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Volume 01, No.1 Pages 36 - 40

7. 専用ビームライン/CONTRACT BEAMLINE

兵庫県専用ビームライン計画

千川 純一

姫路工業大学 理学部

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木々おのおの名乗り出でたる木の芽かな(一茶)

 大型放射光施設SPring-8には61本のビームラインができて、いろいろな分野の研究の芽が吹き、世界への発信基地となる、まさに研究のスプリングが訪れる。兵庫県も産官学の研究を集積する芽をここに出すべく、計画趣意書を提出、名乗り出ました。その名もHARU計画"Hyogo Advanced Research Union for SPring-8"です。

 

 

強いX線を使うとは卑怯千万

 1972年京都の国際結晶学会で、強力X線発生装置を開発しX線テレビで運動転位の観察を筆者が発表したとき、英国の著名な先生が「強いX線を使うのは卑怯」と発言され、座長のBonse先生が「なぜ悪い」と反論してくれました。通常のX線管で高感度の二次元検出器を工夫して観察してこそ誇れるのであって、強力X線で成功するのは当たり前、そこには文化がない、という主張は分かる気がします。しかし、超高感度検出器で動的観察の試みはすべて失敗しました。情報を得るにはフォトン数が不可欠、無から有は生じないのです。研究の限界は、光源の強さで決まると言えましょう。

 「放射光の産業利用はない」と、産業利用を推進する立場の方も、いや、産業利用を謳って予算を獲得した方も、予算を出した方も、思っているようです。そして、SPring-8の利用は基礎研究だけと位置づけられたら、今後の発展はないと心配しているのです。でも、ご心配なく、無から有は生じない、光源がなければ情報はないのです。しかも、21世紀はいろいろな技術を駆使しなければ目的達成が難しい時代、必ず企業はやって来ます。医学応用についても事情は同じです。

 剣道や弓道は文化ですが、機関銃の使用にはアートがないのです。機関銃の性能を高めるところに文化があります。SPring-8を使えば誰でも宝探しができる、放射光は人を選ばず、使えば答が出る、それで千客万来なのです。機関銃の出現は騎馬戦を塹壕戦に変えたように、大型放射光施設によって研究の仕方が変わり、研究の成功率が向上しなければなりません。

 機関銃の性能を高めつつ、何を狙うのか、をのターゲットが大切です。

 

 

竹に木を接ぐ

 「東京ディズニーランド」では、米国のエンターテイメント・ビジネスがキャラクターグッズの販売業に変貌、文化の変革が起こりました。日本人は抽象的なものの実体化を求めるからでしょうか。播磨科学公園都市は筑波学園都市の兵庫県版ですが、文化の変革が望まれます。よく一つの分野が一本の樹木で表され、根に基礎研究、幹に基幹技術、枝に分化して、梢に成果の実が成るという構図です。筑波では各研究機関が一本のツリーで、その間に連携がない。地域との関係も希薄です。冒頭の句のように「木々おのおの・・・」なのです。MIT周辺のテクノポリスが落ち目で、シリコンバレーが発展したのは、地域が狭くて人、物、情報の交流が盛んになり、木々が共栄する形ができてきたから。フランスのソフィアアンチポリスの成功は、コンピュータ利用技術が「リゾーム」になって、南仏のリゾートで優秀な研究者が集まったからと言うのです。

 播磨科学公園都市はシリコンバレーより狭くて、SRという基幹技術を持っています。HARU計画は、それを成功に導くトリガーの役で、これも「リゾーム」型なのです。根茎が新しい領域や異分野に伸びていってツリーの芽を出す、竹に木を接ぐ新分野発掘型の研究です。

 巨額の投資をした大型施設では、何と言っても、ユーザーが多くなければ大義名分が立ちません。ユーザー数が共同利用の優先順位を決める基本です。SPring-8は高エネルギー物理学研究所放射光実験施設がもつX線輝度の1000倍もあり、これまでのすべての研究分野の高度化ができるので、千客万来です。その中で、新しい分野を立ち上げたり、成功か危ぶまれる少人数の特異な研究の提案に対しては、共同利用ビームラインのビームタイムや研究予算を集中的、優先的に配分するというわけには参りません。したがって、新分野の発掘や特定の研究を共同利用の施設で集中的に実施するのは難しいことです。これは大型共同利用施設の共通の問題ではないでしょうか。

 分野構築型の研究が共同利用ビームラインの使命であり(ツリー型)、新分野発掘型の研究(リゾーム型)を専用ビームラインで引き受ける、という役割分担を考えています。特に、放射光を利用した大型プロジェクトを立案して戦略的基礎研究などに応募する場合、大勢の共同利用の中でビーム利用時間が十分確保できるかが問われます。全国の研究者が、県有ビームラインの利用を前提として応募していただけるシステムを作りたいものです。既に、姫路工大の先生方が県ビームラインの利用を前提とした提案をされています。

 

 

21世紀を先導するもの

 それでは、どのような研究課題に取り組むべきか、「兵庫県におけるSPring-8の活用方策に関する調査(平成4年度)」及び「SPring-8のビームラインを用いたプロジェクト研究の実現可能性調査(平成6年度)」という学術と応用分野、二つの調査を実施し、その結果から、マイクロビーム技術をリゾームとして、材料とガンの研究を選びました。

 エレクトロニクスは、軍事からテレビゲームまで政治、経済、文化などあらゆる分野に浸透し、産業の盛衰を決め、社会の様相を変え、冷戦を終結に導き、今世紀を変革しました。その基本技術は、シリコンが金属から半導体に変貌したように、「材料制御」でした。材料制御は材料評価技術によって確立され、評価技術は材料制御からの要求で開発されてきた。そして、21世紀を先導するのも材料研究です。

 今や、半導体や超伝導物質にみられるように、単体から多元化合物・混晶、非晶質から完全結晶まで、さらに超微粒子、超薄膜、人工超格子など、組成と構造の多様化によりエキゾチックな物性が創出されつつあり、21世紀にかけて発展が期待されます生命現象の研究においては、多彩な生体機能を発揮する膨大な種類の生体物質が研究対象になる、と考えられます。

 このような新素材開発から生命現象の解明にいたる広範な研究の展開のなかで、ひとつの共通した理解は、物性を演出する電子の電子波長に対応する約10 nmの領域を区画することによって出現する得意な電子の振る舞いが、突出した物性や絶妙な生体機能の起源であるとする考え方です。したがって、今後の研究課題も、このようなミクロ領域の構造と電子状態の評価、およびミクロ構造の創製に集約され、この観点からマイクロビーム技術の開発が突破口として重視されています。とりわけ、フォトンビーム(電磁波)は電子と直接相互作用をするものであり、物質科学の研究には不可欠なプローブです。評価技術の進展こそが、これまで試行錯誤で進めてきた機能物質の探索に指針や設計の思想を導入することを可能にし、効率的な新材料や新薬の開発をもたらすのです。

 なかでも、超微小領域の構造と物性を評価するマイクロビーム技術を可能にする高輝度光源SPring-8の出現はきわめて重要です。その特徴は、アンジュレータ光源からのビ-ムのサイズが、30 m離れて、1 mm以下、その輝度は研究室のX線管の1011倍で、これは一等星と太陽の差に相当します。ビームをさらに収束する上で、光源の電子ビームのサイズは約60 μmですので、これまでのようなスリットが不要で、集光系は全ビームを受光するように配置でき、しかも、準単色ビームなので色収差の問題も軽減されます。

 しかしながら、硬X線の集光には技術的課題があって、現在、集光径1 μm程度にとどまっています。これまでの光源の高輝度化と集光技術の進歩の度合から、2000年にはビームサイズは10 nmに達すると見込まれています。その場合、測定領域中の原子数は数万個となり、その中の1個の不純物原子の検出が可能で、1原子を対象とする究極のスペクトロスコピ-を実現できることを示唆しています。これにより、たとえば、量子効果発現の最適のサイズの決定や、不純物原子1個が量子効果に及ぼす作用などが測定可能となり、材料科学の進展には不可欠な手法となることでしょう。

 このように、高輝度マイクロビーム技術は材料評価技術を革新し、材料開発のリスクを大幅に軽減、21世紀を先導するものと期待されています。

 しかしながら、この高性能のビームを活用するには、高度の研究力が要求されるうえ、研究に必要な設備投資も相当額に及ぶことから、今日の不透明な経済環境の下では、企業にとって高輝度光源の活用に参入の決断が下しにくい状況です。

 そこで、兵庫県専用のビームラインを建設して、SPring-8で初めて達成できるマイクロビーム技術に焦点をしぼって、優秀なリーダーを核として産官学のチームによるプロジェクト研究を実施し、放射光関連の新産業の創造や革新的な医療技術の開発を目指すとともに、産業界にSPring-8の威力を実感する機会を提供し、これに加えて技術研修をはじめとして数々の研究者育成・技術向上プログラムを実施して、高輝度放射光利用研究の普及を図ります。

 後に述べるように、ビームラインの建設に責任をもつ講座を姫路工業大学に新設し、具体的な研究課題はスタッフの着任後に決めます。

 

 

上医は国を医す

 わが国では、社会の老齢化が進み、65才以上が人口の14.1%、平均寿命は80才を越えた現在、4人に1人がガンで死亡、年々増えるアルツハイマー病(老人ボケ)は21世紀に入ると5世帯に1人の発病率となり、老人病の介護が社会の大問題と予想されています。2500年前の中国、晋の名医(上医)の言葉「上医は国を医す」、人を救うわざこそ政事の基本です。「ガンの早期診断に放射光を使い、治療は粒子線で」と言う貝原兵庫県知事のご発想も「国を医す」とうなずけます。HARU計画の主目的の一つは、放射光によるガンの診断と治療法の開発です。

 「ガンを間もなく征服」と言われてから、もう何十年も経過しました。究極の治療と言われる「遺伝子治療」も遺伝子を送り込む技術の壁に阻まれているようです。放射線照射治療は、健康な部分を傷めないガンだけに当てる局部照射で狙い打ちできれば、社会復帰が早い治療法になるでしょう。でも、放射光によるガン治療の分野は、わが国ではまだ始まっていないので、新分野発掘型で、かつ、医学と物理学、化学などの集学的研究です。

 

①Photon-Activation Therapy(PAT)

 ガンは非常にどん欲に栄養を吸収して成長します。マーカーや薬剤を栄養物にしのばせてガンに取り込ませ、ガンを観察したり治療するものに、PETやPATがあります。PETは、Positron Emission Tomographyの略称で、ポジトロンを放出するアイソトープで標識したブドウ糖などを静脈注射し、電子-陽電子対消滅で発生するガンマ線を検出、CT(Computor Tomography)で体内分布を映像化します。

 昨年、実用化された PATは、「腫瘍親和性光感受性薬剤」を静脈に注射し、ガンに光感受性物質を運び込み、レーザー光で照射して活性酸素を発生させてガン細胞を破壊するもので(PhotoDynamic Therapy, PDT、東京医科大学、加藤治文教授)、子宮ガンの早期のものは完全に治癒し出産もできるという好成績です。この方法は、レーザー光をファイバーで送れる部位の早期ガンに限られます。この薬剤はポルフィリン系(ヘモグロビンは鉄ポルフィリン)ですので、ガン組織に重元素を運び込むことができれば、その吸収端近傍の波長のX線を放射光から選択して体外から照射し、ガンの診断と治療が同時にできる可能性があります。すでに白金を担持したポルフィリン薬剤を合成し(東京医科大学、會沢勝夫教授、加藤治文教授)、放射光による動物実験を待っている状況です。

 この放射光 PATは、アンジオグラフィで用いられるエネルギー差分法でも、また、PETのように発生する白金の特性X線によるCTで映像化します。また、治療には、発生した特性X線がガンの外の健康な部分に大きくはみ出さないよう、L殻励起を使うとか、担持する金属を選ぶなど、ガンのサイズに応じて工夫し、最も効果のあるエネルギー領域のX線を選択、放射光の指向性を利用して的確に照射できます。放射光PATの特長は、診断と治療が両方できることです。とくに、粒子線治療が適用できない脳や胃とその周辺(胃潰瘍を起こす)のガンに有効ではないかと期待されます。

 さらに、この系の薬剤は血管内に堆積したコレステロールにも沈着するので、血管の検査と堆積のX線照射溶解治療も期待されています。

 

②ガン周辺の毛細血管の観察

 ガンは、腫瘍血管造成因子を放出して、成長に必要な栄養を供給する毛細血管を新しく形成します。この血管の有無を観察すれば診断ができ、さらに、毛細血管を特殊な造影剤や澱粉で塞ぐと、ガンは兵糧攻めにあい死滅(塞栓療法)、再発もしない。造影剤によるX線観察では、血管が非常に細いためガンが大きく成長して毛細血管が多数重なるようになって始めて検出できる。それゆえ、初期のガンの太さ10 μmの血管を見ることが要求されています。

 これに応えて、次のような提案をしています。

 キャピラリー集光法では、入口側が太く出口は細くしぼった長さ40 cmぐらいのガラス管にX線を通して、現在、直径 0.1 μmまで収束できます。X線は管内で全反射を繰り返すので、集光効率は25%です。収束端に金属箔を付けてアンデュレータからのX線を通せば、30〜90%の効率でこの金属から特性X線が発生し、点光源ができる。これから発散するX線により、毛細血管の拡大像を体外に置いた写真フィルムに記録する。点光源の位置を変えて撮像すれば、CT(Computor Tomography)と同様に、体表からある深さの断面画像が得られる。分解能は光源のサイズで決まり、0.1 μmです。これまでの血管造影X線観察のデータから、検出可能なコントラストが期待できますが、コンプトン散乱をカットするバランスッド・フィルターなどの工夫が必要かもしれません。

 また、①と組み合わせた手法も考えられます。

 

③放射光X線照射治療

 放射線治療では、ガンだけに放射線を当て、健康な部分にできるだけ当たらないようにします。X線では、ビームが通過する健全な部分が障害を受けるため、照射量の限界は低い。粒子線治療では、体表からの深さに応じてビームのエネルギーを調整して、放射線効果をある程度ガン部位に集中できるので、たとえば、肝臓ガンではX線を使用する場合の約1.4倍高い照射量まで許され、ガンは死滅します。この場合、金属マーカー(直径1 mm 、長さ10 mmほどのイリジューム)を超音波で見ながらガンの中心部に挿入し、X線撮影でガンの位置をコンピュータに記憶させて粒子線を正確にガンに照射します。

 それなら、X線照射治療も上記のガラスキャピラリー(外径:数100 μm)を体内に挿入して、ガンの中心部に点光源を置き、ガンの大きさに応じてターゲットの金属を選び、放射光X線の光子エネルギーを調整して、ガンを集中的に照射できます。つまり、ガンだけを照射、健康な部分に当てない理想的な照射治療です。この場合にも①のPATと組み合わせれば、効果が高まります。

 以上の計画のほか、X先顕微鏡による細胞診断から粒子治療まで、いろいろな計画を東京医科大学、會沢勝夫教授、加藤治文教授をはじめ、放射光の医学応用をされてきた研究者の方々で、10人ほどのチームを編成して検討しています。

 肺ガンは、発見されたとき、既にその70%は進行ガンです。簡便で迅速な検査法による定期検診が望まれています。米国では、不活性ガスのクセノンXe80%と酸素20%の気体を被検者が呼吸し、Xeの吸収端の両側の波長で撮ったX線像の差分画像を作り、気管支の末端まで調べる方法を開発中です。

 「肺がん時代」(講談社BLUE BACKS)を出版された加藤先生にSPring-8を見学して頂きました。進行ガン征服の夢を放射光PATに託されているようです。ガンによる人生の終焉は悲惨です。それに、なによりもガンの恐怖の圧迫感から人々を解放して、「上医は国を医す」 HARU計画にしたいものです。

 

 

震災を乗り越えて

 昨年1月の大震災でこの計画の実現が心配でしたが、平成7年度にはビームラインの設計費、8年度に建設費が付くことになりました。

 この計画の主旨は、SPring-8の特長を活かし、かつ、物質研究に有力な手法となるマイクロビーム技術を確立し、これによって初めて可能となる研究課題を材料とバイオ・メディカル分野から選択して、優れたリーダーの下に全国から参加する産官学のチームを編成し、プロジェクト研究を実施することです。このため、県立姫路工業大学に放射光利用技術の研究を担当する「X線光学」講座を新設する予定です。この基幹講座の役割は、ビームラインの建設に責任をもつだけでなく、プロジェクト研究の中核となる優秀な研究者に来ていただき、「機関銃」の性能を高めつつ、この計画に魂を入れることです。

 これまで、兵庫県では大型放射光施設の利用を目指して、研究会、講演会を重ねてきました。なかでも、県立工業技術センターが主催する「兵庫県大型放射光施設利用研究会」には、平成2年から県下の企業57社を含む産官学の研究者が参加し、SPring-8利用技術の腕を磨き、県専用ビームラインの必要性を検討し、建設を要望してきました。

 さらに、SPring-8を利用する準備として、兵庫県は、平成5年から7年度までの3年間、科学技術庁の地域流動研究「光科学的手法を用いた機能性蛋白質の構造評価に関する研究」と関連研究「放射光による量子効果発現物質の構造評価に関する研究」を産官学33の研究機関の共同で進め、兵庫県ビームラインに設置する蛋白分子の構造解析、集光素子、表面解析装置等を開発してきました。とくに、ゾーンプレートは硬X線ビームを0.5 μmに収束するもので、HARU計画のキー・デバイスです。

 このような準備を進める中、昨年1月に震災が起こり、困難な財政の中で建設費も要員体制も十分とは言えないのは当然です。ビームラインは硬X線と軟X線の2本にする計画でした。予算や要員を心配下さり、「無理をしなさんな」と御忠告下さる方、御支援や方策を提案下さる方、それぞれに親身の御配慮、まことに有り難い次第です。

 米国ローレンス・バークレィ研究所のAttwood先生からは、「ビームラインを何本も作ってきたが、光軸を調整する機構をいくつも付けたものはすべて失敗で、調整を最小限にしたものが最も使いやすく、しかも建設費が安い。軟X線のビームラインを作るなら手伝いましょう」と親切なお申し出をいただきました。軟X線用ビームラインについては、産業界からも強い要望と支援のお申し出を戴き、目下、計画を検討しております。まずは、硬X線の1本を建設します。いくつも建設を体験された高エネルギー物理学研究所の安藤正海教授に設計をして戴きました。

 社団法人兵庫工業会は、SPring-8建設チームから「地元からの技術支援を」という要望に応えて、県下の企業約50社が参加する「大型放射光施設支援調査研究委員会」を平成4年に発足させ、ビームライン技術の習得につとめてきました。SPring-8は、これまで経験したことがない高輝度X線光源でして、どのような利用研究が開けるのか、ビームライン技術にも予測しがたいところがあります。試行錯誤の技術開発に、首都圏の企業が西播磨に往復して当たるのは非効率的で、「ビームライン技術はオール兵庫で」と言うユーザーの要望に応えるため、プロジェクト研究として「X線マイクロビーム技術の開発」を実施し、地元企業が参加する計画もあります。

 このように見てくると、HARU計画には一石三鳥の夢が託され、震災の復興を最優先で進めねばならない中での21世紀を展望した計画です。「憂きことのなおこのうえに積もれかし限りある身の力ためさん」と三日月に尼子家再興を祈った、三日月町ゆかりの山中鹿之助の活躍のように、夢と困難を背負った出発なのです。発展に必要な最小規模に達するまで、どうか絶大な御支援で計画の芽を育んで下さいますよう切にお願い申し上げる次第です。

 最後に、この計画の実現のために絶大な御配慮、御指導、御支援をくださった大勢の方々に厚く御礼申し上げます。また、計画を担当された兵庫県企画部、落合正晴氏のなみなみならぬ御尽力に深い感謝と尊敬の意を表し、HARU計画の成功を心から祈っております。

 

 

 

千川 純一 CHIKAWA jun-ichi

昭和5年10月26日生

姫路工業大学 理学部 物性科学科 教授

〒678-12 兵庫県赤穂郡上郡町金出地1479-1

TEL 07915-8-0155

FAX 07915-8-0154

昭和28年京都大学理学部物理学科卒業、 35年同大学院修了、同年日本放送協会技術研究所入所、57年同次長、59年高エネルギー物理学研究所教授、60年同研究所放射光実験施設施設長併任、平成3年より現職。趣味は謡曲。

 

 

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[ - Vol.15 No.4(2010)]
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