Volume 28, No.2 Pages 129 - 138
1. 最近の研究から/FROM LATEST RESEARCH
長期利用課題報告3
宇宙地球化学試料のマイクロ/ナノXRF-XAFS研究の新展開:高エネルギー領域への展開や超伝導転移端検出器の導入
Development of Micro-XRF-XAFS Study for Geo- and Cosmo-Chemical Samples: Extension to Higher Energy Region and Introduction of Transition-Edge Sensor Detector
東京大学 大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻 Department of Earth and Planetary Science, Graduate School of Science, The University of Tokyo
- Abstract
- 蛍光X線(XRF)分析やX線吸収微細構造(XAFS)分析をマイクロ/ナノメートルのサイズに集光したX線ビームを用いて行うµ-XRF-XAFS法は、宇宙地球化学試料中の微量元素マッピングや局所化学種分析法として重要な位置を占めている。しかし、依然問題なのが計測目的である極微量元素の微弱XRFに対するそれ以外の元素などからの背景X線(XRFや散乱X線)の妨害である。本課題ではこの解決のため、(i)高エネルギー対応の集光光学系、(ii)これまで硬X線領域でのXRF法や蛍光XAFS法への本格利用がなかった高エネルギー分解能を持つ超伝導転移端検出器(TES)、の2つの革新的技術を用いて、極微量元素の超高感度µ-XRF-XAFS法を実現し、新規性の高い宇宙地球化学研究を推進した。またTESを用いた蛍光分光分析による高エネルギー分解能蛍光検出(HERFD)-XANESなどが今後可能であることも示した。そして、その応用によりリュウグウ試料や隕石試料の分析などの「夢」のある研究と、希土類元素(REE)資源の形成過程や福島第一原発事故で放出された放射性セシウムの環境挙動解明などの資源・環境分野における「役に立つ」研究の両方に貢献する成果を得た。
1. はじめに
蛍光X線(XRF)分析やX線吸収微細構造(XAFS)分析をマイクロ/ナノメートルのサイズに集光したX線ビームを用いて行うµ-XRF-XAFS法は、様々な種類がある、X線を用いた顕微鏡の中でも代表的な手法である[1, 2][1] 日本XAFS研究会: XAFSの基礎と応用、講談社 (2017).
[2] 高橋嘉夫: 分子地球化学、名大出版会 (2021).。この手法では試料をスキャンして分析するため比較的時間がかかる一方で、多元素の同時マッピングが可能であると共に、XRF検出の特徴である微量元素まで対象にできる点で、他のX線顕微鏡に対する優位性がある。さらに興味ある試料位置で目的元素のXAFSを測定することで、元素の化学種解析ができる点は、走査型電子顕微鏡などにはない特徴である。
この手法のさらなる発展のためには、通常用いられるシリコンドリフト型検出器(SDD)で分離できないXRFをいかに測定するかがカギになる。従って、このXRF検出の部分をより高度化することで、µ-XRF-XAFS法のさらなる発展が見込める。既に筆者らは、ラウエ型の分光結晶(BCLA)を用いることによる高感度なµ-XRF-XAFS法の利用などを進めてきたが[3][3] Y. Takahashi et al.: Anal. Chim. Acta 558 (2006) 332-336.、この方法のエネルギー分解能は80 eV程度であり、より高い分解能を持つ検出系を用いれば、µ-XRF-XAFS法や蛍光XAFS法に大きな変革をもたらすと期待できる。一方、希土類元素(REE)などでは、L端・L線を用いた場合に遷移金属元素のK端・K線による妨害が問題になるので、高エネルギー領域のµ-XRF-XAFS法を用いることで、新たな展開が見込める。
以上のことから本課題では、40 keVを超える高エネルギー領域でのµ-XRF-XAFS法の応用を進めると共に、非常に高いエネルギー分解能を持つ超伝導転移端検出器(TES)導入による超高感度計測の実現による新しいµ-XRF-XAFS法に取り組んだ。そしてそれを、持続可能な社会の実現に関わるREE資源の形成過程の解明や、人類の夢に関わる「はやぶさ2」で採取された小惑星リュウグウ試料の分析などの応用研究に展開した。
2. 本研究で発展させた手法の概要
[研究1. 高エネルギー領域µ-XRF-XAFS法の確立と応用]
µ-XRF-XAFS法で問題となる妨害を克服するため、本研究で高エネルギーX線を用いた高エネルギー領域(HE)-µ-XRF-XAFS分析を推進した。我々は、2019年にBL37XUに導入された40 keV以上のX線を最小50 nmまで集光できるKirkpatrick-Baez(KB)mirrorで得たマイクロ/ナノビームを用いて、主に天然試料中のREEのK線によるHE-µ-XRF-XAFS法に取り組んだ。ここで対象になる33 keV(LaのLα1線)以上のエネルギー範囲と使用する試料厚さ(300ミクロン以下)では、マトリクス元素による入射X線やREEのK線の吸収効果が無視できるため、適切な標準試料と比較することで、XRFによるREE定量が容易に可能である。この手法が確立されれば、従来の微量元素局所分析法であるレーザーアブレーション(LA)-誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)法や二次イオン質量分析(SIMS)法に比べて空間分解能が高く、試料損傷が小さく、局所化学種解析が可能という利点があり、新規微量元素局所分析法として重要である。
[研究2. TES-µ-XRF-XAFS法の確立と応用]
TESは、超伝導-常伝導の相転移点近傍の急峻な抵抗-温度特性を利用して光子入射による微妙な温度上昇を精密に測定することで、高いエネルギー分解能が得られる光子検出器である。ここでは、このTESの高いエネルギー分解能(6 keVでの分解能が5 eV程度)を利用し、SDDやGe半導体検出器(Ge-SSD)では困難であったREEを含むSn~Uの元素の弱いL線に近接するK~Srの強いK線を分離できることを確認した。さらにHe置換槽などの開発も含めて、4-20 keVの範囲でµ-XRF-XAFS法が対象にできる天然試料中の元素数の拡大を図った。
[研究3. TESによる蛍光分光法およびXAFS法の利用]
TES-XRF/蛍光XAFS測定は、計測エネルギー範囲にある全元素のXRFを高エネルギー分解能で検出でき、例えば10 eV程度しか離れていない遷移金属のKβ1, 3線やKβ’線が一度に分離計測できるため、XRFのエネルギーシフトや強度比を用いた化学種解析にも併用できる可能性がある。µ-XRFマッピング取得時に、XRFのエネルギーシフトや面積比を計測すれば、着目する吸収端元素だけでなく、多元素の化学種別マッピングが得られると期待される。さらにXANES測定時に特定のXRFを高エネルギー分解能で分光計測することにより、高分解能蛍光検出(HERFD)-XANESをTESで測定することも試みた。通常、HERFD-XANESは分光結晶を用いる波長分散型の検出器(エネルギー分解能:1-2 eV程度)で測定されるが、元素ごとに結晶を切替えるため、その調整に時間を要する。また試料の見込み角が小さく検出効率が低いため、高濃度試料への適用が多い。一方TES(エネルギー分解能:6 keVで5 eV程度)は波長分散型と比較するとエネルギー分解能は劣るが、カウントレートを超えない限り、試料から数cmまでの距離に近づけることが可能である。また、多種のXRFを同時に測定できるため、異なるXRFを使ったHERFD-XANESを比較できる点も重要である。これらのことから、本研究でTESを用いたHERFD-XANESの実現可能性を検討した。
[研究4. 様々な応用研究]
これら手法を用いて、持続可能な社会構築に寄与する研究(REE資源、福島第一原発事故・廃炉関連・放射性廃棄物関連研究)や夢のある研究(リュウグウや隕石試料)を進めた。特に廃炉・放射性廃棄物関連研究で重要なウラン微粒子の分析については、微粒子に対して質の良いXANESを測定するために、各エネルギーで2次元マッピングをとり、位置補正をした上で吸収スペクトルを得るというEnergy Stack XANES法も適用した。
3. 応用研究
3.1. 研究1:HE-µ-XRF-XAFS法の確立と応用
3.1.1. HE-µ-XRF-XAFSによるREE分析[4][4] M. Nagasawa, Y. Takahashi et al.: Minerals, submitted.
(序)BL37XUに導入された40 keV以上のX線を最小50 nmまで集光できるKBミラーを用いて得たマイクロ/ナノビームを用いて、REEのK線によるXRFマッピング・XAFS・局所定量分析を行った。
(実験)試料として、地質調査総合センター発行の標準岩石JMn-1(マンガン団塊)と、滋賀県田上山で採取された風化花崗岩の両面研磨薄片を作成し、分析に用いた。HE-µ-XRF-XAFS法でREEの局所分布を調べると共に、その化学種をXAFSスペクトルから推定した。その際、放射光から得られるX線をSi(111)面を用いた二結晶分光器で分光し、KBミラーで集光することにより、500-1000 nm程度のX線マイクロ/ナノビームを得た。この時、37 keV以上の入射光には、Si(111)で反射される3次光を用いた。KBミラーの反射率は43 keV以上で低下し、また入射光強度も45 keV以上で低下した(図1)。そのため、K吸収端が45 keV以上にあるPr以降の元素では感度が低下する。特に54 keV以上では反射率が低く、天然試料中のREEの濃度もさらに低下する。NIST610(多元素混合ガラス標準試料)の結果の分析などから、本法で天然試料に対して十分な計数率が得られるのは54 keVで励起できるDy(K吸収端:53.789 keV)までと判断した。
図1 BL37XUの高エネルギー用KBミラーを用いた時の光子数およびKBミラーの反射率のエネルギー依存性。I0とIは、KBミラーより上流および下流側の検出器を示す。
試料を2次元走査し、多元素のXRFマッピングを得た(図2)。原理的にこの方法では、REE濃度を適切な参照試料で規格化して得られるREEパターンを任意の部位で得られる。実際には興味ある部位で積算して得たXRFスペクトル(図3)からREEパターン(図4)とµ-EXAFSスペクトルを得た(図5)。各一方、REEのホスト相を解析する上で、鉄などの主成分元素の化学種同定は有効である。そのため、同じセットアップでSi(111)の1次光を用いた15 keV以下のµ-XRF-XAFS分析を同時に行った。その際、高次光除去は分光結晶のdetuneで行い、その場合でもビーム位置の変化は0.5 µm以内に保たれることを確認した。このことは、7-54 keVという広域のエネルギーにおいて同じセットアップでµ-XRF-XAFSが適用できることを示しており、その特徴を活かし、同じREE濃集部位のFeのXAFSから、REE濃集部の鉄の化学種(鉄を含む鉱物種)を同定した(図は省略)。
図2 風化花崗岩の両面研磨薄片試料中のXRF元素マッピング。得られたREE濃集部のうち、Point-1は鉄を含む粘土鉱物とCe以外のREE濃度が相関し(負のCe異常を示唆)、イオン吸着型鉱床の特徴を持つ。Point-2は、局所的なREE濃集で、Feの濃集の程度は低く、Ce異常はなく、リン酸塩鉱物(CaとPの存在も確認)である可能性が高い。
図3 微量元素ガラス標準試料(NIST610、微量元素濃度約500 ppm)および風化花崗岩試料中のPoint-1およびPoint-2のXRFスペクトル(54 keV励起)。
図4 高エネルギーXRF分析による(a)風化花崗岩試料中のPoint-1およびPoint-2のREEパターンとバルクのREEパターンの比較および(b)マンガン団塊標準試料JMn-1のXRFで求めた濃度と推奨値の比較。
図5 Point-2のLa K吸収端のµ-EXAFSおよびPoint-1と類似と考えられるバルク試料のLa K吸収端EXAFSの解析結果。実線は測定値、点線はEXAFS公式によるフィッティング結果を表す。
(結果と考察)54 keVの励起光でのマッピングにより、Yに対してLaの濃度が相対的に高いPoint-1と低いPoint-2が見いだされ、XRFとEXAFS解析から、前者はリン酸塩粒子であり、後者はREEが外圏錯体として粘土鉱物に吸着された化学種であると考えられた。ホスト相同定は、REEイオン吸着型鉱床の特徴を知る上で重要であり、放射光を駆使した分析でこの点が明らかにできた点は重要である。その他資源関連として、マンガン団塊との比較やSc資源に関する研究も同様の手法で進めた[5, 6][5] H. B. Qin, Y. Takahashi et al.: Geochim. Cosmochim. Acta 294 (2021) 255-272.
[6] M. Nagasawa, Y. Takahashi et al.: Chem. Lett. 48 (2020) 909-911.。
本手法の利点として、1次光利用の低エネルギー側の設定と3次光利用の高エネルギー側の設定を同一設定で使用することで、7-54 keVという広いエネルギー領域をKBミラーなどの再調整をすることなくカバーできることにある。その際、detuneを用いることで、低エネルギー側測定で必要な高次光除去ミラーを使用する必要がない。この高次光除去ミラーの挿入はビームの高さを変えKBミラーの再調整を伴うため、低エネルギー側と高エネルギー側の実験を別々に実施する必要が生じ、高エネルギー領域でREE分布やXAFSを取得しても、そのホスト相の特徴をFe K吸収端から調べることができない。そのため、幅広いエネルギーにおいて同じ設定でµ-XRF-XAFS実験ができる点は重要である。
3.1.2. HE-µ-XRF-XAFS法による隕石・リュウグウ試料中のCAIの同定
(序)Ca-Al-rich Inclusion(CAI)は、CaやAlを主成分とする太陽系最古の物質であり、CAIの元素・鉱物・同位体組成には、原始惑星系円盤中心部の高温プロセスによる元素分別や同位体分別、凝縮の物理化学条件などが保存され、CAIは初期太陽系の形成を記録した重要な物質である。一方、リュウグウのようなCIコンドライトに類似した試料中ではCAIの存在度は低くその特定には困難が予想された。そこでここでは、HE-µ-XRF法でCAIに高濃度に含まれると予想されるREEやBaを検出することで、その特定を試みた。
(結果と考察)一般に非破壊での3次元の物質同定にはX線CT分析が有効であるが、上記に示したCa、Al、Ba、REEを対象にした場合、(i)CaやAlのK吸収端は5 keV以下であり1 mmサイズのCT分析は困難、(ii)BaやREEはCAI中濃度が5-20 ppm程度と微量であり透過CT分析は困難、という状況にある。そこで、HE-µ-XRF-XAFS法を40 keV以上の高エネルギーX線を用いて、例としてMurchison隕石から分離したCAI粒子のXRFスペクトルを得た。この結果から、BaやREEのK線を用いた場合、そのエネルギーは30 keV以上で十分な透過力を有するため、1 mm程度のリュウグウ粒子中に含まれる0.01-0.1 mm程度のCAIを同定できる可能性が示された。実験方法としては、試料を0度と90度に回転させて、高エネルギーX線の高い透過力を利用したXRFマッピングによりテスト的に測定した隕石試料中のCAIの位置を3次元的に特定した。実際のリュウグウ試料ではCAIを見つけられなかった(他の研究でもリュウグウ中にはCAIが少ないことが報告されている)が、隕石試料ではこの方法の有効性が確かめられた。
3.2. 研究2:TES-µ-XRF-XAFS法の確立と応用
(序)ここでは、硬X線領域で初めてTESを用いた様々なX線分光法(蛍光XAFS法、µ-XRF-XAFS法、HERFD-XANES法など)を推進した。用いたTESは、山田真也博士(立大理)らが管理するNISTの240素子(素子:Bi)のTESである。TESの蛍光XAFSへの利用は本課題が始まる前の2019年度に着手し、引き続き本課題において2回(2021年7月および2022年5月)の利用を行った。和光市の理研からSPring-8へのTESの運搬・立上げ・ソフト開発・運転・データ解析には、現状では多くのエフォートが必要で、各回とも共同実験者数は20名を超え、1週間以上の大がかりな実験であった。まずバルク試料に対して硬X線領域で初のTESを用いた蛍光XAFS分析を得ることに成功した[7][7] S. Yamada, Y. Takahashi et al.: Rev. Sci. Instr. 92 (2021) 013103.。その後、マイクロビーム分析への応用やエネルギー校正法の改良と効率化」や「He置換BOXの導入による軟X線領域への適用の推進」を行った(図6)。そしてこれらを基盤にして、以下の2つのテーマやTESを用いたCeのL端XANESの高感度分析を行った[8][8] W. Li, Y. Takahashi et al.: Anal. Chim. Acta 1240 (2023) 340755.。
図6 BL37XUにおけるTES利用実験の様子(上図)およびTESおよびSDDを用いた14 keV励起のNIST 610のXRFスペクトル(下図)。
3.2.1. TESを用いたウランの環境地球化学
(背景)ウラン(U)は原子力発電の燃料となる元素であり、世界的なエネルギー危機の中で原発の利用が依然継続される中で、放射性廃棄物に含まれるUなどの元素の動態解明は、原子力発電の安全性向上に資する研究である。特に高速増殖炉を中核とする核燃料サイクルの実現が困難な場合、放射性廃棄物に占めるUの割合は増加する。Uは様々な価数をとり、それに応じて易動性も変化するため、XAFS法などによるUの化学種の解明は、その環境同位体研究で重要なテーマである。旧U鉱床である人形峠では、層状ケイ酸塩鉱物である黒雲母がUのホスト相の1つと報じられている。しかし、黒雲母がUを保持する詳細なメカニズムは未解明であり、この解明には黒雲母中でのUの分布を正確に把握する手法が必要である。この研究は、U鉱床の成因解明に資するだけでなく、放射性廃棄物の処分場として有望視される花崗岩(黒雲母を主要鉱物として含む)中のUの挙動予測においても重要になる。とりわけµ-XRF-XAFS法は、環境試料に含まれた微量元素の分布をµmレベルの高い空間分解能で把握するために有効な方法であるが、黒雲母にはUのXRF分析時に測定妨害となるルビジウム(Rb)が共存し、黒雲母中のUの分布を正確に把握することはSDDでは困難であった。そこで本課題では、TESをXRF分析用の検出器とし、黒雲母に含まれたUの分布を正確に把握する方法を確立した。また関連して、ウランのLIII吸収端のHERFD-XANES分析によるU(V)の検出に関する研究も進めた[9][9] T. Yomogida, Y. Takahashi et al.: Inorg. Chem. 61 (2022) 20206-20210.。
(実験)TESをµ-XRF-XANES用の検出器として用いる手法を確立し、Rbが共存する黒雲母中でUとRbの分布を正確に把握した。
(結果と考察)人工風化黒雲母にU(VI)を吸着させてXANESスペクトルを取得し、線形結合フィッティングにより解析したところ、約30%がU(IV)に還元された。未風化の黒雲母を使用した場合U(IV)の生成はみられなかったので、黒雲母の風化処理がUの還元を促進することが分かった。またpH6よりpH4で還元種が多いことが分かり、雲母の端面ではなく、風化により膨潤した層間でU(VI)の還元が進行することを示している。さらに薄片化した人工風化黒雲母のµ-XRF-XANESによるへき開部分の分析でU(IV)の割合は43%~89%となったことも、この推論を支持する。次に人形峠コア試料より採取した黒雲母をTES-µ-XRF-XANESで分析した結果、約30%のU(IV)の存在が確認され、風化した黒雲母がUを還元・保持していることが天然試料分析からも分かった。このU価数分析では、より多量なRbのKα線と、UのLα線のエネルギーが近接するため、SDDでは分離検出が困難であったが、TES利用によりこれらを分離しUとRbの分布を正しく捉え、UのLIII吸収端XANES測定も可能になった(図7)。これらから、U(VI)の還元は風化の進行に伴い膨潤した風化雲母層間で生じると考えられ、このことは2:1型粘土鉱物によるU(VI)の還元も層間で主に起きること[10][10] A. Satpathy et al.: Environ. Sci. Technol. 56 (2022) 4111-4120.とも整合的である。これらの成果は、砂岩型U鉱床における黒雲母へのU濃集機構の理解や、放射性廃棄物地層処分における緩衝材として利用されるモンモリロナイトへのUの還元による固定の検討において、重要な貢献をする知見である。
図7 TESでRbの妨害を除いたUのXRF検出。これによりRbが多量に含まれる系でもUの正確な分布やUのLIII端XANESによる化学種が把握可能になった。
3.2.2. TES-µ-XRF-XAFSによるCs濃集粒子中のCsの分布・化学状態
(序)福島第一原発(FDNPP)事故で原発から放出された放射性セシウム(Cs)が濃集された粒子(CsMP)は、事故時の原子炉内の物理化学状態を反映する物質として、また環境中に沈着後の放射性Csのホストとなる物質として重要であり、多くの研究がなされている[11][11] Y. Igarashi, Y. Takahashi et al.: J. Environ. Radioactivity 205-206 (2019) 101-118.。特に放射能の大部分を担う放射性CsのCsMP内部での化学状態や分布は、今後のCsMP由来の放射性Csの環境挙動を探る上で重要である。CsMPは、それぞれ2号機および1号機由来のType-A(大きさ数µmの球形粒子)とType-B(50 µm以上、様々な形状)に主に分けられる。このうちType-Bは、カルシウム(Ca)やチタン(Ti)などの難揮発性元素を多く含み、炉内で生じたケイ酸塩溶融体が冷却したものと考えられている。CsMP中のCsの分布や化学状態を知る上では、電子顕微鏡、µ-XRF、蛍光XAFSなどの手法が有効である。しかし、SDD(エネルギー分解能:130 eV程度)でXRFを検出する方法では、微量なCsのL線と主成分であるCaやTiのK線が妨害し、Csの同定が困難であった。
(実験)本研究では、TES-µ-XRF-XAFS法により、Type-B粒子中のCsの化学状態や分布状態を調べた。FDNPPから北北西に約4 km地点の道路粉塵から分離した大きさ約500 µmのType-B CsMP粒子を分析に用いた[12, 13][12] H. Miura, Y. Takahashi et al.: Sci. Rep. 10 (2020) 11421.
[13] H. Miura, Y. Takahashi et al.: Sci. Rep. 11 (2021) 5664.。
(結果と考察)µ-X線CT分析から、この粒子は内部に直径100 µm以上の空孔を複数持つことが分かった。この空孔は、CsMPのメルトが冷却する過程で、メルトから気体が分離して形成されたと考えられる。次にTESを用いてXRFスペクトルを測定したところ、この粒子中のCsのLα線を明瞭に検出できた。そこで、バルクのCs LIII吸収端の蛍光XANESスペクトルを取得し、参照試料と比較した結果、Csは平均的にはケイ酸塩ガラスに溶解して存在することが示唆された。
この粒子の薄片試料を作成し、µ-XRF-XAFS法による多元素の分布状態および局所化学状態を調べた。その結果、Csは主にCsMP内部の空孔の外周部に濃集していることが分かった(図8)。これは、メルトが高温時に気体として存在していたCsが、冷却と共に空隙円周部に沈着したためと考えられる。この濃集部のCs LIII吸収端のTES-µ-XANESからCsはヨウ化セシウム(CsI)であると推定された。これは炉内大気中のCsの化学状態として、CsIが重要であることを示す。この円周部から離れたマトリクス中のTES-µ-XANESは、ガラス中のCsと類似した特徴を示し、バルクの蛍光XANESと整合的である。これらから、事故時の1号機中のCsは、溶融したケイ酸塩中のCsや気体のCsIとして存在していたことが示唆される。また空孔内にCsIがあった場合、水が浸透するとCsが溶解する可能性があるので、二次的な移行を議論する上で重要になる。このように気泡にCsIなどのガスとして取込まれたCsが空孔内に濃集し、CsMP内で元素の沸点による分別が起きていたと考えられる。
図8 Type-BのCsMP中のTES-µ-XRFマッピングとCsのTES-µ-XAFS分析(得られたスペクトルとフィッテイング結果)。
これらの結果は、CsMP生成過程と関連がある。ここで示された通り、CsMP中Csの化学種には、マトリクスのSiO2ガラスに溶解したメルトにCsが溶解・冷却したものと、気体(CsI)が冷却時に塩として固化したものがあり、2号機では後者が優勢で、1号機では両者が共存すると考えられる。これらは、2号機ではCsMPはCsなどの揮発性元素を多く含むガスが大気中で凝結してできたが、1号機では核燃料が周辺材料を取り込んでできたメルトが冷却し、水素爆発により放出された、というこれまでの推定と整合する。
3.3. 研究3:TESによる蛍光分光法およびXAFS法の利用
非常に高いエネルギー分解能を持つTESを利用することで、これまで波長分散型の検出系でのみで可能であったXRFを利用した手法に大きな変革をもたらす可能性がある。そのためには、TESのエネルギー分解能も現在の5 eV程度からさらに1 eV程度まで向上させる必要があるが、こうした検出器開発を加速させるためにも、TESを用いた蛍光分光法や蛍光XAFS法で得られた本研究の成果は重要な契機となる。
3.3.1. TESを用いた蛍光分光法の新展開
(序)様々な元素の多様なXRFのエネルギーシフトや相対強度比は、対象元素の化学状態を反映する指標として利用されてきた。ここではこれらの例として、CsのL線に着目した検討を行った。Csは、福島第一原発事故などからも分かる通り、Uの核分裂反応において最も多量にできる放射性核種(137Cs、134Cs)を含む元素であり、環境放射化学的に最も重要な元素である。そのCsは、環境中に放出された場合、粘土鉱物層間で内圏錯体を形成して吸着されるが、なぜ本来水に溶けやすいアルカリイオンであるCs+がこのような内圏錯体を形成するかについては不明な点が多い。そのため、我々はTESを用いたXRFスペクトルやHERFD-XANES測定によりCsの化学状態について新たな情報が得られないかを調べた。Cs+と粘土鉱物間には共有結合的な相互作用が関わるという報告[14][14] T. Ikeda et al.: J. Phys. Chem. A 119 (2015) 8369-8375.もあり、この点について議論を行うことを目的とした。
(実験)共有結合性が異なると予想されるCsの塩であるCsNO3、Cs2SO4、CsBr、CsIおよびバーミキュライトへのCsの吸着態を試料として用いた。XRFの測定はTESで行った。
(結果と考察)TES利用はエネルギー分散型の測定であるため、XAFS測定を測定する際には、多種のXRFやその相互の強度比が同時に得られる。なおこの際使うXRFは、入射光エネルギーが5359±2 eVである場合のスペクトルを用いた。実際にはTESを用いると、XAFSを測定する際の各エネルギーにおいてXRFをエネルギー分解能よく測定できているため、入射光エネルギーと蛍光エネルギーをX軸とY軸にとり、その蛍光強度をZ軸にとった共鳴非弾性散乱(RIXS)マップを容易に示すことができる。この結果から得られるLβ1線とLα線の強度比と、様々な金属配位子のソフト性を定量的に示す求核性定数(En)との間に相関があることが分かった。このようにXRFに化学種の情報が含まれた場合、TES-µ-XRF-XAFSで元素マッピングを得る際に、同時にTESから化学種の情報が得られている可能性がある。マッピングの各測定では、TESによるXRFの検出が同時に行われているため、そこに現れるLβ1/Lα強度比の変化(10%程度の変化)に着目すれば、共有結合性の異なる化合物の相対的な分布が、各ポイントでのXAFS測定を実施することなく得られる。このようなTES-µ-XRF分析による化学種マッピング法はこれまで例が無く、今後の発展が見込まれる。なお本研究のTESは、3000 cps程度が総計数率の上限であり、様々なピークが同時に測定されることを考えると、Lβ1/Lα強度比の分析に使われるX線の光子数は十分ではなく、本法の実施のためには今後より計数率の高いTESを開発していく必要がある。
3.3.2. TESを用いたHERFD-XANES測定
(序)HERFD-XANESは、寿命幅の制約を受けて微細構造が明瞭でなかったXANESをその制約から解放し、詳細な電子状態・価数情報の抽出を可能にするため、対象とする吸収端によっては全く新しい分光法になり得る。しかし、波長分散型の手法をとる場合、適切な分光結晶が必要で、測定準備に時間・エフォートを要し、特定の元素しか狙えないという難点がある。TES利用は、これらを一挙に解決できる潜在力がある。
(結果と考察)CsNO3を対象としたXRFスペクトルと蛍光XAFSスペクトルを得た。TES分析ではXRFの半値幅は5.8 eVであり、結晶分光の場合の3.6 eVよりやや悪かった。その結果、HERFD-XANESではXRFピークのごく狭いエネルギー範囲での信号を取得したいが、TESではそれが不十分で、HERFD-XANESも結晶分光に比べると、ブロードなXANESスペクトルになった。しかし、TESで得たHERFD-XANESは、SDDで測定したスペクトルよりシャープなピークを与え、世界初のエネルギー分散型検出によるHERFD-XANESが測定されたと考えられる。このようにTESは、エネルギー分散型検出器としては初めて、詳細なXRFの特徴の議論やHERFD-XANES計測に利用できる検出器であると考えられ、今後さらにXRFやXAFSに適した開発を行うことで、X線発光分光(XES)分野に新たな展開をもたらすと期待される。
3.4. 研究4:様々な応用研究
3.4.1. リュウグウに対するµ-XRF-XAFS分析[15][15] T. Nakamura, Y. Takahashi et al.: Science 379 (2023) eabn8671.
(序)リュウグウ試料は、Yokoyama et al. [16][16] T. Yokoyama et al.: Science 379 (2023) eabn7850.で述べられているようにCIコンドライト(Orgueil隕石など)と殆ど同じ組成をもつため、同じ母天体由来と考えられている。またその鉱物組成は、いずれもFeを含む層状ケイ酸塩であることが分かっている。これまでの地球での研究などから、Fe(II)を主体とする層状ケイ酸塩である蛇紋石やサポナイト(スメクタイトの一種)は、強い還元作用を持ち水素を発生する(Fischer-Tropsch型反応)ため、CO2を還元して脂肪族有機物を生成することが示されている[17][17] M. Andreani et al.: Lithos 178 (2013) 70-83.。一方で、隕石は地球上に落下し長時間経過しており、初期的に含まれるFe(II)はFe(III)に酸化してしまっている。そのため、もしリュウグウ試料でFe(II)を主体とする蛇紋石やスメクタイトが存在すれば、それはかつてリュウグウに水があった時に強い還元反応を引き起こした可能性がある。
(実験)BL37XUにおいて、酸素に触れないように酸素不透過膜に封入したリュウグウ微粒子に対して鉄やヒ素のµ-XRF-XAFSによる局所価数分析を行った。
(結果と考察)嫌気を保ったままのリュウグウ試料について、Feが最も濃集している磁鉄鉱部分は避け、層状ケイ酸塩が主体と考えられるマトリクス部分でµ-XRF-XAFS分析を行った(図9)。その結果、おおよそpyrrhotite (FeS)が75%で、残りはFe(II)の層状ケイ酸塩15%、Fe(III)の層状ケイ酸塩10%であり、ferrihydriteなどは見られなかった。Orgueilの同様の分析では、Fe(III)の層状ケイ酸塩55%と磁鉄鉱45%が主体であった。このことは、FeSの酸化で磁鉄鉱が生じるというBoursiquot et al. [18][18] S. Boursiquot et al.: Phys. Chem. Min. 28 (2001) 600-611.の報告、およびFe(II)層状ケイ酸塩の酸化でFe(III)層状ケイ酸塩が生成すること、を考えると合理的に説明可能であり、隕石中のFe(II)が地球落下後に酸化されたことを示唆する。さらにリュウグウ試料を14時間大気中に放置して、再度µ-XRF-XAFS分析を行ったところ、10-20%程度Fe(III)の割合が増加していた。これはFe(II)を含む物質中に酸化されやすい成分があることを示唆する。また本課題の対象外であるため詳細な説明は省くが、我々が進めている走査型透過X線顕微(STXM)分析(=軟X線領域での透過型のµ-XAFSで、30 nm程度の高い空間分解能を持つ)では、サポナイト中のFe(II)の割合を、Gorski et al. [19][19] C. Gorski et al.: Environ. Sci. Technol. 47 (2013) 13477-12485.が提案しているサポナイト中のFe(II)の割合とEh(水素電極標準)の関係から検討すると、リュウグウのEh環境は-0.45 V程度であることが推定された。そこで次に、X線CTでアパタイトと同定された粒子について、ヒ素(As)のK吸収端µ-XRF-XAFS分析を行ったところ、Asの価数は+3価であることが分かった。このことと上記のEh環境とを組合わせると、リュウグウに存在した水環境のpHは9以上のアルカリ環境であったことが示唆された[15][15] T. Nakamura, Y. Takahashi et al.: Science 379 (2023) eabn8671.。海洋地殻における水素生成でも、非常に還元的かつアルカリ環境である場合が多く、Fe(II)を多く保持している粘土鉱物の存在も含めて、リュウグウは(温度以外では)Fischer-Tropsch反応による有機物合成が起きる条件がそろった環境を保持する小惑星であることが分かる。なお同様の惑星における水質研究を火星隕石に対しても行った[20][20] H. Suga, Y. Takahashi et al.: Minerals 11 (2021) 514.。
図9 µ-XRF-XAFS法によるリュウグウ試料(微粒子(a))中のFe K吸収端XANESによる鉄の価数分析(b)。大気非曝露と暴露14時間後のFe(II)の割合およびCIコンドライト(Orgueil)のFe(II)の割合との比較(c)。
3.4.2. その他の研究
これ以外でも、有害元素の挙動や除去に関する研究[21-23][21] A. Yamaguchi, Y. Takahashi et al.: iScience 25 (2022) 104763.
[22] B. Gankhurel, Y. Takahashi et al.: ACS Earth Space Chem. 4 (2020) 1064-1077.
[23] A. Minoda, Y. Takahashi et al.: J. Haz. Mat. 432 (2022) 128576.、大気中のエアロゾル中の元素の化学種解析に関する研究[24, 25][24] S. Natori, Y. Takahashi et al.: Minerals 12 (2022) 536.
[25] S. Natori, Y. Takahashi et al.: Atmos. Environ. 294 (2023) 119504.なども行ったが、紙面の制限のためここでは触れない。手法的には、Energy Stack蛍光XANES法は微細な粒子中の微量元素のµ-XRF-XAFS分析法として有用で新規性が高く、今後の発展が望まれる。
4. まとめ
XRF法や蛍光XAFS法は、宇宙地球化学で様々に応用されているが、その感度や様々な応用における限界は、目的とするXRFが他の元素からのXRFや散乱X線により妨害される場合に生じる。本研究では、特にXRF法、蛍光XAFS法、µ-XRF-XAFS法の適用範囲の高度化を進めるため、幅広いエネルギーを同じセットアップで扱えるHE-µ-XRF-XAFS法や、非常に高いエネルギー分解能を持つTESを用いた蛍光XAFS法やXRF法・XES法などを発展させた。特にTESについては、(i)XRFの特徴把握による化学種推定の可能性やマイクロビーム分析への応用、(ii)XANESの新しい分光法ともいえるHERFD-XANESへの適用、などを進めた。そして、これらを応用することで、以下の成果を得た。
- TESを用いた硬X線領域での蛍光XAFS分析を世界で初めて実施(プレスリリース)。
- 福島第一原発事故由来のセシウム濃集粒子の特徴を様々なX線分光法を利用して解明(プレスリリース)。
- リュウグウ中の元素の化学種解析からリュウグウが高pH・強還元な水環境になったことを示した(プレスリリース)。
- 新しいレアアース分析法を開発し、多元素の影響を受けない分析法を開発。
- イオン吸着型鉱床やマンガン団塊中のレアアースの化学種を解明し、その抽出率との関係を解明。
- ウランの還元反応が風化した黒雲母鉱物によって起きることを解明。
これらはいずれも、人類の「夢」と「安全安心」に関わる21世紀に必要な研究であり、手法開発の成果と共に、それは様々な分野の発展の基盤となると期待される。
謝辞
本長期利用課題(2020A0174~2022A0174、2020A0180~2022A0180)における研究の実施において多大なるご協力を頂いたJASRIの新田清文博士、関澤央輝博士、菅大暉博士に心から感謝致します。
参考文献
[1] 日本XAFS研究会: XAFSの基礎と応用、講談社 (2017).
[2] 高橋嘉夫: 分子地球化学、名大出版会 (2021).
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[4] M. Nagasawa, Y. Takahashi et al.: Minerals, submitted.
[5] H. B. Qin, Y. Takahashi et al.: Geochim. Cosmochim. Acta 294 (2021) 255-272.
[6] M. Nagasawa, Y. Takahashi et al.: Chem. Lett. 48 (2020) 909-911.
[7] S. Yamada, Y. Takahashi et al.: Rev. Sci. Instr. 92 (2021) 013103.
[8] W. Li, Y. Takahashi et al.: Anal. Chim. Acta 1240 (2023) 340755.
[9] T. Yomogida, Y. Takahashi et al.: Inorg. Chem. 61 (2022) 20206-20210.
[10] A. Satpathy et al.: Environ. Sci. Technol. 56 (2022) 4111-4120.
[11] Y. Igarashi, Y. Takahashi et al.: J. Environ. Radioactivity 205-206 (2019) 101-118.
[12] H. Miura, Y. Takahashi et al.: Sci. Rep. 10 (2020) 11421.
[13] H. Miura, Y. Takahashi et al.: Sci. Rep. 11 (2021) 5664.
[14] T. Ikeda et al.: J. Phys. Chem. A 119 (2015) 8369-8375.
[15] T. Nakamura, Y. Takahashi et al.: Science 379 (2023) eabn8671.
[16] T. Yokoyama et al.: Science 379 (2023) eabn7850.
[17] M. Andreani et al.: Lithos 178 (2013) 70-83.
[18] S. Boursiquot et al.: Phys. Chem. Min. 28 (2001) 600-611.
[19] C. Gorski et al.: Environ. Sci. Technol. 47 (2013) 13477-12485.
[20] H. Suga, Y. Takahashi et al.: Minerals 11 (2021) 514.
[21] A. Yamaguchi, Y. Takahashi et al.: iScience 25 (2022) 104763.
[22] B. Gankhurel, Y. Takahashi et al.: ACS Earth Space Chem. 4 (2020) 1064-1077.
[23] A. Minoda, Y. Takahashi et al.: J. Haz. Mat. 432 (2022) 128576.
[24] S. Natori, Y. Takahashi et al.: Minerals 12 (2022) 536.
[25] S. Natori, Y. Takahashi et al.: Atmos. Environ. 294 (2023) 119504.
東京大学 大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻
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