SPring-8 / SACLA Research Report

ISSN 2187-6886

Volume5 No.1

SPring-8 Section B: Industrial Application Report

X線イメージングによる石炭/コークスの3次元内部構造解析
Three-dimensional Internal Structure Analysis of the Coal/Coke by X-rays Imaging

DOI:10.18957/rr.5.1.134
2015B1885 / BL19B2

西原 克浩a, 畑中 翔輝a, 村尾 玲子a, 林崎 秀幸a, 佐藤 眞直b

Katsuhiro Nishiharaa, Shohki Hatanakaa, Reiko Muraoa, Hideyuki Hayashizakia, Masugu Satob


a新日鐵住金株式会社, b(公財)高輝度光科学研究センター

aNippon Steel & Sumitomo Metal Corporation, bJASRI


Abstract

 汎用電気炉を用いて作製した強度の異なるコークスについて、単色X線CT測定を行った結果、白色X線CT測定で確認された気孔、鉱物や灰分などに加えて、密度差が小さく、骨格となる炭素組織構造の分布に起因する吸収コントラストが確認された。乾留処理時に軟化溶融しにくい石炭組織や脈石成分と共に、コークスの強度による明瞭な違いが観察された。


キーワード: 石炭、コークス、X線イメージング、X線CT、非破壊/3次元内部構造解析



背景と研究目的:

 近年、鉄鉱石と石炭を原料として鉄鋼材料を製造する高炉メーカーにおいては、海外、特に中国や韓国の鉄鋼メーカーによる製造能力が増強されたことにより、発展途上国での需要が高い汎用材(低級鋼)だけでなく、自動車などに使用される高付加価値材(高級鋼)においても、国際的な品質および価格競争力の向上が重要な課題となっている。また、鉄鋼製品の製造に適した鉄鉱石や石炭は、海外メーカーによる旺盛なスポット購買や資源枯渇に伴う慢性的な供給不足で価格が高騰しており、安価な原料(鉄鉱石や石炭など)を使用した高品質鉄鋼製品の製造技術を確立することが急務となっている。

 本研究の対象であるコークスは、多くの気孔を有する多孔質材料であり、高炉内部においては、鉄鉱石(焼結鉱)の還元材および熱源として機能すると共に、鉄鉱石とコークスが交互に積層されても、通気性や通液性を維持するためのスペーサーとしての役割も担っている。そのため、高品位石炭(粘結炭)を多く使用して、高強度/高品質コークスを製造してきたが、粘結炭は価格が高く、資源量も少ない。そのため、品質を低下させず、可能な限り価格が安く、資源量も豊富な低品位石炭(非微粘結炭)の配合比を上げた高強度コークスを製造するプロセス開発が求められている。

 これまでにも白色X線(X線管)を用いたX線CT測定によって、コークス製造に用いる石炭の微細組織とその含有率、ならびに粒径分布の測定が行われてきた[1, 2]。本課題においては、乾留処理後の強度が異なるコークスに対して、単色X線(放射光)を用いたX線CT測定を行い、吸収コントラスト像(密度差)からコークスの3次元内部構造(気孔、灰分、不純物元素や組織など)を明確化すると共に、密度差が小さく、白色X線CT測定だけでは判別できない骨格となる炭素組織の密度分布がコークス強度に及ぼす影響について調査することが目的である。

 今回は、製鉄所で稼働している実機コークス炉の熱処理条件を模擬して乾留処理したコークスに対して、単色X線CTを用いた非破壊/3次元内部構造解析を行った。そして、白色X線CT測定で判別できる気孔や灰分の3次元分布だけでなく、原料炭の性質によって強度が異なるコークスに関して、骨格構造を形成する炭素組織の3次元密度分布との関連性について調査した。


実験

 X線CT測定に用いたコークスは、原料炭の乾留処理によって作製した。原料炭は、粉砕して粒径を2 mm以下に選別した粘結炭と非微粘炭を用いた。粘結炭100%を原料炭とする乾留処理は大型試験設備で行い、配合炭[粘結炭50%+非微粘炭50%]および非微粘炭100%を原料炭とする乾留処理は汎用小型電気炉で行った。

 大型試験設備は、多量の原料炭に対する乾留処理によって、300 mm×300 mm×300 mm以上のコークスを作製できる試験炉である。これに対して、汎用小型電気炉は、炉内寸法が120 mm×120 mm×120 mmであり、窒素やアルゴンなどの非酸化ガスを流通させながら熱処理することにより、少量の原料炭に対する乾留処理ができる。大型試験設備と汎用小型電気炉では、乾留処理に要する電力量が異なり、炉内における温度分布や昇温履歴が異なるため、原料炭の処理量によって、昇温時間や保持時間などの熱処理条件が異なる。今回、大型試験設備においては、加熱炉内の煉瓦で区切られた炭化室内に石炭を装入し、煉瓦外側より加熱して石炭層の中心が1000°Cに到達後さらに30分経過するまで約20時間加熱した。これに対して、汎用小型電気炉では、ステンレス製密閉容器に原料炭を充填して炉内に入れ、0.1 MPa、流量2 L/分で窒素ガスを流通させた炉内雰囲気において、室温から1000°Cまで約3時間かけて昇温後、2時間保持して、その後、室温まで炉内放冷した。この時、原料炭における粘結炭と非微粘炭の配合比によって、乾留処理後のコークス強度は異なり、今回の実験におけるコークスの強度は、粘結炭100%、配合炭[粘結炭50%+非微粘炭50%]ならびに非微粘炭100%の順に相対的に高かった。そして、大型試験設備および汎用小型電気炉(乾留用密閉容器)から取り出し、相対的に強度が異なるコークスから、幅6 mm、長さ6 mmならびに高さ10 〜15 mmの四角柱状の試験片をそれぞれ切り出して、X線CT測定用試料とした。

 X線CT測定に用いた入射光のX線エネルギーは20 keV、ビーム形状は3 mm×10 mmとした。検出器にはCCDカメラを用いて、カメラ長は30 mmに設定した。まず、試料台を高さ方向に移動させることによって、試験片の上部、中央部ならびに下部にX線照射位置を定めた。次に、試験片を0°から180°まで連続回転させながら、283枚の2次元投影像を露光時間250 msecでストロボ撮影した。そして、連続撮影した283枚の2次元投影像における上下方向の中心部、および上下方向に4分割した位置におけるコークス断面図を3次元再構成した(図1) 。さらに、各試験片について、3次元再構成したコークス断面図をそれぞれ画像解析して、気孔および灰分の数とサイズを統計的に数値化した。



図1.BL19B2におけるX線CT測定および2次元投影像の3次元再構成位置


結果および考察:

 原料炭に粘結炭100%、配合炭[粘結炭50%+非微粘炭50%]ならびに非微粘炭100%を用いて作製したコークス断面図を図2〜図4にそれぞれ示す。また、各試験片について3次元再構成したコークス断面図の画像解析によって数値化した気孔および灰分の数とサイズに及ぼす原料炭配合比の影響を図5に示す。

 まず、粘結炭のみを乾留処理したコークスに対して3次元再構成された断面図は、黒色、白色ならびに中間色(灰色)で示される3種類の領域に分類され、試験片の上部(図2a)、中央部(図2b)ならびに下部(図2c)のいずれにおいても同じような断層構造を示すことが確認された。これらの断面図において、黒色は気孔、白色はアルミナやシリカなどの灰分、中間色(灰色)はコークスの主成分である炭素組織に由来すると考えられる。また、中間色(灰色)領域においては、炭素組織が低密度であることを示す濃い灰色領域と高密度であることを示す淡い灰色領域に分類され、密度が異なる2種類の炭素組織の存在を反映する濃淡コントラストが得られた。つまり、粘結炭を乾留処理したコークスは、密度の異なる2種類の炭素組織で骨格構造を形成していると推定される(図2)。



図2.3次元再構成したコークス断面図[粘結炭100%]



図3.3次元再構成したコークス断面図[粘結炭50%+非微粘炭50%]



図4.3次元再構成したコークス断面図[非微粘炭100%]


 次に、粘結炭と非微粘炭の配合炭を乾留処理したコークスおよび非微粘炭のみを乾留処理したコークスは、粘結炭のみを乾留したコークス同様、試験片の上部、中央部ならびに下部のいずれにおいても、同じような断層構造を示すことが確認された(図3-4)。しかしながら、粘結炭と非微粘炭の配合炭を用いた場合は、低密度の炭素組織を反映する濃い灰色を示す領域が粘結炭の場合と比較して相対的に小さくなり(図3)、非微粘炭のみの場合ではほとんど確認されなかった(図4)。

 また、黒色領域で示される気孔の分布については、非微粘炭の含有率が高くなるほど、気孔サイズのバラツキが大きくなり、その数が多くなる傾向を示した(図5a)。さらに、白色領域で示されるアルミナやシリカなどの灰分についても、非微粘炭の含有率が高くなるほど、灰分のサイズが小さくなると共に、その数も多くなる傾向を示すことが確認された(図5b)。



図5.気孔/灰分の数/サイズに及ぼす原料炭配合比の影響


 今回の結果から、従来の白色X線CT測定で議論されたコークス中の気孔のサイズや数の分布が強度や通気性などに及ぼす影響に加えて、単色X線CT測定によって得られる炭素組織の密度差分布がコークスの骨格構造や強度などに及ぼす影響についても議論できる可能性を有することが確認された。


今後の課題:

 今回は、密度差の小さいコークスの骨格構造に対して、明瞭な吸収コントラストを得るための測定条件の最適化に予想以上に時間を要したため、配合比を変えた3種類の原料炭を1000°Cで熱処理したコークスのみに測定試料数を減らさざるを得なかった。

 次回は、コークスの主成分である炭素構造を反映する灰色領域における濃淡コントラストについて、XRDやC-K端XANESなど他の評価結果とも比較して、コークスの強度に及ぼす様々な炭素組織の影響についてさらに議論を深めたい。また、乾留処理過程(室温〜350°C〜450°C〜1000°C)における昇温時間や保持温度などの熱処理条件が、コークスの骨格構造となる炭素組織の密度差分布に及ぼす影響についても調査を進めたい。


参考文献:

[1] M. Van Geet, et al, Int. J. Coal Geology, 46, 11 (2001).

[2] 藤本英和 他、特開2005-338011(日本国特許庁公開特許公報).



ⒸJASRI


(Received: May 19, 2016; Early edition: August 25, 2016; Accepted: December 12, 2016; Published: January 31, 2017)