Volume6 No.2
SPring-8 Section B: Industrial Application Report
BL14B2における透過配置遠隔XAFSシステムの開発
Development of Remote-XAFS (Transmission mode) System at BL14B2
a(公財)高輝度光科学研究センター, b住友電気工業株式会社
aJASRI, bSumitomo Electric Industries, Ltd.
- Abstract
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BL14B2において開発を進めてきた遠隔XAFSシステムの実地テストとして、遠隔地よりBL14B2に接続し、一連の透過配置測定操作を行った。安定な接続性とストレスのない操作感で実験を遂行できることが確認された。
Keywords: 遠隔実験、XAFS
背景と目的:
産業利用推進室では、制御・情報部門との協力体制のもと、BL14B2のXAFS自動化技術を基盤として、インターネット経由でXAFS測定を可能とする「遠隔XAFSシステム」の開発を進めている。産業利用分野においては、人的、資金的、時間的資源上の制約から、ユーザー実験は小数の熟達した測定担当者が行い、実験結果を真に求めている試料提供者が実験に参加できず、その意見が実験進行にフィードバックされづらいケースが少なくない。遠隔XAFSシステムが完成すれば、ネット接続が可能な環境にいる限り、どこからでも実験に参加することが可能となるため、試料提供者の意見をリアルタイムにフィードバックすることが可能となり、より商品開発に密着した高品質の実験結果の創出が期待される。
課題番号2013A1180、2013A1827、2013A1896、2013B1532、2014A1520、2014A1891を通して、本システム開発の第1目標である、透過配置環境がほぼ完成した。本申請では、共同実験者である外部ユーザの協力のもと、遠隔地からの接続試験を実施した。遠い地所からのネットワーク接続で懸念される不安定性の検証、およびユーザインターフェースの操作感の評価を行った。
方法と結果:
試験の実施内容は、以下に列挙する透過配置測定の一連の実験プロセスである。
(1) 自動光学調整プログラム「Auto-Optics」による光学調整
(2) 試料自動搬送ロボット「Sample Catcher」による試料交換
(3) カレントアンプ自動調整プログラム「amptune」によるゲイン調整
(4) Quick XAFS測定プログラム「QXAFS」による測定
(5) 「SPring-8実験データリポジトリシステム」からのデータのダウンロード
住友電気工業株式会社 大阪製作所(大阪市此花区)より、ウェブブラウザでBL14B2に接続した。これは、時限付き認証ファイルによるログインである。状況監視とトラブル対応に備え、BLスタッフが現地およびBL14B2で待機した。共同実験者より郵送された試料は、BLスタッフによりあらかじめSample Catcher上に設置された。Sample Catcherの動作状況は、実験ハッチ内に設置された3台のカメラの画像を通して、ウェブブラウザ経由で確認することが出来る。上記(1)から(5)には、それぞれ専用のウェブクライアントが用意されている。図1および図2に試験に用いたウェブクライアントのうち、Auto-OpticsおよびQXAFSの画面を示す。
図1. Auto-Optics ウェブクライアント
図2. QXAFS ウェブクライアント
試験の結果は概ね良好であり、懸念事項であった接続不安定性や、動作遅延等による操作性の低下は認められず、ストレスのない操作感で実験を進めることが出来た。また、複数ユーザの同時接続も良好であり、共同実験者間で実験の進行状況をリアルタイムに共有することができた。なお、QXAFSの性能およびXAFSデータのクオリティーに関しては、課題番号2014A1520の報告を参照されたい[1]。
一方、問題点として、データリポジトリに実験責任者の名義で保存されている測定データに、共同実験者からアクセスできないことが判明した。これは本来の仕様に反する事象であり、速やかに改善する予定である。
また、共同実験者から、要改善点として「カメラ画像のリアルタイム性の欠如」が挙げられた。現在のカメラシステムは、3台のカメラの静止画像を各々10秒周期で更新するものであり、本来、夜間や遠隔地におけるBLスタッフの監視ツールとして用いられているものである。Sample Catcherの動作状況は、遠隔地からBLの現状を正しく把握するための重要な情報である。したがって動画としての提供が望ましく、「解像度を落としてでもリアルタイム性を向上させるべきである」との指摘があった。
今後の予定:
本申請課題によって、開発の第1目標はほぼ達成された。第2目標として、上記(1)から(4)を統括制御するプログラム「Auto-XAFS」の開発を行う予定である。Auto-XAFSは、実験手順を記述したCSVファイルをアップロードするだけで、完全自動でXAFS実験を行うことが出来るプログラムである。Auto-XAFSの完成をもって、本システムはユーザ実験に供される予定である。また、指摘があったカメラのリアルタイム性の向上に関しては、ストリーミング技術の導入等を含め、検討を進める予定である。
参考文献:
[1] 高垣 昌史ら, SPring-8/SACLA利用研究成果集, 6(1) 93 (2018).
ⒸJASRI
(Received: March 16, 2018; Early edition: May 30, 2018; Accepted: July 3, 2018; Published: August 16, 2018)