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Volume 16, No.4 Pages 282 - 284

3. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT

第8回産業利用報告会
The 8th User Report Meeting on SPring-8 Industrial Applications

廣沢 一郎 HIROSAWA Ichiro

(財)高輝度光科学研究センター 産業利用推進室 Industrial Application Division, JASRI

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 9月8、9日に神戸市ポートアイランドの臨床研究情報センターにおいて、(財)高輝度光科学研究センター(JASRI)、産業用専用ビームライン建設利用共同体(サンビーム・BL16XU、BL16B2)、兵庫県(BL08B2、BL24XU)、(株)豊田中央研究所(BL33XU)の主催、およびSPring-8利用推進協議会の共催、蛋白質構造解析コンソーシアム(BL32B2)、フロンティアソフトマター開発専用ビームライン産学連合体(BL03XU)の協賛で第8回SPring-8産業利用報告会を開催した。産業利用報告会はSPring-8の産業界ユーザーの相互交流と情報交換を目的として、それまで個別に行われていたサンビーム、兵庫県およびJASRIそれぞれの成果報告会をジョイントして2004年に第1回が開催された。更に、SPring-8合同コンファレンスとして開催した第7回より主催者として(株)豊田中央研究所が加わった。また、2006年の第3回以来協賛で参加している蛋白質構造解析コンソーシアムに加えて、今回からはフロンティアソフトマター開発専用ビームライン産学連合体も協賛で参加するなど回を重ねるごとに参加団体が増え、より充実した催しとなってきた。産業利用報告会は第3回(2006年)まではSPring-8で開催していたが、第4回(2007年)以降は、SPring-8合同コンファレンスとして実施した前回、前々回を含めて4回連続東京で開催していた。神戸での開催は今回が初めてで、5年ぶりの関西開催となった。


 8日の12時30分に主催4団体を代表してJASRI白川理事長の挨拶で開会し、ただちにサンビームの成果発表(第11回サンビーム研究発表会)が行われた。冒頭に行われた産業用専用ビームライン建設利用共同体の梶畠運営委員長(川崎重工)の挨拶では、利用成果の公開促進へのサンビームの取り組みの一環として、本年度より年報を発行する方針で準備を進めていることが表明された。SPring-8が供用を開始して間もない頃から2本の専用ビームラインを運営し、“SPring-8の産業利用を牽引してきた”と自負しているサンビームが年報の発行を通じて利用成果をより具体的に公開することは、SPring-8の産業利用の発展に大きく貢献するもので年報発行を大いに期待している。サンビーム最初の成果発表は巽氏(川崎重工業株式会社)が座長を務め、淡路氏((株)富士通研究所)により“フーリエ変換ホログラフィー法によるin-situナノ・イメージング”と題して行われた。これ以降は淡路氏の座長のもと“放射線・熱劣化を受けたポリマ中の酸化防止剤の挙動解析”(日立電線(株)山崎氏)、“XAFSを用いた工業材料中に含まれる環境規制物質の価数評価”((株)東芝 沖氏)、“環境製品、リサイクル技術開発のための放射光利用”(住友電気工業(株)飯原氏)、“貴金属担持各種酸化物排ガス浄化触媒の劣化機構に関する検討”(川崎重工業株式会社 清瀧氏)の4件の成果報告があった。以上のように口頭で行われた成果報告5件のうち3件は環境関連のテーマで、この分野での放射光利用への関心が高いことを示していた。また、淡路氏や飯原氏の発表はBL16XU、BL16B2以外の共用ビームラインでの成果も併せた報告で、サンビームに所属する企業の放射光利用の拡大を実感する発表であった。これらの報告が示すようにSPring-8の産業利用のパイオニアであるサンビーム所属各社には、サンビームでの挑戦的な放射光利用とともに、多様な測定が可能な共用ビームラインの積極的な利用を通じて、今後もSPring-8の産業利用をリードしていただくことを期待している。


 8日の後半は2010A期、2010B期実施課題を対象とした重点産業利用課題6件の報告を行った。前半3件の発表“酸化物系非白金燃料電池触媒の活性点解析”(株式会社日産アーク 今井氏)、“XAFSによるグリーンケミカルプロセス用ヘテロポリ酸触媒の構造解析”(昭和電工(株)渡邊氏)、“軟X線を用いたポリマー化学状態解析”(住友ゴム工業(株)金子氏)はJASRIの杉浦コーデイネーターが座長を務め、後半3件の発表“放射光を用いたLSI絶縁膜プロセスの評価”(明治大学 永田氏)、“熱イミド化過程におけるポリイミド薄膜の結晶化in-situ評価”(住ベリサーチ(株)馬路氏)、“大型二次元ピクセル検出器を用いた鉄スケールウスタイト変態挙動のin-situ観察”(住友金属工業(株)土井氏)は二宮コーディネーターの座長で成果報告と質疑が行われた。例年どおり幅広い分野における放射光利用結果の報告であったが、永田氏は同一の対象をBL46XUに備えられたHAXPESと多軸回折装置の両方で評価した成果の報告で、ビームラインの特徴を活かした点が印象的であった。また、金子氏の発表はBL27SUの回折格子とSi(111)チャンネルカット結晶分光器のエネルギー分解能の検討結果に関するもので、産業界ユーザーも共用ビームラインの測定機器開発に積極的に参加していることを知ることができた。


 この後、計算科学センタービルで行われた技術交流会(懇親会)は、全参加者のほぼ半数にあたる130名弱の方が参加した。会場のあちこちで名刺交換が行われ“産業界放射光ユーザー相互の交流と情報交換”には大変有効な機会とすることができた。特に今回は松野氏(旭化成)の『ひょうごSPring-8賞』受賞の紹介があった。松野氏には産業利用報告会でほぼ毎回ご発表いただいているが、産業利用を対象にした『ひょうごSPring-8賞』が次回も産業利用報告会で発表される成果の中から選出されることを期待している。


 9日は午前9時30分より妹尾氏の司会で豊田中央研究所の成果報告(第2回豊田ビームライン研究発表会)が行われた。口頭で報告された2件“燃料電池用電極触媒の実作動状態XAFS解析”(畑中氏)、“時分割XAFS等を用いた硫黄架橋系水素化NBRの架橋状態解析”(光岡氏)は、いずれも時分割XAFSの成果で豊田ビームラインBL33XUの特徴と性能を如実に示すものであった。


 続いて行われた兵庫県の口頭発表では松井兵庫県放射光ナノテク研究所所長の挨拶の後、前半3件、後半2件の報告が行われた。中前科学技術コーディネーターが座長で発表された前半の3件“μCT/μXRD複合法による石鹸の構造評価”(P&Gイノベーション合同会社 佐野氏)、“ガラスに含まれる鉄イオンの状態分析”(日本電気硝子株式会社 中根氏)、“ポリオレフィン系材料の成型品における結晶構造の評価事例紹介”(株式会社三井化学分析センター)はいずれもBL24XUで実施された課題であった。BL24XUでは産業界によるマイクロビームを用いた実験が以前より活発に行われてきたが、中根氏の報告は高分解能XAFSに関するものでBL24XUの新しい一面を示す印象的な発表であった。後半は“高平行度X線マイクロビームの現状”(兵庫県立大学 津坂准教授)と“もう一つの放射光産業利用(ここまできた極端紫外線リソグラフィー)”(兵庫県立大学 木下教授)の2件が兵庫県立大学篭島教授の座長のもとに発表された。木下教授の発表はNewSUBARUでの成果であり、SPring-8と同じサイト内にありながら、あまり知る機会のないNewSUBARUでの研究活動の一端に触れることができた。


 9日の昼過ぎよりポスター発表を行った。今回は、主催のJASRI(重点産業利用課題)22件、兵庫県20件、サンビーム20件、豊田中央研究所9件のポスター発表に加えて、共催のSPring-8利用推進協議会より1件、協賛の蛋白質構造解析コンソーシアムとフロンティアソフトマター開発専用ビームライン産学連合体よりそれぞれ1件、計74件のポスター発表が行われた。また、同じ会場でJASRI制御・情報部門と産業利用推進室の活動紹介も行った。ポスター発表時間が終了するまで会場のあちらこちらで、活発な議論が行われていたことをうれしく思う一方、発表コアタイムの周知が行き届かず参加してくださった方々にご迷惑をおかけしたことをこの場を借りてお詫びしたい。


 当日、参加者にご記入いただいたアンケートからは、開催場所、開催時期等を評価するとした意見が多数を占め、多くの参加者にある程度満足していただける報告会になったと考えている。一方で、“XAFS討論会など放射光と関連の深い学会と開催日程が重ならないようにしてほしい”、“昼食をとれる場所がなくて困った”など次回以降改善が必要な事項の指摘もあった。産業利用報告会は“雨天での開催が恒例”だったが今回は両日とも晴天に恵まれ、例年並みの250名(発表者78名、一般参加者172名)が参加して無事に終了した。



廣沢 一郎 HIROSAWA Ichiro
(財)高輝度光科学研究センター 産業利用推進室
〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1
TEL:0791-58-0924
e-mail:hirosawa@spring8.or.jp



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[ - Vol.15 No.4(2010)]
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