Volume 07, No.5 Pages 325 - 327
4. 研究会等報告/WORK SHOP AND COMMITTEE REPORT
The XXI International LINAC Conference(LINAC2002)報告
The XXI International LINAC Conference (LINAC2002) Report
LINAC2002が8月19日〜23日の日程で韓国のGyeongju(慶州)で開催された。2年に一度の開催であるこのConferenceは世界各地の研究所の持ち回りとなっているが、今回は初めて韓国で開催された。今回の主催はSPring-8と似たような時期に運転を開始した放射光施設であるPAL(Pohang Accelerator Laboratory)とPohang University of Science and Technology、Korea Atomic Energy Research Institute, Center for High Energy Physics であった。韓国の加速器に関係ありそうな研究所の総動員といったところである。この会議には世界各国から線形加速器関係者が総勢277名出席した。その内訳は以下の通りである。
Belgium 1, Canada 6, P. R. China 15, France 10, Germany 28, India 5, Israel 1, Italy 11, Japan 42, Korea 63, Russia 10, Switzerland 12, United Kingdom 4, USA 68
これからも分かるように、主催国の韓国より、USAからの方が出席者が多いという逆転現象が起こっているが、これは韓国の加速器研究者の数を考えればしかたのないことであろう。日本からの参加者は数としては3番目とはいえ、隣の国で開催されたにしては、少し寂しい数と言えるかもしれない。
Gyeongju郊外の湖の畔に、一大リゾート地がありその中の現代ホテルのConference Hallを会場として開催された。日本で言うなら、ホテルの結婚式場のような場所での会議であり、座り心地の良い椅子であったとは言えない。会議は毎朝8時30分より始まり、Outingのツアーのあった水曜とPALとPOSCO(世界最大の製鉄所)の見学会のあった金曜を除いて毎日18時過ぎまで続けられるという密度の濃いスケジュールであった。
さて会議の内容であるが、特にその日のテーマがあって、それに沿った話があるというわけではなく、電子加速器、陽子加速器、重イオン加速器の話がちりばめられており、さぼれる日のないプログラム構成になっている。とはいえ、多少の偏りはあり、それに沿って経過を報告する。
初日の午前中は大型プロジェクトの現状で、SNS, LC, LCLSなどの話があった。LCLSもいよいよ建設が始まりそうで、2005年から建設開始、2007年にレーザーコミッショニングの予定だそうである。このプロジェクトはアメリカ各地の研究所がいくつもコラボレーションしており、プロジェクト推進の意欲を感じさせられ、日本のプロジェクト推進の貧困さを実感させられた。
二日目はリニアコライダー及び高電界の話が中心であった。
DESYのFloettmannはX-FEL facilityを含むTESLA全体の話であったが、かなり設計が煮詰まってきて具体化されている印象を持った。X-FELのビームライン(10本)を有するマシン構成や環境アセスメントを含む建設スケジュールが示された。KEKの高田はX-bandに関するKEK、SLAC共同研究の現状を報告した。NLC/JLCにもX-FEL facilityを融合させることが示されたが、具体的な構成を質問されて、具体的な検討はこれからと答えていた。
続く、KEKのChin、SLACのDolgashevの報告では、X-band加速構造の放電問題は管内の群速度を小さくすることで解決したことが示された。加速管に蓄積されたエネルギーが放電により消費されるシミュレーション結果を動画で見せていた。一例として、放電時に蓄積エネルギーの60%が7AのCuイオン電流と1kAの電子電流で消費されるという結果を示していた。放電時の発光スペクトルも測定しているようで、放電時の発光はµ秒オーダーの持続時間で、主にneutral copperによる発光だと言っていました。その他、CLIC Test Facilityのフェーズ3であるCTF3の建設予定やCTF2で行われた30GHz空胴による放電限界の測定の話があった。加速管のディスク部分をタングステンにすることにより放電ダメージが大幅に抑えられるという結果がSEM写真などで示された。また、中国での小型電子加速器が産業用として多数建設されている現状が報告され、今後の発展を予想させるものであった。
いろいろ面白い報告があったが、プレゼンテーション方法の主流がOHPからPCに変わっていることが印象的であった。発表の半分以上がPCを用いて発表していた。ポスターのほうも大型カラープリンタによるものが50%近くを占めていた。この日のポスターで、KEKの古川氏が、KEK-PF-Linacの増強計画について発表していたが、C-Bandの加速管を使用する計画になっており、初めて、大型加速器への導入が進みつつあることが印象的であった。
その日の夜は終了後、Gyeongjuの街まで出かけ夕食を取った。街まではホテルから10kmほどの距離で、タクシーだと700円から1000円程度で行くことができた。小さな店が密集している路地にはいると、韓国のいろんな食材が売られており、みやげにと思ったのだが、簡単に持ち帰れるような形状で売られておらず、後ろ髪を引かれる思いであとにした。夕食を食べる店をぶらぶら探しながらたどり着いたのは一軒の焼肉屋であった。肉の種類こそ少ないものの、地元の人が次々入ってくるだけあって、味と値段のほうは大満足でした。柳田は肉といっしょににんにくと青唐辛子丸ごと1本をサンチュに包んでほおばりながら、「韓国料理は青唐辛子とにんにくで爆発するんだ!」と喜んでいたが、谷内と鈴木は青唐辛子をちょっとかじるだけでギブアップであった。
三日目は理研新竹氏のSCSSの発表で始まり、そのあとは超伝導空胴の話が続いた。Energy Recover Linac(ERL)が流行っているということもあり、超伝導の線形加速器が次のブームかと思わせる日であった。ERLについては、100WクラスのFELではエネルギー回収型の必要はないが、1kWからMWクラスになると、エネルギー回収型にしないと、コスト的にとうてい見合わないことが強調されていた。
この日の午後はOutingと称するツアーが催され、世界遺産になっているGyeongju周辺の南山に登って、新羅時代の磨崖仏を見に行った。この山は400mほどの山であるが、細い道が入り組んでおり、ガイドについていかないと、迷いそうなほどであり、昔のままを残した状態であるようだ。余談であるが、やはり翌日には軽い筋肉痛が出てしまった。
四日目の前半は各地で建設中の大電流陽子加速器の発表が続いた。これらの加速器で問題になっているのはやはりビームロスをいかに減らすかということで、目標が1W/m以下という値が示され、ハロー等のロスも含めたビーム輸送の難しさが強調されていた。後半は今コミッショニングが進んでいるTESLA−FELの話があり、順調な様子が報告された。その後はWakefield加速、plasma加速やエネルギー回収型ライナックなどの話があり、ポスターセッションの後バンケットとなった。バンケットは通常の洋食であった、食後に写真に示すように韓国の舞踊が催され、楽しむことが出来た。
最終日はビームを使った実験計画についての発表が主であった。LBNLの重イオンビームの加速器計画、世界の加速器を用いたニュートリノ実験の概要、名大中西氏の偏極陽電子源の話、イタリアのSASE計画、大強度陽子加速器の世界情勢のサーベイ、リニアコライダー完成後の物理実験などの話があった。
今回は開催国ということもあり、韓国の次期加速器計画が多数発表されていた。大強度陽子加速器、ERL型FEL、plasma加速などがあり、開発のためのマンパワーに不安を感じさせられた。
最後に次回の開催はTESLAが主催で、ドイツのLubeckで行われることが発表され2年後の再会を約して閉幕となった。
鈴木 伸介 SUZUKI Shinsuke
(財)高輝度光科学研究センター 加速器部門
〒679-5198 兵庫県佐用郡三日月町光都1-1-1
TEL:0791-58-0851 FAX:0791-58-0850
e-mail:shin@spring8.or.jp
谷内 努 TANIUCHI Tsutomu
(財)高輝度光科学研究センター 加速器部門
〒679-5198 兵庫県佐用郡三日月町光都1-1-1
TEL:0791-58-0851 FAX:0791-58-0850
e-mail:taniuchi@spring8.or.jp
柳田 謙一 YANAGIDA Kenichi
(財)高輝度光科学研究センター 加速器部門
〒679-5198 兵庫県佐用郡三日月町光都1-1-1
TEL:0791-58-0851 FAX:0791-58-0850
e-mail:ken@spring8.or.jp