SPring-8 / SACLA Research Report

ISSN 2187-6886

Volume5 No.2

SPring-8 Section B: Industrial Application Report

X線CTおよびX線回折連成によるセメントと岩の相互作用の解析
Analysis on Interaction of Cement and Rock using Integrated X-ray CT and X-ray Diffraction

DOI:10.18957/rr.5.2.250
2015B1623 / BL28B2

人見 尚a,鵜山 雅夫a

Takashi Hitomia, Masao Uyamaa

a(株)大林組

aObayashi Co., Ltd,

Abstract

 高レベル放射線廃棄物処分場(以下、処分場)は大深度地下での建設が検討され、坑道の母岩とそれに接するセメント系材料に対し、セメント系材料の影響の長期予測が求められている。本課題では、予測システム構築に資する知見の取得を目的として処分場に用いられる岩盤とセメント系材料の境界についてX線CTとX線回折を組み合わせた分析を行い、鉱物の試料サイズとXRDの検出感度に関して考察し、次いでスイスより採取した花崗岩とセメントが接する試料の観察を行い、花崗岩側にはQuartzのピークを見出したが、セメント側からの作用によるCalciteの存在を確認するには至らなかった。


キーワード: 花崗岩、セメント、非破壊CTXRD連成観察、相互作用

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背景と研究目的:

 高レベル放射線廃棄物処分場(以下、処分場)は大深度地下での建設が検討され、坑道の母岩とそれに接するセメント系材料に対し、セメント系材料の影響の長期予測が求められている。処分場は廃棄物格納容器や止水材などの人工バリアと母岩の天然バリアから構成されるが、これらの相互作用に関する知見はほとんど存在しない。Savageらや大和田らが浸漬試験による短期間の研究を実施し、花崗岩のアルカリ作用による粘土鉱物化について報告している [1, 2] 。ただし、精度は十分とは言えず、詳細な観察までは至っていない。このため安全評価に資する知見の取得を目指し、本測定の目的を、母岩とセメント系材料の境界について相互作用の有無を求めることとした。当初計画では、構成鉱物や、実試験場からの採取試料の劣化試験を実施する予定であったが,採取作業が遅れたため、第一回の測定は構成鉱物の測定による試料幅の影響を検討し、第二回の測定で採取した試料の観察を行った。


実験:

 実験1として、花崗岩やセメント硬化体を構成する鉱物の試料幅によるXRD回折プロファイル (以下、回折プロファイル) への影響を検討し、実験2としてスイスの実物大放射性廃棄物模擬処分試験場から採取したサンプルの分析を試みた。

 測定条件は以下のとおりである。X線CTでは、単結晶シリコンの(111)面の回折を用いてエネルギーを25 keVに単色化し、露光時間を150ミリ秒、投影数を1500とした。CCDカメラはC4880-41S11440-10Cで、ビームモニターはM11427-42を用いた。画素数は、上下左右とも768、画素長は水平方向が7.25 μm、鉛直方向は5.10 μmで、視野としては高さ3.92 mmで、横幅5.57 mmである。

 X線回折では,BL28B2の白色光源を用い、回折角 (2θ) は20° でエネルギー分散型XRDプロファイルを得た。回折X線のエネルギースペクトルの測定には半導体検出器GLP-16195/10-Pを用いた。図1に示す配置で、スリット幅はS1で0.050 mm、S2で0.025 mmおよびS3で0.150 mmとした。エネルギーの分解能に関しては、スリット距離と画素長の関係より検出器の取り込み角度が0.00039 [rad] で、ブラッグの回折条件の微分より、取り込み角度Δθとエネルギー分解能ΔEとの関係がΔ θ/tanθ = ΔE/E であることを用い、50 keV の場合、エネルギー分解能ΔE は0.11 keVとなる。しかし、検出器の仕様上、エネルギー分解能は 0.5 keV 程度と考えられる。入射X線は,水平方向の幅は0.15 mm、鉛直方向は0.05 mmのマイクロビームとした。測定時間は一点あたり5分として、測定期間内は供試体を回転させて多くの結晶情報を取り込むこととした。供試体の回転によって、測定領域は円盤状になり、ビームの強度分布を考慮しそのサイズを求めた結果、直径はおよそ0.2 mm程度となった。


図1 各スリットの位置


 実験1では、試料として、セメント硬化体に関連するものとして、Portlandite (水酸化カルシウム)、Calcite (炭酸カルシウム)を対象とし、花崗岩に関連するものとしてBiotite (黒雲母)、Albite (曹長石)を選定し、これらの純物質を測定対象とした。試料幅(透過厚み)の影響を調べるため、各試料を乳鉢で粉砕後、内径 0.8 mm の低吸収ガラスキャピラリ―および内径 1 mm と 3 mm で厚さ 0.3 mm のアルミニウム製の筒状の容器に封入し、回折プロファイルを測定した。

 実験2においては、X線CTによる形状観察と、実験1で得られた各鉱物のピーク情報を基にしたマイクロビームによる局所XRDとの連成によって、スイスで実施中の実物大模擬試験場より採取したセメントと花崗岩の接合面を含む領域を供試体として、これを対象とした材料間の相互作用の可能性についての検討を行った。供試体は、CTの視野に収まるよう、約3.5 mmの幅、高さは5 mm以上とした。図2に供試体の外観を示す。BL28B2においてCTによって内部の状態を確認し、関心領域を定めて局所X線回折より、鉱物組成を求める手順で測定 [3] を行った。


図2 セメント-花崗岩供試体


結果および考察:

 まず、実験1について記す。図3に Calcite の回折プロファイルを示す。図中の0.8capは前述のキャピラリ―、1 mmおよび3 mmはアルミ製容器を表す。それぞれのデータは400カウント分ずつずらして表示した。加えて、ICSDのデータベースより求めた回折プロファイルのピークを抽出し点線で付記した。0.8 mmの結果では多くのピークと一致する結果となった。


図3 Calciteの回折プロファイル


 図4~図6に、Portlandite、Albite、Biotiteの結果を示す。試料径が大きくなるにつれて、回折強度が小さくなる傾向、さらに、20 keV以下の信号が小さくなり、試料径 3 mmではほとんど信号が得られない結果となった。この結果、すべての試料径において、一致するエネルギー範囲は20 -40 keVである結果を得た。


図4 Porlanditeの回折プロファイル


図5 Albiteの回折プロファイル


図6 Biotiteの回折プロファイル


 次いで、実験2の結果について記す。まず、X線CTについて、図7にセメントと岩の境界部である、上端から390レイヤーの断面を示す。図中の左側が岩、右側がセメント部分である。セメントには細砂が散見され、厳密にはモルタルであった。セメントと花崗岩の境界は密着しており、境界に空隙は存在しないと判断された。岩側は均一ではなく結晶粒が入り組んだ状態にあることを示唆する結果を得た。図7に示す1 ~ 4の領域 (以下、Pointと表記:測定点 (前述の通り直径 0.2 mm )) に関し、XRDプロファイルの取得を行った。図7には図6中の赤線で示した縦断面と測定点の断面への射影位置を示す。図8においても、セメントと花崗岩が密着していることが確認できた。特に Point 2 および Point 3 においてそれぞれ界面に接近する位置にあることがわかった。それぞれ、境界から30 μm の距離にあり、マイクロビームの高さ方向の幅が 50 μm で上下に 25 μm の幅を持つことを考えると、境界両側の異なる材料の信号の混入の可能性は排除できない。


図7 セメント-花崗岩供試体断面(上端から390レイヤー、境界部分)

図8 セメント-花崗岩供試体断面


 図9に横軸をエネルギー、縦軸をX線回折強度とした回折プロファイルを示す。なお、それぞれの結果には400の倍数を加えて表示した。岩側に属するPoint 1 およびPoint 2 では、強度が異なるもののピーク位置はおおむね一致する結果となった。


図9 Point1〜4の回折プロファイル


 また、Point 2および3においては信号強度が低く、特に20 keV 以下のエネルギーではピークが見られない傾向が見られた。この結果は実験1の結果と呼応し、試料内部での測定点は、低エネルギー側で顕著であるが、全エネルギー領域でX線が供試体に吸収されたと推定された。図10に各PointとQuartzとの回折プロファイルと併記した結果を示す。各Pointでは、いずれもQuartzと一致する結果となった。セメント側では、混和した砂の影響と思われ、両側ともQuartzが主成分として含有されることを示す結果となった。図11にPortlanditeとの結果を示す。いずれのPointにおいても一致は見られなかった。一般的にセメントの水和が進行するに伴い、Portlanditeは消費される傾向にあり、セメント側にも残留していなかったと考えられた。図12にCalciteとの結果を示す。花崗岩側であるPoint1およびPoint2でもCalciteのピークと一致しているように見えるが、図9に示す、Quartzのピークとほとんど一致する結果となり、Calciteの存在を判定することは困難であった。図13にBiotiteとの比較結果を示す。BiotiteもQuartzのピークと多くの点で一致する結果となり、存在の判定は困難であった。


図10 各 Point と Quartz プロファイルとの比較


図11 各 Point と Portlandite プロファイルとの比較


図12 各 Point と Calcite プロファイルとの比較


図13 各 Point と Biotite プロファイルとの比較


 当初は、コンクリート側からのカルシウムを主成分とした高アルカリ溶液が花崗岩に作用するシナリオを想定していたが、XRDによる判定は困難であった。

 また、当初計画では、多くの供試体採取を行い、分析に供する予定であった。採取を対象とした模擬試験場の環境は非常に乾燥しており、図14に示すように、乾燥によりセメント側が多く収縮しており、花崗岩から離れてしまっているものも多く採取された。実際の分析に供することができたものはごくわずかであり、試験自体の条件設定に再考を要する結果であったともいえる。


図14 採取した供試体の例(セメント側が収縮し花崗岩から離れたもの)


今後の課題:

 現在分析は継続中であり、測定したXRDプロファイルとデータベースより求めた鉱物との比較方法や、今回想定しなかった別の鉱物の可能性に関する考察などを加え、相互作用の有無に関し詳細な考察を加えていく。


参考文献:

[1] D. Savage, et al., Appl. Clay Sci., 7, 33 (1992).

[2] 大和田 他、JNC TN8400 2000-027 (2000).

[3] 梶原堅太郎 他、第67回セメント技術大会講演要旨、82 (2013).



ⒸJASRI


(Received: May 26, 2016; Accepted: July 18, 2017; Published: August 17, 2017)