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Volume 10, No.3 Pages 215 - 217

5. 談話室・ユーザー便り/OPEN HOUSE・A LETTERS FROM SPring-8 USERS

SPring-8利用者懇談会会長に就任して

坂田 誠 SAKATA Makoto

名古屋大学大学院 工学研究科 Graduate School of Engineering, Nagoya University

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 4月4日(月)に開かれたSPring-8利用者懇談会運営委員会で、運営委員の互選によりSPring-8利用者懇談会会長を再度お引き受けさせていただくことになりました。私は、既に2期4年にわたって会長を務めておりますので、私としては他の方が会長を務めることの方がSPring-8利用者懇談会にとって、さらにSPring-8にとってもよろしいのではないかと思っておりました。しかしながら、現在のSPring-8やSPring-8利用者懇談会を取り巻く状況から考えて、利用者懇談会の組織を改革すべき時期にきているのではないかと判断するに至りました。そのため、運営委員会に諮った後に、今年の3月に利用者懇談会が中心となり開催した第1回ユーザーズミーティングの際に、「SPring-8利用者懇談会の改革のために組織変更が望ましいのではないか」との意見を述べさせていただきました。この意見に対して、今年度に入り開催された新しい運営委員会でも皆様のご支持が得られ、事情を最も知るものとして私がその責を果たせということになりました。組織改革が済むまで、と言う条件の下で、会長をお引き受けした次第です。今年は、利用者懇談会細則第16条にしたがって、2年ごとにサブグループを見直す時期に当たっています。しかしながら、この様な事情で、会長を引き受けましたので、利用者懇談会の改変を出来るだけ速やかに行う為にも、それまでは現体制を継続したいと思っております。この点も、4月4日開催の第1回SPring-8利用者懇談会運営委員会で了承していただきました。
 会長、幹事会、運営委員会、世話人のレベルでは、SPring-8利用者懇談会の組織変更が議論されていますが、一般会員の方々には、必ずしも、よく知られているとは言いがたい状況です。利用者懇談会の組織改革は、施設あるいは一般ユーザーの方々にも大きく影響することですので、就任の挨拶に代え、多少なりとも現況ならびに今後の見通しについて説明させていただきます。
 利用者懇談会の組織改革が検討されるようになったきっかけは、ユーザーズミーティングを企画している中から生まれました。ユーザーズミーティングを企画していた時に、SPring-8のユーザーは近未来にわたって一体何をしたいのか、また、何をしようとしているのか、という疑問が、当然のことながら生まれてきました。このような問題意識の帰結として、それを実現するためのビームラインはどうあるべきか、あるいは、装置についてはどうすればいいのか、といった将来展望にも発展しました。客観的情勢として、43本のビームラインは既に整備されているものの、残念ながら、残りのビームラインについては、装置建設の見通しさえ全く立ちません。既存のビームライン・装置の高度化についても何かプロジェクトを立ち上げて、特別な資金を獲得しない限り、極めて困難であるという現実があるように思えます。ユーザーズミーティングは、現実ばかりを見ないで、例えば「SPring-8にこういう装置があれば、こう言うサイエンスが展開できる」と言うようなSPring-8におけるサイエンスの近未来の夢を語ることを当初意図して考えられました。夢を語ることは、楽しいことではありますが、そのような夢を夢として終わらせず、出来るだけ実現するようその可能性を高めることが、ユーザー組織としての役割であると思います。そのためには、ユーザー組織として何か出来ることがあるのではないかと考えを進めた結果が、組織改革への道につながって行ったように個人的には認識しています。
 現在のSPring-8利用者懇談会は、運営委員会の下に、25のBLSG(ビームラインサブグループ)および11の研究会が組織されています。数の上では、ビームライン建設を目指すBLSGがSPring-8のサイエンスを語る研究会よりも遥かに多くなっています。ところが上で述べたように、ビームラインの建設は極めて困難な情勢であります。そのためだと思うのですが、最近のBLSG活動は活発とは言いがたい状況が続いています。この様な状況から判断して、現在の利用者懇談会の組織形態と、SPring-8の置かれている客観的情勢とのマッチングが悪いのではないかと考えています。運営形態も含めて、SPring-8を取り巻く環境は急速に変化しています。どのように状況が変わろうとも、基本的にSPring-8のユーザーに求められることについては、それほど大きく変化しないように思います。共用ビームラインを使用される多数のユーザーの方々と同様に、私も大学に属しています。そのようなユーザーにとって、SPring-8から良いサイエンスを生み出すことは、大きな柱の一つに違いありません。産業界の方々にとっては、それぞれの産業利用により、産業界としての成果を挙げることが、大きな柱になろうかと思います。産学連携あるいは産官学連携など、見かけ上は複雑な利用形態がありますが、要するに、それぞれのユーザーがSPring-8の特徴を生かし、それぞれの目的にあった成果を挙げることが重要なのではありませんか。
 以上のような基本的認識に立つと、SPring-8利用者懇談会の組織改革の道筋が見えてくるように思います。通常業務をこなしているだけでは、ビームラインの建設、ビームラインの高度化が現実的にできない状況にあります。そのような状況下で、それぞれの分野での成果を挙げるのに少しでも有効に働く利用者団体を考えたとき、また、ビームラインの建設を目指すBLSGが過半数を超える現実を考えたとき、現状よりはベターな組織形態があるのではないかと考えました。その結果が、別掲した改革要旨であります。
 改革の要点は、以下4点にまとめられます。
1.既存のBLSGと研究会を全て廃止する。
2.SPring-8での利用研究について検討する利用委員会を会長の下に置く。
3.利用委員会は5つ程度の分科会から構成され、分科会には複数の研究会がおかれる。
 分科会は固定的であるが、研究会は流動的なものである。
4.責任の明確化と会の運営の継続性のために、会長を会員の直接選挙により選ぶ。

 これから詳細を検討し、規約あるいは細則に反映させて行くことになりますが、今の時代にあった良い形で新たなSPring-8利用者懇談会を出発させたいと思っております。一部には、現在の組織形態で良好に機能しているBLSGもあると理解しておりますが、今回の組織改革はその機能を強化する為に行うものです。また、ユーザーと施設のコミュニケーションをよりよくする為のものです。現在、有効に機能している活動を排除する意図はありませんが、書いたものだけでは、なかなか、意図が伝わりませんので、5月下旬に拡大世話人会を開いて広く意見交換をしたいと考えております。世話人、副世話人の方々の積極的な参加をお願いします。また、広く関係する皆様のご協力をお願いする次第です。

(改革要旨)
SPring-8利用者懇談会の改革についての私見
SPring-8利用者懇談会会長 坂田 誠
 SPring-8は供用開始後7年が経過して本格的利用期に入っているが、それに対応して巨額の建設維持費を伴う大型施設での成果が問われる時期になってきた。一方で、新たなビームライン建設については非常に厳しい状況にある。利用の観点からも、ナノテク支援やタンパク3000、トライアルユースなどの利用枠の重点化に加えて利用者支援旅費の廃止、利用料金の検討など、大きな環境の変化が出てきている。
利用者懇談会設立当時の最大のミッションはSPring-8で建設すべきビームラインについての提案を行うことであった。そのために多くのサブグループ(SG)が結成され、ビームライン検討委員会にビームライン提案が提出された。それに基づいたビームライン建設に利用懇SGは積極的に参加し、また、高度化にも協力してきた。建設ラッシュが終わり利用期に入った平成10年ごろから、利用の観点から利用者懇談会の活動を見直すべきであるとの判断でSG(BLSGと改名)に加えて研究会を発足させ、現在に至っている。この間、上記のように大きな変化が起きているが、現在の最大の課題は、SPring-8での成果創出が求められていることである。これにSPring-8利用者懇談会が対応するためには、SPring-8で展開すべきサイエンスをベースにおいた研究会を中心とすることが必要である。この時、既存のBLSGはもちろんのこと研究会も一旦すべて解散し新たな活動を行うことが必要であるとの見解にいたった。

 以上のことを整理すると下記のようになる。
  第1期(H5〜H12):
   建設期;SG体制
  第2期(H13〜H16):
   利用期(試行期間);BLSG+研究会体制
  第3期(H17〜):
   本格的利用期;新研究会体制
a)研究会の設立についてはJASRIなどの利用系組織との連携も視野に入れる。会長は一般会員による直接選挙により選ぶ。
b)サイエンスで集まる研究会組織の上に、サイエンスの広い範囲をカバーする分科会を設け、分科会を統括する形で利用委員会(仮称)を置く。



坂田 誠 SAKATA  Makoto
名古屋大学大学院 工学研究科 マテリアル理工学専攻
〒464-8603 名古屋市千種区不老町
TEL:052-789-4453 FAX:052-789-3724
e-mail:sakata@cc.nagoya-u.ac.jp



Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794