Volume 10, No.2 Page 94
1. SPring-8の現状/PRESENT STATUS OF SPring-8
−実験技術・方法等分科会−
– Method & Instrumentation Subcommittee –
高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所 Institute of Materials Structure Science, High Energy Accelerator Research Organization (KEK)
これまでの分科会主査の方々も書かれているように実験技術・方法等分科は広汎な実験技術・方法に関する申請の審査を行ってきました。ただ、SPring-8が建設・立ち上げ期から利用実験期へと発展してきたことを反映してか、申請の多くはイメージング関係技術開発・応用、顕微鏡技術開発、検出器関係で、一般的なビームラインの性能向上的な申請はそれほど多くありませんでした。分科の性格上、技術・方法論としての新奇性が重視され、開発された技術の応用的側面の強い申請に対しては申請者の期待するビームタイムを配分できなかったのではないかと懸念します。今後はイメージング関係の光学系を予め調整して、ある期間は試料を持ち込めば測定できるような環境整備をすることで、応用範囲が拡大することが期待されます。
以前と比較すれば、申請のスペクトルは狭くなったとは言え、依然として相当に広いスペクトルを持っており、全ての課題に対して申請者が期待するだけの十分な理解をした上で判断できたかという点は心の痛む面もありました。こういった問題に対しては途中から導入されたレフェリー制は有効であったと思います。また、レフェリー制と平行して分科会委員で分担して課題審査を行いましたが、委員によって大きく評価が分かれる申請は殆どなかったと記憶しています。勿論そのような場合には事前の評点や意見を参考にしながら分科会の委員で議論し、最終的な評価を行いました。また、最近はビームライン毎に各申請に対する評点順にソートされた表が予め用意されており、合格ラインが予め見通せるため、大量の課題の処理に膨大な時間を掛けることもなくなり、評価の分かれた申請についての議論に時間を割くことが可能となりました。与えられたシフト数の中で受け入れられる多量の申請を短時間の内に処理するためには良い方法でしょう。
上記のような評価する側の制度的な整備とともに、申請をされる方にも「どういった人が読むのか」を想像しながら、申請の新奇性、その意義、技術的実現性、実現へ向けた準備の進捗状況等を分かり易く記して頂けると良いと感じます。これはSPring-8の課題審査に限らず、他の施設のビームタイム申請や科研費等への外部資金応募に当たっても注意して頂きたい点です。特にイメージング関係の申請では撮像することで何を明らかにできると期待しているのか、それがどうして重要かを鮮明にした申請書を書く努力をお願いします。
前任の渡辺誠先生が2年前に書かれていますが[1]、「本分科は必要か」ということが議論されました。結論的には申請のカテゴリーとしては残すが、審査委員会の分科としては今期を以て終了すると云うことです。従って審査は関連する分科で行われることとなりますが、適切なレフェリーを配置することで装置・技術面の専門家の意見を反映して頂くことが可能となると期待しています。また、これに対応して審査希望分野表はJASRIで整備して頂けるものと期待しております。
末筆ではありますが、至らない主査を支えて審査をして頂いた川戸清爾、後藤俊治、竹中久貴の各委員に感謝し、実験技術・方法等分科の幕を閉めさせて頂きます。
[1]渡辺誠:SPring-8利用者情報、8 (2003) 73.
野村 昌治 NOMURA Masaharu
高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所
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