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Volume 05, No.6 Pages 409 - 410

4. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT

SRI 2000サテライト「LSWAVE 2000」(Lasers and Short Wavelength Applications)報告
A Brief Report on「LSWAVE 2000」(Satellite Conference of SRI 2000)

田中 義人 TANAKA Yoshihito

理化学研究所 播磨研究所 RIKEN Harima Institute

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 SRIサテライト会議「LSWAVE 2000」は、SRI2000会期終了後の8/26(土)に、ベルリン工科大学の新物理棟において開催された。出席者は約40名、うち日本からは5名であった。この会議は、従来型レーザー(以後、レーザーと記)と加速器系光源の共存・組み合わせを、特にレーザー業界側からの視点で模索することを目的としたものである。講演は15件あり、その内容を大まかに分類するなら、
 ①レーザー業界の現状と展望[1,2][1]I.V.Hertel(MBI)(当会議のホスト)は、レーザーと放射光の間で競合している典型例として、現在レーザーで開発のターゲットとなっている短波長領域(10〜100eV)を挙げ、それぞれピーク輝度、平均輝度で優れていることを指摘した。
[2] W.Sandner(MBI)よりSurvey on laser based VUV and x-ray sourcesと題して、普及しているレーザーの現状、および求められるレーザーの性能と開発状況についての講演があった。特に、近い将来に求められているレーザーとしてリソグラフ用の波長10nm以下のコンパクトなレーザーを挙げた。レーザー技術で短波長を得る方法として、高次高調波を得る周波数変換法と、レーザー誘起プラズマを媒質とするX線発生法を紹介した。

 ②レーザーの加速器系光源への応用[7,8,10,14][7]R.W.Schoenlein(Berkeley)は、Scientific application for fs x-ray pulsesと題して高速の固相/液相間相転移や、時間分解X線回折、超高速の化学反応について紹介した。特に、100fsオーダーの原子振動の周期程度での相転移や、電子温度が格子温度よりも十分に高い状態からの緩和過程の研究等、テーマを挙げた。これらの研究に必要な超短パルスX線源に関して、加速電子ビームにTW級のレーザーを垂直方向から打ち込んだ際の90°Thomson 散乱による発生法を紹介した。この超短パルスX線により、レーザー照射後約10psに生じた歪みによる回折変化の観測例を示した。また、ナノ結晶の固相間相転移について高時間分解EXAFSが適用される可能性を示した。
[8]E.D.Johnson(Brookhaven)は、レーザーを種光とした可視、赤外域FEL(プロジェクト名:VISA:Visible and Infrared SASE Amplifier)と、ピーク輝度がAPSより10桁大きいLinac系FELの計画を紹介した。将来は、直線距離3km!で、波長0.2nmを目指したいようだ。
[10]S.Khan(BESSY)からは、サブピコ秒X線パルスの発生法についての話があった。アンジュレータ中で電子とフェムト秒レーザーを相互作用させることによりエネルギー変調を起こさせ、その変調部分からの放射を取り出す方法は、輝度で約7桁から10桁弱い光しか取り出せないことになる。それに対し、RF軌道偏向と非対称反射光学系の組み合わせによりサブピコX線パルスを取り出す方法を示し、これが2桁程度しか弱くならない高効率の方法である点を強調した。
[14]A.Endo(FTRA,Tsukuba)からは、レーザー光と電子ビームを100fsの精度で同期、衝突させて、1.9keV,480fs, 1.8×105 photons/pulse のX線を発生させる話があった。

 ③レーザー+放射光利用実験[3〜7,9,11〜13,15][3]B.Winter(MBI)から、レーザー技術−同期技術−ビームライン技術(50〜150eV)を組み合わせたMBI/BESSYⅡのビームラインが紹介された。ポンプ・プローブ実験として、レーザー励起された準位からのSRプローブの他、レーザー励起により過渡的に変化した内殻エネルギー準位をプローブするもの、二色同時励起による自動イオン化過程等の研究計画を紹介した。また、高分子半導体における光ダイナミクスの研究例として、レーザー照射時で発光波長のシフトが観測されたことを報告した。
[4]J.Feldhaus(DESY)は、The pump-probe system at the TTF-FELと題して、発振波長6.4nmを目指すFELと、これに精度psのレーザー同期を行う計画を紹介した。
[5]J.Larsson(Max-lab/Lund)は、ESRFでの超高速ストリークカメラシステムおよびレーザー同期システムを紹介し、これを用いたGaAsにおけるコヒーレントフォノンの観測データを披露した。
[6]M.Meyer(Lure)からは、レーザーとSRの組み合わせ実験の手法について、時間的重なりを考慮すると、CWレーザーを用いるよりも同期させたパルスレーザーを用いる方が効率のよいことを唱えた。実験例として、二光子遷移による励起状態のXeにおける共鳴光イオン化過程の研究を紹介。二種類の光源の組み合わせにより選択則の異なる準位の情報を得たり、中間状態依存性を見ることができることを示した。また、CWレーザーについて、その高いエネルギー分解能を生かしたSRとの組み合わせの可能性も指摘した。
[7]R.W.Schoenlein(Berkeley)は、Scientific application for fs x-ray pulsesと題して高速の固相/液相間相転移や、時間分解X線回折、超高速の化学反応について紹介した。特に、100fsオーダーの原子振動の周期程度での相転移や、電子温度が格子温度よりも十分に高い状態からの緩和過程の研究等、テーマを挙げた。これらの研究に必要な超短パルスX線源に関して、加速電子ビームにTW級のレーザーを垂直方向から打ち込んだ際の90°Thomson 散乱による発生法を紹介した。この超短パルスX線により、レーザー照射後約10psに生じた歪みによる回折変化の観測例を示した。また、ナノ結晶の固相間相転移について高時間分解EXAFSが適用される可能性を示した。[9]M.Kamada(UVSOR)からは、VUVの放射光とレーザーの数々の組み合わせ実験を紹介した。特に、レーザーによる光起電力効果を介して起こるバンドの歪みを放射光でプローブした実験や、CaF2における2光子吸収過程を紹介した。より強い放射光があれば、放射光励起-レーザープローブなど、より多くの組み合わせ実験が可能であることを指摘した。
[11]B.Sonntag(DESY)からは、Crに円偏光のレーザーを照射することにより強いスピン配向を起こさせ、それを直線偏光のSRでプローブする実験の紹介、磁気光学トラップされたイオンをターゲットとする実験の提案などがあった。
[12]W.Eberhardt(KFA,Ju‥lich)からは、高速の磁気応答(1ps)の紹介や、クラスターの分解過程などの話があり、電子励起状態、格子励起、スピン系間の相互作用の速さなどが、FELを用いた研究対象として、今後注目されるのではないかという話があった。
[13]F.Schotte(ESRF)は、時間分解ラウエ回折法を紹介した。生物試料の他にも、I2分子の光解離過程の観測例を示した。
[15]飛び入りで、B.Adams(DESY)がfsレーザーを使った超高速X線検出器のアイデアを披露した。
 冒頭でも記したように当会議での発表内容は多岐にわたりかつ多彩であったが、まだアイデアにとどまっているものが多い。とは言え、EU諸国、USAでレーザー業界と放射光業界が結びつこうとしている大きな組織力を感じた上、一部では実験結果が出始めているのも事実であり、本格的なレーザー・加速器系光源の組み合わせ研究の幕開けを予感させられた。

となるであろう。②は、超短パルスX線発生法に関するものが中心であった。③のレーザー+放射光利用実験には、高時間分解能[4,5,7,13,15][4]J.Feldhaus(DESY)は、The pump-probe system at the TTF-FELと題して、発振波長6.4nmを目指すFELと、これに精度psのレーザー同期を行う計画を紹介した。
[5]J.Larsson(Max-lab/Lund)は、ESRFでの超高速ストリークカメラシステムおよびレーザー同期システムを紹介し、これを用いたGaAsにおけるコヒーレントフォノンの観測データを披露した。
[7]R.W.Schoenlein(Berkeley)は、Scientific application for fs x-ray pulsesと題して高速の固相/液相間相転移や、時間分解X線回折、超高速の化学反応について紹介した。特に、100fsオーダーの原子振動の周期程度での相転移や、電子温度が格子温度よりも十分に高い状態からの緩和過程の研究等、テーマを挙げた。これらの研究に必要な超短パルスX線源に関して、加速電子ビームにTW級のレーザーを垂直方向から打ち込んだ際の90°Thomson 散乱による発生法を紹介した。この超短パルスX線により、レーザー照射後約10psに生じた歪みによる回折変化の観測例を示した。また、ナノ結晶の固相間相転移について高時間分解EXAFSが適用される可能性を示した。
[13]F.Schotte(ESRF)は、時間分解ラウエ回折法を紹介した。生物試料の他にも、I2分子の光解離過程の観測例を示した。
[15]飛び入りで、B.Adams(DESY)がfsレーザーを使った超高速X線検出器のアイデアを披露した。
 冒頭でも記したように当会議での発表内容は多岐にわたりかつ多彩であったが、まだアイデアにとどまっているものが多い。とは言え、EU諸国、USAでレーザー業界と放射光業界が結びつこうとしている大きな組織力を感じた上、一部では実験結果が出始めているのも事実であり、本格的なレーザー・加速器系光源の組み合わせ研究の幕開けを予感させられた。
、二光子ダイナミクス[3,6,9][3]B.Winter(MBI)から、レーザー技術−同期技術−ビームライン技術(50〜150eV)を組み合わせたMBI/BESSYⅡのビームラインが紹介された。ポンプ・プローブ実験として、レーザー励起された準位からのSRプローブの他、レーザー励起により過渡的に変化した内殻エネルギー準位をプローブするもの、二色同時励起による自動イオン化過程等の研究計画を紹介した。また、高分子半導体における光ダイナミクスの研究例として、レーザー照射時で発光波長のシフトが観測されたことを報告した。
[6]M.Meyer(Lure)からは、レーザーとSRの組み合わせ実験の手法について、時間的重なりを考慮すると、CWレーザーを用いるよりも同期させたパルスレーザーを用いる方が効率のよいことを唱えた。実験例として、二光子遷移による励起状態のXeにおける共鳴光イオン化過程の研究を紹介。二種類の光源の組み合わせにより選択則の異なる準位の情報を得たり、中間状態依存性を見ることができることを示した。また、CWレーザーについて、その高いエネルギー分解能を生かしたSRとの組み合わせの可能性も指摘した。
[9]M.Kamada(UVSOR)からは、VUVの放射光とレーザーの数々の組み合わせ実験を紹介した。特に、レーザーによる光起電力効果を介して起こるバンドの歪みを放射光でプローブした実験や、CaF2における2光子吸収過程を紹介した。より強い放射光があれば、放射光励起-レーザープローブなど、より多くの組み合わせ実験が可能であることを指摘した。
、高スペクトル分解能[6][6]M.Meyer(Lure)からは、レーザーとSRの組み合わせ実験の手法について、時間的重なりを考慮すると、CWレーザーを用いるよりも同期させたパルスレーザーを用いる方が効率のよいことを唱えた。実験例として、二光子遷移による励起状態のXeにおける共鳴光イオン化過程の研究を紹介。二種類の光源の組み合わせにより選択則の異なる準位の情報を得たり、中間状態依存性を見ることができることを示した。また、CWレーザーについて、その高いエネルギー分解能を生かしたSRとの組み合わせの可能性も指摘した。、新しいターゲット(試料、系)[11,12][11]B.Sonntag(DESY)からは、Crに円偏光のレーザーを照射することにより強いスピン配向を起こさせ、それを直線偏光のSRでプローブする実験の紹介、磁気光学トラップされたイオンをターゲットとする実験の提案などがあった。
[12]W.Eberhardt(KFA,Ju‥lich)からは、高速の磁気応答(1ps)の紹介や、クラスターの分解過程などの話があり、電子励起状態、格子励起、スピン系間の相互作用の速さなどが、FELを用いた研究対象として、今後注目されるのではないかという話があった。
などに関するものがあり、実に盛りだくさんであった。

 当サテライト会議については、Abstract集が存在しない上、プログラムの変更([2]F.Krausz(TU Wien)→ W.Sandner(MBI))もあったので、以下に発表者ごとの簡単な報告をする。なお、セッション名は、[2]がTopical Review、[3〜11]がCombined Laser & Synchrotron Facilities、[12〜15]がFuture Directionsである。


[1]I.V.Hertel(MBI)(当会議のホスト)は、レーザーと放射光の間で競合している典型例として、現在レーザーで開発のターゲットとなっている短波長領域(10〜100eV)を挙げ、それぞれピーク輝度、平均輝度で優れていることを指摘した。
[2] W.Sandner(MBI)よりSurvey on laser based VUV and x-ray sourcesと題して、普及しているレーザーの現状、および求められるレーザーの性能と開発状況についての講演があった。特に、近い将来に求められているレーザーとしてリソグラフ用の波長10nm以下のコンパクトなレーザーを挙げた。レーザー技術で短波長を得る方法として、高次高調波を得る周波数変換法と、レーザー誘起プラズマを媒質とするX線発生法を紹介した。
[3]B.Winter(MBI)から、レーザー技術−同期技術−ビームライン技術(50〜150eV)を組み合わせたMBI/BESSYⅡのビームラインが紹介された。ポンプ・プローブ実験として、レーザー励起された準位からのSRプローブの他、レーザー励起により過渡的に変化した内殻エネルギー準位をプローブするもの、二色同時励起による自動イオン化過程等の研究計画を紹介した。また、高分子半導体における光ダイナミクスの研究例として、レーザー照射時で発光波長のシフトが観測されたことを報告した。
[4]J.Feldhaus(DESY)は、The pump-probe system at the TTF-FELと題して、発振波長6.4nmを目指すFELと、これに精度psのレーザー同期を行う計画を紹介した。
[5]J.Larsson(Max-lab/Lund)は、ESRFでの超高速ストリークカメラシステムおよびレーザー同期システムを紹介し、これを用いたGaAsにおけるコヒーレントフォノンの観測データを披露した。
[6]M.Meyer(Lure)からは、レーザーとSRの組み合わせ実験の手法について、時間的重なりを考慮すると、CWレーザーを用いるよりも同期させたパルスレーザーを用いる方が効率のよいことを唱えた。実験例として、二光子遷移による励起状態のXeにおける共鳴光イオン化過程の研究を紹介。二種類の光源の組み合わせにより選択則の異なる準位の情報を得たり、中間状態依存性を見ることができることを示した。また、CWレーザーについて、その高いエネルギー分解能を生かしたSRとの組み合わせの可能性も指摘した。
[7]R.W.Schoenlein(Berkeley)は、Scientific application for fs x-ray pulsesと題して高速の固相/液相間相転移や、時間分解X線回折、超高速の化学反応について紹介した。特に、100fsオーダーの原子振動の周期程度での相転移や、電子温度が格子温度よりも十分に高い状態からの緩和過程の研究等、テーマを挙げた。これらの研究に必要な超短パルスX線源に関して、加速電子ビームにTW級のレーザーを垂直方向から打ち込んだ際の90°Thomson 散乱による発生法を紹介した。この超短パルスX線により、レーザー照射後約10psに生じた歪みによる回折変化の観測例を示した。また、ナノ結晶の固相間相転移について高時間分解EXAFSが適用される可能性を示した。
[8]E.D.Johnson(Brookhaven)は、レーザーを種光とした可視、赤外域FEL(プロジェクト名:VISA:Visible and Infrared SASE Amplifier)と、ピーク輝度がAPSより10桁大きいLinac系FELの計画を紹介した。将来は、直線距離3km!で、波長0.2nmを目指したいようだ。
[9]M.Kamada(UVSOR)からは、VUVの放射光とレーザーの数々の組み合わせ実験を紹介した。特に、レーザーによる光起電力効果を介して起こるバンドの歪みを放射光でプローブした実験や、CaF2における2光子吸収過程を紹介した。より強い放射光があれば、放射光励起-レーザープローブなど、より多くの組み合わせ実験が可能であることを指摘した。
[10]S.Khan(BESSY)からは、サブピコ秒X線パルスの発生法についての話があった。アンジュレータ中で電子とフェムト秒レーザーを相互作用させることによりエネルギー変調を起こさせ、その変調部分からの放射を取り出す方法は、輝度で約7桁から10桁弱い光しか取り出せないことになる。それに対し、RF軌道偏向と非対称反射光学系の組み合わせによりサブピコX線パルスを取り出す方法を示し、これが2桁程度しか弱くならない高効率の方法である点を強調した。
[11]B.Sonntag(DESY)からは、Crに円偏光のレーザーを照射することにより強いスピン配向を起こさせ、それを直線偏光のSRでプローブする実験の紹介、磁気光学トラップされたイオンをターゲットとする実験の提案などがあった。
[12]W.Eberhardt(KFA,Ju‥lich)からは、高速の磁気応答(1ps)の紹介や、クラスターの分解過程などの話があり、電子励起状態、格子励起、スピン系間の相互作用の速さなどが、FELを用いた研究対象として、今後注目されるのではないかという話があった。
[13]F.Schotte(ESRF)は、時間分解ラウエ回折法を紹介した。生物試料の他にも、I2分子の光解離過程の観測例を示した。
[14]A.Endo(FTRA,Tsukuba)からは、レーザー光と電子ビームを100fsの精度で同期、衝突させて、1.9keV,480fs, 1.8×105 photons/pulse のX線を発生させる話があった。
[15]飛び入りで、B.Adams(DESY)がfsレーザーを使った超高速X線検出器のアイデアを披露した。
 冒頭でも記したように当会議での発表内容は多岐にわたりかつ多彩であったが、まだアイデアにとどまっているものが多い。とは言え、EU諸国、USAでレーザー業界と放射光業界が結びつこうとしている大きな組織力を感じた上、一部では実験結果が出始めているのも事実であり、本格的なレーザー・加速器系光源の組み合わせ研究の幕開けを予感させられた。



田中 義人 TANAKA  Yoshihito
理化学研究所 播磨研究所 X線干渉光学研究室
〒679-5148 兵庫県佐用郡三日月町光都1-1-1
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[ - Vol.15 No.4(2010)]
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