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Volume 03, No.1 Pages 37 - 39

5. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT

第11回加速器科学研究発表会報告
Report of the 11th Symposium on Accelerator Science and Technology

宮原 義一 MIYAHARA Yoshikazu

(財)高輝度光科学研究センター放射光研究所 JASRI Synchrotron Radiation Research Institute

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 表記の研究発表会が10月21日から23日まで、SPring-8サイト近くの兵庫県立先端科学技術支援センターで開催された。最終的な参加登録者は学生院生34、大学等205、企業等62、合計301名という盛会であった。これは前回の280名を少しだが上回っている。発表内容は、会全体の進行に気を取られてじっくり見聞きできなかったが、総じて精密かつ高レベルであった。新しい試みの特別講演も好評であった。今回は特に若い研究者が大勢を占め、世代交代が急速に進行しているように思われた。発表会のプロシーディングは慣例に従い、発表会前に原稿を集めて編集し、会期中に参加者に手渡された。一言で言えば、今回の発表会は内容が充実し、成功であったと思う。発表会の裏方として大変うれしく思うとともに、発表者、参加者の方々にお礼申しあげる。
 同発表会は日本の加速器関係の定期的研究会としては最大のもので、1975年筑波で第1回が開催されてから、ほぼ2年毎に関東、関西の加速器施設のある研究所をホスト機関として行われてきた。2年前にSPring-8をホストとすることが、前回の発表会会期中に開かれた世話人会で決定された。発表会の事務局を引き受けてきた実行委員の一人として、発表会の運営面から少し振り返ってみることにする。
 同発表会の主催者は加速器同好会(会員約350名)で、組織委員会は約30名から成る世話人会であるが、旅費がかさむので、慣例として、組織委員会は召集されず、実行委員会は適宜、世話人会に進行状況を報告することになっている。実行委員会としては意志決定がスムーズにできて、やりやすかった。
 まず、2年前に原雅弘氏とともに、前回の実行責任者の鈴木康夫氏(原研)から事務と資料とノウハウを引継いだ。そして昨年9月、4名から成る実行委員会を結成した。第1回の委員会で、委員会が行うべき内容を検討し、担当をサーキュラー・プログラム係(原)、登録・プロシーディング係(柳田)、会場・書記係(深見)、総括・渉外係(宮原)とした。これに後で会計・事務係(松井)が加わった。また、一次案として、開催日は平成9年10月21日(火)から23日(木)、会場は支援センターとした。最終的には案内用ポスターを作成した昨年12月に確定した。SPring-8の共同利用が開始される1年先のことは不確かなことが多く、日程について具体的に考えなかったが、後になって開催曜日を水木金としなかったことが悔まれた。しかし今年6月末の第2回サーキュラーを発行する直前になって、マシン運転スケジュールの都合で月曜日しか施設見学ができないということになって、結果オーライの形になった。また、会場は姫路のほうがホテル、交通、食事の面で便利と思われたが、都合により、SPring-8の研究交流施設(宿泊できる)の積極的な利用を念頭において、支援センターで行うことになった。実行委員会としてはこれらについてできるだけ便宜を計るように努めた。
 3月末に第1回サーキュラー(発表会開催案内)を加速器同好会会員と前回の加速器科学研究発表会参加者全員に配布した。6月末に第2回サーキュラー(参加発表要領、原稿作成要領、スケジュール、ホテル案内等)を配布した。参加および発表申し込み締め切りは8月8日とした。しかし、8日になっても参加申し込みが100件に満たない状態だったので、どうなることか、何が悪いのかと本当に心配した。お盆休み後にふたを開けてみたら、さらに100件を越す申し込みがあって、ひとまず安心した。8月末で250名、発表会直前で280名の参加申し込みになった。原稿締切は8月末としたが、申し込み通り集まらなかったので9月20日頃まで待った。9月末に第3回サーキュラー(プログラム案内)を参加申込者に配布した。10月半ばに立派なプロシーディングが完成した。同発表会のプロシーディングとしては今回始めて著者索引を載せることができた。この間、招待講演と特別講演の策定と折衝、企業展示の方法と募集、発表会会場の設営準備、連絡バスの検討、懇親会と軽飲食の検討、施設見学の検討等を平行して行った。今回、発表会の案内と参加発表申し込みの受け付けにネットワークも用いたが、非常に多数の利用者がいて、有効であった。また、参加登録者名簿をパソコンにデータベース化しておいたので、受け付け時その他で迅速に該当者を検索できた。サーキュラー、データベース、プロシーディング、プログラム表の作成にあたっては、原、柳田両氏が相当な努力をした。
 次回の加速器科学研究発表会のホスト機関については、実行委員会を軸にして加速器施設のある数カ所の研究所および大学の世話人と相談し、次回は理研との内諾を得た。ただし、今回の発表会の直前に、東大の核科学研究センターと共同で行いたいという申し入れが理研から出され、世話人会で了承され決定された。
 今回の発表件数は、招待講演2、特別講演9、一般講演44、ポスター発表134、合計189件であった。これは前回の160件を上回っている。招待講演は慣例に従って、加速器に関係した周辺の面白そうなテーマとして、“反粒子の科学”(山崎敏光氏)と“放射光で蛋白質の姿を見る”(勝部幸輝氏)をお願いした。特別講演は同発表会としては新しい試みと思うが、近年、加速器研究が先鋭化精密化し、ちょっと自分の持ち場を離れると分かり難くなっているようなので、加速器の色々な分野の平易なレビューがあれば、研究会が面白くなるのではないかと考えた。そこで加速器施設に関するもの4件{リニアコライダー、(ビー、タウチャーム、ファイ)ファクトリー、重イオン加速器、放射光リング}、加速器技術に関するもの5件(高周波空洞、ビーム診断、自由電子レーザー、挿入光源、プラズマ加速)をお願いした。この他にも色々考えられたが、あまり数が多いと他の講演を圧迫するので、このくらいが丁度よかったのではないかと思う。しかしこれが不人気だと会場の大ホール(340名収容)で空席が目立つことになるので、多少の賭であったが、幸いに200名程度の入りであった。一方これと平行して特定の分野の一般講演をセミナー室(80名収容)で行ったが、30~80名の入りであった。一般講演については、口頭発表の希望数が一般講演の予定のコマ数にほぼ一致したので全て希望通りとし、2つほどポスターを口頭にまわした。分科別では下記の通りである。今回新たにシンクロトロン放射(自由電子レーザー、挿入光源を含む)という分科を設けた。 
 

 
 
 一般講演のセッションは分科内容と口頭発表数を考慮してまとまるように配慮した。一部のセッションで内容がまちまちになってしまったのはやむを得ない。ポスター会場は程良いスペースにすることができた。
 企業展示には11社が出品した。企業展示の案内は日本物理学会誌、応用物理学会誌、放射光学会誌に宣伝の載っている全ての会社に郵送したが、締め切りの6月末までに展示申し込みがきたのは数社で、展示そのものが危ぶまれる状況であった。ただし、その後、上記会誌掲載以外の会社にも案内状を送ったりして、11社まで増加することができた。展示会場としては人目につきやすいロビーも考えたが、音が反響して聞きずらいので、ポスター会場と同じ展示室にした。
 10月20日の施設見学には、会期前日で、かつ交通不便にもかかわらず、予想以上の180名もの参加申し込みがあり、新しい加速器施設についての関心の高さが伺われた。見学に際しては、ややめんどうと思われたが、安全管理室の指示に従い、名前のチェックと、ヘルメット、オーバーシューズの着用をお願いした。施設案内ではSPring-8の多数の職員に参加者の誘導と説明をしてもらった。案内についての事前の細かい打ち合わせや、200近くのヘルメットの確保など直前まで大わらわであった。
 連絡バスをどのように手配するかは最後まで悩んだ問題で、確定したのは前の週の終わり頃であった。参加申し込み者は8月末で250名であったが、その後少しずつ増えて、280名になった。飛び入りを20名程度見込んで、参加者は合計300名と予想した。これは実際と一致するが、申込者のうち、30名くらいは名礼が残っていたので、実際の飛び入りは50名くらいあったようである。参加者の宿泊地は支援センター30、研究交流施設70(これは研究所からの割り当て。もっと多数を強く要請したが受け入れられなかった。)、姫路相生190、新宮10と予想した。そこで姫路発相生経由のバス4台とした。新宮には大型タクシー1台を手配した。マイカーで来る人数が30程度か50程度か読み切れなくてバス4台としたが、実際はバス3台で間にあったようである。バス1台につき1日、10万円余りかかるので、契約を途中変更できるよう担当者にバス会社と交渉してもらったが拒絶された。
 昼食場所も問題であった。利用者は支援センターのレストラン、姫工大食堂、近くのレストランにそれぞれ70、SPring-8食堂に90と予想した。SPring-8食堂へはバスで輸送した。実際はどうだったのか分からないが、幸い場所のことで苦情は聞かれなかった。本当は黙々と我慢していただいたということかもしれない。
 研究会の参加費用等は、研究所や会社から補助が出る場合はまだいいとしても、自己負担の人にとってはかなりの出費であるから、会費値上げは実行担当者として最もやりたくないことである。しかし今回は連絡バスと大型タクシーの費用(合わせて187万円、ただし、6月予想では参加者250として120~140万円)が大きくのしかかってきて、大幅な赤字は避けられないと予想された。実行委員会で慎重に検討した結果、SPring-8になにがしかの支援をお願いするとともに、多少の参加費と懇親会費の値上げをして(ただし、学生、院生については前回の世話人会の申し送り事項により参加費を値下げした)、最終的には前回からの引継金で賄うことにした。ありがたいことに、企業展示各社の協賛によりかなりの穴埋めができた。
 今回の発表会を実行するにあたっては実に多くの人々のお世話になった。前記実行委員の他に、会場設営進行係(8)、受け付け係(8)、懇親会係(4)、軽飲食係(4)、連絡バス係(6)、施設案内係(45)として直接お世話になった人は合計80名になる。このほか間接的にお世話になった人も多い。快く協力を惜しまれなかったこれらの人々に深く感謝し、この場をかりてお礼申しあげる。

 



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[ - Vol.15 No.4(2010)]
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