SPring-8 / SACLA Research Report

ISSN 2187-6886

Volume5 No.2

SPring-8 Section B: Industrial Application Report

BL14B2における遠隔XAFSシステムの構築 (2)
Development of Remote-XAFS System at BL14B2 (2)

DOI:10.18957/rr.5.2.219
2013A1827 / BL14B2

高垣 昌史, 井上 大輔, 古川 行人, 本間 徹生

Masafumi Takagaki, Daisuke Inoue, Yukito Furukawa, Tetsuo Honma

(公財)高輝度光科学研究センター

JASRI

Abstract

 BL14B2において開発を進めている遠隔XAFSシステムの基盤技術であるQuick XAFS測定、および試料搬送ロボット制御プログラムの開発を行った。従来のローカル版Quick XAFS測定プログラムと同等のパフォーマンスが得られ、測定データはウェブブラウザ経由でダウンロード可能となった。


キーワード: 遠隔実験、XAFS

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背景と目的:

 産業利用推進室では、制御・情報部門との協力体制のもと、BL14B2のXAFS自動化技術を基盤として、インターネット経由でXAFS測定を可能にする「遠隔XAFSシステム」の開発を進めている。産業利用分野においては、人的、資金的、時間的資源上の制約から、ユーザー実験は少数の熟達した測定担当者が行い、実験結果を真に求めている試料提供者が実験に参加できず、その意見が実験進行にフィードバックされづらいケースが少なくない。遠隔XAFSシステムが完成すれば、ネット接続が可能な環境にいる限りどこからでも実験に参加することが可能となるため、試料提供者の意見のリアルタイムなフィードバックが可能となり、より商品開発に密着した高品質の実験結果の創出が期待される。

 課題番号2013A1180において開発したQuick XAFS測定プログラムの個別機能の評価結果と、汎用一軸スキャンプログラム「singlescan」の完成を受け、本課題では透過配置型Quick XAFS測定プログラム「QXAFS」、および試料搬送ロボット制御プログラム「Sample Catcher」、自動光学調整プログラム「Auto-Optics」の開発を行った。これらは、今後開発予定の全自動XAFS測定プログラム「Auto-XAFS」の中核となるプログラム群である。


方法と結果:

 QXAFSは、課題番号2013A1180において評価した (1) 測定パラメータの入力と入力値の正当性評価、(2) 暗電流測定を含むQuick XAFS測定、(3) 関連機器からのデータ収集と整形、(4) データ変換サーバとの連携、(5) データリポジトリへのアップロード、の各機能を統合し、完結した測定プログラムとして実装した。図1にQXAFSのサーバ構成を示す。(2)の項目を司る測定エンジンサーバは、他のすべてのサーバプロセス(測定機器、データ変換、アップロード)を統括する。従来のローカル版Quick XAFS測定プログラムとの比較を行い、特に (2) の項目に関して、同等のパフォーマンスが実現できたことを確認した。測定データは自動的にデータリポジトリサーバにアップロードされる。ウェブブラウザでデータリポジトリにアクセスし、基本データファイルおよびスペクトル処理プログラム(AthenaおよびREX2000)用に変換された2種類のファイル、合計3種類のファイルがダウンロードできるようになった。

 図2にSample Catcherのテスト用ウェブクライアントを示す。80試料を設置可能な試料カセットからの試料取り出し、カメラによる試料重心位置の特定、重心位置へのX線照射等、一連の動作試験には成功したものの、機能の中核となるsinglescanに動作停止を伴う不具合が見出され、本ビームタイム中での解決には至らなかった。これは、その後の調査で、BL機器との通信に起因する問題であると確認され、解決された。本件に関連し、同じくsinglescanを使用するAuto-Opticsの動作試験を計画していたが、これは中止となった。


今後の予定:

 従来のローカル版Quick XAFS測定プログラムは入力パラメータが多く、ユーザーによる入力ミスを誘発しやすい点が問題視されてきた。特に遠隔実験においては、如何にユーザー入力そのものを削減することができるかが非常に重要な課題となる。現在、QXAFSへの最小限の入力情報をもとに、測定パラメータを自動的に計算するプログラムを設計しており、ウェブクライアントとともに簡便なインターフェースを実装する予定である。また、現在のQXAFSは動作の最適化がなされていない状態であるため、動作の遅延等で測定時間が圧迫される点を、今後解決しなければならない。



図1. QXAFSのサーバ構成



図2. Sample Catcherのテスト用ウェブクライアント



ⒸJASRI


(Received: September 7, 2016; Early edition: February 24, 2017; Accepted: July 18, 2017; Published: August 17, 2017)