SPring-8 / SACLA Research Report

ISSN 2187-6886

Volume1 No.1

Published 28-Feb 2013 / SPring-8 Document D2012-005

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発行にあたって

野田 健治

Kenji Noda

(公財)高輝度光科学研究センター

Japan Synchrotron Radiation Research Institute (JASRI)

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Section B : Industrial Application Report

2011B1754 / BL40B2
界面活性剤処理によるヒト皮膚角層の構造変化の小角・広角X線散乱法を用いた解析
Study on the Structural Change of Human Stratum Corneum Induced by the Treatment of Surfactant Solutions Using Small- and Wide-Angle X-ray Scattering
DOI:10.18957/rr.1.1.1

山田 真爾a, 久米 卓志a, 小野尾 信a, 内藤 崇a, 太田 昇b, 八田 一郎b

Shinji Yamadaa, Takuji Kumea, Makoto Onooa, Takashi Naitoa, Noboru Ohtab, Ichiro Hattab

a花王株式会社, b(公財)高輝度光科学研究センター

aKao Corporation, bJASRI

Abstract

 超純水およびドデシル硫酸ナトリウム水溶液の処理によるヒト皮膚角層の構造変化を、小角・広角X線散乱法により解析した。従来報告されている細胞間脂質層のアルキル鎖充填構造、ケラチン線維のプロトフィブリル構造のピークに加えて、我々は0.5 nm-1 < q < 3 nm-1 の領域に複数のブロードなピークを初めて検出した。この領域のピークは溶液処理により位置・強度が変化したが、これはケラチンのミクロフィブリル構造の変化を反映している可能性がある。


キーワード: human stratum corneum, surfactant, X-ray scattering, soft keratin, intercellular lipids

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2011B1772 / BL19B2
微結晶核延伸法により高強度化したバイオベースポリマー繊維の超小角X線散乱測定による高次構造解析
High Ordered Structural Analysis of High-Strength Bio-Based Fibers Processed by a New Drawing Method with Small Crystal Nuclei Using Ultra-Small Angle X-ray Scattering
DOI:10.18957/rr.1.1.5

本郷 千鶴a, 田中 稔久b, 岩田 忠久a

Chizuru Hongoa, Toshihisa Tanakab, Tadahisa Iwataa

a東京大学大学院農学生命科学研究科, b信州大学繊維学部

aGraduate School of Agricultural and Life Sciences,The University of Tokyo,bFaculty of Textile Science and Technology, Shinshu University

Abstract

 生分解性を有する微生物産生ポリエステルの1つであるポリ[(R)-3-ヒドロキシブチレート-co-4-ヒドロキシブチレート]に新規延伸法の微結晶核延伸法を適用することで、繊維内部に無数のマイクロサイズのポアが存在する特殊な繊維を作製できた。微結晶核形成時間の異なる未延伸および延伸繊維の超小角X線散乱測定を行った結果、未延伸繊維では等方的な散乱が得られ、微結晶核形成時間の増加に伴って散乱強度が増加する傾向が確認できた。一方、延伸繊維では赤道線上にストリーク状の散乱が観察され、微結晶核形成時間の増加に伴ってストリークの幅と散乱強度が増加する傾向が確認できた。このストリーク散乱は繊維軸に平行な細長いポアに起因するものと考察できた。微結晶核形成時間を制御して非晶質繊維中の微小なポアの量を変化させた後に延伸を行うことによって、ポア形状を制御できることが見出された。


キーワード:バイオベースポリマー、微生物産生ポリエステル、繊維、ポーラス、超小角X線散乱

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2011B1775 / BL19B2
すれすれ入射X線回折による有機半導体薄膜結晶の構造解析
Structure Analysis of Organic Semiconductor Thin Films by Grazing Incidence X-ray Diffraction
DOI:10.18957/rr.1.1.9

越谷 直樹, 細井 慎, 工藤 喜弘

Naoki Koshitani, Shizuka Hosoi, Yoshihiro Kudo

ソニー株式会社

Sony Corporation

Abstract

 新規有機半導体peri-Xanthenoxanthene(PXX)誘導体の薄膜結晶について、すれすれ入射X線回折法により、回折強度マップの測定を行った。その結果をもとにして求められた格子定数から、同薄膜結晶は、原料粉末と結晶構造が異なることが分かった。今後PXX誘導体薄膜の結晶性、配向性などを詳細に評価し、移動度との相関について議論する。


キーワード:すれすれ入射X線回折、有機半導体

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2011B1785 / BL19B2
X線回折による圧電体(1-x)(Na0.45K0.55)NbO3 + xCaTiO3の結晶構造解析
Crystal Structure Analysis of Piezoelectric (1-x)(Na0.45K0.55)NbO3 + xCaTiO3 by Using X-ray Diffraction
DOI:10.18957/rr.1.1.12

岩堀 禎浩, 野口 博司

Yoshihiro Iwahori, Hiroshi Noguchi

株式会社 村田製作所

Murata Manufacturing. Co., Ltd.

Abstract

 (Na,K)NbO3(NKN)は、CaTiO3(CT)と化合物を作ることで圧電特性を制御する。我々はCTの添加濃度に対するNKNの結晶構造変化を解析した。測定はBL19B2で行い、粉末X線回折パターンから格子定数の変化を評価した。この結果、NKNに対するCTの添加濃度が3 mol%から9 mol%の間は、斜方晶と正方晶の混晶系になっていると推定した。この混晶系は、Pb(Zr,Ti)O3のモルフォトロピック相境界(Morphotropic Phase Boundary : MPB) 組成域と似ており、CTの固溶濃度を最適化すれば圧電特性を最大にできる可能性を見出した。


キーワード:圧電材料、モルフォトロピック相境界(MPB)、粉末X線回折,結晶構造解析

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2011B1860 / BL19B2
有機半導体の薄膜中における配向状態解析
Analysis of Molecular Orientation in Organic Semiconductor Thin Films
DOI:10.18957/rr.1.1.17

尾坂 格, 瀧宮 和男

Itaru Osaka, Kazuo Takimiya

広島大学大学院工学研究院

Graduate School of Engineering, Hiroshima University

Abstract

 本研究では、新規なナフトビスチアジアゾール(NTz)を有する半導体ポリマー(PNTz4T)の2次元斜入射X線回折測定を行い、有機トランジスタ特性や有機薄膜太陽電池特性との相関関係を解析した。PNTz4Tは、比較として用いたベンゾチアジアゾール(BTz)を有するポリマー(PBTz4T)に比べて結晶性が高いことが分かった。また、PNTz4Tは、フラーレン誘導体を混合することで、配向性がedge-onからface-onへと劇的に変化することが分かった。以上のような薄膜構造を形成することで、PNTz4Tが非常に高いデバイス特性を示す要因であることが明らかとなった。


キーワード:有機半導体、半導体ポリマー、薄膜、微小角入射X線回折、2次元検出

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2011B1942 / BL19B2
水熱条件下でのトバモライト生成過程のその場X線回折(12)

In-situ X-ray Diffraction Analysis on Formation Mechanism of Tobermorite under Hydrothermal Condition

DOI:10.18957/rr.1.1.20

松野 信也1, 東口 光晴1, 石川 哲吏1, 松井 久仁雄2

Shinya Matsuno1, Mitsuharu Higashiguchi1, Tetsuji Ishikawa1, Kunio Matsui2

1旭化成㈱, 2旭化成建材㈱

1ASAHI KASEI. CO. LTD., 2ASAHI KASEI CONSTRUCTION MATERIALS CO.

Abstract

 軽量気泡コンクリート(ALC)の主成分であるトバモライト(tobermorite 化学組成:5CaO・6SiO2・5H2O)の量と質は、その性能と密接な関係にあり、その反応過程を制御したALCの改良研究が、日本および欧州で活発になされている。そのような中で今回は、我々が2009年および2010年の検討で得た知見(Alの添加効果など)の現場プロセスへの応用を念頭にAlを含有するフライアッシュ(FA、火力発電所から排出される石炭灰)の再利用検討を行った。その結果、主成分が非晶質であるFAの減少を明確に検出できた。また、トバモライト生成量は原料中の石英(Quartz)量に相関しており、それがトバモライト生成に寄与していることが推定された。


キーワード:水熱反応、トバモライト、カルシウムシリケイト、フライアッシュ、軽量気泡コンクリート、in-situ XRD

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2011B1951 / BL19B2
超小角X線散乱によるインスリンアミロイド線維の構造解析
Structural Analysis of Insulin Amyloid Fibrils as Revealed by Ultra Small Angle X-ray Scattering
DOI:10.18957/rr.1.1.24

茶谷 絵理a, 井上 倫太郎b, 竹中 幹人c, 西田 幸次b, 金谷 利治b

Eri Chatania, Rintaro Inoueb, Mikihito Takenakac, Koji Nishidab, Toshiji Kanayab

a神戸大学大学院理学研究科, b京都大学化学研究所,c京都大学大学院工学研究科

aGrad. Sch. of Sci., Kobe Univ., bInst. for Chem. Res., Kyoto Univ., cGrad. Sch. of Eng., Kyoto Univ.

Abstract

 アミロイド線維は、タンパク質のミスフォールディングにより形成される超分子重合体であるが、様々な疾病に関与するだけではなく、タンパク質凝集の一形態としてタンパク質医薬品の安定性や薬効などにも深く関与する。本研究では、糖尿病のタンパク質製剤として有名なインスリンが形成するアミロイド線維構造を明らかにするため、超小角X線散乱を用いて構造解析を行った。その結果、サブμmオーダーの線維構造の観測に成功し、塩濃度によりこれらの構造が大きく影響を受けることが明らかとなった。


キーワード:タンパク質、アミロイド線維、凝集、階層構造、超小角X線散乱

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2011B1955 / BL19B2
高強度鋼の転動疲労下における内部き裂形態の観察
Observation of Subsurface Crack under Rolling Contact Fatigue in High-strength Steels
DOI:10.18957/rr.1.1.27

牧野 泰三a, 根石 豊a, 中井 善一b, 塩澤 大輝b

Taizo Makinoa, Yutaka Neishia, Yoshikazu Nakaib, Daiki Shiozawab

a 新日鐵住金(株) 技術開発本部, b 神戸大学大学院工学研究科

aNippon Steel & Sumitomo Metal Corporation, bKobe University

Abstract

 転動疲労寿命の向上には、高清浄度化による介在物寸法の低減や基地組織の高強度化など各種因子が挙げられているが、その影響を直接的な観察に基づいて論じたものはほとんどない。そこで本研究ではSPring-8の放射光を用いたCTイメージングによって転動疲労下における内部介在物からのき裂発生・進展挙動を観察することを目的とする。これまでの実験では介在物を模擬した人工欠陥からの転動疲労き裂の発生・進展挙動の評価を行ってきた[1-3]。本実験では実際の介在物から発生した内部の疲労き裂を観察し、人工介在物において観察されたき裂進展挙動と比較することを目的とした。中途止めした転動疲労試験片から試験片表面において検出された損傷箇所を含む試料を切り出し、CTイメージング観察を行った。フレーキング損傷箇所の直下にはいずれも介在物が存在し、同じ繰返し数で最も損傷状態が進んでいる箇所では介在物が深さ方向に長く連なっている様子が観察された。また介在物から転動面に垂直なき裂が発生し、介在物同士が連結する様子が観察された。


キーワード:Rolling Fatigue, CT Imaging, High-strength Steels

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その他

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