ページトップへ戻る

Volume 01, No.1 Page 1

1. 序言/INTRODUCTION

「SPring-8利用者情報」発行に際して

上坪 宏道

日本原子力研究所・理化学研究所 大型放射光施設計画推進共同チームリーダー

Download PDF (50.28 KB)

 

 ご存知のように、SPring-8の建設は順調に進んでいる。今年の夏から入射器の試運転を開始し、来年夏には、数本のビームラインを使った試験的な実験が開始できる状況になっている。SPring-8による研究が始まる日が近づいた今、出来るだけ多くの情報を正確に提供して、利用者の研究計画立案や実験準備に役立てることが必要になっている。この要求に応えることを目的にして、新しい利用者情報誌「SPring-8利用者情報」が発刊されることになった。

 

 これまでにも「SPring-8利用者懇談会」の総会や世話人会合、各種機関誌などを通して、建設チーム側は、共同利用の在り方や建設状況などについて、多くの情報を提供してきた。ところが、建設に当たっている私たちが情報提供に最大限の努力を払ってきたと思っていても、大方の利用者は知りたい情報の提供が少ないと感じているようで、私のところにもそのような不満が届いている。新しい利用者情報誌の役目は、このギャップをできるだけ縮めることであろう。

 

 情報の流通をよくするには、利用者が求める情報は何か、を的確に把握する努力が情報提供者側に必要である。特に、SPring-8情報誌の場合、放射光を使い慣れた研究者だけでなく、放射光を新しく使ってみようかと考える研究者も対象にして情報提供することになる。最初から完全なものを望むより、利用者からの意見や批判を積極的に受け入れ、刊行を重ねながら良いものにしていくことが大切であろう。

 

 情報の流通にとってもう一つ重要なことは、なるべく「生」に近い情報をできるだけ早く提供することである。しかし、一般的には、情報提供はある程度まとまった形で行うことになる。従って、より詳しい情報を利用者側が積極的に求めてくる場合には、施設者側もそれに誠意を持って対応することが大切である。利用者が SPring-8で優れた研究成果を挙げるためには、情報面での環境を整えることも重要な要素である。

 

 一方、出来るだけ早く情報を提供するには、発行回数を増やすことが必要である。しかし、当面は、マンパワーや経費の点を考慮して隔月刊行を予定している。なお、この春から、インターネットを利用した情報提供も行うので、「SPring-8利用者情報」と併せて利用していただきたいと思っている。

 

 幸いなことに、SPring-8計画は、平成7年度の補正予算で大幅に建設が前倒しになり、当初予定された共同利用ビームライン10本の建設が一挙に進められることになった。これらのビームラインは総て個別の研究グループから提案されたものであり、提案者である利用研究グループが中心になって装置の建設を進めることになる。具体的なビームラインの内容及び建設状況の情報は、随時、施設者側がまとめて提供することになるが、建設を担当している研究グループからの各種情報も、そのビームラインの利用を計画している利用者にとっては貴重なものになろう。「SPring-8利用者情報」が、利用者間の交流にも役立つことを期待したい。

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794