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Volume 20, No.1 Pages 78 - 82

2. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT

SPring-8/SACLAコンファレンス2014 ~進化する光が拓く科学技術~
The SPring-8/SACLA Conference 2014

藤原 明比古 FUJIWARA Akihiko

(公財)高輝度光科学研究センター 利用研究促進部門(SPring-8/SACLA コンファレンス2014 実行委員長) Research & Utilization Division, JASRI

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SPring-8 SACLA

 

1. はじめに
 SPring-8、SACLAの登録施設利用促進機関である(公財)高輝度光科学研究センター(JASRI)は、2014年12月1日(月)、JPタワー ホール&カンファレンスにおいて、『SPring-8/SACLAコンファレンス2014~進化する光が拓く科学技術~』を開催した。
 JASRIでは、施設の現状報告や学術界の利用成果報告を目的とした「SPring-8シンポジウム」(1997年から)、産業界ユーザーの交流を目指した「SPring-8産業利用報告会」(2004年から)を開催してきた。2009年から2011年までは、学術と産業分野との交流による相乗効果を目指し、これら2つの会を合同で開催することで利用研究の活性化を図った。その後、学術界・産業界の利用者全員で組織するSPring-8ユーザー協同体(SPring-8 Users Community: SPRUC)の創設に伴い、2012年からは、SPRUC、JASRI、(独)理化学研究所(理研)と会議開催地のSPRUC代表機関の共同主催により、ユーザーの科学技術的交流の場として、「SPring-8シンポジウム」を開催している。
 このようなSPring-8に関連した会議の趣旨、開催状況や国によるSPring-8の評価などを鑑み、JASRIは、2013年度より、SPring-8の拡大・進化、新たな利用研究開拓の場として、装いを新たにしたコンファレンスを開催することとした。一方、X線自由電子レーザー(XFEL)施設SACLAは2011年度より供用開始し、これまでの光では得られない研究成果を創出し、世界のXFEL拠点としての位置づけを盤石にしつつある。そこで、第2回となる今回のコンファレンスでは、SPring-8に加え、次期放射光光源、ならびに、SACLAも議論の対象とし、施設の最新情報、利用研究成果の講演やポスター発表を行った。
 今回のコンファレンスは、JASRIの主催、理研、SPRUC、SPring-8利用推進協議会の共催、(公社)応用物理学会、(国)大阪大学核物理研究センター、(国)大阪大学蛋白質研究所、(公社)化学工学会、(国)京都大学産官学連携本部、(一社)軽金属学会、(一財)高度情報科学技術研究機構、(公社)高分子学会、(財)國家同歩輻射研究中心、産業用専用ビームライン建設利用共同体、(一社)触媒学会、(公社)石油学会、(一社)セメント協会、(一財)総合科学研究機構、(公社)電気化学会、(国)電気通信大学、(国)東京大学放射光連携研究機構、(株)豊田中央研究所、(公社)日本化学会、(公社)日本金属学会、日本結晶学会、日本結晶成長学会、(一社)日本原子力学会、(独)日本原子力研究開発機構、(公社)日本顕微鏡学会、日本高圧力学会、日本鉱物科学会、(公社)日本材料学会、(一社)日本生物物理学会、(公社)日本セラミックス協会、日本ゾル - ゲル学会、(一社)日本蛋白質科学会、日本中性子科学会、(一社)日本鉄鋼協会、(公社)日本表面科学会、(一社)日本物理学会、(公社)日本分析化学会、(一社)日本分析機器工業会、日本放射光学会、(公社)日本薬学会、光ビームプラットフォーム、(公)兵庫県立大学産学連携・研究推進機構、(独)物質・材料研究機構、フロンティアソフトマター開発専用ビームライン産学連合体、粉体工学会、(一社)粉体粉末冶金協会の協賛、文部科学省の後援のもとで開催した。


2. オープニング
 主催者を代表して、JASRIの熊谷教孝専務理事から挨拶があり、コンファレンスが開会した。熊谷専務理事は、SPring-8において、学術における論文の質・量と産業界の利活用とが、ともに、定量的に高く評価できる現状、SACLAに関しては、傑出した成果が創出されている状況を報告した。今後、学術界・産業界の連携を通した課題解決へ向け、さらなる利活用への期待が述べられた。
 施設者の理研を代表して放射光科学総合研究センターの石川哲也センター長から挨拶があり、放射光科学が大きく貢献した近代結晶学が創成から100周年となり、2014年が世界結晶年(IYCr2014)であることが示され、SPring-8/SACLAによるこれから100年の展望が示された。次に、SPring-8の順調な運転と成果の蓄積について触れた後、アップグレードへの取り組み状況と展望が示された。SACLAに関しては、世界の中でも特長のあるXFEL施設としての位置づけとその成果創出について触れられた。最後に、世界の高エネルギー光科学を牽引する施設として世界のトップランナーであり続けるために、利用者、登録施設利用促進機関との連携による施設運営の指針が示された。
 文部科学省の科学技術・学術政策局から来賓として出席いただいた岸本康夫次長(写真1)より、経済再生に向けた我が国の科学技術の重要性が示された。その中で、SPring-8が最先端大型研究施設として位置づけられ、積極的な活用に向けた体制構築が行われていることが紹介された。また、SACLAからの世界的成果の創出が進んでいること、今後の施設の拡充予定が示され、学術・産業の発展に向けたさらなる貢献への期待が述べられた。最後に、本コンファレンスが、新しい科学の展開、イノベーションの創出として重要な位置づけである点をご評価いただいた。

 

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写真1 文部科学省 科学技術・学術政策局 岸本康夫 次長の挨拶

 

 

3. 科学技術講演
 セッション1、3、4では、それぞれ、SPring-8の先端活用例、次期放射光光源への展望と期待、SACLAによって拓かれた新しい科学の成果についての講演をプログラムし、SPring-8/SACLAで展開している光科学の最先端を議論する場とした(写真2)。各セッションでは、前回同様、それぞれの施設の最新動向を紹介し、今後の利活用に向けた情報提供が行われた。

 

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写真2 講演会場

 

 

 セッション1の前半は、JASRI加速器部門、および、光源・光学系部門の後藤俊治部門長より、SPring-8における安定かつ制御性の高い光源特性とそれを担保する技術基盤のセッションアドレスで始まった。東京大学の山添誠司氏は、高エネルギーX線回折とX線吸収分光の融合により、特異な科学的性質を示すナノクラスターの構造決定の成果を紹介した。山添氏は、第1回(2008年)萌芽的研究アワードの受賞者でもあり、SPring-8の人材育成プログラム卒業生の活躍が印象的であった。住友ゴム工業の岸本浩通氏は、実用タイヤの材料設計のために、SPring-8放射光のコヒーレント成分を活用し、X線光子相関分光法でゴム材料のダイナミクスを明らかにした成果を紹介した。また、SPring-8とJ-PARC、京の連携利用による新材料創出への展望も示された。
 セッション1の後半は、JASRI利用研究促進部門の高田昌樹部門長が座長を務め、2件の講演があった。物質・材料研究機構の宝野和博氏は、我が国が強力に推進する元素戦略プロジェクトでの高性能磁石開発の研究を紹介した。講演では、SPring-8の軟X線、硬X線のナノビームを活用したX線磁気円二色性(XMCD)による磁気特性の解明、X線回折による磁石作製過程の相形成理解へのアプローチが紹介された。神戸大学の片岡徹氏は、分子標的がん治療薬の開発について最近の動向を概観しつつ、SPring-8を活用したX線結晶解析により、薬剤結合部位が無いとされてきたがん治療薬分子標的分子Rasにおいて、高次構造の遷移状態によりその部位の出現を見出した成果を紹介した。また、全米の巨大プロジェクトとの熾烈な競争環境に対抗する神戸大、理研、SPring-8の連携体制を紹介した。
 セッション3では、SPring-8高度化計画検討委員会の石川哲也委員長より、セッションアドレスとして放射光施設の世界的動向が紹介された。リング型次期光源の世界的な動向として、マルチベンドアクロマットによる低エミッタンス化の方向性が示された。今後、「何が起こっているかではなく、何故起こっているか知る」ための光源開発の展望が述べられた。理研の田中均氏は、SPring-8-II計画として目指す光源について概観した。講演では、キーワードをコヒーレンス性の利用としたうえで、アップグレードプランにおける境界条件のもとでの概念設計と計画、展望が示された。京都大学の小野輝男氏は、今後さらなる応用が期待されるスピントロニクスの先端研究の動向を紹介したうえで、研究を加速するために必要な先端放射光光源の特性と次期光源への期待が示された。さらに、今後の飛躍的な科学技術の発展には、先端放射光利用を基点とした分野融合の重要性を示した。
 セッション4では、JASRI XFEL利用研究推進室の後藤俊治室長より、セッションアドレスとして、XFEL SACLAの光源特性と最新の利用研究動向が紹介された。理研の玉作賢治氏は、XFELの非常にピーク強度が高く、パルス幅の短いX線による内殻2重イオン化状態の形成や2光子吸収の観測例を示した。また、観測した現象の考察を発展させ、既成概念を超えた新しい高エネルギー光科学への期待と展望が示された。京都大学/理研の岩田想氏は、タンパク質の構造解析が創薬研究推進におけるボトルネックの1つであり、迅速な構造決定の重要性を示した。そのうえで、SACLAの活用が試料凍結や放射線損傷の問題を解決する新しい構造解析手法を提供することを示し、その有用性を実例によって示した。今後の技術開発により、反応ステップを追跡する手法など、SACLAのさらなる利活用の将来展望が示された。


4. 萌芽的研究アワード授賞式・受賞講演
 セッション2では、大学院生が実験責任者として課題を推進する「萌芽的研究支援課題」の中から、自主性と独創性において特に優れた課題に授与される萌芽的研究アワードの授賞式(写真3)と受賞講演が行われた。冒頭、SPring-8萌芽的研究支援プログラム担当であるJASRI利用研究促進部門の木村滋グループリーダーより、本課題の概要と課題を通した人材育成の取り組みが紹介された。また、SPring-8萌芽的研究アワード審査委員長である特殊無機材料研究所の鈴木謙爾代表理事より、挑戦的で主体性を重視した審査基準と形式的な研究にとどまらない若手研究者育成の場の重要性が示された。

 

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写真3 萌芽的研究アワード授賞式

 

 

 第7回目のアワードを受賞した東京工業大学の野村龍一氏は、地球内部の物質の研究において、従来行われてきたレーザー加熱式ダイヤモンドアンビルセル高圧発生装置を用いたX線回折実験に加え、複数波長でのCT観察を行った研究成果を紹介した。実験結果から、地球外核には融点を下げる効果を持つ水素が大量に溶けているという新しい解釈を提案し、これが受賞対象の成果となった。


5. ランチタイムポスターセッション
 セッション1とセッション2の間の昼休憩時間を利用して、萌芽的研究支援ワークショップで発表された全ての成果と、SPring-8、SACLAの概要、利用システム、先端計測を支える基盤技術の開発動向、利活用成果事例を紹介するポスターセッションを開催し、参加者の利用相談の機会とした(写真4、5)。

 

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写真4 ポスター会場

 

 

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写真5 ポスター会場での施設紹介、利用相談

 

 

6. クロージング
 JASRI土肥義治理事長は、SPring-8、SACLAを活用した科学・技術の新しい展開が集約された会議であったとコンファレンスを振り返った。また、より一層の利活用成果の創出へ向けたJASRIの今後の取り組み姿勢を示し、閉会とした。


7. おわりに
 登録施設利用促進機関JASRIのミッションである利用研究成果の最大化に向け、先端放射光とX線自由電子レーザーの利用研究の拡大・進化、新たな利用研究開拓の場として開催した『SPring-8/SACLAコンファレンス2014~進化する光が拓く科学技術~』は、180名の参加者によって盛況のうちに閉幕した。本企画が、今後の利活用の深化と成果の創出につながることを期待する。
 最後に、開催のたびに企画の充実化を進めてきたSPring-8/SACLAコンファレンスは、施設内外の多くの方々の有形無形のご支援によって成功裏に終わりましたことをご報告し、講演者、参加者、関係者の皆様方に感謝の意を表します。


SPring-8/SACLAコンファレンス2014 プログラム

開会
司会:高田 昌樹
   高輝度光科学研究センター 利用研究促進部門 部門長

09:30-09:50  開会挨拶
熊谷 教孝
高輝度光科学研究センター 専務理事
挨  拶
石川 哲也
理化学研究所 放射光科学総合研究センター センター長
来賓挨拶
岸本 康夫
文部科学省 科学技術・学術政策局 次長

 

セッション1 SPring-8光源の先端活用の進展
司会:後藤 俊治
   高輝度光科学研究センター 加速器部門、光源・光学系部門 部門長

09:50-10:00  セッションアドレス「世界一安定な放射光源、SPring-8」
後藤 俊治
高輝度光科学研究センター
~ イノベーション創成へ ~
10:00-10:30  講演「放射光複合分析による有機配位子保護金クラスターの構造解明」
山添 誠司
東京大学
10:30-11:00  講演「X線光子相関分光法によるゴム材料のダイナミクス計測と実用化材料設計」
岸本 浩通
住友ゴム工業
(11:00-11:10 休憩)

 

司会:高田 昌樹
   高輝度光科学研究センター 利用研究促進部門 部門長
   ~ Solving Problem ring 8 GeVとして ~

11:10-11:40  講演「元素戦略による高性能磁石開発の展望」
宝野 和博
物質・材料研究機構
11:40-12:10  講演「分子標的がん治療薬の開発とSPring-8」
片岡 徹
神戸大学

 

ランチタイムポスターセッション

12:10-13:45  ポスター:施設紹介、利用案内、萌芽的研究支援課題成果

 

セッション2 人材育成プログラム:萌芽的研究アワード授賞式・受賞講演
司会:八木 直人
   高輝度光科学研究センター タンパク質結晶解析推進室 室長

13:45-14:05  SPring-8萌芽的研究アワード審査委員長による概要説明・講評
鈴木 謙爾
特殊無機材料研究所 代表理事
14:05-14:20  講演「放射光X線マイクロトモグラフィー法によるマントル物質の融解温度の決定」
野村 龍一
東京工業大学

 

セッション3 次期放射光光源によって拓かれる科学
司会:石川 哲也
   SPring-8高度化計画検討委員会 委員長

14:20-14:30  セッションアドレス「放射光施設の世界的動向」
石川 哲也
理化学研究所
14:30-15:00  講演「SPring-8-II計画として目指すべき光源」
田中 均
理化学研究所
15:00-15:30  講演「ナノデバイス科学が求める光源性能」
小野 輝男
京都大学
(15:30-15:40 休憩)

 

セッション4 SACLAが拓く新しい科学
司会:後藤 俊治
   高輝度光科学研究センター XFEL利用研究推進室 室長

15:40-15:50  セッションアドレス「SACLAで観る世界」
後藤 俊治
高輝度光科学研究センター
15:50-16:20  講演「強いX線で何が見えるのか?」
玉作 賢治
理化学研究所
16:20-16:50  講演「シリアルフェムト秒結晶構造解析による生命現象の理解」
岩田 想
京都大学/理化学研究所

 

クロージング

16:50-17:00  土肥 義治
高輝度光科学研究センター 理事長

 

 

 

藤原 明比古 FUJIWARA Akihiko
(公財)高輝度光科学研究センター 利用研究促進部門
〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1
TEL : 0791-58-2750
e-mail : fujiwara@spring8.or.jp

 

 

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[ - Vol.15 No.4(2010)]
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