用開始に向けて建設の最終段階にはいっていますが、その中で、平成7年度の第2次補正予算により、生物医学研究や医療診断などに必要な放射光利用イメージング技術の研究開発を実施する「医学利用実験施設(Biomedical Imaging Center)」の建設が新たに認められました。同施設に整備される3本の中尺ビームライン計画については、今後、「ビームライン検討委員会」における審議を経つつ、具体化されることになります。SPring-8共同チームでは、基礎研究及び臨床研究のいずれにも対応可能な施設計画を作成し、平成7年度末から建設に着手しました。

 

 

1.はじめに

 平成7年度の第2次補正予算により、平成9年度までの3年計画による「医学利用実験施設」の建設が認められました。同施設は、大型放射光施設計画検討委員会(委員長:高良和武)からの答申「大型放射光施設に関する検討評価について(平成4年6月30日付)」に示された施設配置計画に従い、SPring-8キャンパス南西端に建設予定であった3本の中尺ビームラインを格納する共同利用の実験・研究施設として整備されます。この施設に整備されるビームラインは、SPring-8計画における最初の10本の共用ビームラインと同様、今後、「ビームライン検討委員会(委員長:下村理)」の審議を経て、計画が具体化されていくことになります。

 本稿は、今後、生物医学研究やイメージング技術開発の研究者が、ビームラインの利用計画などを考える上で必要な基本的枠組みとしての本施設の設置目的、施設計画の概要などを紹介し、併せて本施設計画を含むSPring-8計画の推進に対する関係者の皆様のご理解とご協力を得るために寄稿しました。(本稿は「SR科学技術情報」1995年12月号の原稿を一部修正して再載したものです。)

 

SPring-8施設全体配置図

 

 

2.施設の設置目的

 医学利用実験施設は、SPring-8の高輝度・高エネルギー・高強度放射光を利用し、がん・心臓疾患などの医療診断、並びに、形態発生学・細胞生物学などの生物医学研究に必要な画像情報の獲得を目指した総合的な研究開発を実施する共同利用の実験・研究施設として整備するものです。したがって、施設計画としては、基礎的な生物医学研究に係わるイメージング技術の研究開発とともに、実験的な臨床応用研究などにより開発したイメージング技術の有効性と安全性などを確認するための研究開発も実施し得るよう設計し、建設します。また、将来は、開発したイメージング技術に係わる研究成果普及のための計画も含める予定です。

 

 

3.施設の概要

(1)施設計画

 医学利用実験施設は、SPring-8キャンパス南西側の中尺ビームライン予定地に建設し、想定されるビームライン計画と研究開発計画との関連から、実験棟と研究棟の2棟を2階部分で連結した構造としています。(基本設計図参照)。

医学利用実験施設・実験棟
実験棟は、光学系を格納する輸送チャンネル部分や動物実験を含む生物医学研究用の実験ステーションを格納する「基礎実験領域」と、実験的な臨床応用研究を実施するビームライン最下流の実験ステーション部分を格納する「臨床実験領域」とに区分しています。後者については、将来、医療施設としての運営を行うことを考慮し、構造上「基礎実験領域」と「臨床実験領域」とは、別棟と見なし得る施設計画としています。
医学利用実験施設・研究棟
研究棟は、ビームライン要素技術の研究開発、実験データの解析・処理などを行うために必要な実験室、研究室、会議室などから構成されます。なお、ビームライン上流の「基礎実験領域」へ「臨床実験領域」を通らずに直接アクセスできるようにするため、2階部分に実験棟との間の渡り廊下を設けています。
その他
臨床試験を実施する医療施設として具備すべき機能、医療機関や他の研究施設との間で行う画像情報通信設備、動物実験・臨床試験などに伴う特殊な廃棄物の処理・保管施設などを整備します。

(2)想定されるビームライン計画・研究開発計画

 本施設には、3本の中尺ビームライン(挿入光源:2箇所とそれらに挟まれた偏向電磁石:1箇所)を整備できるよう計画しています。ビームライン計画の詳細は今後検討されることになりますが、施設計画においては、以下のビームラインを整備・格納し得るよう設計しています。

挿入光源ビームライン#1
冠状動脈撮像技術(アンジオグラフィー)を中心とするエネルギー差分画像技術、及び単色X線CT技術などの研究開発
挿入光線ビームライン#2
単色X線撮像技術などの研究開発
偏向電磁石ビームライン
生物医学研究用のX線顕微鏡技術など放射光を利用するイメージングに係わる基盤技術の研究開発

(3)施設運営の考え方について(今後の検討事項)

 施設完成後の運営に当たっては、以下の事項に対する配慮が必要となりますので、今後、関係者による検討を踏まえて、最も効果的な運営体制を整備する予定です。

共用ビームラインとしての運営と医療施設としての運営
SPring-8からの放射光を利用した生物医学研究・医療診断に利用可能な新しいイメージング技術の確立に必要な研究開発のうち、医療技術としての放射光イメージング技術については、その有効性と安全性を確認するため、研究開発の過程で臨床試験を行う必要があります。したがって、今後、施設の一部を医療施設として運営するための検討を行う必要があります。
研究開発の効果的推進と成果の普及
国内外の他の放射光施設においても、放射光を利用したイメージング技術の研究開発が行われますので、これらの放射光施設との間の研究交流を通じて、効果的な研究開発の推進と成果の普及を目指すことが重要な課題となります。例えば、本施設の運営に当たっても、ESRF及びAPSとSPring-8との協力協定などに基づく研究協力を恒常的に実施する研究主体の設置が必要と考えられます。このため、共同利用の観点と研究主体による研究成果の蓄積とに配慮した運営の検討が必要となります。

 

 

4.建設計画

(1)建設期間:平成7年度~平成9年度

(2)施設計画(基本設計図参照)

医学利用研究施設・実験棟
[基礎実験領域]
a: 偏向電磁石ビームライン室・ビームライン調整室・生物医学実験室
b: ウイグラービームライン室・ビームライン調整室
c: アンジュレータービームライン室・ビームライン調整室
d: 照射準備室、光学素子など保守工作室、倉庫など
[臨床実験領域]
a: アンジオグラフィー、単色X線CT室、調整室(ウイグラービームライン)
b: 単色X線室、X線検査室、調整室(アンジュレータービームライン)
c: 診察室、心電図測定室、検査準備室、緊急処置室、回復室など
d: 読影室、画像処理室、研究室など
e: 被験者控室、医師・検査技師など控室、ナースステーション、薬局、事務室など
医学利用実験施設・研究棟
単色X線発生研究室、単色X線診断研究室、放射線物理研究室、画像処理研究室、X線検出器研究室、共同利用研究室、データ処理室、会議室など

 

 

SPring-8 を真上から見たところ

 

 

医学利用実験施設1階平面図

 

 

医学利用実験施設2階平面図

 

 

医学利用実験施設断面図

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794